たしかに壮絶。たしかに凄惨。
ただ、各被害者遺族の視点から見ると、全ての事件・事故で突然命を奪われることは等しく悲劇であり、唐突なものでもある。
その意味で、日航機墜落事故や大震災の悲惨さや当局の対応のまずさを指摘する目的で書かれた本はその事故・災害の特殊性を殊更に強調しようとするものが多い中で、この本はそうではなく、被害者遺族に寄り添い、それぞれの家族の物語を掘り起こしていく点で大きな独自性があった。
著者の門田氏は他にもすばらしいノンフィクション作品があるが、遺族の物語を紡いでいくための取材力は相変わらず図抜けている。