あらすじ
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年は、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は博士の助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、ジェリーフィッシュ事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出したという、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することになる。ところが両者と面談したのち、施錠されバラの蔓が壁と窓を覆った密室状態の温室の中で、切断された首が見つかり……。『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第2弾!/解説=福井健太
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Posted by ブクログ
シリーズ2作目。
今作は青いバラをテーマにした作品。
捜査パートと当事者パートが交互に進む展開は前作同様にめちゃくちゃ面白かった。
このシリーズ大好きです。
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「ジェリーフィッシュは凍らない」からの二作目
マリアと漣の掛け合いが相変わらず楽しい。
物語は
・エリック視点のストーリー
・マリア&漣の捜査パート
が交錯しながら描かれていく。
中盤あたりで(日記の登場)違和感は感じるものの二つがどう繋がるのか全然分からず|ω・*)
謎解きは難しくて全然でした。
本格ミステリの進化版みたい
犯行の動機が切ない…
読後の余韻が残る良い物語でした。
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掛け値なしの面白さ!
読後感は良い!
温かな気持ちに包まれる。
5時間で読めたことになる。
一言で言えば、
壮大な〇〇〇ということだろう。
でもこれを言ったら、ネタバレになるし、面白さが半減してしまう。
できれば前情報なしで読んで欲しいなぁ。
全くね、最後の1/3?1/4?まで、全くミスリードさせられまくり。
クローンとかそういう話?とか思ってしまった。
前作より一層切れ味冴え渡る!
そんなトリックだったなぁ。
あぁ面白かった♪
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先ずブルーローズっていう題材がいいよね。
これもどっちかっていうと映像化出来ないんじゃないかな。理系チックなところと世界観が綺麗で好きなんだよなぁ。
あと叙述トリックはほんと飽きない。
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マリア&漣シリーズ2作目
今回のもとても面白かったです。
この世界観が好きです。
ストーリーには切なさを感じましたが、物語に引き込まれてあっという間に読み終わりました。
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1作目を読んでからかなり期間を開けちゃったけれど、面白かった!やっぱりマリアと漣の凸凹コンビ大好きだ〜
前作で良い味の出てたジョン少佐が準レギュラーキャラ?みたいな登場をしてくれてこれも嬉しい。次も出るのかな。
お庭がないから育てられないけど定期的にブーケを買う程度にはお花が好きなので、バラの花の色についてだいぶ噛み砕いてくれた化学面での解説があってすごくわかりやすかったし興味深かった。
物みたいに扱われて散々な日々を送っていたエリックが、ようやっと掴みかけた平穏という希望を挫かれたのも悲しいし、自分のせいでめちゃくちゃになってしまった彼の絶望たるや……。
誰も責めてくれないのが逆につらいんだろうな。
でも一緒に生き残ったアイリスからすれば、彼は唯一生きている"家族"でもあり、責められないよなぁ……。
前作ではレベッカという一人の女性に狂わされた人が発端だったけど、今作はブルーローズという未知に狂わされたのが発端かあ。もしくは富/権威(手柄)に狂わされたともいえるけど、どちらにせよ自分のことしか考えられなくなった人間の欲って醜い…………。
テニエル博士を完全に男性だと思っていたので見事に騙されました。
この二人はこうするしかなかったのだろうか、アイリーンというひとり娘と再会できたところで残された時間を復讐から交流にシフトチェンジする未来はなかったのだろうかと考えてしまって切ない。
