市川憂人のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
スケールが壮大な分、上下巻くらいのボリュームで読みたかったかも。
ただそれは量子もつれとかの話題が「三体」と被るから、つい三体レベルのスケール感を意識してしまっていたからな気もする。
でも三体は割とダラダラしてるイメージ(登場人物の過去を掘り下げる割には大して回収されないし、メインストーリーにそこまで関係ない)があったので、本作くらいサクサク進むテンポ感が心地よい。
宇宙とか量子もつれとか、内容はゴリゴリのSFだけど、本筋はあくまでミステリー小説として殺人事件の謎に焦点があたり話が進むので、とても読みやすかった。
私は市川憂人先生が作るキャラクターが好きだけど、今作もディセンバーと零司のコンビが、マリアと蓮っぽさもあって楽しかった。
スケールが大きいし、キャラクターも立っているのでシリーズ物になりそうでもある。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ1作目を読んでからかなり期間を開けちゃったけれど、面白かった!やっぱりマリアと漣の凸凹コンビ大好きだ〜
前作で良い味の出てたジョン少佐が準レギュラーキャラ?みたいな登場をしてくれてこれも嬉しい。次も出るのかな。
お庭がないから育てられないけど定期的にブーケを買う程度にはお花が好きなので、バラの花の色についてだいぶ噛み砕いてくれた化学面での解説があってすごくわかりやすかったし興味深かった。
物みたいに扱われて散々な日々を送っていたエリックが、ようやっと掴みかけた平穏という希望を挫かれたのも悲しいし、自分のせいでめちゃくちゃになってしまった彼の絶望たるや……。
誰も責めてくれないのが逆につらいんだろうな。
でも一緒に生き残ったアイリスからすれば、彼は唯一生きている"家族"でもあり、責められないよなぁ……。
前作ではレベッカという一人の女性に狂わされた人が発端だったけど、今作はブルーローズという未知に狂わされたのが発端かあ。もしくは富/権威(手柄)に狂わされたともいえるけど、どちらにせよ自分のことしか考えられなくなった人間の欲って醜い…………。
テニエル博士を完全に男性だと思っていたので見事に騙された。
この二人はこうするしかなかったのだろうか、アイリーンというひとり娘と再会できたところで残された時間を復讐から交流にシフトチェンジする未来はなかったのだろうかと考えてしまって切ない。
でも、ずっと今でも苛み続ける悪夢から開放されるために、憎い犯人をただでは終わらせないために、ずっと準備してきたしアイリーンが現れた時点で引き返せるところにはもうなかったのかもしれない……。
美しい花には棘がある。それを体現した呆気ない幕引きで、アイリスとエリックの復讐としてはこれで限りなく完璧に完成したのだろうな。
遺されたアイリーンが「私の知りたいことは何も書かれていなかった」と『幸せに』で締めくくられた遺言を読んで泣くのがつらい。
遺言書の内容から限りなくそうであるとわかるけれど、結局アイリスは最期までアイリーンに明言することなく幕を下ろしたんだなあ。
同じくアイリスに"遺された"側の人間であるエリックと今後何らかの交流があればいいけど、アイリーンへ血縁を明かさなかったアイリスの意思を汲んでエリックが自分もそうであることは明かさない気もする。
切ない話だった。 -
Posted by ブクログ
マリア&漣シリーズ第3弾。
前作を読んでから1年以上積読してしまった(汗)
本作も相変わらずの理系要素が満載。今回はガラス工学の分野が随所に登場する。光の透過率や反射率など、なかなかマニアックw
物語はマリアと漣の『タワー』パートと、ガラス製造会社の関係者による『グラスバード』パートが交互に進行。
タワーパートでは、高層ビルで発生した爆弾テロに巻き込まれる緊迫感溢れる展開。ハリウッド映画さながらのスリルに圧倒されたし、手に汗握るシーンの連続でめっちゃ惹き込まれた!
一方グラスバードパートでは、クローズドサークルでの不可解な連続殺人が発生。一人また一人と犠牲者が…。スリリングでミステリアスな状況にハラハラドキドキ。
こんな展開が同時に並行して味わえるなんて。贅沢な作品。
そして終盤の解決編では、この二つの事象が過去の因果によって結びつく。伏線回収もお見事だった。
個人的に、動機とか落とし所にちょっと??と疑問に思うところがあったけど総じて楽しめた。
マリアと漣の独特のバディ感も好印象で、所々でクスッと笑わせてくれる。
このでこぼこコンビの掛け合いに目が離せない。 -
Posted by ブクログ
まるで地震を体現したかのような小説。
序盤から小さな違和感が何度も積み重なる。写実的なのに、時代背景や風景の描写は乏しく、どこか不安定。度々唐突に現れる粗さが前震のように揺さぶる。そして終盤、本震が訪れるかのように積み上げられた違和感が全く別の意味を帯びる瞬間は衝撃的だった。映像化は不可能なように思えた。
登場人物の内面はあまり深掘りされず、犯人の動機すら表層を掬うように描かれる。それは他者に視線を向ける余裕のない世界を映す意図的な表現のように思えた。
そこに死者さえ「数」として情報や記録に残され、現実にいつ訪れてもおかしくないディストピアを感じた。けれどそんな中でも人は誰しも誰かの記憶に残りたいと願うのだろう。どれだけ管理社会へと移行し、すべてが数値化され情報や記録のひとつとして残されるようになったとしても、人の存在を証明するものは結局、人の記憶や繋がりの中にあるのは変わらないのかもしれない。
その普遍は脆く、危うさも孕むけれど希望でもある。