吉川浩満のレビュー一覧

  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    吉川浩満著「理不尽な進化——遺伝子と運のあいだ」を読んだ。本書は進化論の本来の意義や面白さを改めて確認し、その上に進化論が含む矛盾とすら思える理不尽さ、そして一筋縄ではいかない生命、あるいは種の原理について冷静に指摘している。進化論の解説としてはもちろん、思想史、さらには哲学書としての役割すら果たす出来である。俺は進化論というある種中空的で、いかなる問題も巧みに包含してしまう学説について、とても不思議に、あるいは奇妙にすら思っていた。進化論の汎用性を理解したのは新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の際、即製のワクチンを危険だと忌み嫌い、その間にも感染症を発症し倒れていく過激派たちを目撃した時

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    2024年11月27日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    ネタバレ

    説明と理解、方法と真理、サイエンスとアートの両面および狭間から進化論を論じた本。進化論についての概要や議論はもちろん、社会での進化論の扱いやダーウィニズムの哲学思想への影響まで、多くの視点をもらえる本だった。

    適応主義は、副次的な効果に過ぎない機能を目的に最適化された結果だとこじつけてなぜなぜ物語を作り出してしまいがちである。この線形的で短絡的な判断は、現在存在しているものが最適化されていて最善の状態だと結論づけてしまう。これは社会に現存する不条理から目を背ける思想たりうる。
    グールドは以上の考えから、自然淘汰による適応のみではなくその最適化を妨げる制約にも目を向ける多元主義的なアプローチを

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    2024年10月30日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    これを読んだあとは、日常に蔓延する進化論的コピーが気になってしまう。

    社会でも、会社でも、個人でも、強いから/能力があるから生き残っていると思い込むのは間違った認識。実力勝負は確かに存在するが、実力勝負にいたる舞台の設定は運でしかない。たしかに。

    適者生存というスローガンが指すのは、生存したものが結果的に環境に適応したに過ぎないということだけ。いま生き残っているのが優れていることを証明するわけではない。誤解して使い過ぎている。
    言葉のお守り的用法、周りにたくさんありそう。

    好きな言葉、
    現実はもっと理不尽寄り。

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    2023年04月04日
  • 自由に生きるための知性とはなにか

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    自由に生きるための知性
     これはいってしまえば=教養なのかなと思った

    第一部が特に心に残った
    教養を学ぶ意義
    教養と社会の関係について整理できた

     いま、教養が大事だと改めていわれている理由
     →教養から専門知に傾いて
      専門家と一般人のコミュニケーション
      が上手くいかず、さらには
      非対称な垂直な関係になり
      専門家と一般人の間の信頼が崩れた
     →終身雇用制度が崩壊しており
      学び続ける力が必要になってきている
       =エンプロイアビリティ

     一方で、教養・リベラルアーツとは、
     それがある人とない人を隔てる垣根であり
     いま社会から求められている教養との間に
     ジレンマが

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    2023年03月26日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    科学史としての進化論も本書の視点で扱いつつ、でも進化論自体の本ではなく、進化論と非科学者である私たちの「進化論の理解」との関係を、進化論自体の本質的な面白さと絡めて語り尽くす。圧倒的に面白い。もともと進化論自体にそこまでの興味があった訳ではなかったはずなのに読む程にぐいぐいと引き込まれて進化論がいかに現代人の価値観に染みついて便利に使っているのか、しかもそれでいて実はそれは進化論自体ではないのでは、と。アート&サイエンスってビジネス書の流行りワードの一つみたいに使われること多いけど本来こうあるべきなのではと強く感じる楽しい読書でした

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    2022年12月04日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    くどい文章ではあるが面白い視点をたくさん提供してくれる。なるほど絶滅に視点を置くとそうなるか、お守りとしての進化論、そして説明と理解の議論。経営学の世界でも進化論的な物言いを目にするし、現在の経営学は実証主義の説明の世界が主流ながらそれでいいのかという疑問があった。その解答を得たわけではないがさまざまなヒントはあったかな。一読して理解できたわけではないからもう一度読んでみようと思う。

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    2022年09月18日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    ウィトゲンシュタインの壁。
    生の問題(不条理性)から逃げないこと。

    自分を棚に上げて科学を礼賛しないこと。

    不条理にこそ価値がある。

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    2021年09月10日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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     文庫本オビの名だたる評者のコメントに魅せられて手に取ってしまった一冊。  

     本書は科学としての進化論について論ずるものではないし、一般読者にも理解できるよう丁寧に論述されているが、内容を一言で説明することは難しいので、気になったところを、以下書き留めておく。

     「私たちは進化論が大好きである」(序論)との印象的な一文から本書は始まる。そもそも進化論は、生物の世界を説明する科学理論である。と同時にそれは、"新たなビジネス環境への適応"、"進化する天才"、"○○のDNAが流れている"といったワードを日々目にするように、物の見方やイ

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    2021年07月05日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    「理不尽」という言葉がこんなにも進化論(ネオダーウィズム)を表現するのにピタッと合致するとは思わなかった。
    ドーキンスとグールドの論争、そして実社会で言葉のお守りとして俗用(悪用⁉︎)される進化論について丁寧に解説されており、仕事も含めて今後の人生にプラスになる書籍であり、おすすめできる。
    ただし、本書はサイエンス書ではなく哲学書であり、内容もボリュームがあるので、読破には時間を要した。
    しばらく経ってから再読し、しっかり自分のものとしたいと思える一冊だった。

