本村凌二のレビュー一覧
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本村凌二先生の本はどの本を読んでもとても面白い。
1冊あたり20ページほどで世界の古典の中から20冊を厳選して紹介。
僕にとってはこういう本は本当にありがたい。あまり書きすぎると原作を読んだときの感動が減ってしまう。これくらいが適度な情報量で、あとは自分の感性に頼り、その本を読むかどうかを決めるだけだ。
印象に残る2冊について書きたい。
まずは一冊目。
この中で唯一日本人作家の島崎藤村『夜明け前』。
この小説は有名ではあるが、残念ながら最後まで読んだ人は多くない、と紹介している。僕もそうだ。本書ではその理由を「暗さ」だとしているが、僕の場合は「長さ」が挫折の理由だ。とにかく長い。
この小説の舞台は木曽路。昔の中山道。中津川(馬籠)を超え塩尻(贄川)までの11宿。距離にして約80キロ。この木曽路沿いに国道19号がある。この道をよく車で走る。『夜明け前』の冒頭、名文「木曽路はすべて山の中にある」で始まる序の章18ページを読んだだけでも、木曽路の風景が見える。空気を感じる。木の香りを感じる。そんな錯覚を覚える。国道19号をは走りながら、木曽路を感じる。そんな贅沢をよくする。藤村が『夜明け前』を書き始めたのは、57歳の時。僕は今、59歳。思わず『夜明け前』を視写したくなる。『夜明け前』を常に手元に置き、思いついたときにパラパラとページをめくる。そんな些細なことに幸せを感じる。
二冊目、イリアス/オデッセイ。
言わずと知れた古代ギリシアで活躍した吟遊詩人のホメロスの作と伝えられる叙事詩。紀元前8世紀の作。って凄くない?この時代、まだ文字はない。当時の吟遊詩人は物語をすべて覚えて暗唱していた。文字として記録されたのはホメロスが活躍した時代の200年後、紀元前6世紀後半。さらに驚くのは、どうも大昔の人間は、神々の声が聞こえていたようだ。ということ。確かに、プリンストン大学心理学教授ジュリアン・ジェインズ『神々の沈黙』を読むと、かつての人類は、神々の声を聴き、その通りに行動していたことがよくわかる。本村凌二先生の近著『神々のささやく世界』「第4章神々の声が聞こえる」にも詳しく書かれている。とても興味深い。
本書の感想というより、僕の書きたいことを書かさせて頂いた。 -
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▼本村凌二さんは「ローマ史の大家」として知っていて、1~2冊読んだことがありました。それらは大変にオモシロかった。先日、「名作映画で読み解く世界史」という本を書店で発見衝動買い。読みやすく興味深く大満足。近年、木村さんはこういう一般向け柔らか世界史本も手掛けてらっしゃるんだなあ、ならそれは読みたいなあ、と。何しろPHPさんですからね。というわけで探したらこれがあったので。
▼講演の速記本みたいな感じです。意識的に専門語やディティールを避けて分かりやすく語られています。個人的にはル・ゴフさんの「子どもたちに語るヨーロッパ史」と同等の分かりやすさと納得さで、大満足。
▼個人的には、「なぜ」を徹底する、「なぜ」を納得する考え方がとても好感。そして、歴史という人間臭い物語は結局、地理と気候と地勢、あとは経済に導かれているという合理的思考。
▼民族大移動もそうですが、「産業革命はなぜ英国でだけ起ったのか?」がオモシロかった。実は、蒸気機関や、商品出荷先の植民地、都市生活者、などなどの条件は他にもあった、と。ではなぜイギリスでだけ?
