【感想・ネタバレ】古代ポンペイの日常生活――「落書き」でよみがえるローマ人のレビュー

あらすじ

火山灰に埋もれた都市の記憶を辿る――紀元79年8月、暑い夏の朝方に起こったヴェスヴィオ火山の大噴火により、灰に埋もれた古代ローマの地方都市ポンペイ。街角の壁面には一万数千点もの多種多様な落書きが残されていた。家族の無事を願う声、愛する二人の逢瀬の印、剣闘士に魅了された女性たちの切ない声援、皮肉を伴った罵詈雑言……まるで手に取るように人々の肉声が聞こえてくる。本書では当時のまま残された「落書き」を素材に、古代ローマ人の日常や素顔を再現する。巻末には、マンガ家のヤマザキマリさんと著者による特別対談を収録!※本書は2010年に講談社より刊行された『古代ポンペイの日常生活』を加筆・修正のうえ新書化したものです。

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Posted by ブクログ

1996年に中公新書で出た本の増補版の文庫版に巻末対談を加えて新書化したものです(なんじゃそれ)。
ポンペイの発掘はここ20年くらいの間に新しい知見もあった気がしますが、この本は壁に残された文字(落書き)に焦点を当てているので、それほど鮮度が落ちてないようです。

それにしてもよくこれだけ大量に落書きがあるもんだ、そんな空間では生活しにくいなと思いましたが、今の日本も壁には選挙ポスターや宗教の警句が貼ってあったりするので、そんなに差が無いのかも。いやポスターよりもバリエーションが有って楽しいのかもと思いました。
あと歴史の文献資料と言うと偉い人の書いた公的記録や日記が中心になりますが、こういう一般の人が書いたものが文献資料になることは珍しく、この落書きが無かったらローマ時代に対する理解がもっと表面的になっていたのかも、なんてことも思ったりします。

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2022年10月11日

Posted by ブクログ

ネタバレ

ポンペイの遺跡で発見された一万以上の落書きから、当時の市民の生活を浮かび上がらせるという本。写真も豊富で良い感じ。
選挙宣伝用の、色付きで大きく人名を書いたものがたくさんあるというのが面白かった。各職場の組合的なものがあり、当時から選挙活動を熱心にしていたらしいというのが驚き。二千年もたった遠い東の地でも同じようなことをしているなんて、当時のポンペイの人々には思いもつかないことだろうけど…。カップルが自分たちの名前を書いていたり、売春婦の連絡先みたいなものが書いてあったりするのもまるで公衆トイレの落書きみたいで時代を感じさせないなと思った。もちろん紀元一世紀のポンペイと今の日本では全然違うことの方が多いのだが、人の営みという根っこの部分に同じものを発見できるというのが、たまらなく嬉しく感じるのはなぜだろう。やっぱり連綿と続く歴史の流れの中に自分を位置付けたいという欲望が人間にはあるのだろう。

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2024年10月05日

Posted by ブクログ

古代ローマの、市井の人間の痕跡が何千年という途方もない年数を経た今、こうして目の当たりにできることに感動する。さらにそこにいる人間が、今の人間と変わらず、日々の日常を営んでいたということに。
十数年前は街のトイレや施設の壁に落書きってわりとあったように記憶しているのだけれど、そういえば最近はあまり見ない。Twitterの発達で、誰もが対外的に発信できるからだろうか。だとすると、人間が自分の思いを誰かに受け取って欲しいという根本的なところは、ローマ時代からも変わらないということなのか…。

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2024年01月31日

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