あらすじ
辻堂ゆめ氏 絶賛!
「私はこの作品に、《本格ミステリの向こうにある何か》を見出していた」
波多野千真の前に現れたのは、亡き恋人と瓜二つの顔と声で、同じ名前《夕海》を名乗る少女。
記憶がないという彼女を保護した千真だが、仕事で立ち寄った家で、不可解な事件に巻き込まれる。
それは密室殺人。
しかも被害者は恩師の亡き妻とそっくりな女性で……。
自分は一体、何に巻き込まれているのか? 世界が反転するミステリ。
〈解説〉辻堂ゆめ
感情タグBEST3
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Posted by ブクログ
こんな形の叙述トリックがあるとは…。
改めて読者に勝手に想像で補わせるのが上手いと思った。
20年後、30年後の読者には何を言ってるのかわからないかもしれない。
作中でも言及されていた通り将来あの出来事がどのように人々の記憶に残っているかで変わるのだろう。
内容的にはミステリというよりラブストーリーかな?と思ったが、色々現実離れした狂った感じは本格ミステリらしさもあり、結構気に入った。
Posted by ブクログ
装画の美しさに惹かれて手に取った一冊。
平野美穂さんによる油彩が、すでに物語の余韻となります。
魅力的なプロローグで、ミステリアスで淡くロマンティックな世界に引き込む世界観。
そこから、どうもわかりにくさを感じる——叙情性の叙述。
もしや、あのトリックなのだろうか? 今回は流されずに読もうと、慎重に。
市川さんは、きっと頭の良い方なのだと思う。
それぞれの記憶を辿るように、時間が少しずつ遡っていく。
そして、あそこまで大きな仕掛けを用意しているとは思わなかった。
灰をかぶっていたのは夕海だけではなく、
物語そのものが灰をかぶる不安と静けさの中でラストになる。
一方で、女性たちの会話には独特の作為を感じる。どこか芝居がかっていて、本心とは思えないような。
けれどそれもまた、真実を見せないための“灰”の一部なのかな。
この物語が覆い隠していたのは、悲しみでも嘘でもなく、救いを求める偽装だったのかもしれない。