でも、ずっと今でも苛み続ける悪夢から開放されるために、憎い犯人をただでは終わらせないために、ずっと準備してきたしアイリーンが現れた時点で引き返せるところにはもうなかったのかもしれない……。
美しい花には棘がある。それを体現した呆気ない幕引きで、アイリスとエリックの復讐としてはこれで限りなく完璧に完成したのだろうな。
遺されたアイリーンが「私の知りたいことは何も書かれていなかった」と『幸せに』で締めくくられた遺言を読んで泣くのがつらい。
遺言書の内容から限りなくそうであるとわかるけれど、結局アイリスは最期までアイリーンに明言することなく幕を下ろしたんだなあ。
同じくアイリスに"遺された"側の人間であるエリックと今後何らかの交流があればいいけど、アイリーンへ血縁を明かさなかったアイリスの意思を汲んでエリックが自分もそうであることは明かさない気もする。
切ない話だった。
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両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、〈ジェリーフィッシュ〉事件後、閑職に回されたマリアと漣は、不可能と言われた青いバラを同時期に作出した、テニエル博士とクリーヴランド牧師を捜査することになる。ところが両者への面談後、バラの蔓が壁と窓を覆い、施錠された密室状態の温室から、切断された首が見つかり……。
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まさに和製アガサクリスティ。(登場人物が外国人だからでは無いです)
緻密なトリックと過去のサブストーリー。
登場人物が覚え辛い(登場人物が外国人だからでは無いです)
ちょいと今回は無理があり過ぎな展開だったようにも感じましたが、、
よく、こんな入り組んだ話を思いつくなという感嘆と細かなシチュエーションに含まれた隠された真実の露呈は1作目のジェリーフィッシュから変わらずに感じられ、アメリカ人ぽく唸りました。(登場人物が外国人だからでは無いです)
Posted by ブクログ
タイトルの意味が最後になってわかりました。
壮大な計画すぎていかにも小説っぽいけど、主人公たちの生い立ちを知るとなぜかもしかしたら世界中のどこかでこんなことが起こっているかもしれないという不思議なリアル感がありました。
前作と同じく、頭文字表記の地名とマリアの短気ぶりに辟易しましたが、それよりもやはりストーリーに引き込まれるので最後の方には気にならなくなりました。
いろんな視点で描かれているので、時間をおいて続きから読むと少し混乱しました。
次作も読んでみたいです。
Posted by ブクログ
面白かった!!
プロトタイプとブルーローズ
2つの事件が交互に描かれていて。
途中で、ん??となり
なんとなく予測しながら
読んだものの、トリックも犯人も
わかりませんでした笑
当たってた部分もあるけど。
重なりそうで重ならない
それが最後にピタッ!!と
重なった時、おぉー!!って。
本読んでて、思わず
【女かいっ!!】って
突っ込んでしまった
そこがわたし的には1番
驚いたところでした笑笑
なんか切なかったけど
前作に引き続き
今回も面白かった(*´ω`*)
Posted by ブクログ
ジェリーフィッシュは凍らないに引き続く「マリア&漣」シリーズ第2段。
普段はだらしないダメダメなマリアなのに事件になるとキレッキレの推理についつい引き込まれる。そんな上司とペアの日本人漣のクールな感じがまた惹かれる。
今回もまさかの展開に驚き、切なく悲しい人生に心が押し潰されそうになるけど、
家族愛や信頼ということを深く考えさせられる話でした。
Posted by ブクログ
マリア&漣シリーズの第2弾。
理系ミステリーらしく最初は難解な記号なども出てきた。
この世界では存在しないとされていた青いバラを同時期に実現させた博士と牧師を起点に物語が進んでいく。
最初読み進めると話しの内容になんだか違和感がありそのトリックに翻弄されつつ
後半になるにつれてどんどんとその違和感が紐解かれていく。
読後感は少し切ない。
マリア&漣シリーズの続編も読みたいと思った。
Posted by ブクログ
シリーズ第二弾
マリアと漣のテンポの良い掛け合いが楽しい。そして、空軍少佐のジョンも相変わらずいい味出してます。
「エリックの視点」と「マリアと漣の捜査」パートが交互に展開し謎を深めていく。
関係者の犯行に至る事情に、他に方法はなかったのか、仕方のないことなのかと思ったが、犯人の最後に関係者の思いを感じて、少し切なくなった。
青薔薇誕生の難しさとともに「天界」と「深海」の美しさが印象的でした。
Posted by ブクログ
