ネット記事やSNSの書き込みが関係者に与える影響を描いた社会派ミステリー #その血は瞳に映らない
■あらすじ
アパートに住む母娘、鈴原咲玖良と優璃。彼女たちはある日、同じアパートに住む男に襲われ、母が殺害されてしまった。犯人の動機は死刑になりたかっただけという…
Webニュース記者の千弦は、犯人の供述にを疑問に思い、被害者の優璃に取材を申し入れる。母の殺害された経緯や理由が知りたかった優璃は、千弦の自宅に住み込み、一緒に調査や取材をすることになる。果たして事件の背後には何があったのか…
■きっと読みたくなるレビュー
いつもの天祢涼先生らしい、人間性の闇を深く掘り下げる作品ですね。本作は死刑になりたいだけの無差別犯罪、そしてネット記事やSNSの書き込みが、事件関係者にどのような影響を及ぼしてしまうか。先生らしい厳しい視点で粘り強く描かれていくのです。
まずプロットがしっかりしてますね、力作だと思います。Web記者と被害者が事件の真相を追っていくバディものであり、また捜査を進めながら自身の価値観を昇華、成長させていく私立探偵小説でもあるのです。
様々な登場人物から情報を得ることで、次々展開していくプロットはお見事。どうしても取材小説なので画変わりや場面展開が少な目ですが、読者をぐっと惹きつける物語の組み立てはお見事でした。
また本作はキャラクターも魅力的に描かれています。主人公の千弦はこれまでの経験、辛い過去を背負って社会で戦っている。食うためにコタツ記事を書くのではなく、ジャーナリストとして社会に立ち向かっているパワフルな女性なんです。その中でも社会で若い女性に向けられる目、女性蔑視の現実を厳しく描かれています。
一方、被害者の娘である優璃は天真爛漫な女子高生。若いからこその前向きな部分が可愛いのですが、幼稚でもあるんすよね。
二人の会話を見てるとが少しずつ距離感が縮まってくるのがわかるし、後半になってくると今にも壊れそうな優璃を守ろうとする千弦が健気で泣けてくるんすよね…
そして本作の謎解き、誰がどんな悪意をもって、どんな行動したのか? これがなかなか混沌としていて真相が見えないんです。個人的に怪しいのは、この人かなーと思ってたのですが、最終的には違いましたね。たぶん同じ人を怪しんだ人もいっぱいいると思う、うまくミスリードされました。
しかし情報化社会ってのは便利ではあるんですが、もはや現代においては、情報が氾濫してます。嘘、大げさ、紛らわしい、なーんてあたりまで、面白ければ真実なんてどうだっていいんです。
情報化社会は、知恵も経験もあり、良識を持ち合わせた大人が使う分にはいい。しかしデマや嘘を妄信して、自分の意見や価値観を他人に押し付けたりするとタチが悪くなってくる。さらにひどくなると、他人を攻撃したり、力でねじ伏せたりといった行動に出る奴らもいるんすよね。
そうならないためにはどうればよいのか… やっぱり大切な人の近くにいるってことが重要だと思うんすよね。
■ぜっさん推しポイント
天祢涼先生はイヤな奴を書かせるとお上手なんですよね。本作でもいい意味でムカムカ、イライラさせてもらいましたよっ
イチ推しは加害者緑川の両親ですね~、自分本位なセリフが最高に腹立たしい! ぜひ刮目して読んでね。