【感想・ネタバレ】もつれ星は最果ての夢を見るのレビュー

あらすじ

地球から十光年離れた未開の星で見つけたのは、銃殺遺体――。量子テレポーテーション通信の開発によって、遠く離れた星同士でも通信が可能になった時代。宇宙開発コンペに参加するため、地球から十光年離れた星に降り立ったエンジニアの零司と相棒のAI・ディセンバーは、別の区域にいるはずの競合相手、ピエールが何者かに銃殺されているのを発見する。ほかの参加者に事態打開の協力を求めるも拒絶され、さらにコンペ運営本部との通信も途絶えてしまい、零司とディセンバーは孤立無援に陥るが――。不穏な侵入者、新たな惨劇……宇宙を駆け巡る壮大なSFミステリ!

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Posted by ブクログ

★5 量子論、AI、宇宙… 壮大なSFなのに人が身近に感じられる物語 #もつれ星は最果ての夢を見る

■あらすじ
量子コンピュータやAI開発が進んだ未来、量子テレポーテーション通信によって、宇宙の遠く離れた惑星同士の通信も可能になっていた。

宇宙開発のプログラマーである夜河零司と宇宙船制御AIのディセンバーは、宇宙開発コンペに参加するため、地球から十光年も離れた惑星に近づいていた。夜河が惑星に着陸すると、コンペ参加者のメンバーが、銃殺されているのを発見する…

■きっと読みたくなるレビュー
★5 SF要素特盛ミステリーですね、量子論、AI、宇宙開発をふんだんに盛り込んだ作品です。

ミステリーが2割、SF(しかも結構ハード)が8割って感じですね。SF好きな人、理系な人、AIエンジニアあたりは絶対に読み逃せませんよ!

まず推したいポイントは量子論ですね、例の「シュレーディンガーの猫」ってやつですよ。これを応用した量子テレポーテーション通信ができている前提の物語になっていて、夢の宇宙開発が実現できている。

小難しい理屈もリアリティを増してくれて、わくわくが止まんないですよね。まぁ正直ぜんぶを理解できてはいないですが、市川先生がこの作品を書き切ってやるぞっていう意気込みを感じましたね。

またAIについても興味深いんですよ。最近のSF、ミステリー、その他どんなエンタメ作品でも、AIと会話するってのは良くありますよね。本作でも主人公の夜河をはじめ人間たちは「宇宙船制御AI」なるものと会話をしながら物語も進行していくのですが既存作品とは、念の入れようが違います。

なんつっても、このAIとの会話がすげーおもろいのよ。仲悪いわけでも仲良いわけでもなく、お互いのことがよくわかっている関係性なんです。例えば漫才師の相方とか、社長と秘書とか、長年連れ添った夫婦とか、そんな感じで間柄に深みがあるんですよね~

さらにAIといっても全てが同じではないってのも凝ってる。理屈や説明がしっかりしてるから読み応えがあるし、最近はAIを使うのなんて当たり前の時代になってきたから、ふむふむと興味津々で読んじゃうんですよね。

そしてストーリーの魅力も十二分にあります。銃殺された死体を発見、その後新しいキャラクターが登場しつつ、事件が複雑化していきます。そして中盤あたりから危機感がさらに10倍くらいになるってのもエグイ。

もちろんミステリーとしても唸りましたね~、犯人、動機…というか価値観なのか。他にも大技やSF的なアプローチの驚きもしっかりある。そしてロジックの精度を高さが凄いし、そもそもやろうとしているころが好き。

もともと市川先生は理系ミステリー寄りだよねって思ってましたが、まさしく真骨頂ですね。本格ミステリー作家がSF領域で本領発揮するとこうなるという良い例ですね、力作でした。

■ぜっさん推しポイント
大抵はこういった幻想的なSF作品は、未来や別世界の話と感じることが多い。しかし本作はやたら身近に感じるんです… やはり量子コンピュータやAIってのが、私たちの手の届く範囲に近づきつつあるんでしょうね。

特に近年、AIの発展はめざましく、将来的に人間の仕事が減ってしまうとも言われてますよね~。本作を読んでるとそんな恐怖に苛まれるんですが、同時に共存していく楽しさ、希望みたいなのも感じられました。

0
2025年11月29日

Posted by ブクログ

スケールが壮大な分、上下巻くらいのボリュームで読みたかったかも。
ただそれは量子もつれとかの話題が「三体」と被るから、つい三体レベルのスケール感を意識してしまっていたからな気もする。
でも三体は割とダラダラしてるイメージ(登場人物の過去を掘り下げる割には大して回収されないし、メインストーリーにそこまで関係ない)があったので、本作くらいサクサク進むテンポ感が心地よい。
宇宙とか量子もつれとか、内容はゴリゴリのSFだけど、本筋はあくまでミステリー小説として殺人事件の謎に焦点があたり話が進むので、とても読みやすかった。
私は市川憂人先生が作るキャラクターが好きだけど、今作もディセンバーと零司のコンビが、マリアと蓮っぽさもあって楽しかった。

スケールが大きいし、キャラクターも立っているのでシリーズ物になりそうでもある。

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2025年11月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

もつれ星は最果ての夢を見る
市川憂人の長編ミステリー。宇宙とA Iをテーマにした壮大な作品。話の数10%は理解出来ない(笑)くらい専門用語が飛び交う作品だが、その一方で最後まで飽きる事なく読み進める事が出来た。単純にミステリーというだけではなく、ストーリーも独特で面白い。筆者は過去にも独創的な作品を発表しているが、今作では時間も空間も超えた、相談な物語が描かれている。
ネタバレになるかもしれないが、今作の犯人やトリックを受け入れる事が出来るかどうでこれからの僕の読者としての懐が決まる。当然、認めない事も素晴らしいし、認めたのなら更に多くの作品を許容出来る様になるだろう。(今作も"F''を超える衝撃ではなかったなぁ)

過去の宇宙で起きた殺人事件を土台に据えながら、宇宙開発が進む近未来で「開発競争」に参加した零司。彼の宇宙船に搭載されているのはどこか皮肉めいた高性能AIのディセンバー。後々明かされていくがディセンバーは「強いAI」と言われ、自我を持ち、嘘をつく事が出来き、あまつさえ人間を傷つける事も出来てしまう高性能AI。他のAIでは実現不可能な事もディセンバーなら容易く実行出来る。

こういった作品の場合、作中のルール設定と空気感がとても重要だが、今作はいずれも見事で破綻も殆どしていない。最後には零司とディセンバーの絆に心打たれる展開になる。
とある真実が打ち明けられて以降、作中でも触れられているが食事の問題や身体維持の問題等多少の疑問は残るが作品自体が宇宙の様に壮大で、ちっぽけな問題、些細な疑問は消し飛ぶ程の迫力がある。

時間の概念も飛び越えている為、かなり話が難しい。もう少し理解出来る頭脳が欲しい(笑)きっと理解が深くなれば更に楽しむ事が出来ただろう。

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2025年11月10日

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