面白かった!解決編読みながら泣きそうになり、前回よりも犯行の動機にしっかり理由があって、切ないけどすごく良かった。子供は可哀想だけど。
ただ、トリックに関しては複雑すぎて、マリアはなぜあの瞬間にあの複雑なトリックに気付いたのか分からなかった。
所々に挟まれるジェリーフィッシュ。
そして本作でも完全に騙された。読者だけが騙されていた叙述トリック。
名前の通り私は青い花が好きなので、一面に咲く天界にお目にかかりたい。
Posted by ブクログ
マリア&漣シリーズの第2弾。実現不可能と言われた青いバラをめぐる殺人。マリアと蓮の会話は前作ほどの面白さはないがシリアスな話にもユーモアが入っていて良い。のめり込んでしまうストーリー。良かった。
Posted by ブクログ
ジェリーフィッシュ同様、倒叙的な描写で館の事件をミスリードさせるのは面白い
事件とは直接は関係ないが、青薔薇の科学はかなり丁寧に書かれていて純粋に◯
犯人に関して印象が少なくて少しだけ肩透かし感
Posted by ブクログ
シリーズ前作よりも謎の難易度が上がって楽しめた。著者のミスリードを誘う文章にはまってしまった悔しさと面白さがあった。このシリーズの世界観がとても良い。途中で出てくる化学式は正直わからなくなったが、青いバラができる仕組みについては何となく理解することができた。
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父と母を殺した犯人を炙り出す為に偽装殺人をし、犯人を特定して青いバラで最後トドメを刺すのが良かった。場所入れ替えトリックも騙されました
Posted by ブクログ
幻の青い薔薇をめぐる殺人事件。
「マリア&漣の時間」と「エリック&アイリスの時間」が、いつどこで繋がり事件の真相が見えてくるのか……焼け跡に残った日記は……
シリーズ第2弾。切なさで読み終えました。
Posted by ブクログ
ブルーローズは眠らない
市川 憂人
衝撃の名作『ジェリーフィッシュは凍らない』に続くシリーズ第二弾!
両親の虐待に耐えかね逃亡した少年エリックは、遺伝子研究を行うテニエル博士の一家に保護される。彼は助手として暮らし始めるが、屋敷内に潜む「実験体七十二号」の不気味な影に怯えていた。一方、〈ジェリーフィッシュ〉事件後、閑職に回されたマリアと漣は、刑事ドミニクから依頼を受け、幻の青いバラを同時期に開発した、テニエル博士とクリーヴランド牧師の調査を開始する。しかし両者への面談直後、温室内で切断されたテニエル博士の首が発見される。バラの蔓が扉と窓を全て覆い、密室状態の温室には縛られた生存者と「実験体七十二号がお前を見ている」という血文字が残されていた・・・・
物語は発見された日記から事件当時者達に起こった出来事を読み解くパートと事件を捜査するマリアと漣のパートが途中少年エリックの心情を描いたインタールドを挟みながら交互に描かれています。読み進めて行くと事件当時者達の体験と捜査している内容に食い違いが多く、頭が混乱します。事件当時者達は実験体七十二号に襲われ一家惨殺、しかし実際の捜査内容はその家族のバラ園で起きた密室殺人事件!日記に出てくるエリックや実験体七十二号が事件捜査上には全く上がってこなかったり。どちらかが間違っているのか?全く別の事件なのか?混乱する事間違いなし・・
しかしながら当然心配する事勿れ、2つの事実は最後に上手く結びつきます。相変わらずの市川節炸裂の本作、ジェリーフィッシュは眠らないでも発揮された、映画を彷彿とさせる感動のエンディングはさすがの一言。しかしながら肝心の密室殺人のトリックはと言えば少し物足りない感じ・・バラ園は窓、ドア全てがバラの蔓でおおわれており、外部から侵入したら蔓が切れてしまい侵入した痕跡は残ります。しかし全ての窓、ドアには鍵がかかっており、蔓で覆われたそれらは外部から侵入した痕跡なし・・・なかなか面白そうな密室ですがトリックは蓋を開ければ今一つと言った感想、恐らくメインは前述した叙述トリックの方だと思うので、密室トリックに拘らなければ十分良作と言えるでしょう。切ない親子愛にも感動します。
青薔薇は自然界に存在せず、自然界の薔薇に使える青い色素も存在しない事から、研究開発しても長年青バラが作られることがありませんでした。その為青バラの花言葉は「不可能」!しかし人類は長い研究努力の末、青いバラを作る事に成功し、そこから研究者への尊敬と敬意を込めて、花言葉は「夢かなう」「神の祝福」と変更されました。同時期に青バラを完成させた博士と牧師、「不可能」の花言葉を覆した彼らに訪れたのは「神の祝福」か「地獄の裁き」かその深淵の底にある僅かばかりの彼らの切なくも儚い「夢は叶うのか」結末は本書を読むことでしか体験できません!!
