本村凌二のレビュー一覧
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本村凌二著「地中海世界の歴史」の3巻。
いよいよ舞台は古代ギリシアに。前3000年頃に始まるエーゲ文明(クレタ文明、ミュケナイ文明)、ペルシア戦争、アテネ、スパルタに代表されるポリスの時代を扱う。
古代ギリシアの時代は、資料が豊富にあり、歴史の詳細を今の時代に鮮やかに伝える。
まずは、吟遊詩人。我々は、ホメロスの『イリアス』『オデュッセイア』を文字で読むことができる。ホメロスは盲目の詩人。そもそもこの著書は音声からなる物語。この物語、口から口へと世代を重ねて伝承してきた。つまり、暗唱していたということだ。
ちょっと待って、『イリアス』『オデュッセイア』は岩波文庫でともに上下巻あり、各巻400ページ前後ある。これを全部暗唱していたというのか!現代人の感覚からすると想像を遥かに超える超人ではないか。
人間の心をゆさぶる言葉は、文字ではなく、音声にこそある。おそらくホメロスの歌声は人々の心に訴える魅力的な力があったのだろうと思う。
叶うことなどないが、ホメロスが歌う『イリアス』『オデュッセイア』を聞いてみたいと思う。 -
Posted by ブクログ
古代ローマ史が専門の歴史学者の語る映画。
取り上げられた映画は21本。
作品の歴史的背景の解説がわかりやすく、観たことのある作品は観直したくなるし、観たことない作品は観たくなる。
日本映画からは『七人の侍』『幕末太陽傳』が取り上げられてます。『七人の侍』は当然取り上げられるよな、という感じだが『幕末太陽傳』を取り上げるところが、粋だねえ。
文章からはこの先生、本当に映画が好きなんだなあと好感が持てました。
【観返したくなった映画】
ベン・ハー
グラディエーター
ブレイブハート
アマデウス
アラビアのロレンス
七人の侍
幕末太陽傳
薔薇の名前
スティング
カサブランカ
【観たくなった映画】
レッドクリフ
アレクサンドリア
山猫
ニュー・シネマ・パラダイス
ライフ・イズ・ビューティフル
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ウクライナ戦争について、一般的に民主主義対権威主義の戦いだと言われているが、実は西欧世俗キリスト教対ロシア正教という宗教戦争だという視点。
西側の民主主義における“人権”は“神権”が変異したもの。つまり“人権”は実は西側の世俗化キリスト教の価値観。それを押し付けられたプーチンが西欧の同性愛やLGBTQをサタニズム(悪魔崇拝)だと言っているのがその表れの一つ。
もともとはウクライナ東部にすむロシア系住民をネオナチから救うのが目的の戦争が、アメリカ、西欧が価値観戦争と位置付けたため宗教戦争になってきている。
単に領土の取り合いなら妥協点も見出しやすいが、価値観戦争は双方が譲るのが難しい。
この戦争の終わりが見えず、世界の行方が見えないという事が理解できた。 -
Posted by ブクログ
「教養」として現在までの歴史と国のあり方がわかりやすく、とっても面白い本でした。
「唐=漢文化」だと思っていましたが、実際には唐王朝は漢人ではなく胡族の王朝、というような「へえ!」もいっぱい。
疫病(ペスト)の蔓延が元の滅亡を加速させた、というところ、コロナの蔓延が世界にどんな影響を及ぼすのか怖くなってしまいました。
「違ってあたりまえ。違うのだから、完全にわかり合えなくてあたりまえ。そうした意識をもって、わからないなりに、相手を理解しようとするのが、歴史や異文化を学ぶということなのではないでしょうか。」
国家間だけでなく、人と人のお付き合いでも深く心に刻みたいことです。
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以前も本村氏の本を読みました。もう内容も覚えていないのですが、おぼろげに面白かったことを覚えています。
今回、改めてローマ史について読みましたが、これは実に面白かった。忘れないうちに備忘として記録に残したいと思います。
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本作、ローマの歴史1,200年を通史として紐解いています。で、実に面白い。
それはやはり、人にフォーカスしているからだと思います。紀元前8世紀から共和制を経て、そして賢帝たち、続いて軍人皇帝時代を経ています。
賢帝でも愚かな息子を次の帝位につける、反抗した軍でも恭順を示せば許す、気前の良いことを言って約束し財政を悪化させる、反乱に諦めかけるところを妻の一言でやる気を出す等々。