これ、本村さん曰く、「新たな燃料となる「石炭」がイギリスでたまたま、都心近くで大量に採れたからではないだろうか」。なるほど。
このシリーズ?、まだ数冊あるようなので、ゆっくり楽しみたいです。 -
Posted by ブクログ
▼書店店頭で衝動買いした一冊。本村凌二さんというのは、この本の広告に「東大名誉教授」と大書してあり、それは一寸上品な宣伝ではないのですが、西洋史特にローマがご専攻のはず。一般向けの本を数冊読んだことがあり、語り口が好きだったので。
▼要は「ベン・ハー」とか「グラディエーター」とかから「幕末太陽伝」「カサブランカ」などなど、何かしらか歴史に材を取っている名作映画についての本。
▼章ごとに映画を1本紹介する。その映画の粗筋をなぞりながら、舞台背景の時代状況とか世相とかゴシップとかを語る。言ってみればそれだけの本です。
「カサブランカ」などは制作時からするとほぼ「現代劇」なんですけれども、2024年現在から見れば帝国主義の名残の植民地的な状況とナチス&世界大戦の状況を描いた内容と言えるので。
▼これが大変に面白かったです。まず分かりやすい語り口。
語り手が不遜でも自虐でもない、上品さ。世界史の流れが十分にわかってるが故か、無駄に専門的な事象には落ち込まない。そして狙いが
「というわけで是非この映画を見てくださいね」
という地平線なので、キモのネタばらしをしない。その動機はもちろん
「この映画は面白いんですよ。そして歴史という物語って面白いんですよ。それを知るともっと楽しめますよ」。
▼本業が大学勤務であるような方々の本、というのは星の数ほどあります。出版社の方からすると専門知識の裏付けがあるし、会社勤めしてないからユニークな感受性を保っている人が多いだろうし、一方で宮仕えしてるわけだから困っちゃうほどパンクな人も少ないのだろうし。それに何より、本を出したいでしょうからね。
▼こちらが知りもしない名著名作家も多数いらっしゃるでしょうが、個人的には
・小熊英二さん=専攻多分社会学
・本村凌二さん=専攻多分西洋史学
・鹿島茂さん=専攻多分フランス文学
・野崎歓さん=専攻フランス文学
・池内紀さん(故人)=専攻多分ドイツ文学
・島田裕巳さん=専攻多分宗教学
・内田樹さん=専攻多分フランス文学・哲学
といった方々は複数の一般向けの本、場合によっては専門外のエッセイなども読ませていただいて、語り口に信頼を持っています。 -
古代の価値観から俯瞰する現代
恥ずかしながら本村さんを存じ上げなかったのですが、とても面白い方でした。
著作を見てみると、数々の古代ローマ本の他に、競馬の世界史なんて本もあったりして、とても興味が惹かれます。
今回の対談でも、そんな本村氏と佐藤優氏の対談で、日頃メディアで聴くような現代的価値観から来る言説とは違った方向から切り込む言葉の数々がとても楽しかったです。
個人的には、またこのお二人の対談は見てみたいです。
以下、私が気になった(気に入った)点です。
ー「第1次世界大戦で明らかになった問題(近代的価値観の限界)が解決されずに現代にまた蘇ってきている」という話。最近は、落合陽一さんなんかもよく約100年前にあたる1920年代を再考する機会が増えていると度々仰っています。そういうことなのかなという理解が進みました。
ーかつて「神権」であったものが近代に「人権」になったが、近い将来これがAIに置き換わってしまうかも知れないということが、こういう所でも真面目に話されるようになってきたということに少し驚いています。そして、それが「中世への逆戻り」と表現されているのが面白かった。AIはかつての神に成り代わるのか?
ー「豊かな時代になってからも精神的な気高さみたいなものを維持することに成功した社会は、世界史の中にひとつもない。」と言い切る本村さん。
ー「日本では国会議員の世襲が批判されて「いまは二世や三世が多いからダメなんだ」と言われますけれど、ローマの元老院なんて何世まで続いているかわからないぐらいですよね(笑)」
ー「二分心」の話。「「遠い昔、人間の心は、命令を下す『神』と呼ばれる部分と、それに従う『人間』と呼ばれる部分に二分されていた」というビックリするような仮説」「神々の声が聞こえなくなる過程とアルファベットが普及していく過程が、同じような時期に同じような地域で起きている」
ー「同じ宗教でも、一神教的になったり多神教的になったりする。そういうスペクトラム(連続的な分布)の中で、いまその宗教がどこに位置づけられるのかを見たほうがいいと思います。」「本来は多神教でも、一神教的な要素が高まると通常より攻撃的になるというのはたしかにありますね。」 -
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競馬の歴史といっても、3つの側面があると思います。
