あらすじ
ナメクジ、ダンゴムシ、モヤシ、イモムシ、雑草……。いつも脇役の、「つまらない」生き物たち。しかしそのつまらなさの裏に、冴え渡る生存戦略があった! ふしぎでかけがえのない、個性と進化の話。
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Posted by ブクログ
生き物の紹介パートは壮大な前振りで、最後に読者である若い人がそのままのあなたでいい理由に収束される。
人類には「つまらない」部分もたんとあることが描かれた上での「そのままでいいんだよ」が深く響く。この本を10代で読める人がうらやましい。
Posted by ブクログ
とても良かった。
プリマー新書でも子どもが読むにはハードルが高いものもあが、本書は中学生ならだれでも読めるし、漢字が読めれば小学校高学年でも読めるだろう。多くの子どもたちに向けて書かれているのがとてもよい。
前半は子ども向けベストセラーシリーズの「すごい動物」本を気に入って読んでいる子なら楽しく読み進められる。
動物に限らず昆虫や植物の例にも多数触れ、最終的に個性と多様性の肯定に結びつく。冷蔵庫と料理の例は子どもにもわかりやすく秀逸。
各トピックが短くすぐ読み終わるので、朝読書にもいいだろう。子どもたちに、ぜひ最後まで読んでほしい。
Posted by ブクログ
今のままでいいのかと悩んでいたり、どうしても周囲と比較して落ち込んでしまう人が目の前にいたら、よければどうぞと勧めたい本。もしかしたら霧が晴れるかもしれない。純粋に生物の個性という知的好奇心を満たすもよし。生きとし生けるものに価値があることを、単なる精神論ではなく、生物の進化とその合理性をもって主張している。必要性があるからこその退化と進化。必要か否かわからないからこその多様化。個人的には良書。
Posted by ブクログ
タイトルだけ見るとナマケモノについての専門書と思うが、実際は29種類の生物昆虫雑草の不思議な生態とその進化発達の理由を解説している。一生物につき3-6pほどの解説。一つの解説が細かすぎるわけでないので、サクサク読める。逆に細かく知りたいと期待する人には物足りない、一般書れべるだろう。
一つ一つの生物の紹介、導入文と、結文が素晴らしい。
例えば
ナメクジは嫌われている。かわいいイラストやマスコットになることはほとんどない。それどころか、見つかると塩をかけられるのが、ナメクジの宿命だ。ナメクジは、何とつまらない生き物なのだろう。
神さまはどうして、こんなつまらない生き物をお創りになったのだろう。
(中略)
だからね、殻のあるカタツムリも殻のないナメクジも、そのままでいいんだよ。
というように、解説する生物ヘビ、アホウドリ、ブタなどに対するイメージを上手に切り取るとともに「神様はどうしてこんな生き物をお創りになったのだろう」「だから、そのままでいいんだよ」という導入と結文が定型になっており「昔々あるところに…」「そして、幸せに暮らしました(了)」というような絵本の決まり文句のようで、新たな話が始まること、気持ちよく話が終わることがワクワクして楽しかった。
きっと子どもに読み聞かせても楽しんで聞いてもらえそうだ。
そして終わりの章では意外や、最後に人間について取り上げている。他の生物と違って、特別何かに秀でているわけではない。足の速さなど個人差が大きい。
一般に生物は自分の強みを活かせるエリアを見つけて生存していくが、人間はどうしたら良いか、哲学的な問いのある章で結んでいる。
子どもが10歳くらいになったら読み聞かせてみたい。
Posted by ブクログ
「あなたはあなたのままでいい」
いろんな生物がいる。
嫌われている生物もいる。
それぞれ優れていること、たすけになることがある。
それぞれのよさがあり、
それぞれの存在がかけがえがない、ということ。
次々と紹介される生物の、知らなかった側面を知ることができました。楽しく読めてあたたかな気持ちになれる一冊でした。
Posted by ブクログ
ナマケモノには、ミユビナマケモノ科とフタユビナマケモノ科があります。連休ともなり、日頃よりもイツツユビナマケモノ科の度合いが増しているわたしには、本書のタイトルは魅力的でした。はい、ナマケの正当化を求めていました。
わたしの期待を大幅に上回り、本書は、いろいろな動物(のみならず植物までも)の存在の正当性を説いてくれていました。つまり、人間から変な生き物だとか、つまらない生き物だとか思われていても、それぞれの生き物には生存戦略があり、それが個性や進化となってあらわれているというのです。