Posted by ブクログ
青いバラを作った博士が殺される殺人事件を解決する話。
2つの視点で、交互に進んでいく。2つの視点がどのように繋がっているのか、考えながら読んだ。
マリアと蓮のかけあいがよかった。
Posted by ブクログ
感想
登録前
続編。
今度も【現実ではありえない密室】
ルールを破らないでファンタジー要素を盛り込んだ密室トリック。
でもどちらかと言うと密室トリックより【誰が】に重点を置いたミステリ。
【誰が】犯人なのか。
Posted by ブクログ
マリア&蓮シリーズ二作目
前作よりもちょい難しめ推理要素の感じ
緊迫感があるのは前作と変わらず
叙述トリックにやられた
理系要素がふんだんなのでそういった物語が好きな人はおすすめ
Posted by ブクログ
【感想】
一言でいうと「優等生」。よくできた本格ミステリである。プロトタイプと称される章と、ブルーローズと称される章が交互に描かれる。プロトタイプの章の主人公はエリックという少年。虐待を受けて育った少年は両親を殺害し、逃走。その逃走の最中、テニエル一家と出会う。テニエル一家は、青いバラを作り出したテニエル博士とその妻ケイト、そして娘のアイリスの三人家族。地下には「実験体72号」という謎の存在がいる。エリック少年はつかの間の幸福を得るが、エリックを追い、警察官がテニエル一家に来る。これが引き金となり、テニエル一家で殺人事件が起きる。
ブルーローズの章では、ロビン・クリーヴランドという牧師と、フランキー・テニエル教授が、それぞれ青いバラを作り出す。マリア・ソールズベリーと九条漣は、「ジェリーフィッシュは凍らない」で出会ったドミニク・バロウズから捜査の依頼を受ける。ドミニクは、上司であるジャスパー・ゲイルと折り合いが悪い。
事件は3つ起こる。1つ目はフランキー・テニエル博士の殺人事件。2つ目は、フランキー・テニエル教授とロビン・クリーヴランド牧師の2人を訪れて日本から来た槙野茜という研究者の殺人事件。そして3つ目は、ロビン・クリーヴランド牧師の殺人未遂
3つの事件のうち、フランキー・テニエル博士の殺人事件が、まさに本格ミステリという謎だらけの事件である。出入口の扉、窓、天窓とも全て内側から施錠されていた密室の温室で、フランキー・テニエル博士の首と、アイリーンという学生が閉じ込められている。アイリーンは明らかに第三者の手で拘束されており、犯行は不可能。窓の隙間等に系統を通せば外から施錠できそうではあるが、バラの蔦がそれを阻止する状況。そして室内には、「実験体72号がお前を見ている」という謎の文字が内側から描かれている。まさに本格といった密室殺人である。
槙野茜殺しはいたってシンプル。泊まっているホテルの部屋のお風呂の中で絞殺されていた。槙野茜を殺害できるのは、彼女の宿泊先を知っていて、彼女と争うことなく部屋に入ることができ、かつ、彼女が「天界」という青いバラのサンプルを持っていることを知っている人物である。
最後のロビン・クリーヴランドの殺人未遂はもっとシンプル。自殺に見せかけてクリーヴランドの右手に銃を持たせたが、クリーヴランドは左利きだった。これが決め手となる。
全ての事件の犯人が同一ではないタイプの事件である。まず、フランキー・テニエル博士殺人事件は、既に余命1年足らずだったフランキー・テニエル博士による偽装他殺事件。実行犯はロビン・クリーヴランドだったが、フランキー・テニエル博士が全面的に協力していた。トリックの肝は、死体を移動させる方法によるアリバイトリック。犯行現場がテニエル博士の温室だと、ロビンにはアリバイがあり、犯行は不可能。しかし、ロビンの温室であれば可能。犯行現場をテニエル博士の温室だと誤診させるというトリック。