妻を帽子とまちがえた男

妻を帽子とまちがえた男

小説・文芸
1,056円 (税込)

5pt

妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする音楽家、からだの感覚を失って姿勢が保てなくなってしまった若い母親……脳神経科医のサックス博士が出会った奇妙でふしぎな症状を抱える患者たちは、その障害にもかかわらず、人間として精いっぱいに生きていく。そんな患者たちの豊かな世界を愛情こめて描きあげた、24篇の驚きと感動の医学エッセイの傑作、待望の文庫化。

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妻を帽子とまちがえた男 のユーザーレビュー

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感情タグBEST3

    Posted by ブクログ

    個性と多様性の本。

    冒頭にウィリアム・オスラーの「病気について語ること、それは『千夜一夜物語』のようなものだ。」という言葉が載っている通り、(本人や周囲の人には辛いこともあるだろうけど)出来の良い短編を読んでいる様な驚きや発見がある。

    身体の一部であったり神経や脳の機能が喪失したり過剰だったりで、こんなにも多様な症状が出ることに人間の身体の不安定さと同時に安定性も感じる。

    そして、本当の意味で「感覚」の違う人との相互理解は出来ないからこそ、理解しようとする姿勢と一方の「感覚」での評価の意味のなさがわかる。




    p. 91 私が診ていたある患者は、後頭葉への血管の塞栓のために、脳の視覚をつかさどる部分が死んでしまった。たちどころにこの患者は完全に盲目となったが、本人はそれを知らなかった。見たところ盲人なのに、彼はひとつも不平を言わない。質問や検査をしてみてわかったことだが、彼は盲目となった—脳の皮質の上でそうなってしまった—ばかりでなく、およそ視覚的な想像力も記憶もいっさい失ってしまったのである。それでいて、失ったと言う意識もないのだった。「見る」という観念そのものが存在しなくなり、なにひとつ視覚的に叙述することができないばかりでなく、私が「見る」とか「光」といったことばを口にすると、それが理解できずに当惑してしまう。すべての点で視覚と無縁な人間になってしまったのである。彼のこれまでの人生の中で「見る」ことに関係あった部分いっさいが抜けおちてしまった。



    p. 188こうなるともう、天賦の才能なのか呪われた欠点なのかわからなくなってくる、とも言った。


    p. 204このように考えると、われわれは、通常とは逆向きの流れのなかに立つことになりかねない。病気は幸福な状態で、正常な状態に復する事は病気になることなのかもしれないのだ。興奮状態はつらい束縛であると同時に、うれしい解放でもあるのだ。


    p. 324 今までやってきたのはこの相についてのテストで、そこでは非常に劣っていることがわかっていた。しかしそのテストでは欠陥以外の事は何もわからない。欠陥の向こうにあるものは見えてこないのだ。


    p. 376 「かくして、天才少女から天才がとりのぞかれておわった。あとには何ものこらなかった。ただひとつの優れた点はなくなり、どこをとっても人なみ以下の欠陥ばかりとなった。こんな奇妙な治療法を考えつくとは、いったいわれわれはどういう人間なのか?」

    1
    2022年08月14日

    Posted by ブクログ

    何度繰り返し、この本を、読んだ事でしょう。
    人間の、精神に、興味がありました。自分が、精神の病を名付けられてからは、作者 オリバー・サックスの、変わった人々に対する温かいまなざしに、すがるような思いで、読みました。
     訳者 高見幸郎氏が、あとがきで、こう書いています。
     たしかにこれは、筆者の言うとおり、「奇妙」な話を集めたものである。脳神経になにか異常があるとき、奇妙な不思議な症状があらわれ、一般の想像をこえた動作や状態がおこる。ここに語られた二十四篇の話はいずれもそうした例といっていい。しかしわれわれが、これらをただ好奇の目でながめ、興味本位に読むのだったら、それはたいへんな誤りで、筆者の意図と真情を正しく理解したことにはならないだろう。病気の挑戦をうけ、正常な機能をこわされ、通常の生活を断念させられながらも、患者はその人なりに、病気とたたかい、人間としてのアイデンティティをとりもどそうと努力している。勝てなくても戦いつづけている。たとえ脳の機能はもとどおりにならなくても、それで人間たることが否定されるのではない。このことこそ、サックスがくり返し述べているところであって、ここが、問題の核心というべきであろう。

