市川憂人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
パラレルワールドの1980年代を舞台に、現実とは異なる発展を遂げた科学技術で誕生した小型飛行船「ジェリーフィッシュ」を惨劇の現場としたクローズド・サークル。犯人の独白、当時のジェリーフィッシュ内の物語、捜査する警察側の視点、3つの視点から描かれた、アガサ・クリスティの「そして誰もいなくなった」への挑戦作。
最初の殺人が起こった後のジェリーフィッシュ内の会話から、何となく犯人は分かったけれど、果たして全員死んだのか、それとも犯人だけ生き残ったのか分からず、さらにトリックも分からなかった。
中盤でなんとなくトリックが明示され、エピローグ直前で犯人は確定するけれど、犯人の動機が分からなかった。
エピ -
Posted by ブクログ
まるで地震を体現したかのような小説。
序盤から小さな違和感が何度も積み重なる。写実的なのに、時代背景や風景の描写は乏しく、どこか不安定。度々唐突に現れる粗さが前震のように揺さぶる。そして終盤、本震が訪れるかのように積み上げられた違和感が全く別の意味を帯びる瞬間は衝撃的だった。映像化は不可能なように思えた。
登場人物の内面はあまり深掘りされず、犯人の動機すら表層を掬うように描かれる。それは他者に視線を向ける余裕のない世界を映す意図的な表現のように思えた。
そこに死者さえ「数」として情報や記録に残され、現実にいつ訪れてもおかしくないディストピアを感じた。けれどそんな中でも人は誰しも誰かの記憶