そのためにアイリーンが温室に入れられ、目撃者とされた。テニエル博士の首が切られていたのは、車で死体を運んだ際の死斑を隠すため。そして、このトリックの最大の仕掛けが夜には色が変わるという眠る青バラを使ったトリックだった。青いバラ、タイトルにもなっているブルーローズがアリバイトリックに使われているのが心憎い。他にも、プロトタイプの章が29年前の事件であることや、フランキー・テニエル博士(女性)を男性と誤信させる叙述トリックも駆使されている。テニエル博士とロビンの偽装他殺は、29年前にテニエル博士=アイリスの両親を殺害した警察官をおびき出すため。その警察官が、モブと思われていたジャスパー・ゲイルだった。そう、モブキャラと思わせていたジャスパー・ゲイルが、29年前の事件の犯人で、槙野茜殺人とロビン・クリーヴランド殺人未遂の犯人だった。意外な犯人ではある。プロローグから登場しているし、自分も昔は実績を重ねるために必死だったという伏線もある。そもそも、性別誤信の叙述トリックも、時世を誤信させる叙述トリックも、この意外な犯人から目を逸らさせるためのものとも考えられる。上手いと感じさせる作品だ。
もっとも、槙野茜とロビン・クリーヴランドの事件は、ミスディレクションとなるような人物がいないのが残念。29年前の事件の真相と絡めても、残念ながら消去法でジャスパーしか残らない。意外な犯人なのは間違いないのだが、驚愕というより、やっぱりという程度になってしまったのは減点材料か。
感想としては、ソツがない、よくできた本格ミステリだと思う。探偵役のマリアと九条蓮も、十分なキャラクターである。脇を固めるドミニクもいい味を出している。無駄に登場人物が多いわけでもなく、読みやすいミステリである。
ただ、その分突き抜けた魅力がない。よく出来たミステリだし、突き抜けたものを求めるのはどうかと思うのだが、あと一歩、突き抜けたものがあれば本当の傑作になり得ると思う。
〇 メモ
【トリック】
〇 眠る青いバラを利用したアリバイトリック。殺害現場を誤らせ、アリバイを作った。
〇 胴体を切断したのは、車で死体を運んだために発生する死斑を隠すためだった(首の切断の意図)。
○ 胴体を埋めた場所に青いバラを置いたのは、早く死体を発見させて死亡推定時刻を絞り込ませ、アリバイを完全なものにするため。
○ 密室のトリックは長い時間を掛けて隙間ができる形でバラを育成するというもの。
○ 「実験体72号がお前を見ている」という文字はジャスパーをおびき出すために書いた罠
○ 槙野茜殺しとロビン殺人未遂は、ジャスパーが犯人だと絞り込ませるための消去法として使われる。
〇 プロローグ
謎の独白の後に、ジャスパー・ゲイルとドミニク・バロウズという2人の刑事による焼け跡の捜査が描かれる。この捜査で、日記のような遺留品が見つかり…
〇 第1章 プロトタイプ(Ⅰ)
家を飛び出した少年が、テニエル一家に救われる。
〇 第2章 ブルーローズ(Ⅰ)
ジェリーフィッシュ事件で下手を打って、今は冷や飯を食わされているというマリア・ソールズベリーと九条漣が、旧知のドミニク・バロウズの依頼を受け、青バラ騒動の一人、フランキー・テニエル教授に探りを入れに行く。マリアと蓮がテニエル教授のもとに行くと、そこにはU国空軍少佐、ジョン・ニッセンがいた。
〇 第3章 プロトタイプ(Ⅱ)
フランキー一家に拾われた少年はエリックという名前をもらい、テニエル一家で過ごす。エリック少年が過ごす幸福な日々が描かれる。
〇 第4章 ブルーローズ(Ⅱ)
フランキー・テニエル博士への訪問を済ませた後、マリアと蓮は、ドミニクの依頼を受け、もう一人の青いバラを作り出したというロビン・クリーヴランド医師に会う。この章の最後で、フランキー・テニエル博士が殺害されたという報告を受ける。
