本村凌二のレビュー一覧

  • 馬の世界史

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    「馬の世界史」本村凌二さん。2001年の本。中公文庫。

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    題名の通り、「馬」という断面で眺める世界史のお話です。前々から気になっていて、なんとなく読んでみました。

    ●どうやら、「馬」というのは、色んな似た生き物の突然変異のようで。人間と共生しやすく出来たので、繁殖して増えたそうです。従って、もしかしたら現存する全ての「馬」の先祖というのは辿って行くと、突然変異したただ1頭の「馬」に行きつくのかも知れない。ある意味、万世一系な訳ですね。(まあ、でも生き物は全部そうとも言えるのですけれど)
    ちなみに、今現在「馬」というとほとんどがサラブレッドという種?な訳ですが、サラブレッドも辿って行くと、2~3頭の名馬の子孫たちだそう。

    ●馬は恐らく初期には「放牧業をするうえで、便利な道具」だったのではないだろうか。遺跡とかを見ていくとそのようだ。

    ●今のモンゴルとか中央アジアあたりの放牧系=騎馬民族が古くから巧みに馬を使って、強力な戦闘能力がありました。そして、この人たちは長い間「文字」を使わなかった。だから、今残っている歴史では、彼らはほとんど「悪=エイリアン」としてしか描かれていないけれど、それはかなり一方的な見方。

    ●ヨーロッパの歴史も、中国の歴史も、この騎馬民族との対立や融和が歴史の大きな流れを支配している。司馬遷の時代から「匈奴」と呼ばれた。いわゆるシルクロードや東西文化の混合というのは、彼らの活動に依拠しているし、「尊王攘夷」みたいな思想もそこから生まれている。世界史への影響力は巨大である。

    ●この遊牧民たちは、経済生活上、「巨大な国家というグループ」を作る必要が無かった。だからそういう仕組みがなかなかできなかった。チンギスハンなど、個人としての強力なリーダーが発生すると、イッキに想像を絶する武力集団になり、向かう所敵なしで世界を制覇してしまった。でもそのリーダーシップが無くなると、また元に戻る(笑)。

    ●一方で、ローマ、ギリシャなどは地中海=船舶の文化であり、馬に大きく依存しなかったようだ。

    ●ところが、馬=騎馬民族の影響は避けようがない。4世紀ごろの「ゲルマン人の大移動」が世界史のベースになっているけれど、これはもともとはゲルマン人の縄張りに騎馬民族、フン族が襲ってきて、まったくかなわなかったから。

    ●ハンガリー、という地名は「フンの国」という意味が元々あった。

    などなど...それなりに「へええ」と面白かったです。

    馬という武力を手に入れたものが権力を握ったり、「馬車」というものが交通や流通や情報網を作ったり。
    いかにどれだけ、近世まで「馬」が大事だったか。名馬が貴重だったか。

    みたいな、よもやまと薀蓄が、なかなか冷静に俯瞰的に語られています。誘われ、頭の中を騎馬民族と馬車が走り回っている間に、原始時代から20世紀までの概略が走馬灯のように、パラパラ漫画のようにスピーディーに進む、不思議な読書でした。

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    本村さんという学者さんは、どうやら古代ローマ辺りが専門だそう。専門の方の本も一度読んでみたいものです。
    それにしても、やっぱり馬が好きなんだろうなあ、と思っていると、末尾にご本人が「とにかく学生時代から競馬に魅せられて...」と熱い思いを吐露されていて、素敵な感じでした。

    こういう、「とにかく好き!」という情熱って、私心が無いというか(笑)。チャーミングだなあ。

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    2017年08月14日
  • 英語で読む高校世界史 Japanese high school textbook of the WORLD HISTORY

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    正直なところ通読できてはいないが、国際人としての教養を日本の高校教科書の内容で、かつ英語で身につけるという考え方は興味深い。
    加えて、ボランティア等々でこつこつ翻訳を続けられてきたようなので、なかなかな偉業であると感動した。

