左巻健男のレビュー一覧
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化合物のような本だと思いました。
「大多数の金属元素は、天然には酸素や硫黄などの化合物として岩石(鉱石)のかたちで、あるいはイオンとなって海水中に存在する。やがて人類は鉱石を木炭などと混ぜ合わせて加熱して還元することで金属のかたまりを得る技術を獲得した」(p.204)
本書はいわばこの引用文の逆をやっているわけです。
文系人間からすれば、化学の知識そのものは難しいため、面白い文章として存在できない。なので世界史と化学の化合物として御提供しますよ、と。
ところで、たまたま阿仁銅山の資料館に行ったばかりだったので、特に金属の話は面白かったです。
ガラスケースに入った黄銅鉱を見ても、事前知識なくそこに意味を見出すのは難しいです。
平賀源内が、銅から銀絞り法(灰吹法)で銀を抽出することを指導したと聞いても、どう凄いのかよく分かりません。
こういうのは、鉄をどうやって製錬するか(pp.207-)、金をどうやって精錬するか(pp.233-)、外国と日本の違いも含めて知らないと、分かった気がしないものです。
しかし、本書の構成は、雑然としているようでいて、うっすら一本の線になっていますね。
本書は1~4章で化学史をやった後、5章(水)・6章(料理)・7章(酒)と化学と関係の薄い文化史の話を始めます。
このあたりで蒸留酒の話が出てきます(pp.159-)。醸造酒の水分を飛ばしてアルコール度数の高い酒を得るというのは、誰でも分かることです。
ところで金の精錬の方法であるアマルガム法は、金を水銀に溶かして合金にした後、水銀を蒸発させて金を残す方法でした(p.234)。アマルガム法は銀にも使われます(p.248)。
蒸留とアマルガム法は、水ではなく水銀を使うところが違いますが、やっていることは似たようなものです。
わざわざこんな対比で説明してはいませんが、金の精錬が7章(酒)よりも後の11章に出てくるあたり、親切な構成だと感じました。
ほかにも染料→医薬品→麻薬と連想ゲームのように展開する箇所が多く、読んでいて楽しかったです。 -
Posted by ブクログ
日本史を理科系の観点で視ること自体、新鮮だ。
左巻氏の文章は読みやすく、類書等にて拝読させていただく機会を得た。本書を店頭にて目にすると、迷わず購入することを選択した。
本書は、土器や鉄、機械、通信等の理学及び工学の観点から日本史を読み解いている。
印象的だったのは、建造物や灯り、トイレに係る観点から論じていた章だ。
★建造物の日本史
東京スカイツリーの構造は、法隆寺にある五重塔に使われた構造を意識して作製されたようだ。ちなみに、スカイツリーの地震対策は、五重塔が心柱を採用したことから、心柱制振と呼ばれているらしい。
★灯りの日本史
私たちを灯す灯りは、ガス灯や白熱電球、蛍光灯、LEDの四つに大別される。これらの灯りの形態は、約60年周期であり、興味深い。2050年頃には現在の主流となっているLEDを凌駕する照明技術が確立されているかもしれない。
★トイレの日本史
古代より私たちは、利便性や衛生面を常に考慮しながら生活してきている。いわゆる温水洗浄便座は、海外から来日する利用者にとっては、衝撃を受けるようだ。
ちなみに、過去に遡ると、奈良の平城京に都が遷都される15年程度前に、藤原京が存在していた。当時使用していたのは、籌木(ちゅうぎ)である。現代のトイレットペーパーに代わるものとして使われていたようであるが、使い勝手は劣悪であり、流行していた疫病・伝染病等の蔓延を助長させていたことであろう。
なお、温水洗浄便座の代名詞であるウォシュレットという商品名は、Let’s wash.(レッツ ウォッシュ)を文字って考案されたようだ。
文体のリズムが小気味よく感じられ、個人的には、左巻氏の文章には好感が持てる。
学生の頃のように日本史や世界史といった一教科として接するのではなく、多角的な側面から歴史を視ることは、興味深い。 -
Posted by ブクログ
2025年は実に面白い年であった。あることに関して、似たような人に次々と出会ったのだ。
