アーサー・C・クラークのレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
第2次世界大戦終戦直後のイギリス。
積み重なった戦費は戦勝国イギリスの経済を破綻に追い込み、
大英帝国は消滅した。
連合軍によって開放されたフランスや、敗戦国イタリア、ドイツにおいて
食料の配給制が撤廃された後においても英国は配給制が続く有様。
ビーフ・ステーキの代用品として鯨肉が重用されたものの、
庶民のテーブルには鯨肉さえ上らなかったという。
人口が爆発的に増加し、食糧の確保が困難となった近未来。
馬に跨ったカウボーイが牧場で牛を育てたように、
潜水艇で鯨を追い、育てることで食料問題の解決を図るのが
本作品の基本骨子。
著者であるアーサー・C・クラークには戦争直後の、
長引く食料配給制時 -
Posted by ブクログ
今まで宇宙エレベータはロケットよりもダサいと思っていた。
その認識を心より恥じる。
宇宙エレベータから外をのぞくのは、どんなにかすばらしい景色だろう。
早くカーボンナノチューブが巨大化して実際に宇宙エレベータが出来ればいい。でも、解説にあったとおりどう考えてもNASAの従来型の宇宙戦略とは真っ向から対立するので難しいか。
この本では、そうした政治的な対立軸は「科学技術V.S.宗教」の形に落とし込まれているわけだけれども、その解決方法は荒唐無稽ながら神秘的なユートピアを感じさせて興奮した。
特に、前半部分におけるカーリダーサの記述は、エピローグの最後の一文と相まって泣きそうになるような、壮大な -
-
-
-
-
Posted by ブクログ
日経新聞に早川書房社長のコラムの連載があり、その中で著者のクラーク氏のことが触れてあったのを読んだら無性にクラークSFを読みたくなってしまいました。
未読の本書があったので読んでみる。
人類の月着陸船プロジェクトを詳細に描く本作はもちろんアポロ計画より前に発表されながらも実にリアルに描かれた、あり得たかもしれない宇宙計画だ。宇宙へのあこがれや地上の諸問題をほっぽらかしてなぜ宇宙へ行くのかといった観点を正面から描き清々しい。第二次対戦をのりこえて世界がむかうべき道が宇宙に広がっているとか、成層圏の外側に国境はないとか、今読めば赤面するくらい真っ直ぐに描く。月へ向かう多段式ロケットは原子力エンジ -
Posted by ブクログ
以下の問を、人類よりも発展した種族≒宇宙人の出現というストーリーの中で描きたかった本である。と読んで思った。
・人間というものは、何を希求して生きているのか?
・人類とはどんな世界を目指し、どんな道を選んできたのか?
・人類はどのような発展ないし進化、変化をとげていくのか?
目的意識、論理的発展、科学の発展という現代が希求していることの限界を感じた。
サイエンスフィクションでサイエンスの限界を描くというのはSF名著で共通して見られると思った。
「議論をやめて事実を集めるべきだ。それには行動が必要だ」
「これが人類のメタモルフォーゼの結果なのか。」
この言葉が心に残った -
Posted by ブクログ
ネタバレクラークは昔よく読んだ作家だが、この小説のことは長らく知らなかった。映画「ディープインパクト」の原案とのことで、「悪魔のハンマー」のようなカタストロフィ物を期待して読み始めた。前半はクラークお得意の近未来社会描写の中で、一人の男の努力や挫折が中心に描かれ、「海底牧場」的な感動話になるのかとも思ったが、カタストロフィ物としてはやや緊張感に欠ける。終盤になって彗星の軌道をずらそうとする現場の描写が中心となり、ようやく盛り上がり始める。結局、人類滅亡は免れたが彗星の一部は地球に衝突し多くの人々が犠牲になった。その時の人々の生き様を丹念に描いたのが「悪魔のハンマー」だが、ニーブン&パーネルが1000ペ