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    2017年06月10日
  • 競馬の世界史 サラブレッド誕生から21世紀の凱旋門賞まで

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    タイトル通り競馬の歴史について俯瞰する本。古代の競馬から最近の競馬までザックリと解説する。
    競馬の楽しみはいろいろあるが、おそらく大半は馬よりもお金が好きな人達だ。この本には金儲けのノウハウが全く書いていないので、ギャンブル好きには読む価値は無いと思うが、文化としての競馬が好きな人には大変面白い内容で、この本を通読すれば、競馬が
    どのように発展してきたかがよく判る。
    著者は東大の名誉教授。歴史が専攻で他にも馬の文化についての著書がある。世界中の競馬場を巡り、歴史的なレースにも立ち会ってきた経験があり、所々に自
    身の体験が紹介されている。
    競馬は多くの人が関わる催し物であり、1頭の馬を巡って様々なドラマがある。馬に纏わる話(血統、レース)関わった人々(騎手、調教師、馬主、主催者)や
    レースの内容など、知らなかった話がいろいろあって大変面白く読めた。

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    2017年03月30日
  • 馬の世界史

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    世界史において馬が果たした役割と、その中で人が馬を如何に活用し変えていったかに着眼した「馬」切り口の世界史。

    著者は言わずと知れた古代地中海史の大家だが、無類の競馬好きでもあるらしい。(冒頭からネアルコ、リボーという競馬ファンなら誰しも知っている名前がちらほら)
    そこから想を得ての著作らしいが、大変に興味深い。

    まず、馬が家畜化されたのはいつからか、そして初期に飼いならされた馬はどのように活用されたのかを説くところから始まる。
    次第に騎乗の技術や戦車を発明した騎馬遊牧民が活躍する時代になり、人々の歴史に「速度」が持ち込まれる。
    情報や文物は今までにない速度で伝播し、人々の活動領域も広がる。文明は急速に広まりを見せ、今まで不可能だった範囲での活動を可能にしたし、より遠くへと人々の探究心を刺激した。
    そして騎馬遊牧民の脅威に対するカウンターとして、都市や国家、帝国や軍隊の発展が誘発される。
    そのうちに馬は、農耕や軍務だけでなく、娯楽や日常生活の友としても活躍するようになる。
    しかし、遠洋航海技術が発展を見せる15世紀ごろから次第に馬が果たす運搬や軍事における役割は縮小し始め、火砲の出現によってその方向は決定的になってゆく。
    上記の流れの中で、馬種の改良にも人々は意を砕き、それぞれの時代に求められる役割に応じた品種改良を重ねてきた。
    この努力からか、軍事や運搬における役割が縮小した後も、イギリスを中心に競走馬(サラブレッド)の熱心な改良を経て、今現在も世界中で競馬は愛され続けている。

    このように馬は人間の歴史に如何に巨大なインパクトを残したか。著者は、馬がいなかったなら21世紀の現在も我々は古代のような生活を送っていたに違いない、とさえ言ってのける。

    世界史の通史を中央アジア中心に眺められるし、「馬」という切り口の世界史が思いのほかに示唆に富んだ見方であるという発見もあるし、何より著者の馬に対する無上の愛に溢れた生き生きとした筆致が、実に楽しい読書体験を約束する秀逸な一冊。

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    2015年10月27日
  • はじめて読む人のローマ史1200年

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    『テルマエ・ロマエ』にもすこし触れています。これの後に『テルマエ・ロマエ』読むと、ディティールで気がつくこと多し。

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    2015年01月12日
  • 愛欲のローマ史 変貌する社会の底流

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    そういえば、もうすぐ映画「ポンペイ」が公開されますね。
    パニックムービーにして 3D映画、これは楽しみです。

