オリヴァーサックスのレビュー一覧

  • 妻を帽子とまちがえた男

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    専門的な言葉もあるが、知的障害を病的な見方ではなく、個性として捉えた作品。家族では難しい見方かもしれない、第三者だからこそ接し、その才能を発掘できるのかな。人間って、つくづく感覚=具体、現実の中で生きる生物なんだと思った。

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    2021年01月04日
  • 色のない島へ──脳神経科医のミクロネシア探訪記

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    自在であると思っていることが(時には意識すらしていないことが)、誰かにとっては自在でも当たり前でもない。色彩異常やALSなどの風土病が多発するミクロネシアへ向かった著者の生活のノンフィクション。
    果てしない時間を生き抜いてきた植物や菌や自然に囲まれて生きる人間の、戦争や略奪そして忘却の歴史を通じて、人の生き様の密度と短さを思う。
    各島でのバラバラの話が、最後、緩やかにつながるような不思議な感覚を覚えた。

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    2020年08月18日
  • 音楽嗜好症(ミュージコフィリア)

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    文字通り“雷に打たれて”以来、ピアノを弾くことに取り憑かれてしまった医師。隣人の家から大音量で流れるレコードプレーヤーの音楽のような幻聴。聴覚は機能しているのに脳が音楽を構成する要素をうまく感知できず、無感動になってしまう失音楽症。反対に、言語に不自由を抱えている人たちが音楽の力によって、コミュニケーション手段やアイデンティティを取り戻す過程。脳神経科医の著者が出会い、あるいは送られてきた手紙や時に自身の体験談から、音楽とヒトの脳の関係を語ったノンフィクション。


    私が本書で一番興味深かったのは絶対音感にまつわるくだり。ニューヨークと北京の音楽学校で行った調査で、4歳から5歳のあいだに音楽の訓練を始めた生徒のうち、中国人生徒は約60%が絶対音感の基準を満たしていたが、英語話者の生徒は約14%しか基準を満たしていなかったという。この差は中国語が言葉の意味を区別するのに音の高低パターンを用いる「声調言語」であることに関わっている。幼児期において言語能力の発達はふつう絶対音感の保持を妨げるのだが、声調言語はそれ自体音感を必要とするために、絶対音感も保たれるということらしい。
    これは同時に乳幼児はみな絶対音感の潜在能力を持っているのだが、言語を習得するため、あるいは聴覚情報を総合的に処理できるようになるために抑制されていくものだということも表している。話はさらにネアンデルタール人の時代へ飛び、原始の人類は音楽でコミュニケーションをとっていたはずなのだが、言語の発達により大部分の人間は絶対音感を失くし音楽能力が縮小した、というスティーヴン・ミズンの仮説を紹介している。
    まるで「文字禍」。他の章では古代ギリシャ人が膨大な「イーリアス」や「オデュッセイア」を覚えていられたのは叙事詩に節がついていたからだ、という当然の指摘もあり、ネアンデルタール人と比べて音感が退化してからも人びとは音楽で記憶をつなぎとめていたとわかる。言葉と文字が音楽をコミュニケーションの中心から追いやってしまったのだろうか。
    もちろん音楽は今でも人間の記憶と感情を喚起させる力を失ってしまったわけではない。本書第3部、第4部で紹介された音楽療法で救われたさまざまな人たち、特にチック症状に悩むトゥレットの患者たちがドラムを叩くことで解放されていく姿にはとても感動した。視覚・聴覚・知覚に障害を抱える人みなに音楽が作用するのはそれが〈振動〉に他ならないからではないかとも思い、コロナ禍の今、現場で音楽を共有することの意味をまたもう一度考えることになった。
    音楽に救われた人だけでなく、音楽に苦しめられた人びとも紹介されている。その多くは耳をよく使う音楽家だ。蝸牛管の衰えによって大脳皮質における音のマッピングが歪んでしまい、音感がズレてしまった作曲家の「自分がもっている耳で仕事をするんですよ。自分がほしい耳ではなくてね」という言葉には胸が痛んだ。聴覚が変調をきたすと、その空白を補うために脳が幻聴を聞かせることもある。ヒトの脳は〈意味〉を求め、〈意味〉をつくりだすことから逃れられないのだ。

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    2020年08月02日
  • 心の視力 脳神経科医と失われた知覚の世界

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    人間って本当によくできてるな。当たり前のことに感謝感謝。サックス先生の本読むと毎回同じ感想。すぐ忘れちゃうからまた読むんです。