この間手こずった「数学」のp.33に
著者の西成活裕さんのエピソードがあった。
彼はわからないことは素直に聞いていた。「先生、何でプラスになるんですか?」「⋯⋯、そう決まってるんだ」
本書を書いた左巻健男さんは、もの覚えの悪い劣等生だったと言う。記憶事項の多い分野は好きじゃなかった。しかし、ある担任教師の言葉がきっかけで理科が好きになり、大学院を出て中学高校の理科教員になった。
3人目は、10月末に知り合った1歳年上のLINE友だち。
彼も左巻さんのように物覚えが悪く落ちこぼれだったと言う。7匹のトンボの羽は全部で何枚かという問いに対して、
7✖️4とかいたら、ペケだだといわれ、4✖️7でないとダメだとされた。
同じ答えが出るのにどうしてかと問うと「そう決まってるんだ」が返答。
彼は覚えるのでなく考え続ける子どもだった。
そんな彼は自分の特性を伸ばし、大学を出て高校の数学教師になった。
似てるでしょ。
私はといえば、素直(?)に適当に覚える勉強を続け、適当な人間になった。
「面白くて眠れなくなる」ほどの人生パズルである。
ところで左巻さん、「仮説実験授業」と関わってますか?
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Posted by ブクログ
高校では、選択科目の都合上、化学に1年でさよならしてしまったので、学び直しにと思って読みました。
一応、高校のときに使った図説化学を引っ張り出して副読本にしたものの、大して参照しませんでした。
新書1冊で完結するよう、できるだけ平易な内容に調整されていると感じました。
有史以前から書き始めているので、化学史にとどまらず、物理学を含む科学史という印象です。ニュートンやパスカルにも触れていますし。
近代以降は概ねちゃんと化学史です。
トピック選択についても、現代の私たちの生活を支えるハーバー・ボッシュ法、リチウムイオン電池の話など、面白いものが揃っています。
あるいは、錬金術から化学への接続や、フロギストン説をラボアジェが退けた話(哲学でよく取り上げられる話)に結構な紙幅が割かれており、化学史の本を読んだ甲斐があったというものです。
学習指導要領は体系的ではあっても化学史という体系では教えてくれないので、高校のときつまずいた化学を捉え直す良いきっかけになりました。
もちろん化学で学ぶ内容は多いので、これ1冊で学び直しになるわけがないのですが、そういった導入的な側面も踏まえて「中学生にもわかる」なのかもしれません。 -
Posted by ブクログ
5億4100年前のカンブリア紀。
その時代から現れた多様な姿の生物たちから
60種以上をCG復元し掲載、解説している。
・実物大!カンブリアンモンスター カラー2ページ
・不思議なカンブリアンモンスター ・本書の読み方
・およいで生きる ・はって生きる ・もぐって生きる
・くっついて生きる ・生命の誕生と進化
Trivia、Column、古代の生き物イラスト索引、索引有り。
・好奇心はサイエンスの一歩
参考文献有り。
化石から復元したCG図。ほんの一部からの創造、
同じような生活をしているような現生の動物を参考にした
色彩。実際の化石の画像も幾つか添えられている。
その姿はまさにモンスター。
海の中で「動物」として生きるための進化。
足やヒレで動き泳ぎ、目で見ることも始める。
食べる、生き残るための進化は、まるで試行錯誤の様相。
それが、摩訶不思議な姿を生み出した。
「学名で楽しむ恐竜・古生物」のカンブリア紀の生物の
イラストに触発されての、読書。
面白過ぎる!
地球の環境の変化によって、カンブリア紀に
すべての分類上の「門」が完成したこと、
脊椎動物の原型も生まれたことなども驚きだけど、
その生物たちの姿があまりにもモンスター。
生活も、分類も食べ物も不明だけど、
化石でその存在を示しています。
特に、生命の誕生と進化の章が地球と古生物の進化の
あらましを丁寧に解説していて、大いに参考になりました。
最強のアノマロカリス、オダライアの珍妙な殻、
異様過ぎて逆さまなのに気づかなかったハルキゲニアなど、
テンション爆上りで楽しめました。