稲垣栄洋のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「言葉には力があります。」と“はじめに”の冒頭に書かれている「人々は、物言わぬ植物から多くを学んできました。そして、それを「言葉」として残してきたのです。」と。
俳人や著名人、歌詞や物語の言葉と植物の自然にしっかりと根ざし、直向きに生きる強さに涙と勇気がもらえる。挫折しそうな時、人生の節目の時、弱く頭を垂れる時…、植物は何が本当に大切なことなのかを知り順応し生きるという。
一つ一つの言葉が、植物の知恵が私の心に迫る。一人ひとりが唯一無二のものであることを、植物それぞれが精一杯生きるその姿を通して私たちに示してくれている。
そこに目を向ける者でありたい。
-
Posted by ブクログ
農作物が文明を支えたのはある程度一般常識だが、それ以外にも様々な植物が歴史に紐づけられていて非常に面白い。古代オリエントはコムギ・オオムギ、インダス文明はイネ、黄河文明はダイズ・ムギ、長江文明はイネ、アステカ・マヤはトウモロコシ、インカはジャガイモ。生産量トップ5は当然入ってくる(トウモロコシ、コムギ、イネ、ジャガイモ、トマト)、三大穀物がいずれもイネ科なのは必然のようだ。 自然が豊かな地では農業は発展せず、逆に環境が厳しいところでこそ手間暇かけて農業をやる背景になる点が印象的。アフリカ東部で出現した人類が大地溝帯によって森林から草原での生活に代わり、それがどのような淘汰圧を作用させたのか気に
-
- カート
-
試し読み
-
Posted by ブクログ
「雑草魂」
雑草のように、踏まれても、厳しい環境にあっても立ち上がる、不屈の精神を指す。
ところが、雑草の研究者である著者によると、
雑草は、踏まれたら、すぐには立ち上がらず、
種を温存して、時期が来てから立ち上がる。
雑草の種類によって、種のつけ方が違うように、
種の多様性は、居場所の多様性。
「人間も生き物だから、できるだけ多様性を保って、ばらつこうとする。」
様々な学生の性格に寄り添って、暖かい指導で、
ザッソウケンがとても楽しそう。
フリースクールの子供達のように、
学校に居場所がなくても、違う場所で立派に立ち上がっていく力を秘めている。
雑草=邪魔な草、
邪魔になるかは人によっ -
Posted by ブクログ
ユーモアもあって、とっても面白い。
これから大学に入る高校生とかにもおすすめしたい。
よく、雑草は踏まれても踏まれても立ち上がるというけれど、実は、そうでもなくて、雑草は、倒れたまま、一番重要なことのためにエネルギーを取っておくらしい。
雑草は、種子のまま環境が整うまで待っていて、無理して芽を出さない。
なんか、涙が出そうになった。
他の章も面白くて、雑草と、それを研究する学生とのやりとりが面白い。ああ、研究って、雑草って面白そうだな、そう思わされた。
身近な雑草が、今までとは違って感じられる。早速、裏庭の雑草を抜きに行きたくなる。
最後の方に、「まだまだ書き足りないことがあるけれど、そ -
- カート
-
試し読み
Posted by ブクログ
1540
稲垣栄洋(いながき・ひでひろ)
1968年、静岡県生まれ。1993年、岡山大学大学院農学研究科(当時)修了。農学博士。専攻は雑草生態学。1993年農林水産省入省。1995年静岡県入庁、農林技術研究所などを経て、2013年より静岡大学大学院教授。研究分野は農業生態学、雑草科学。農業研究に携わるかたわら、雑草や昆虫など身近な生き物に関する著述や講演を行っている。著書に『弱者の戦略』(新潮社)、『身近な雑草の愉快な生きかた』(筑摩書房)、『面白くて眠れなくなる植物学』(PHP研究所)、『雑草手帳』(東京書籍)など。
ガラパゴスはもともと、スペイン語でゾウガメを意味する言葉である。 スペ -
Posted by ブクログ
動物は体内にビタミンCを創り出す仕組みがあるのだが、サル類は果物を食べるようになって、ビタミンCを創り出す仕組みを失ったそうだ。あらあら、そんなわけで人間は野菜や果物を食べないとだめなんだねえ。
ジャガイモは茎や葉まで食べていて毒があったので、悪魔の植物と呼ばれていたそうだ。
トマトはその鮮やかな赤から観賞用だった。
ナスはもとは高級食材だった。ナスニンはガン予防になる。
カリフラワーはケールから進化したもので、花が咲かないようになった。アルビノで白い。
トウモロコシは種が落ちないように品種改良された。世界で一番栽培されている植物。
サトイモのヌルヌルはガラクタンで、免疫力を高める。
大根足と -
Posted by ブクログ
ネタバレとて読みやすい。著者は農学部の教授である。文章の表現から筆者がきっと学生にとって優しい先生なのではないかと感じさせられる(激しい思い込みかもしれないですね、すいません)。難解な漢語も言い回しもせず、ゼミで話をしているかのような文体なので、自分のゼミを懐かしく思い出してしまった。個性というものが自然と現れる人になろう!と思わせてくれるそんな本だ。個性とは?、ふつうとは?、区別とは?、多様性とは?といったなんとなく分かった気になっている言葉だけど、これらをあらためて深く考えさせてくれる。ぜひ就職活動をしている学生さんにお勧めしたい。大学のゼミの後輩の方々にもオススメである。
この本を読むきっかけ -
Posted by ブクログ
植物がいかにして自然界での生存競争に生き残ってきたか。その戦略を分析している。動物や昆虫の力をしたたかに利用して進化してきた様は実に見事だ。
植物の進化は同時に動物や昆虫の進化でもある。どちらが先かわからないが、相手からの補食を防ぎ、あるいはその防御を突破し、お互いの利点を利用し合うことで自然界でのバランスが絶妙に取れた結果、生命が成り立っていることがわかる。
あとがきがまた面白かった。かつて地球は二酸化炭素で充満し、そのため植物が大発展。結果酸素という「毒性物質」を大量に地球上に放出することで動物が過ごせる環境を作り上げてしまった。人類は二酸化炭素を排出し、植物が過ごしやすい環境を急速に -
Posted by ブクログ
タイトルだけ見るとナマケモノについての専門書と思うが、実際は29種類の生物昆虫雑草の不思議な生態とその進化発達の理由を解説している。一生物につき3-6pほどの解説。一つの解説が細かすぎるわけでないので、サクサク読める。逆に細かく知りたいと期待する人には物足りない、一般書れべるだろう。
一つ一つの生物の紹介、導入文と、結文が素晴らしい。
例えば
ナメクジは嫌われている。かわいいイラストやマスコットになることはほとんどない。それどころか、見つかると塩をかけられるのが、ナメクジの宿命だ。ナメクジは、何とつまらない生き物なのだろう。
神さまはどうして、こんなつまらない生き物をお創りになったのだろう。