    ポンペイには当時の市民の生活がそのまま埋もれています。
    本著の表紙のご夫妻も、ポンペイから出土したものです。
    裕福な市民の家には多種多様なモザイク絵画が描かれいました。
    町じゅうの落書きなども残っていて、当時の生活が伝わってきます。

    本著はポンペイだけでなく、ローマ市民の生活を風俗生活の観点から述べています。

    ローマ市民と言ってもやや1,000年近くに渡る時間軸なので、どの時代のどの階級によって生活は違います。本著は皇帝や皇后から一般市民、そして時代も取りあわせています。

    書かれている内容はほぼほぼ、塩野七生さんのローマ人の物語に出てくるエピソードを越えず、期待が大きかった分少し残念でした。

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    2014年05月24日
  • 馬の世界史

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    馬を切り口にすると、世界史の流れがより鮮明に見えてくることに驚いた。アメリカ大陸はウマ科の化石の宝庫だったが、1万年前に氷期が終了すると絶滅した。旧大陸でも、家畜化される前の馬は狩猟の対象でしかなく、絶滅しかけていた。

    ウクライナのドニエプル川西岸にあるデレイフカで52頭の馬の骨が発見されており、BC4000年頃には馬が飼育され、騎乗されていた可能性もある。その西にあるトリポリエでも、BC3000〜BC1700年頃まで家畜馬の骨が発見されている。BC2000年以降は南ロシアや西アジアが乾燥化して草原が広がったため、家畜の中で馬の占める割合が増えた。

    メソポタミアでは、BC3000年紀からロバが使役され、荷車が用いられていた。西アジアにおける馬の出現は、インド・ヨーロッパ語族の人々の進出と重なっている。BC2000年紀初頭にはアナトリアやシリアから出土する印章に戦車が登場しており、ミタンニ人が用いたと考えられている。東アジアでは、BC3000年頃に始まる竜山文化の頃から馬の家畜化の形跡が見られる。殷の後期(BC14世紀〜BC11世紀)から車両が出土しており、西アジアから伝播したと考えられている。

    最古の騎馬遊牧民が記録に登場するのは、インド・ヨーロッパ語系のキンメリア人で、前8世紀にスキタイ人に追われて南ロシアからアッシリアに侵入し、アナトリアに移住した。前6世紀に成立したペルシア帝国は、早期にネサイオン馬の産地のメディアやアルメニアを領有し、騎乗が普及したことにより「王の道」と呼ばれる国道と駅伝制が設けられた。

    東方ユーラシアでは、前4世紀頃に匈奴、月氏、サカなどの騎馬遊牧民が姿を現す。中国では、戦国時代を迎えた頃から騎兵が戦場に現れた。秦は、周王朝が東方に遷都した時に助けた?(えい)に由来し、馬や家畜の飼育に携わる部族だった。モンゴル高原から中央アジアには、鮮卑、柔然、突厥、ウイグル、契丹(キタイ)、西夏、金などが現れ、中国を圧迫したり征服したりした。13世紀に建国されたモンゴル帝国は、馬を集めた駅を全土に1万以上設けて交通・通信網ジャムチを敷いた。

    ヨーロッパでは、馬は多くの穀物を必要としたため農作業には用いられなかったが、11世紀頃に三圃農法が導入されて穀物生産が増えてから馬が農耕でも使役されるようになった。

    日本では、高句麗の積石塚の墓つくりが長野や山梨に多く見られ、牧も多いことから、高句麗系の人々が馬の飼育文化を持ち込んだ可能性が高い。

    馬は、ジャレド・ダイアモンドの「銃・病原菌・鉄」でも、文明に果たした役割が強調されている。家畜化は比較的新しいから、容易ではなかったことがわかる。「新大陸」をヨーロッパ人が占領できたのは、馬もひとつの要因だった。アメリカ大陸で馬が絶滅せずに家畜化されていたら、あるいは、ユーラシア大陸で家畜化が断念されていたら、世界史は全く違ったものになっていただろう。馬に限らず、動物が人間の生活に大きな影響を与えてきたかを改めて学ぶことができた。

