経営の神様と言われた松下幸之助氏の経営思想または人生哲学である。本著がビジネスから誰もが悩む人生に当たる壁や道のりの示唆に富んだ著者の思索の追体験ができる良書である。
本著のタイトルの通り「道をひらく」とは、自分自身の考えと決断と行動によって固い意志を持ち続け順境や逆境においても尊び、失敗も成功も常に謙虚で前へ進むことを推奨する内容である。私たちは誰もが、最初の一歩を踏み出せなかったり、準備に時間をかけ過ぎて行動できなかったり、頭の中の想像だけで動けなくなってしまうものだ。本著では、そういう層にも刺さる内容である。経営の神様と呼ばれた著者も悩み、逆境や苦悩を抱えながらも道をひらいてきた。これは、著者が特別な人間だからというメッセージではない。男女育ちも学も関係なく、自分の意志で何をしたいのか自分と向き合い問いを立て説き、道を歩まんとする者の背中をやさしく押してくれる存在といえよう。
この世に特別な人間などは本質的には存在しない。どのような存在や立場や境遇であれ、皆、苦悩し逆境や地獄も成功も成し遂げたことも歩みも抱えて生きているのだ。本著では私が好きな言葉で、本著の核心とも言える言葉がある「道をひらくためには、まず歩まねばならぬ。心を定め、懸命に歩まねばならぬ。」である。自分に与えられたかけがえのない「道」をひらくには、迷ったり他人と比べて立ちすくむのではなく、決意して一歩を踏み出し、努力を続けることが何より大事だと述べ、道は待っていてもひらけず、「まず歩む」ことが新しい可能性や喜びにつながるという著者の信念と思索の過程が凝縮されている言葉といえよう。
生きている時間は有限であり、「何かをしたい」「何かに興味がある」「将来はこうなる」「こういう人生を送りたい」「したい」という自分の気持ちに素直に向き合い対話を重ねながら皆が皆なりたい自分や人生を道をひらき歩み続けることを著者も本著も誰もがそれらを望んでいるであろう。