著者である農学博士の稲垣栄洋(いながき ひでひろ)先生は、この中高校生向きのちくまプリマ―新書において、とても身近な例をあげてそれぞれの生き物の存在価値を説明してくれています。
例えば、霊長目ロリス科のスローロリス(ノロマザル)は、動作が遅いのですが、その「のろさ」が武器になると言い、例として、かつて横浜ベイスターズの三浦大輔投手(現在の横浜DeNAベイスターズの監督)が、オールスターゲームで、打者の大谷翔平さんをスピード計測ができないほどの超スローボールで打ち取ったことを取りあげて説明します。(最近、わたし、野球ネタ多いな。。。w)
そして、それぞれの生き物の説明の最後を「だからね、そのままでいいんだよ。」という言葉で締めくくります。
最終章の第6章では、話はヒトにおよび、ヒトは、この世でひとつしかないような遺伝子の組み合わせの確率で生まれてきたことを説明します。
そして、たとえ勉強が苦手でもスポーツが苦手でも、あなたにはあなたの価値があるから、「あなたは、あなたのままでいいんだよ。」と、稲垣先生がおそらく本書で一番言いたかったであろう言葉を、サラッと、しかし、おそらく万感の思いを込めて言い放って、本書を締めくくります。
自我が芽生え、ともすれば他者との比較のなかで劣等感にさいなまれることもある思春期の子どもたちに読んで欲しいと思います。
そして、大人たちは子どもたちに、こう言ってあげようではありませんか。
『ヒトに「個性」があるのも、戦略なんだよ。だからね。。。。』、と。
たとえ起立性調節障害でも、たとえ場面緘黙でも、たとえ摂食障害でも、たとえ不登校でも。。。。。。♡愛してるよ
<目次>
はじめに
第1章 「みっともない」生き物
ナメクジ/ヘビ/アホウドリ/ブタ/ミミズ/イモムシ
第2章 「にぶい」生き物
ダンゴムシ/ナマケモノ/スローロリス/カメ/キーウィ/モヤシ/サツマイモ
第3章 「ぱっとしない」生き物
カモノハシ/ペンギン/カバ/タヌキ/ケラ/アリ/クズ
第4章 「こまった」生き物
コウモリ/ハゲワシ/ブチハイエナ/オオカミ/ミイデラゴミムシ/糞虫/イエバエ/ゴキブリ/雑草
第5章 やっぱり、そのままでいいんだよ
イルカは早く走れない/イルカの生き方に学ぶこと/足の遅いチーターはいない/個性というやっかいなもの/オナモミの個性/自然界に答えはない/タンポポの花は黄色い/いらない個性はない/さらにヒトは助け合う
第6章 あなたもそのままでいいんだよ
サルとヒトの境目/人間の大好物/そして、人はそろえたがる/遺伝子には逆らえない/それでも努力は無駄ではない/自分の遺伝子との付き合い方/あなただけの遺伝子/あなたがあなたである確率/この世に一つしかないもの
おわりに
Posted by ブクログ
表題にあるナマケモノだけでなく、「みっともない」「にぶい」「ぱっとしない」「こまった」ものとして一般的には考えられている生き物を取り上げて、それぞれの特徴や生存戦略を簡潔にまとめている。
学生向けのためか言葉遣いはとても易しいのだが、書かれている内容は意外に細かい。例えば、ナマケモノはエネルギー消費が最小限に抑えられているためウシの1/1000のエサ量でよく、無理に体温を維持することもない。10000年ほど前に存在したメガテリウムという巨大なナマケモノの仲間は活発に行動し、体を維持するために多くのエサを摂取していたがやがて滅んでしまった。故に、現在のナマケモノの姿が最適解なのだ、という具合に。一つ一つの事例がわかりやすく、サクサク読み進めることができた。
特に印象に残った生き物は、ハゲワシだった。イマイチピンと来なかった生き物だったが、死肉を食らうべく、その胃酸がpH1以下という情報に俄然興味がでてきた。ぜひ実物を見てみたい(ハゲてるかどうかも確認したい)
Posted by ブクログ
人から嫌われたり笑われたりする生き物たち。そんな生き物も進化の過程でそうなって、ゆえに今も生き続けているということを教えてくれる。そして、進化は、他の生き物と競合しない生活環境に適応するように進み、だから今のままでいいんだという優しい結論に達する。興味深く、面白く、そしてほっこりする一冊。
Posted by ブクログ
標題のナマケモノをはじめ、人間からすると不思議な生き物や迷惑な生き物の進化の過程を概説する。カタツムリの進化の先にナメクジが位置付けられるってことを、初めて知った。もちろん双方にメリットがあり、棲み分けの理由が存在する。すべての生命に存在理由があることが分かる良書だ。
小学生でも分かる書きっぷりもいいねぇ。