1 文化史
2 名馬の戦績
3 種牡馬・繁殖牝馬の血統の連なり
本書では明確に分けているわけではありませんが、前半では文化史を主に追っていきます。
ギリシア・ローマにおける戦車競走に始まり、ダービー・オークスが成立する18世紀までには、競走や賭博の公正さを確保するための努力がありました。
また、同時平行でサラブレッドの改良が進められ、本書の後半は、名馬が好成績を残して、種牡馬となり、その遺伝子が子に受け継がれていく、その歴史を追います。
現役競走馬の5代前よりも更に昔からサラブレッドの血統は続いていて、改良の果てに今のレースがある。そう思うと、戦争や政治よりも一層身近なものとして、歴史を感じることができます。
競馬新聞に書いてある血統の情報はせいぜい2世代くらいのものですが、深掘りすれば全ての競走馬の父系をたどれば三大始祖にたどり着くというのは、人間の歴史にはないロマンがあります。
また、明治維新後の日本は、こうした文化や血統を急速に取り込みました。
その成果が、ちょうど100年前に成立した競馬法であったり、戦後に制度化されたクラシックであったりするわけです。
その制度化されたレースで、数々のドラマが生み出されていきました。
折しも2023年11月4日は、サンタアニタパーク競馬場でブリーダーズカップが開かれ、日本馬も多数出走しました。
こうした海外のレースにも賭けることができる昨今において、各国の競馬場、レース体系、血統についての興味は尽きせぬものがあります。
海外における日本馬の活躍と血統の知識を、本書は更に面白くさせてくれました。 -
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馬の観点から世界史を捉えた作品。著者は競馬好きの古代史研究者。
ユーラシア北方の森林・草原地帯を原住地としたインド=ヨーロッパ語族の諸民族は、同じく草原地帯に住む馬を飼い慣らし戦車を引かせ、やがて周辺地域へ移動するにつれ、馬の家畜化・軍事利用が世界に広まっていったという流れ。
中世以降は弓や火器が戦場を支配し馬の役割は馬車などの運搬に移り、さらにそれも蒸気機関の発明により、今度は娯楽としての競馬へと移っていく。
匈奴やフン族といった遊牧民は文字史料が少ないため世界史における存在感は薄いように見えるが、しかし中国や中東、東欧との交流・侵攻が、それぞれの文化に与えた影響は大きかった。非常に面白く読めた一冊。 -
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本書は通史の要約的な本ではなく、著者なりの「教養を深める歴史の読み方」である。
どちらかと言うと、通史がある程度頭に入っていてもう事実の列挙を学ぶのに飽きた人ほど、面白く感じると思う。
例えば、個人的に読んでいて興味深かった(通史の勉強では触れられずあまり知らなかった)内容をいくつかピックアップすると
・「文明」と「文化」の違いは
・メソポタミアやエジプトでは発達しなかった民主政が、ギリシア文明で発達した背景は
・ローマ帝国衰退の一因にインフラの維持管理問題があった
・アルファベット、一神教、貨幣の誕生に共通の背景があった(かも)
・ゲルマン民族大移動から予測する現在のヨーロッパ難民が引き起こす(かもしれない)問題
・人間にとって「神」とは何か
・太古の人間には「神の声」が聞こえていた
・文明の発達とともに聞こえなくなった「神の声」の代替品とは
・アメンホテプ4世とモーセの繋がりは
・共和政と共和制の違い
・なぜギリシア諸ポリスは閉鎖的で、ローマだけが開放的だったのか
・東洋に共和政・民主政が根付かないのはなぜか
歴史の教科書には書かれていない、歴史の「奥行き」とでも言えるようなもの。そういった知識がちりばめられているだけでなく、歴史家は、歴史を読む中でどのように想像力をめぐらし、どのように現実世界を眺めているのか。そんな一端が感じられるようで、非常に興味深い一冊であった。 -
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ロシアのウクライナ侵攻のタイミングで読んでみた。独裁について、ギリシアとローマ、そしてロシアやドイツについて説明している。私は、独裁=悪い というイメージは持っていない。政治体制のひとつであり、民衆が求める独裁もあれば、権力者が暴走した結果の独裁もある。日本だって安倍総理大臣の時代はほぼ独裁といってもよいだろう。結局、よきリーダーがよき政治をするのにつきると思う。ロシアが独裁政になる原因は歴史からも分かる。そして、独裁を含めて共和政や民主政でよりよき政治を行うには、あらゆる政治体制を経験したローマや1000年以上も共和政を維持したヴェネツィアの歴史を知るべきだと強く思った。