小学五年生の咲陽は、家の隣のアパートに住む同級生「小代子」を、自宅に匿うことにした。
新型コロナによる影響を受けた子どもたちと、若い女性がラブホテルで遺体で見つかった事件が少しずつ繋がっていく。
新型コロナが広がり始めたころ、ある芸人が「これから若いきれいな女性が風俗に入るから楽しみだ」みたいなこ
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実際のところ、この本に書かれているような女性の貧困について現実にどこまで起こっていることなのかはわからない。
でも、亡くなった夏帆のような生活を不本意に送っている人が一人でも実在するのであれば、やはりそれは笑って語って良いことではなかったのだと思った。
この本の夏帆の話を読むに、あの芸人のあの発言が頭から離れなくて(それまで、すっかり忘れていたのに)。そんなことを思いました。
小代子の父親である虎生は、よくもここまで生きてこられたなぁと思うような人だ。
なんでも娘のせいにして娘に謝らせるって…。
かなり引いたけど、DV加害者ってこういう思考だよね、相手が悪いって心の底から信じてるよね、と思い直した。
虎生みたいな思考の持ち主は、実は少なくないのかもしれない。ゾッとする。
さて、タイトルの「陽だまりにいたる病」とは何か?
最後にチラと「陽だまり」というキーワードが出てきたが、はっきりとは書かれておらず。
小代子が、咲陽から匿われた一週間の間に、小代子の心に少しずつ芽生えたもの。その感情が「陽だまりにいたる病」なのだろうか。
今回は仲田の登場は少なかったものの、仲田が咲陽にかけた言葉がよかった。
確かにその通りで、人の不幸と自分の不幸を比べて我慢をしていると、他の困っている人にも「あなたより不幸な人はいる」という考えになるし、多分その気持ちを伝えてしまう。そんな風に相手を追い詰めるだけのことを言うのだとしたら、結局、虎生と同じだ。
「誰かを助け、誰かに助けられること」これは、このシリーズの大きなテーマの一つだろう。人が孤独に生きるのではなく、誰かに助けられたり、助けたりする世界であってほしい。
仲田の言葉のように、私もそう思いました。