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    2019年09月22日
  • 意識の川をゆく 脳神経科医が探る「心」の起源

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    サックス先生最期の本。各エッセイに共通して科学に対する敬愛とヒトの意識に対する尽きない興味が溢れ出ていたように思う。死の直前まで綴られた好奇心の1つ1つに感動すると共に、自分自身もこのような最期を迎えられたら幸せだろうなとふと思った。養老先生の解説も良かった。

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    2018年11月25日
  • 意識の川をゆく 脳神経科医が探る「心」の起源

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    ネタバレ

    著者はこの原稿をまとめてから直ぐに亡くなったそう。同じ著者の他の本で読んだことあるような話が多かった気がします。ただ、コレはなかった、肝動脈の塞栓術手術の話。担当医から手術前に術後の辛さについて延々と語られているけども、実際、本当に辛そう…

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    2018年10月20日
  • 見てしまう人びと 幻覚の脳科学

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    人間がものを見たり、聞いたり、触ったり、味わったり、嗅いだりすることができるのは奇跡的なことのようだ。体の各部位と脳との精緻なネットワークでそれが実現されている。そのひとつでも欠けたり不具合が生じると、目や耳に異常がなくても、見たり聞いたりすることが正常にできなくなってしまう。そんな自体にも脳は一生懸命に解決しようと働く。そのときに幻覚や幻聴が現れる。

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    2018年10月20日
  • タングステンおじさん 化学と過ごした私の少年時代

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    脳神経科医のオリヴァー・サックスの14歳に至るまでの自伝。恵まれた環境のもと、優秀な親族に囲まれ、知的好奇心を存分に発揮しながら、類い稀なる才能が開花していく有り様がつぶさに綴られている。化学への深く掘り進んでいく探究心や、歴史をなぞるように自己体験していく執拗さには、早熟さという言葉ではおさめられない驚きを感じる。青年期以降の自伝も書き著しているので読んでみたいと思う。

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    2018年03月22日
  • タングステンおじさん 化学と過ごした私の少年時代

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    化学に魅せられた少年時代のサックス。多感な時期に無我夢中になった事への思いが伝わってきた。化学は改めて面白いと思った。量子力学と化学の別れの最終章はせつなくとても感動した。

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    2018年03月22日
  • タングステンおじさん 化学と過ごした私の少年時代

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    ここ最近、自然科学分野が楽しそうで。なんだろ、『麻布ハレー』の影響かな。違うでしょうね、きっと。

    時代が時代といえど、こんなステキな環境で、ステキなおじさんがいるのは素晴らしいですね。

    どうにもこうにも、「なぜ?」という感覚は忘れないように。

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    2017年09月16日
  • タングステンおじさん 化学と過ごした私の少年時代

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    夏に、理科的なものを読みたくて新刊で買ったけど、結局読み終えれずに秋になりました…

    続きは来年の夏にまた読もうかな!

    エッセイです。

    原子や分子、化合物…なんてロマンチックなんだろう。

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    2016年10月04日
  • サックス先生、最後の言葉

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    二章目の最後のページに書いてある、死に対する恐怖と感謝が素直に伝わってきた。人の幸福度は晩年の方が高いと言われているが、死に近づく世代になる、特有な孤独もあるんだと知った。人生のせんぱいから学ぶことは多い。50年、60年後の自分は、今と変わらないところも多いのではないかと思った。未来の自分は何をしているのだろうか。サックスさんの壮絶人生の振り返りというより、長年生きてきた彼自身の目から見える人生観について今感じていることを素直に綴っているような作品だった。

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    2016年08月27日
  • 見てしまう人びと 幻覚の脳科学

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    本書の内容は訳者あとがきに尽くされている。

    幻視、幻聴、幻嗅、幻肢などの幻覚は一般に思われている以上にありふれていて、脳が何らかの因子に反応している、ということだ。

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    2016年07月07日
  • 道程―オリヴァー・サックス自伝―

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    カオスの窓
    不思議な人々を記述した本人もとても不思議。
    動き続けた心と体をこれだけ記録してるのがさすが。
    改めてサックスコレクション読むべ。

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    2016年04月17日
  • 妻を帽子とまちがえた男