〇 第5章 プロトタイプ(Ⅲ)
エリックがテニエル家の一員となってから1か月半が過ぎる。テニエル家に警察官がやってきて、エリックが両親を殺害して逃走していたことを告げる。二人目の来訪者、クリーヴランドという牧師が訪れる。エリックは地下室で謎の生き物を見る。
〇 インタールード
誰かの独白。「あの人の本当の気持ちを私は知らない。」
〇 第6章 ブルーローズ(Ⅲ)
テニエル博士は青バラ「深海」を育てている温室の中で、首だけが発見される。その温室には、アイリーンという学生が倒れていた。出入口には「実験体72号がお前を見ている」という殴り書きがある。ドミニクとジャスパーがやってくる。ドミニクはマリアにある書類を見せる。
〇 第7章 プロトタイプ(Ⅳ)
エリックは怪物=実験体72号を見たショックで鍵を掛け忘れる。実験体72号がいなくなり、警察官が焼かれて死亡する。テニエル一家はエリックを逃がそうとするが土砂崩れで失敗。温室でテニエル博士が死亡する。
〇 第8章 ブルーローズ(Ⅳ)
マリアは、ドミニクから渡された謎の日記を見る。1年半前にあった火災の現場で見つかったものだった。マリアによるテニエル博士殺人事件の捜査。ロビン・クリーヴランドの尋問、テニエル博士とクリーヴランドのもとを訪れていた槙野茜という日本人女性の尋問。アイリーンへの尋問。マリアはアイリーンからテニエル博士の研究について聴く。翌日、槙野茜が宿泊先のホテルで遺体となって発見される。
〇 第9章 プロトタイプ(Ⅴ)
テニエル博士に続いて、博士の妻であるケイトも死ぬ。エリックはアイリスを連れて逃走
〇 第10章 ブルーローズ(Ⅴ)
槙野茜殺人事件の捜査。マリアと蓮、そしてジョンによるテニエル博士殺人事件の推理。ロビン・クリーヴランド牧師が襲撃される。これは自作・自演なのか。土砂崩れ現場から遺体が発見される。そのうち一人は長い白髪女性。手記に書かれていたことは事実なのか。テニエル博士が腫瘍だらけで、あと1年も持たない体であったことが分かる。
〇 第11章 ブルーローズ(Ⅵ)
謎解き。テニエル博士殺しの真相は、殺害現場がテニエル博士の別宅ではなく、クリーヴランド牧師の温室だったというもの。クリーヴランドにはアリバイがあったが、殺害現場がクリーヴランド牧師の温室であれば、アリバイはなくなる。アイリーンがテニエル博士の死体を見たのは、クリーヴランド牧師の温室だったのだ。このアリバイトリックの最大の仕掛けは天界という青いバラ。このバラは、光が弱まるとpHが減少し、アントシアンが青から別の色に転化する。クリーヴランド牧師の青いバラ、「天界」は光の強弱により色が変わる青バラ、いってみれば眠る青バラだったのだ。
胴体を切って埋めたのは、車で死体を運んだために発生する死斑を隠すため。
青いバラ「深海」を胴を埋めた場所に置いていたのは、マリアの推理どおり、死体を速やかに発見させ、死亡推定時刻を絞り込ませるため。アリバイトリックのためである。
テニエル博士の温室からの脱出は、人を通れる程度の空間を設けて蔦を栽培していた。隙間ができるように一から育てるという時間を掛けたトリック
テニエル博士の温室にあった血だまりは、テニエル博士の血を事前に注射で吸い取り、散布した。テニエル博士の腕に注射痕があったことは、伏線として示されていた。
そもそも、この事件は、病に侵され、余命1年というテニエル博士の協力のもとに成り立っていた事件だった。クリーヴランド牧師は飽くまで実行役。テニエル博士の事件は、博士自身が企てた偽装他殺のようなものだった。
クリーヴランド牧師が育てていた「天界」はプロトタイプのものだった。テニエル博士から譲り受け、クリーヴランド牧師が育てていたと思われる。クリーヴランド牧師が育てていた天界はプロトタイプ。さらに天界の完成形があり、その発展型として、より青みを深めた品種、深海が誕生した。
