あらすじ
辻堂ゆめ氏 絶賛!
「私はこの作品に、《本格ミステリの向こうにある何か》を見出していた」
波多野千真の前に現れたのは、亡き恋人と瓜二つの顔と声で、同じ名前《夕海》を名乗る少女。
記憶がないという彼女を保護した千真だが、仕事で立ち寄った家で、不可解な事件に巻き込まれる。
それは密室殺人。
しかも被害者は恩師の亡き妻とそっくりな女性で……。
自分は一体、何に巻き込まれているのか? 世界が反転するミステリ。
〈解説〉辻堂ゆめ
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
面白かったです!一気読みしました。
隣にずっと謎がいる感じ。最初こそ、何が関係あるんだろ?と思うことが多かったのですが、読み進めていくうちに前半にあった何気ないことがどんどん深みを帯びて重たくのしかかってくる感じが凄かったです。
ラスト、どっちが本当かわからない感じに終わるのではなく、ひとつの確固たる答えを出してるところが私は好感持てました。
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亡き恋人と瓜二つの顔と声の少女、遭遇した不可解な密室殺人事件の被害者もある人物と瓜二つという謎が謎を呼ぶ本格ミステリーで、どこか冷めた部分がある主人公が少女との邂逅で変化していく描写が印象的で、一方で読み手を翻弄するかのようなトリックに度肝を抜かれた。
Posted by ブクログ
何を説明してもネタバレに繋がる重要な事実を開示してしまいそうで、何を言っていいか不安になってしまう作品があります。本書もまさにそんな作品のひとつ。だからこの作品に関しては特に、これ以降の私の拙い感想などは読まずに、本書を読んで欲しい、と思っています。
倒れている少女がいた。行き先も分からないらしい少女は一年前にこの世を去った恋人と瓜二つで、名前も同じ『夕海』だった。こんな偶然が本当にあるのだろうか。
隙間に非日常が入り込んできたようなどこか不安定に進んでいく物語はやがて、その不安定さがなければ成り立たなかった物語に変わっていきます。伏せられていた事実が明らかになった時、思わず「すごい!」と唸ってしまう、強烈な感動が待っています。ラストで明らかになる『彼女』の起こした行動については賛否別れるところかもしれませんが、私は切ない余韻に目頭が熱くなってしまいました。
Posted by ブクログ
こんな形の叙述トリックがあるとは…。
改めて読者に勝手に想像で補わせるのが上手いと思った。
20年後、30年後の読者には何を言ってるのかわからないかもしれない。
作中でも言及されていた通り将来あの出来事がどのように人々の記憶に残っているかで変わるのだろう。
内容的にはミステリというよりラブストーリーかな?と思ったが、色々現実離れした狂った感じは本格ミステリらしさもあり、結構気に入った。
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まるで地震を体現したかのような小説。
序盤から小さな違和感が何度も積み重なる。写実的なのに、時代背景や風景の描写は乏しく、どこか不安定。度々唐突に現れる粗さが前震のように揺さぶる。そして終盤、本震が訪れるかのように積み上げられた違和感が全く別の意味を帯びる瞬間は衝撃的だった。映像化は不可能なように思えた。
登場人物の内面はあまり深掘りされず、犯人の動機すら表層を掬うように描かれる。それは他者に視線を向ける余裕のない世界を映す意図的な表現のように思えた。
そこに死者さえ「数」として情報や記録に残され、現実にいつ訪れてもおかしくないディストピアを感じた。けれどそんな中でも人は誰しも誰かの記憶に残りたいと願うのだろう。どれだけ管理社会へと移行し、すべてが数値化され情報や記録のひとつとして残されるようになったとしても、人の存在を証明するものは結局、人の記憶や繋がりの中にあるのは変わらないのかもしれない。
その普遍は脆く、危うさも孕むけれど希望でもある。
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本格ミステリ×少しの不思議×愛
この3つを感じる作品でした。
冒頭から感じる違和感が、物語が進むにつれ増えていく。「こういうものなのか…?」と思いながら読み進めて、ひとつずつ違和感が増えていく。
なんとまぁそういうことだったのか!
昨今の自分の経験が、この物語に至ってはフィルターになっていた。それはもう分厚い瓶底のメガネくらいに。
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死んだはずの恋人が現れた
これはファンタジーなのか…
殺人事件が起こる
実はミステリーなのか…
そうこうするうち
災害のドキュメンタリーっぽくなってきた
いつか起こると言われている大災害
本当にこんな事になってしまうかもしれない
怖いなと思いながら読んでいくと
ラブストーリーだった
Posted by ブクログ
装画の美しさに惹かれて手に取った一冊。
平野美穂さんによる油彩が、すでに物語の余韻となります。
魅力的なプロローグで、ミステリアスで淡くロマンティックな世界に引き込む世界観。
そこから、どうもわかりにくさを感じる——叙情性の叙述。
もしや、あのトリックなのだろうか? 今回は流されずに読もうと、慎重に。
市川さんは、きっと頭の良い方なのだと思う。
それぞれの記憶を辿るように、時間が少しずつ遡っていく。
そして、あそこまで大きな仕掛けを用意しているとは思わなかった。
灰をかぶっていたのは夕海だけではなく、
物語そのものが灰をかぶる不安と静けさの中でラストになる。
一方で、女性たちの会話には独特の作為を感じる。どこか芝居がかっていて、本心とは思えないような。
けれどそれもまた、真実を見せないための“灰”の一部なのかな。
この物語が覆い隠していたのは、悲しみでも嘘でもなく、救いを求める偽装だったのかもしれない。
Posted by ブクログ
亡くなったはずの人物が生きていてなど、謎の多い作品で面白かったです。途中話がこんがらがってしまったのと、結末がある程度予測できたのが少し残念でした