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    脳神経科医オリヴァー・サックスによる、1985年発表の医学エッセイ。
    サックス教授は、自らの患者の脳神経に起因する奇妙で不思議な症例を綴った多数のエッセイ集を発表しているが、本作品は、後に映画化された『レナードの朝』(1973年)に次ぐ代表作のひとつである。
    本作品では、症例を大きく「喪失」、「過剰」、「移行」、「純真」の4つに分けて24篇が収められているが、「喪失」の部では、視覚、記憶、身体の認知、空間認知などの障害を示す症例が示した奇妙な現象、チックに伴う暴言、人の間違い、切断された足の幻影など、「過剰」の部では、てんかん発作などに伴う幻覚、夢など、「移行」の部では、知的障害や自閉症の高度な計算能力、描画などの特異な能力などが紹介されている。
    いずれも興味深いものではあったが、私が強く印象に残ったのは、重度のコルサコフ症候群の患者の症例である。重度のコルサコフ症候群の患者は、どんなことでも数秒間しか覚えていられず、自分についての過去の物語が持ちえない、即ち、自分のアイデンティティがないのである。そして、記憶障害以外の脳機能は正常な患者は、アイデンティティの喪失を埋め合わせるために、あらゆる話を打てば響くような素早さで次から次へと作り続けるのだという。これは、人間としては、最も耐え難い状態なのではないかと思う。(本人に自覚はないのだが)
    本書は出版から30年が経ち、その後の脳神経医学の進歩により、本書の症例の中にも、原因が解明されつつあるもの、或いは今後解明されるものもあるのだろう。
    一方で、不思議な症例を知るにつけ、脳に関わる機能の複雑さを感じるとともに、脳に関する根源的なテーマである「意識の発生のプロセス」はいつか解明されるのだろうかと、改めて思わざるを得ない。
    (2014年9月了)

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    2016年01月11日
  • 音楽嗜好症(ミュージコフィリア)

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     難しい本だった・・・。時間かけすぎたかもしれない。色々な症例をもとに、医学的、哲学的、工学的にその分析をする。分析結果がどうつながるのかは分かるものもあればわからないものもある。と、目的を掴むのに苦労する内容に思えた。こういう例があるので、応用すると何らかの音楽的才能が開ける、とかいう話ではなかった(少しその辺に期待してしまった)。

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    2015年09月07日
  • レナードの朝〔新版〕

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    ネタバレ

    そういうわけで読んでみた。
    映画のおかげでタイトルは「レナードの朝」だけれど、原題は「Awakenings(目覚め)」。
    本を売るには知名度の高いこのタイトルの方が良いんだろうけど、
    中身はやはり「目覚め」だよな、と思う。
    出版社も慈善事業じゃないのでしょうがないけど、
    ちょっと陳腐化されたようで残念。

    これは執筆当時(少し前)に「奇跡の薬」と呼ばれた
    L-DOPAという薬の投薬記録以外の何物でもない。
    はっきりとメカニズムがわかっていなかったが故にどうしても実験的な色彩を帯びてしまい、
    読者はオリヴァー・サックスの判断に
    疑問を感じることになるのは避けられないのではないだろうか。
    『火星の人類学者』の後書きで紹介されていたアメリカでのレビューにあった
    「覗き見趣味」というのはこういうところにも起因するのかな、と思わなくもない。
    そういった疑問は読んでいくうちに氷解し、
    当時はそれこそ奇跡に頼るくらいしか選択肢がなかったのだとわかる。
    寧ろ、そういった批判も当然予想されるのにも関わらず
    発表したその事実に誠実さを感じることに。
    そして読んでいる最中読者が考えるであろうL-Dopaの働きは
    その後のオリヴァー・サックスのL分析で裏付けされる。

    先に書いたようにこれはあくまで記録なので、
    ストーリー性や結論のようなものはない(L-Dopaへの分析以外で)。
    なので映画のような話を期待して読み始めた人にはさぞかし退屈だろうと思う。
    ここには涙腺を刺激するような話はないからだ。
    臨床記録は淡々と語られ、
    その前後は状況説明と映画化の舞台裏の話、
    そして少々多いと感じる様々な人の後書き(作者、訳者、脳科学者…等々)。

    世の中奇跡は滅多には起きない。

    この間近所で、顎を体にくっつけるように折り曲げ、
    すり足のように歩いていく人を見かけた。
    その時、以前にもこういう人を見かけたことを思い出した。
    そして気づいた。
    ああ、あれはパーキンソン病なのかもしれない。
    パーキンソン病患者は以外と多いらしい。
    後書きに、オリヴァー・サックスは
    一般の人にこういった病気があること
    (『目覚め』で取り上げられている病気はパーキンソン病ではないけれど)を
    知ってもらい理解してもらいたいのだと読める文章がある
    (舞台化の依頼の行だ)。
    そうか、こういうことなのかもしれないな、とちょっと腑に落ちた瞬間だった。

