本村凌二のレビュー一覧
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馬にフォーカスして世界史を捉え直す本。馬の家畜化から始まり、アケメネス朝ペルシアやらフン族やら中国北部の騎馬民族やら、世界史には馬を巧みに操った人々の影響が常に存在したことを書いている。これを読むと馬を見るだけで歴史に思いを馳せることができるようになるのでおすすめ。カウボーイが乗ってる馬を見て「アメリカ大陸では紀元前1万年頃に馬が絶滅してるから、あれはヨーロッパから移住してきた人が一緒に連れてきた馬の末裔なんだな」とか。
著者は競馬好きらしく、そのせいか産業革命以後の話がかなり競馬に偏っていたのがもったいない。第一次世界大戦の頃にも軍馬が用いられていたが、そのことについては一切触れていなかったりする。 -
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ネタバレ突然ですが、人はなぜ歴史学ぶのでしょうか。
私は、歴史の流れに人間の典型を見ることができるから、だと考えます。
現代に生きる我々ですが、対人関係に悩んだり、いがみ合ったり、恋したり、諸々のことに思い悩むのは今も昔も変わりません。先が見えない未来への対処に悩んだとき、過去にも類似のことがあったと推測するのが自然だと思います。つまり、歴史の中に「模範解答」を見出そうとするのではないでしょうか。
そう考えるならば、本作で描かれるローマ帝国の歴史は、人間とは何かを学ぶ上ではうってつけの教材であると思います。「正解」「不正解」かは別として、それはもう多くの解答例を得られるはずです(大部分、微妙だとは思いますが笑)。
作中に登場する皇帝らは個性があり、わがままで、時に名君であり、時に暴君であります。困難ななかで物事を成し遂げたりする一方、わかりきった倫理の前で敢えてその正解を選べなかったりする点で、これらの皇帝らは非常に人間的であると感じます。
例えば、古代ローマの英雄として名高いカエサル。ハゲの女たらし。結婚しているのに、エジプト遠征でクレオパトラと恋に落ちてしまう。さらにクレオパトラとの子を時期皇帝にしようとしてブルトゥスに暗殺される。
例えば、皇帝アウグストゥス。ローマに平和をもたらしパクス・ロマーナを作り上げた彼。公私の別をしっかり分け、大いに部下に施しを行う一方、情事のうわさが絶えることがなかった(P.114)。彼もまた血のつながった子供を何とか皇帝位につけようとして娘のユリアに三度も結婚を繰り返させます。
例えば暴君として名高いネロ。16歳で帝位についた彼は、セネカをそばにおき、当初は善政を敷く。しかし権力の全能感からか、次第に周囲を遠ざけ、母を殺し、妻をあやめ、そして、多くの市民を殺してしまいます。
こうした例から、人間の本性とは性悪であると安易に帰納する向きもあることでしょう。また、地位の力が人の心を腐らせると主張する事も出来るでしょう。あるいは、子孫への渇望は2000年も前からあったのであり、親が結婚はまだかとか孫の顔が見たいとかいうのも致し方ないと納得された向きもあることでしょう(ありません)。
いずれにせよ、本作では、地位があっても(ある故に)顔をのぞかせてしまう人間的特性や弱さ、特に性欲や名誉欲、嫉妬深さや猜疑心、そして血族維持への渇望などを露わな形で見ることができます。他方、理性や信念の固持によって清廉さを保てた例もまたみることができます。謙虚で欲を欠き、忠実に上司を支え市政に尽くしたアグリッパやマエケナスらに、人間がよりよく生きられるという可能性を見出すことができるとおもいます。
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まとめますと、非常に面白い作品でした。当初は世界史を深く学ぶために購入したのですが、むしろ考えは人間とはなにか、とか、人の進歩とはどういったものなのかとか、そうした思いへ私を導いてくれました。こう書いていて、R・ドーキンスの「利己的な遺伝子」をふとも思い出しました。その考えは端的に言えば、人間の意志などは存在せず、我々はヒトという「種の保存」のプログラムにただ乗せられているだけ、というものです(20年以上前の記憶につきうろ覚え)。
人間とは実にふしぎな生き物だなあと改めて思った次第です。 -
Posted by ブクログ
歴史を順番に説明していくような教科書ではなく、「こういう切り口で各地域の歴史を比較してみると」というものなので、飽きずにわくわくして読めた。
西洋と東洋で、君主に対する見方が異なるのが、なるほどと思った。西洋では、君主は民衆に姿を見せパフォーマンスをし、人気を集める必要があった。そのため、民衆に近い存在で、民衆は文句も言える対象だった。一方で東洋の君主は、姿を見せずミステリアスで畏怖の対象だった。
この辺りの歴史が、いまの国民性の違いにもつながっていたりするのかな、とぼんやり思う。
あと、3千年前の言語が確立されていない人間は、心の中に神の声を聞いていたかも知れないという説は、刺激的だった。想像がなかなかつかないけど、ロマンがある。