    、、、書いていて、スマホが、涙で、濡れてしまいました。

    ※ 私が読んだのは、晶文社の、単行本のほうです。


    りまの


    1
    2021年02月16日

    Posted by ブクログ

    "ユニークな視点で、様々な症状を抱える患者たちを暖かいまなざしで見つめた本。
    脳への障害は、様々な症状を患者にもたらす。

    突然音楽が鳴りやまなくなったり
    自分の手足を自分のものと思えなくなったり
    即座に素数を答えることができる自閉症患者

    などなど
    人間という生き物、脳機能などの謎を浮き彫りにしてくれている。"

    1
    2018年11月24日

    Posted by ブクログ

    脳は物語を紬ぎ、私達はそれを生きる。物語は無数にあり、それらはあくまで主観で語られるから、いつの時代も、どんなに科学が進んだとしても、他人の物語というのはあくまで抽象概念なのだ。だからこそ、魅惑的であり続ける。脳神経科医が彼の患者の症例を物語としてナラティブする、真摯で、そんな人の物語を愛する暖かい気持ちが詰まったエッセイ。

    1
    2013年10月24日

    Posted by ブクログ

    患者一人ひとりの症例を、物語として脳神経科医の作家が記すのだが、各々の物語は医師としての挑戦、人としての愛にあふれている。だから、医学の知識がないわたしにも読むことができ、好奇心すらくすぐられた。

    0
    2026年02月26日

    Posted by ブクログ

    何気なくタイトルに興味を感じて読み始めたら、著者はあのレナードの朝の原作者だった。
    楽譜は音楽を記号で表したもの、それと同様に数字は数の世界を記号で表したもの。音楽は聴くものであるが、数の世界は何か図象的なものであるのか?
    サバン症の人たちにはそれが見えているので日付から曜日を即回答できるのか?どうも素数が鍵であるようだ。この図象的なものが理解出来れば数学の世界は大きく進歩するのではと思った。
    全くタイトルからは想像できなかった事に気が付かされた。

    0
    2025年12月29日

    Posted by ブクログ

    人間をまず”普通の人間”たらしめている要素とは何なのか、また人間の本質について考えさせられる良著。
    この本はジャンルとして全くSFでもなく、量子力学でもないが、『酔歩する男』の血沼や小竹田のことを考えてしまう。

    0
    2022年07月24日

    Posted by ブクログ

    ●感想
    サックス博士の患者さんへの眼差しが、その個人個人に寄り添ったものであり、決して上から目線や興味本位でないのが心地よかった。脳って本当に不思議。これまでの経験は、ふだん取り出せないだけで全部記憶されている、音楽をきっかけにしか思い出さないことがある、など自分の経験のなかでも納得がいくものもあった。だから、不思議な症例に見えても、そんなこともあるだろうなと思えた。


    ●本概要

    頭がオルゴール? 化粧は右半分だけ?
    『火星の人類学者』のサックス博士が
    奇妙な患者たちを優しく見つめた代表作


    妻の頭を帽子とまちがえてかぶろうとする音楽家、からだの感覚を失って姿勢が保てなくなってしまった若い母親@@脳神経科医のサックス博士が出会った奇妙でふしぎな症状を抱える患者たちは、その障害にもかかわらず、人間として精いっぱいに生きていく。そんな患者たちの豊かな世界を愛情こめて描きあげた、24篇の驚きと感動の医学エッセイの傑作、待望の文庫化。

    0
    2026年07月28日

    Posted by ブクログ

    脳に対して障害がある人の症例を集めたエッセイ集である。原書は1992年に発売されたモノであり、文庫になったのも2009年と割かし古いが、脳の機能について示唆を与える事象が数多く記されており、興味深い内容だった。
    2027/12/27 追記
    著者のオリヴァー・サックスの書籍に関して、虚偽の記載が多くあるとのニュースがあり、その中に当書籍も含まれていた。
    確かに、患者の個人情報に関わる内容を赤裸々に記載されており、「当時の倫理観だとそんなもの?」という感覚で読んでいたが、あまり鵜呑みにするのは良く無さそうである。

    0
    2025年11月23日

    Posted by ブクログ

    脳神経科医のサックス博士が出会った奇妙でふしぎな症状を抱える患者たちのお話。

    特に印象的だったのは、双子の兄弟の話。彼らだけにわかるルールでコミュニケーションをする。その描写が双子だけの静かな世界をあらわしていて、引き込まれた。

    考えると、私たちは当然のように「言葉」を使ってコミュニケーションをするけれど、「言葉」にすることが苦手な人もいるし、「言葉」以外のコミュニケーションがあってもいいのでは、と思ったり。

    0
    2025年06月10日

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