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    2018年10月31日
  • 決定版ゼロからわかるローマ帝国

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    ローマは、映画でグラディエイターやROMA、本でガリア戦記やローマ人の物語を読んでいたけれど、これでまたおさらい。ビジュアル豊富で流し読めるがいい。

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    2013年06月30日
  • ローマ人に学ぶ

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    ローマ人の遺した言葉や考え方には全くもって古さを感じない。むしろローマについて学ぶ度に何かしらの親近感のようなものを感じる。それは彼らの紡いだ歴史の中にある種の人間らしさが垣間見られるからじゃないかと思う。今を生きる自分たちと同じように、ローマには享楽に耽り堕落する人間もいれば、人間という存在の在り方や国の将来について真剣に悩み、考えることをやめない人間もいる。およそ2000年も前の時代に生きた人々の賢愚、美醜含めた人間味あふれる生き様こそがローマに惹かれる一番大きな理由なのかもしれないと思った。

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    2012年05月14日
  • ローマ人に学ぶ

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    ローマ人の知恵を知りたいのであって、著者の意見を知りたいのではない。
    それさえなければ★5だったのだが…。

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    2012年01月20日
  • 教養としての「ローマ史」の読み方

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    教養としての とは現代の諸外国の考え方や価値観に対してローマがどう根付いているか だと思っていた
    単純に私の認識が誤っていた

    ただのローマ史の概略本
    何度も読めばかなりローマに詳しくなれそう

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    2026年10月22日
  • 教養としての「世界史」の読み方

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    「歴史は全て現代史」、著者のこの主張にはなるほどと納得した。たしかにそうだな。さすがローマ史専門だけあって、古代ローマ帝国の解説はとてもわかりやすく興味が湧いた。これから歴史沼にハマっていくと思う。やっぱ歴史って壮大でロマンがあっておもしろいな。

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    2026年10月16日
  • 教養としての「世界史」の読み方

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    歴史の授業は苦手で、テストの為に暗記してあっという間に忘れていた。
    今一度歴史を振り返ると意外と面白くて、何度も読み返したいと思った。

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    2026年09月23日
  • 武器になる世界史

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    筆者の専門分野だからか、古代の政治形態や社会構造が中心で、「武器になる」の意味は分からんでもないけれど、どちらかというと終盤部分にあるような、現代社会への見通し部分を期待していた。

