門田隆将のレビュー一覧
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震災当時福島第一原発所長だった吉田氏の名前がサブタイトルに含まれているが、登場するのは吉田氏だけでなく、震災直後に現場で奮闘した東電職員のインタビューをもとに構成されている。現場にいた人たちが、津波で電源を失ったあと、どのようにして最悪の事態を回避しようとしていたかが臨場感を持って理解することができる。原発事故については、民主党の福山氏の著書や検証委員会の報告も読んだが、現場の内実を知るという意味では、段違いに理解を深められた。
原発内で津波の犠牲となった、当時21歳の東電職員のご両親のことばも掲載されていたのだが、いたたまれない気持ちになった。原発内にいるに違いないのに、行方不明になってから遺体が発見されるまでに何と3週間も要したとのことだった。そんなにタイムラグがあったことも今になって気づかされたのだが、発見されるまでの間に、行方不明の二人が「現場から逃げた」という心ない情報が流れたこともあったらしい。
以下は父親の言葉。
「ついには、テレビに出演している人が”そんなやつは、捕まえて吊し上げりゃいい”ということを言ったんですよ。私たちはなにも希望のない中にいて、生きて見つかったほうがいいに決まってます。でも、祥希が仕事を放棄して逃げるなんてことがあり得ないことは、親である私たちが一番わかっています。だから、そういう話はショックでした」 -
Posted by ブクログ
ノンフィクションライターとして私が最も好きな一人である門田氏によるスポーツノンフィクション集。取材対象となっている競技は、マラソン、ソフトボール、柔道、体操、高校野球、ラグビーなど多岐に渡り、全10編が収録されています。もともと雑誌に連載された記事をもとにしているので、一つ一つの章はそれほど長くなくて読みやすいですので、長編が苦手という方にもお勧めできます。
ただ私は、折角素晴らしい取材対象の方からいろんなエピソードを取材されたのであれば、それを短編としてまとめてしまうのは惜しいなぁ、という気がしました。本書に登場するマラソンの瀬古選手、ソフトボールの宇津木選手、柔道の遠藤選手などは、それだけで1冊の本として成立するに足るエピソードをきっと持っておられるであろうし、私たちが知りえないそういうエピソードこそ、本にしていただけたらいいのに、と感じました。 -
Posted by ブクログ
昭和45年生まれの私にとって昭和33年と言われてもあまりピンと来なかったのですが、昭和という時代を振り返ると非常に意義深い年であった事が本書から分かります。
東都リーグで現在に至るまでたった一度の優勝を学習院大野球部が達成し、その直後に皇太子殿下のご婚約発表がこの年でした。
高校時代に甲子園出場経験などない選手が死闘を制して優勝するプロセスに皇太子殿下とその侍従であった方が深く関与していたという事実はこの本を読むまで全く知りませんでした。
しかも、そのチームのエースピッチャーであった井元氏は戦時中に朝鮮からの帰還途中にソ連兵による略奪や暴力を生き抜いたという経験をされた方でした。その井元氏が実はPL学園1期生であり、のちに高校野球に強豪として君臨する同校の礎を築く人脈を全国に根付かせた人物であるなど、野球を通して実に奥深い様々な物語を1冊の本に凝縮したノンフィクションです。