良いことも悪いことも、すべて感情をもった人が行うこと。1,200年もあれば大概の事例が出てきてもおかしくはないわけです。こうした人間ドラマという切り口で政治史を読み解く巧みさにより、すんなりと文章が読めたと思います。
例えれば、NHKの大河ドラマでしょうか。
歴史の古臭い物語ながら、多少の脚色はあろうとは思いますが、そこに描かれるのは人間ドラマ。だから面白い、と。
ただ、本作の場合、皇帝の数がまあ多いです。ですからもう瞬間瞬間は読んでいて面白いのですがもう皇帝の名前とかは覚えきれません。。。すみません。
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次に白眉であったのは、「なぜローマは衰退したのか」ということへの解説です。世にいう説はどうやら三つほどあるそうで、「衰亡説」「異民族問題」「変質説」に解説されています。
「衰亡説」は経済的に衰えていったと。栄枯盛衰ではないですが、ピークを保つのは難しいですし、上がれば下がりますね。具体的にはかつては貴族が出していたインフラへの投資。老朽化していくとメンテナンス代がかかりますが、政府(というか皇帝)はここまで面倒を見るつもりがない。多少のメンテナンスはあっても根本的に古くなっていくと。となると非効率なインフラが非効率な生活につながり、あとは応じて国力も落ちてゆくということなのでしょうか。
「異民族問題」は民族大移動とも関連しています。寒冷期が始まり、ゲルマンがより温かい南に進出してきた。でも実はその前にフン族によりゲルマンが押し出されてもいた。またゲルマンを取り込んで親衛隊等に組み込むことで爾後軍人皇帝時代の混沌を呼んだといってもよいでしょう。これは良い悪いではなく結果からみてそういう原因に見える、ということなのだと理解しました。
最後に「変質」説ですが、これは本村先生が押しているように見えます。端的に言えば「寛容さ」を失った、というものです。かつては許す・受け入れるという文化が広まっていたものの、そのような文化が消えていったということのようです。またギリシア・ローマ的な万神論的な思考から、キリスト教的一神教が国教となったことも大きいようです。
このあたりは非常に興味深くて、キリスト教が偏狭であると言っているのではないのですが、他の宗教を認めないという司教(アンブロシウス)が力を持ったり、皇帝へのプレッシャーをかけたことなどが大きいようです
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ということで、本村先生の著作でした。
非常に読みやすいにも関わらず格式高く歴史を謳い上げている佳作でありました。タイトルにある通り、教養としてこういうのがさらっとしゃべれるとちょっと素敵ですね。
世界史が好きな方にはおすすめできます。 -
Posted by ブクログ
古代ギリシャ、ローマから中世ヨーロッパ、近代までの独裁体制の歴史を追っている。カタカナの名前が多くて読みづらいジャンルだが、かなり読みやすく書かれている。要所で「繋がり」を重視して書かれているからかも。
独裁=必ずしも悪とは言えず、民衆がそれを支持したがゆえの体制が人類史で何度も繰り返されてきたことがわかる。先人達が長い歴史の中で、時に痛い目に遭いながら理想の政治体制を知恵を絞って構築してきた努力に頭が下がると同時に、同じ過ちを何度も繰り返してきてもいる。
独裁を支持する国民の心境には、「強力なリーダーシップに引っ張ってもらう」中で「考えなくて良い」楽さがあることを指摘している。デジタル技術が発達してきて人間の生活を楽にしてくれる可能性があると同時に、それをうまく使いこなす必要があると結んでいる。 -
Posted by ブクログ
1996年に中公新書で出た本の増補版の文庫版に巻末対談を加えて新書化したものです(なんじゃそれ)。
ポンペイの発掘はここ20年くらいの間に新しい知見もあった気がしますが、この本は壁に残された文字(落書き)に焦点を当てているので、それほど鮮度が落ちてないようです。
それにしてもよくこれだけ大量に落書きがあるもんだ、そんな空間では生活しにくいなと思いましたが、今の日本も壁には選挙ポスターや宗教の警句が貼ってあったりするので、そんなに差が無いのかも。いやポスターよりもバリエーションが有って楽しいのかもと思いました。
あと歴史の文献資料と言うと偉い人の書いた公的記録や日記が中心になりますが、こういう一般の人が書いたものが文献資料になることは珍しく、この落書きが無かったらローマ時代に対する理解がもっと表面的になっていたのかも、なんてことも思ったりします。