吉川浩満のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
吉川浩満著「理不尽な進化——遺伝子と運のあいだ」を読んだ。本書は進化論の本来の意義や面白さを改めて確認し、その上に進化論が含む矛盾とすら思える理不尽さ、そして一筋縄ではいかない生命、あるいは種の原理について冷静に指摘している。進化論の解説としてはもちろん、思想史、さらには哲学書としての役割すら果たす出来である。俺は進化論というある種中空的で、いかなる問題も巧みに包含してしまう学説について、とても不思議に、あるいは奇妙にすら思っていた。進化論の汎用性を理解したのは新型コロナウイルス感染症のワクチン接種の際、即製のワクチンを危険だと忌み嫌い、その間にも感染症を発症し倒れていく過激派たちを目撃した時
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Posted by ブクログ
ネタバレ説明と理解、方法と真理、サイエンスとアートの両面および狭間から進化論を論じた本。進化論についての概要や議論はもちろん、社会での進化論の扱いやダーウィニズムの哲学思想への影響まで、多くの視点をもらえる本だった。
適応主義は、副次的な効果に過ぎない機能を目的に最適化された結果だとこじつけてなぜなぜ物語を作り出してしまいがちである。この線形的で短絡的な判断は、現在存在しているものが最適化されていて最善の状態だと結論づけてしまう。これは社会に現存する不条理から目を背ける思想たりうる。
グールドは以上の考えから、自然淘汰による適応のみではなくその最適化を妨げる制約にも目を向ける多元主義的なアプローチを -
Posted by ブクログ
自由に生きるための知性
これはいってしまえば=教養なのかなと思った
第一部が特に心に残った
教養を学ぶ意義
教養と社会の関係について整理できた
いま、教養が大事だと改めていわれている理由
→教養から専門知に傾いて
専門家と一般人のコミュニケーション
が上手くいかず、さらには
非対称な垂直な関係になり
専門家と一般人の間の信頼が崩れた
→終身雇用制度が崩壊しており
学び続ける力が必要になってきている
=エンプロイアビリティ
一方で、教養・リベラルアーツとは、
それがある人とない人を隔てる垣根であり
いま社会から求められている教養との間に
ジレンマが -
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Posted by ブクログ
はじめて進化論がらみの本を読んだのがグールドの『ワンダフル・ライフ』だったと思う。20年以上まえ、グールドが亡くなる少し前のこと、たまたま本屋で平積みになっていたのを手に取った。読んでみていたく感心して、ほんの数冊だが他の著作も読んだ。その後、グールドが非主流派というかキワモノ的な立ち位置でドーキンスらとのあいだに論争があることを知り、ドーキンスも『利己的な遺伝子』は読んだがグールドとの違いは何もわからず、なにか引っかかるようなものを抱えながらも今日まで特に不都合もなく生きてきた。
この本のおかげですっきりしました。進化論にとっては重要な論争かもしれないが、あまりにも概念的で素人的には「まあ