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    2015年07月26日
  • 火星の人類学者──脳神経科医と7人の奇妙な患者

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    映画『レナードの朝』で有名な、脳神経科医オリヴァー・サックス氏の著書。サヴァン症候群やトゥレット症候群など、脳や神経に疾患のある患者7名のエピソードが紹介されている。

    特に最後の章に登場するアスペルガー症候群の女性は、食肉プラントを設計したり講演会に登壇するなど、社会人としては立派に過ごしている。もし彼女の事を何も知らずに実際に会う機会があれば、チョット冷たいだけの女性だと思った事だろう。

    自閉症の症状にも重度なものから極軽度なものまで段階があるそうだが、読んでいて自分には全く関係ないと言い切れるか、少しだけ不安になった。

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    2015年06月29日
  • 火星の人類学者──脳神経科医と7人の奇妙な患者

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    ネタバレ

    基本的には読み終わっていない状態では更新しないのだけど
    (他の呼んでいる途中の本は今のところ改めて手に取るつもりはない)。
    「最後のヒッピー」というタイトルで書かれたストーリーに
    あまりにも心を打たれてしまったので。
    脳に損傷を受けてしまい新しい出来事を覚えられない青年グレッグの話。

    脳が損傷したために新しいことを覚えられない、とか、
    病気のために記憶がどんどん失われていく、とか、
    こういう記憶関係の障害の話は弱い。
    悲しすぎるので。
    本人は喪失すら気づけず、考えようによっては幸福とも言える状態なのだけど、
    でもやはり、却って、と言うか、絶対的に、悲しい。
    グレッグのケースは特に、
    表面の意識では知らないのだが
    心の底では何かを気づいているのでは?と思わせる描写があるので、
    でもどうしようもないので、
    余計に悲劇に感じてしまう。
    永久に損なわれてしまうって、
    とてつもなく悲しい。
    絶望って、こういうことを言うのではないだろうか。

    永久に損なわれるという意味では、
    最初のエピソード「盲目の画家」もそうなのだが、
    やはりそこに自覚があるかないかの差が大きい。

    因みに私の人生でのオリヴァー・サックスの登場はこれで三回目である。
    高校生の時、朝日新聞か何かの書評で『妻を帽子と間違えた男』の存在を知り、購入。
    これが一冊目。
    それが映画『レナードの朝』の原作を書いた人だと知ったのはずっと後の話(映画は未見)。
    その後TEDで
    シャールズ・ボネ症候群という脳の過反応による幻覚についてのスピーチを聞いた(見た)のが、
    私の中のオリヴァー・サックス登場二度目。
    そして今回が三度目。

    脳神経外科医である彼が取り扱う症状は、
    私の好きな精神医学の分野にリンクしていることもあり、基本的に興味深い。
    また文章も、上手なのもあるけれど、やはり、
    変に感情に走らず、医者/学者として淡々とエピソードを語るところがとても良い。
    誠実な文章である。

    ちょっと、うーん、と思ったのはタイトル。
    「火星の人類学者」、原題も「An Anthropologist on Mars」で同じ。
    アイキャッチだとは思うけれど、
    アイキャッチすぎるタイトルはあまり誠実に感じないので個人的に好きじゃない。
    特にこれは何か全体の比喩ではなく、
    症例として登場するある特定の人物を意味する言葉なので、
    全体のタイトルとしてはどうかな、と思う。
    中身の誠実さに適したタイトルがもっと他にあったのでは。

    訳者の後書きに、とある辛辣な書評が引用されていた。
    本に対する辛辣さ、というよりは、オリヴァー・サックスその人への辛辣さなのだが、
    オリヴァー・サックスの文章には覗き見趣味が見えるという。
    感じたことがなかったので(翻訳後だからかもしれないが)、
    ちょっと驚きの見方であった。
    うーん、そうなのかなー…。

    まあそれはそれ。

    『レナードの朝』も読んでみようかな。

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    2015年06月24日
  • 見てしまう人びと 幻覚の脳科学

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    見えてしまい、聞こえてしまい、嗅げてしまうのに、それが現実ではなく、脳の働きでしかない例をこんなに知ると、私自身が知覚していると思っているものも、実は…って事があるのではないかと、世界への認識を新たにしてしまう。それにしても、欠如を補おうとする、脳の働きは驚異的だ。

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    2015年03月10日