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    2026年09月23日
  • 独裁の世界史

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    ネタバレ

     古代ギリシア、ローマ帝国、ナポレオンやビスマルク、ロシア、ムッソリーニとヒトラー、最後にヴェネツィア共和国を取り上げ、それぞれに見られる、「独裁政」、「共和政」、「民主政」の姿や歴史を明らかにし、今の時代にどういった政治がふさわしいのか、「デジタル独裁」の到来する時代にどんな教訓が得られるか、歴史、とりわけ古代史あるいは前近代史を学ぶことの意義について議論したもの。
     全体としては、「独裁」と聞くと色々な権利が制限されたり弾圧されたり、「民主主義」に対置するものとして悪く捉えられがちであるが、
    「独裁政であろうと民主政であろうと、優秀な指導者がいなくなったあとなのです。次期有力者は、必ず民衆の不満に乗っかるかたちで台頭し、ポピュリズムに走っていってしまう危険がある」(p.51)、「民主政でも独裁政でも、結局はリーダーの資質が物をいうのです。」(p.64)、ということから、著者は民主主義は「ましなポピュリズム」(同)であり、「民主政は基本的にはポピュリズム、つまり多数者である民衆による支配ですが、それがましな方向に向いていればまだいいでしょう。しかし、民衆の独善的意見や欲得に流されてしまうと、それは否定的な意味でのポピュリズム、大衆迎合主義になってしまいます。(略)もちろん、国民にも自覚と見識が求められます。フェイクニュースに振り回されたり、ラクな話や得する話に飛びついたり、聞こえのいい話になびいたりするようでは、危険なデマゴーゴスや独裁者をのさばらせることになるでしょう。」(pp.64-5)というのが一つの結論であると思った。ローマ帝国の歴史も、「悪帝が立てば政治は混乱し、辛酸を舐めることになります。それでも強さと賢さのバランス感覚を併せ持った賢帝を擁することができれば、強力に改革を推し進め、国を反映させることができる」(p.144)ということを教えてくれて、プラトンが哲人政治が理想、って説いたというのは倫理で習って、その時はあまり何も思わなかったが、こういう話なのか、ということが分かった。
     以下、具体的な部分で気になったことのメモ。まず古代ギリシアというと、民主主義が徹底されて哲学者も生まれた古代にあって先進的、という浅い理解があるが、例えば有名な陶片追放なんかは「民主政の代名詞のようにもいわれ」(p.42)るが、「実際には政争の道具に使われるようになってしまいます。政敵のリーダーの名を陶片に記して陥れようとしたり、ときには独裁者となる危険があるかどうかに関わりなく、単に気に入らないという理由で陶片に名を刻んだり、周囲の人に呼びかけて追放票を集めようとする例もありました。民主政を独裁者から守る防波堤として、必ずしも正しく機能したわけではありません」(p.42)ということで、しかもその原因の一つは、現在と同じ「無記名投票」だからという問題があった、というのは知らなかった。そして著者も述べるように、これは現代のSNSやネットと同じ、ということなので、世界史の勉強の初めに出てくるギリシアの歴史からも現代人が学ばないといけないことがあるというのを感じる。その中でも前五世紀後半のアテネに現れたペリクレスという人が語った民主政の理想が、pp.48-9に紹介されていて、すごい立派だった。「(略)よし隣人が己の楽しみを求めても、これを怒ったり、あるいは実害なしとはいえ不快を催すような冷視を浴せることはない。私の生活においてわれらは互いに征肘を加えることはしない、だが事公けに関するときは、法を犯す振舞いを深く恥じおそれる。時の政治をあずかる者に従い、法を敬い、とくに、侵された者を救う掟と、万人に廉恥の心を呼びさます不文の掟とを、厚く尊ぶことを忘れない」という部分は、本当に崇高な感じで、理想論かもしれないけど、憧れる。あと、独裁=全体主義=ファシズム、というなんとなくそんな理解があったが、「実はファシズムという言葉には、もともと独裁の意味はありません。ファシズムの語源は、ラテン語の『ファスケス』。これは、古代ローマで権威の象徴とされた斧飾りをさす言葉です。