天祢涼のレビュー一覧
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結構重い話でした。
厳しい状況でも努力して勝ち上がっている人もいる、という慰めは努力することのできる状況にあるからいえる言葉だなと。毎日働かない、生活保護を受けるのも拒否する家庭で生活費のために子供が夜に働かざるを得ない状況でどうやって将来のために努力できるんだ?と思いました。
刑事の真壁が捜査をしていく中で、自分が母子家庭で貧乏な中でも努力が実って今がある、という考えだったのに自分はなにもわかっていなかったと容疑者に伝える場面がとても印象的でした。
天祢さんの他の作品を読んだ時も思いましたが、いわゆる「自己責任」という考えは、人によってはあまりに残酷です。 -
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ネタバレ子供の頃から自分の言いたい事を上手く言えない不器用な藤沢彩。仕事で行き詰まっていた時に声を掛けてくれた先輩・田中心葉。徐々に仲良くなっていき、心葉の同量・佐藤千暁とも交流が出来て三人で海にドライブへ行く程の仲になっていた。そんな中、心葉が朝礼で「過去に人を殺した事がある」と言い出して…
彩の不器用だけど一生懸命心葉を信じようとするひたむきな姿に応援したくなりました。
単純に、心を入れ替えて過去は過去って割り切って終わりかと思いきや、怖いと言うのがリアルでした。決して信じていない訳ではないけれど、単純にハッピーエンドっていかない所が何とも言えずビターだけど納得でした。
千暁も実は関係者で、そ -
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まっすぐ問いかけてくるタイトル。
とても深く考えさせられる作品。
十年前に起こったあるひとつの事件、少年犯罪をテーマに、加害者側、被害者遺族側、周りにいる第三者側としての視点で描かれる心理描写が繊細で刺さりまくる。
いっそのこと、全員、過去のことを忘れられることができたら、どんなに楽なことだろう。
だけど、それが難しいからこそ何が正解なのか、何が正しい選択なのか、どんな言葉や表現で表したらいいのか。
わたしたちは感情を持っているからこそ、悩むし、迷う。
読み終えた今でも、まだ不安定な気持ちだけれど、
「誰の味方をするのか」ではなく、「誰を信じるのか」。
自分の中で大事にしたいなぁと思う -
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ネタバレタイトル通り考えさせられる作品。
彩が真摯に人と向き合う姿勢が好もしい。与えられた仕事に誠実である様子も。彩と心葉と千暁の、互いを気に掛ける関係も心地よい。そして、三人の上司である宇佐見部長がこれまたいい人で、いい会社である。
大切な相手だったからこそ、殺人を犯した過去は重い。それだけではない関係がわかってしまったことも辛い。
一般論としては、加害者の更生を認める社会のほうが、生きやすいと思う。
ただ、それを許せないという被害者側の心情は理解できるから、彼らがそう思うのは自由だ。
加害者側は謝ることしかできない。それを受け入れるかどうかは被害者側の自由。
そこに乗っかっていくお騒がせ第三者 -
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ネタバレ藤沢彩はフードバンク事業の会社、オオタニフーズに就職します。
そこには何かと親切にしてくれる同年齢の男性社員、田中心葉や佐藤千暁がいて、彩は二人に相模湖に誘われて車で遊びに行ったりする仲になりました。
彩は心葉に好意を抱いていました。
しかし、10月16日の朝礼で心葉は言いました。
「ぼくは人を殺したことがあります」
なぜ、心葉は自分からそのようなことを言ったのか…?
十年前心葉は中学二年生、コンビニで喫煙を注意され当時は田中参舵亜(サンダー)という名前でした。注意した十九歳の大学生雲竜陽太郎19歳とトラブルになり誤って殴って殺してしまったのでした。
心葉は、まだ13歳だったので少年院に -
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タイトル、そして表紙から強いインパクトを受けて読み始めた。タイトルにあるように、もし、自分の大事な人の過去に殺人という暗い過去があったら、その人との関係を続けることができるだろうか。どんな理由であれ、殺人を犯してしまった人と付き合えるだろうか。また、罪を犯してしまったとして、長い年月をかけ、悔い改め、罪を償うために生きていることを知ったら過去のことを気にせずにいられるか。たくさんのことを考えた。読みごたえのある作品だと思う。
また、一番心に残ったのは、幼少期の劣悪な環境から殺人を犯してしまった登場人物が、少年院で本と出会い、出所後の生活でも知識を得るにつれて、人として成長していく様である。知識 -
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ネタバレタイトル通りの話。どうしますか?どうするもこうするも、どうにもできないだろう。実際、大切な人に殺人の過去があったという事実が起きてみなければ勿論分からないと思うし。
でもそうなってしまったとして、大事なのは「誰の味方になるか」ではなく「誰を信用するか」なのかもしれない。結局、人は自分の信じたいものを信じるしかできないのだから。
兄を殺された立場で加害者と普通に接することのできる千暁が、私にとってはこの物語中、最も気になる人物だった。
母親にも加害者と一緒にいることを責められつつも、加害者を根っからの悪人ではないと信じたい気持ちも持っている。凄く難しい立場だ。
過去のことを全て忘れる能力があれ -
Posted by ブクログ
過去の事件と向き合う若者の苦悩が胸に沁みる… #あなたの大事な人に殺人の過去があったらどうしますか
■あらすじ
子どもの頃から父に圧力をうけ、はっきりしない性格になってしまった主人公の彩。彼女は就職先のフードサービスのNPO法人で働いていた。少しずつ職場になれてきた彩は、同僚とも少しずつ気心が知れる仲になっていく。彼女は心葉に心を惹かれていくのだが、ある日の朝礼で彼がかつて殺人を犯したことを告白するのだった…
■きっと読みたくなるレビュー
生きづらい現代社会を背景に、少年犯罪や若者の葛藤を描くのがお上手な天祢涼先生の新作。まさにタイトルとおりの物語で、本作も胸が引き裂かれるような内容でした