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    2021年07月01日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    <あとがき>
    私は自分で掘った穴を自分で埋めるようなやり方で本を書く。 はじめに躓きがある。原因を探るために地面を掘り返すが、掘り返したところで見つかるわけではない。躓いたのは地表においてなのだから。 今度は掘り返した土を埋め戻すことになる。 新たな目標は、もはや躓く余地がないほど地面を平坦にすることだ。その埋め戻し分が書き物になる。
    当然ながら埋め戻す土は掘り返した土と同量なわけだから、地面の上になにかが積み上げられることはない。つまり誰の糧になるわけでもない、自分の納得のためにだけ本を書いている。

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    2021年06月29日
  • 孤独のレッスン(インターナショナル新書)

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    ネタバレ

    人それぞれの孤独

    17名の著者による孤独論。
    特に興味を惹かれたもの↓

    中条省平(フランス文学者)/孤独と追放――アルベール・カミュ最後の10年
    『異邦人』『ペスト』の作家という程度でしかカミュを知らなかったので…作家にここまでの重圧というのは現代では存在しないのではないかな

    奥本大三郎(フランス文学者)/永井荷風――独身者の悦びと不安
    気ままな一人暮らしが印象的でした。

    新元良一(作家)/ソロー『森の生活』が語りかける声
    この孤独、場所だけなら我が家の近所でも実践できそう。僻地じゃなかったんですね。

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    2025年04月29日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    面白かった。アートとサイエンスの識別不能さという切り口は、自分がもやもや考えていたことをスッキリ説明してくれた。
    少し長いですが、安易にとばしよみせずに前から順に読むことをオススメします。終章の部分が一番の読みどころです。

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    2025年02月08日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    認知バイアスが進化論という広範な影響力をもつ議論にどう影響してきたかをよく示している。少々書きぶりが冗長と感じるが、重要な点が分かりやすい。

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    2024年07月29日
  • 孤独のレッスン(インターナショナル新書)

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    感想
    どれだけの才を持ち合わせても、どれだけの美貌を手に入れても。孤独は人間に付きまとう。耐えるという態度を捨てた楽しむという付き合い方。

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    2023年04月26日
  • 私たちはAIを信頼できるか

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    GPT3についても言及されている(多分この本が出た時はまだネットニュースとかに掲載されていなかったと思う)。ゲームでは味方のAIにユーザーは厳しいとか各界からの意見が面白い。
    インタビュー中も様々な本が出てくるが巻末でも要約した感じでお勧め本が紹介されているのはありがたい。
    人工知能におけるフレーム問題は中田敦彦のYouTube動画でも取り上げられていたが正式に初出が分かったのが良かった。

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    2023年03月28日
  • 私たちはAIを信頼できるか

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    あとがきにあるとおり、「信頼」という概念を軸として、「AIを作る」「AIを使う」「AIと生きる」という観点からAIと人間社会の未来を考察した本。根本に立ち返った議論が多く、AIの何が問題なのか、頭の整理ができる。また、36冊の読書ガイドがついており、さらに学びたいときの道しるべにもなってくれる。中でもユヴァル・ノア・ハラリは必読となっている。

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    2023年01月21日
  • 私たちはAIを信頼できるか

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    専門分野も立場も異なる方々が、それぞれの観点でAIについて考える。
    AIについて考えることは人間について考えることであり、人類の未来について考えることでもある。
    かなり易しく書かれているので、AI・神・人間・信頼といった単語にビビッと来た方は読んでもらいたい。

    巻末におすすめの本が紹介されており、読みたい本がさらに増えてしまった。

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    2023年01月10日
  • 自由に生きるための知性とはなにか

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    感想
    自由を獲得するための努力。自由とは上から与えられるものではなく、自ら勝ち取るもの。現代社会では知性を磨くことが自由を勝ち取るための戦い。

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    2022年11月24日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    はじめて進化論がらみの本を読んだのがグールドの『ワンダフル・ライフ』だったと思う。20年以上まえ、グールドが亡くなる少し前のこと、たまたま本屋で平積みになっていたのを手に取った。読んでみていたく感心して、ほんの数冊だが他の著作も読んだ。その後、グールドが非主流派というかキワモノ的な立ち位置でドーキンスらとのあいだに論争があることを知り、ドーキンスも『利己的な遺伝子』は読んだがグールドとの違いは何もわからず、なにか引っかかるようなものを抱えながらも今日まで特に不都合もなく生きてきた。

    この本のおかげですっきりしました。進化論にとっては重要な論争かもしれないが、あまりにも概念的で素人的には「まあ

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    2022年01月15日
  • 理不尽な進化 増補新版 ――遺伝子と運のあいだ

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    進化論から始めて歴史と自己への認識に至るまでを深く広く熱く語られている。熱量が高すぎるが故に読むのに骨が折れるのも事実。特に一番長い終章は人文学的な専門用語、言い回しが多く、読み続けるのに難儀した。註の参考書籍紹介のコメントが何気に面白い。

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    2021年05月04日