そして、ローマ貴族にとって権威は、武功・武勲と直結するものでした」(p.111)ということで、あくまで民衆から尊敬され支持を得る象徴となるものだったそうだ。この本の中ではローマの共和政が割と高評価を得ている感じがして、シェイクスピアにも出てくる「元老院」とかの役割とかしれたのが良かった。後の近代の歴史の話の中でも、「民主的な社会においても、熱に浮かされたように戦争へと突入していくケースはあります。民主政を徹底すれば戦争は避けられる、というのは思い違いです。しかし、独裁政、民主政、貴族政の要素が三つ巴になって互いの暴走をチェックし、牽制する機能を備えた共和政には、『悪政・苛政』を避ける知恵が含まれています」(p.179)という話だったが、そんなローマでも、領土が拡大していき、五賢帝時代の後になると、次々に皇帝が暗殺されたりする時代になっていき、「次は誰にするかー人選に窮したのか、それとも面倒だったのか、こともあろうに帝位は競売にかけられることになりました。」(p.138)という時代もあったそうで、金で帝位が買えるとか、冗談のようなことが本当に起こっていたということを知った。あと時代は飛んで、ロシアのスターリンの独裁、とか今でこそ恐ろしい感じがするが、実はこれも後になって分かったこと、というのは意外だった。「私が小中学生の頃の日本の共産主義者は、そんなことが起こっているとは知らず、スターリンを肯定的に評価し、無邪気にソ連万歳を叫んでいました。状況が一変したのは、一九五三年にスターリンが他界してややあってからです。(略)フルシチョフは、党第一書記に就任して二〜三年たった頃からスターリン批判を始め、そこで初めてスターリンによる恐怖政治と大粛清の実態が明るみに出たのです。日本をはじめ、世界中の共産主義者が受けた衝撃は計り知れません」(p.188)というのは、そんな大きなことがその時には分かられていなかった、ということ自体も恐ろしい。「東西で異なる王権の強さ」(pp.188-90)の話は面白かったが、「ユーラシア大陸の西側では、時の権力者が積極的に民衆の前に姿を現し」(p.189)て、民衆との距離が近かったのに対して、「ユーラシア大陸の東側では多くの場合、権力者は御簾の奥に座しており、権力者の姿や立ち居振る舞いが一般大衆の目に触れる機会はほとんどありません。(略)権力者が表に出てこない存在だったからこそ、呵責な独裁を行えたという面は否定できないでしょう。ロシアはヨーロッパに近いこともあり、革命中は民衆の前に現れて鼓舞したりもしていますが、西欧諸国と違って秘密主義的なところがあり、精神的・文化的土壌としては東洋に近いものがある気がします。」(pp.189-90)ということで、ロシア独特の土壌というものがあるらしい。あとは「ムッソリーニはヒトラーの人種政策に対して極めて批判的でした。そもそも独裁政権を確立する過程でも、ムッソリーニはスターリンのように政敵や反対勢力を徹底粛清することもありませんでした。第二次世界大戦に関しても、ムッソリーニは当初、中立の立場を取り、『非交戦国』を宣言しています。」(p.203)ということで、なんかヒトラーもムッソリーニも全部独裁の悪い人、みたいなイメージしかなかったけど、やっぱりちゃんと勉強しないとダメだなと思った。最後にヴェネツィアの話はあまり知らなかったが、「議員の世襲制」を認めていた、という話で、日本では悪いこととされているが、「ローマの元老院貴族的な考えもありましたし、貴族政のほうがいいというアリストテレスの主張もありました。(略)世襲制の中で培われてきたものがあることに目を向けてもいいのではないでしょうか。」(p.219)という、確かに「現代の日本人にとってはピンとこないかもしれません。しかし、国を運営する『安定装置』として共和政をフラットに捉えなおし、学ぶべきは学ぶという姿勢が、私たちに求められています。」(p.220)ということも勉強になった。確かに「親の七光り」とか、あんまり良いイメージはないけど、それでも全体の混乱を避ける一つの手段、というのは新しい視点だった。
     ということで、世界史の勉強をしながら、より良い政治、国家とは何かを考える、という本。でももしかしたら、実は政治や国というより、もっと身近なところで、自分の属している会社や組織が民主政っぽいのか独裁政っぽいのか共和政っぽいのか、そして何が問題なのかを考えるという意味で解釈しても面白いかもしれない、とか思った。(26/09/06)

