本村凌二のレビュー一覧
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Posted by ブクログ
▼書店店頭で衝動買いした一冊。本村凌二さんというのは、この本の広告に「東大名誉教授」と大書してあり、それは一寸上品な宣伝ではないのですが、西洋史特にローマがご専攻のはず。一般向けの本を数冊読んだことがあり、語り口が好きだったので。
▼要は「ベン・ハー」とか「グラディエーター」とかから「幕末太陽伝」「カサブランカ」などなど、何かしらか歴史に材を取っている名作映画についての本。
▼章ごとに映画を1本紹介する。その映画の粗筋をなぞりながら、舞台背景の時代状況とか世相とかゴシップとかを語る。言ってみればそれだけの本です。
「カサブランカ」などは制作時からするとほぼ「現代劇」なんですけれども、20 -
古代の価値観から俯瞰する現代
恥ずかしながら本村さんを存じ上げなかったのですが、とても面白い方でした。
著作を見てみると、数々の古代ローマ本の他に、競馬の世界史なんて本もあったりして、とても興味が惹かれます。
今回の対談でも、そんな本村氏と佐藤優氏の対談で、日頃メディアで聴くような現代的価値観から来る言説とは違った方向から切り込む言葉の数々がとても楽しかったです。
個人的には、またこのお二人の対談は見てみたいです。
以下、私が気になった(気に入った)点です。
ー「第1次世界大戦で明らかになった問題(近代的価値観の限界)が解決されずに現代にまた蘇ってきている」という話。最近は、落合陽一さんなんかもよく約100年前にあ -
Posted by ブクログ
競馬の歴史といっても、3つの側面があると思います。
1 文化史
2 名馬の戦績
3 種牡馬・繁殖牝馬の血統の連なり
本書では明確に分けているわけではありませんが、前半では文化史を主に追っていきます。
ギリシア・ローマにおける戦車競走に始まり、ダービー・オークスが成立する18世紀までには、競走や賭博の公正さを確保するための努力がありました。
また、同時平行でサラブレッドの改良が進められ、本書の後半は、名馬が好成績を残して、種牡馬となり、その遺伝子が子に受け継がれていく、その歴史を追います。
現役競走馬の5代前よりも更に昔からサラブレッドの血統は続いていて、改良の果てに今のレースがある。そう思 -
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L’étymologiste non omnia finit.
死がすべてのことを終わらせるわけではない
この本にはいろいろなラテン語の名句が出てくるが、この言葉が1番心に残った。私がすべてを終わらせるわけではない、生きている限り希望があるのだ。
ラテン語の授業の話なのかな?という興味で読み始めてみたが、授業は授業だが、ラテン語というよりは、ラテン語を通じた人生の話だった。また、ラテン語がヨーロッパ、英語の元になっていることはしっていたが、ここまで多岐にわたっているとは、言語に興味を持つきっかけにもなる。
作者自身の考え方や物の見方の変化の話もあり、心のありようを考えさせられた。
素晴 -
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馬の観点から世界史を捉えた作品。著者は競馬好きの古代史研究者。
ユーラシア北方の森林・草原地帯を原住地としたインド=ヨーロッパ語族の諸民族は、同じく草原地帯に住む馬を飼い慣らし戦車を引かせ、やがて周辺地域へ移動するにつれ、馬の家畜化・軍事利用が世界に広まっていったという流れ。
中世以降は弓や火器が戦場を支配し馬の役割は馬車などの運搬に移り、さらにそれも蒸気機関の発明により、今度は娯楽としての競馬へと移っていく。
匈奴やフン族といった遊牧民は文字史料が少ないため世界史における存在感は薄いように見えるが、しかし中国や中東、東欧との交流・侵攻が、それぞれの文化に与えた影響は大きかった。非常に面白く -
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本書は通史の要約的な本ではなく、著者なりの「教養を深める歴史の読み方」である。
どちらかと言うと、通史がある程度頭に入っていてもう事実の列挙を学ぶのに飽きた人ほど、面白く感じると思う。
例えば、個人的に読んでいて興味深かった(通史の勉強では触れられずあまり知らなかった)内容をいくつかピックアップすると
・「文明」と「文化」の違いは
・メソポタミアやエジプトでは発達しなかった民主政が、ギリシア文明で発達した背景は
・ローマ帝国衰退の一因にインフラの維持管理問題があった
・アルファベット、一神教、貨幣の誕生に共通の背景があった(かも)
・ゲルマン民族大移動から予測する現在のヨーロッパ難民が引き起 -
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ロシアのウクライナ侵攻のタイミングで読んでみた。独裁について、ギリシアとローマ、そしてロシアやドイツについて説明している。私は、独裁=悪い というイメージは持っていない。政治体制のひとつであり、民衆が求める独裁もあれば、権力者が暴走した結果の独裁もある。日本だって安倍総理大臣の時代はほぼ独裁といってもよいだろう。結局、よきリーダーがよき政治をするのにつきると思う。ロシアが独裁政になる原因は歴史からも分かる。そして、独裁を含めて共和政や民主政でよりよき政治を行うには、あらゆる政治体制を経験したローマや1000年以上も共和政を維持したヴェネツィアの歴史を知るべきだと強く思った。
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古代ローマの公認殺人競技である剣闘士興行。当時の熱狂はすさまじく、各地に円形闘技場が作られ、祝祭日などは民衆がこぞって闘技場に集うような最大のイベントであり、
政治家も剣闘士興行の人気にあやかり、当選するための手段として剣闘士興行をいかに多く開催するか、いかに派手な演出を凝らした舞台を用意するかといった公約も考えて選挙に望んでいたようだ。
剣闘士を構成する立場の人達は、下層奴隷や犯罪者といった人達が多く、それゆえに自分たちとは立場の違う人達の流血試合を催事として楽しむことに罪悪感はなく、むしろ高揚感の方が勝っていたのだろう。
しかし、紀元前1世紀~紀元1世紀ぐらいの平和なローマ時代では、健