クリーヴランド牧師は、エリックだった。ドミニクが発見した日記は、日付が約30年ごまかされていた。1954年のものだった。日記の最後に、アイリスが新しい日記を付け加えたのだ。フランキー・テニエル博士がアイリスだったのだ(性別誤信の叙述トリック)。
29年前、アイリスの父母を殺害したのは、エリックを追っていた警官だったのだ。そして、その警官がジャスパー。エリックとアイリスは、ジャスパーをおびき出すために、この青バラ騒動と偽装殺人を計画したのだ。エリックが怪物だと思っていたのは、アイリスの祖父。アイリスの祖父はある種の皮膚病に侵されており、認知症を発症していた。エリックが怪物だと思っていたこの祖父が警官に殺害され、燃やされていたのだ。そして警官は、エリックとアイリスの父母を殺害した。
アイリスとエリックは生き残り、クリーヴランド牧師の教会を訪れた。クリーヴランド牧師の弟がいて、アイリスとエリックはフランキーとロビンという名を与えられ、育てられる。
アイリスとエリックは分かれて育てられる。そして、再会。アイリスは、1954年当時、屋敷を含む地域を管轄する警察署に在籍していた、20歳代前半の長身の警官。素行はあまり良いとはいえない。そのような人物をあぶりだし、復讐しようとした。そして、ヤツの正体を突き止める。ジャスパー・ゲイル
アイリスとエリックの計画は、自分たちを青バラの関係者に仕立て上げること。容易にもみ消されることのない重大事件の当事者になること、そして、即座に逮捕されないこと。これを成立させるために行われたのが、テニエル博士―アイリスの偽装他殺だった。
アイリーンは、アイリスとエリックの娘だった。ジャスパーは病気に弱い青いバラを枯らし、一攫千金を逃した。槙野茜を殺害したのはジャスパーだった。エリックの殺人未遂もジャスパーの仕業。
ジャスパーは、深海を掴んで、その毒で死亡した。
エピローグはアイリーンへの、アイリス=テニエル博士の遺言。アイリーンの涙で終わる。
Posted by ブクログ
マリア&連シリーズの二作目ということもあって期待度は高めでしたが期待を裏切らない作品でした。
今作も科学の要素が強めで、青いバラの生成に成功した二人の男性の調査から始まる物語。
単純な怨恨殺人かと思わせつつ、巧妙な殺人トリックとそれに至る経緯の緊迫感と恐怖を交えた展開に脱帽しました。
読んでいて背筋が冷たくなるような寒気を感じる展開も面白かったです。
読む手が止まらない感覚は久しぶりでした。
Posted by ブクログ
シリーズ第二弾は密室もの。
前作がとても斬新だっただけに期待が大きかったのですが、自分としてはトリックは良かったものの全体的に文章が何となく読みにくく、作品世界にのめり込むことが出来なかった。
Posted by ブクログ
科学用語多めのミステリー
その科学技術が謎に迫る鍵となるのは面白い構成。クローズドサークル的な設定も◎!
何より、マリアと漣のコンビが私は好き。
Posted by ブクログ
マリア&漣シリーズ第2弾。
前作のジェリーフィッシュ同様、理系要素がまぁまぁ登場する。今回は特に遺伝子工学の分野。序盤に青バラ誕生のくだりで、この辺の説明がワンサカ出てくるが、当然門外漢なのでなかなか理解が及ばず…物語の展開にも波に乗れず…という感じだったけど、中盤のマリア,漣視点とエリック視点の違和感や、アイリスの日記の内容が出た辺りから面白くなって一気読み!
それにしても犯行に至る背景を知ると切なすぎる。
何とか平和な人生を送る方に舵を切れなかったかなぁ…と考えてしまう。
本来送れたであろう幸せな家族の日常を思うと、やっぱり切ない。