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    2026年09月07日
  • 武器になる世界史

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    難しかったけど面白い
    もうちょい自分に知識があれば、より面白かったと思う

    歴史から学ぶってよくいうけど、こういうことかって思ったし
    中庸は大事かなと思った

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    2026年09月06日
  • 教養としての「ローマ史」の読み方

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    一時代を築いてきたローマ史の発展と衰退について知ることができた。ストーリー仕立てになっていて、なぜそうしたのかや背景も書かれていたので分かりやすかった。歴史なので、著者の解釈が多いようにも感じたが、理解しやすくするためには必要だと感じた。なかなかローマ史は長く、登場人物も多いので、ふんわりとしたイメージしか覚えられなかったが、教養としてなので、知っておくレベルにしておく。

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    2026年07月09日
  • 教養としての「世界史」の読み方

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    全ての歴史は現代史であるという考え方は面白かったが、著者の専門外の部分に関して、誤っていると思われる記述や、個人の歴史観が入っているのが気になった。

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    2026年06月09日
  • 東大名誉教授がおしえる やばい世界史

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    秋から冬にかけてひどいめまいで伏せっており、やっと回復の兆しが見えての久しぶりの読書。リハビリにはこういう軽い本がよい。

    偉人たちの「スゴイ」と「ヤバイ」が対で語られているので親近感を持って読める。

    歴史系はとにかく何でもとっかかりを付けて興味のあるところを深堀する方が学びやすい。昔々、学校である程度教科書はかじったけど、その後遠ざかっている人におすすめ。

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    2026年04月30日
  • 名作映画で読み解く世界史

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    面白そうだったので、知り合いに貸してもらって読んだ本。
    21本の名作と言われる映画をベースに、何が史実でどこがフィクションなのか、どんなところに着目すると歴史の背景や当時の様子がわかるのか、などが書かれており、映画好きにも歴史好きにも刺さる内容だと思う。

    私自身はどちらも造詣が深くないタイプだが、本の中のグラディエーター、ブレイブハート、ライフイズビューティフルは観たことあった。本村さんの本を読みながら「え、実は闘技場では毎回人が死ぬまで戦うわけじゃなかったの?」「スコットランド独立運動をしたウィリアム・ウォレスは本当にいたの?メル・ギブソンの服装そんなにリアルだったの?しかも何か国語も話せたの?」「エチオピアの征服にはそんなイタリアの祈願があったの?やっぱり強制収容所に送られてあんなに明るく乗り越えられないよね…」などと史実を知ることができた。

    ただ、歴史を学ぼうとするには、この本だとちょっと難しい。この本の中で気になった名作映画を、本の注目ポイントを押さえながら鑑賞するのがいいかなと思った。
    面白いけれど、「学ぶ」というには正直厳しいので、あくまでも「どんな名作映画を観ようかな」という観点で参考にするのによい。

    個人的には以下の名作を鑑賞しようと思う。

    1.ベン・ハー:筆者が古代ローマ史に関心をもつきっかけとなった映画。有名なモーゼの映画「十戒」と同じ俳優が今度はキリスト教信者としてローマ帝国と戦う物語。実際のローマ帝国はキリスト教を弾圧しようとしていなかったが、信者たちが他宗教や神を認めないことで制圧しないといけなくなったというのが史実と聞いて衝撃。戦車のバトルなどは圧巻らしい。

    2.アラビアのロレンス:実在したアラブ系イギリス人。スパイとして活動していたが、イギリスの三枚舌に手を焼き、アラブの独立を目指したものの部族間争いで頓挫したことで本人はショックを受けていたらしい。本物のロレンスと雰囲気が似ているらしい。

    3.七人の侍:ご存じ黒澤明監督作品。当時の時代劇は歌舞伎のような美しい描写ばかりだったため、あえて極貧の農家たちを襲う野武士を下級侍たちが護るという戦国時代のストーリーに着目したらしい(実際にそういうことがあったとか)。役者たちは事前に着物を渡され、普段から着てくたびれた状態にして撮影したなど、人間描写のリアルさに定評。

    4.スウィング:アメリカ・シカゴのマフィアをだます詐欺師の物語。当時の腐敗したアメリカの様子を描いている。ストーリーが好きそうな内容なので是非観たい。

    5.活きる:本国の中国ではまだ上映されていない毛沢東時代の中国の話。文化大革命などにより大きく変動した時代に振り回された庶民の様子を描いている。

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    2026年04月10日