本村凌二のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
「ローマ帝国の歴史には人類の経験のすべてがつまっている」(思想家丸山真男)
どんな教科書にも載り、数々の研究書や解説書、小説、映像作品を生み出した時代。
西洋文明の最も誇らしい“古代”
〈興亡の世界史〉というテーマからして、王道中の王道、ローマ
私的ではあるが時代は三つに分けられる。
〈黎明期、イタリア半島統一からカルタゴとの戦い〉
〈絶頂期、カエサル、オクタビアヌス〉
〈衰退期、ローマ帝国とキリスト教〉
千年近いローマの通史を350ページで連ねた本は、よく知られているカエサル時代はサラリと、そのかわり皇帝ネロ以降を極力漏れのないように描いている。
戦いと陰謀に明け暮れるローマ、特に紀元 -
Posted by ブクログ
13世紀に中国を支配した元は、代々の国王がチベット仏教に夢中で、チベット仏教の寺院を建てるために空になった国庫をカバーするために交鈔を乱発したことで激しいインフレーションが起きて経済が傾き、社会が混乱状態に陥ったところに、治水事業の失敗による黄河の氾濫が起きた。
元の宮廷はそうした混乱に対して、人々に重税を貸すことで乗り切ろうとしたが、負担に耐えかねた人々の間で白蓮教徒の乱が起こり、やがて朱元璋が明を打ち建てた。
しかし実は元で信仰されていたのはチベット仏教だけではなく、景教(ネストリウス派キリスト教)、カトリック、道教、イスラム教など、多様な信仰が容認されていた多宗教国家だった。
とくにネ -
Posted by ブクログ
SNSで名作ランキングを検索しても、ハリウッドのスペクタルばかりが上位にきて、何か納得できない。たしかに、そういう作品は娯楽としては楽しいが、違うんだな⁈
感動を、哀愁を、記憶を、ずっと心に刻む作品が知りたい。そこで古代ローマを専門にする大学教授が書いた、この本に行き着いた。21の名作と作品当時の社会状況、歴史を教えてくれる。
「風と共に去りぬ」「スティング」「アラビアのロレンス」「ドクトルジバコ」「ニューシネマパラダイス」「カサブランカ」大好きな作品たち。次は「薔薇の名前」「山猫」「ライフイズビューティフル」を観たい。
「ショーシャンクの空」「ライムライト」「リバティバランスを射った男」あた -
-
Posted by ブクログ
◾️編年体ではなく紀伝体で書かれた本
◾️古代ローマ史の権威によるローマ史
◾️わかりやすく読みやすい
◾️トスカーナという地名の由来
◾️ギリシャは民主政、ローマは共和政。その違いは…P49
◾️民主政ではポピュリズムへの移行は当然
◾️ではポピュリズムのリスクを孕む民主政を正しく機能させるには…P53
◾️ヒットラーも大日本帝国も、攻撃されたから他国に侵出したわけではなく生存権の主張で侵略。
◾️古代ローマにもファシズムあり。先手防衛という価値観は当時は当たり前だった。
◾️ローマ人は国家に対する強い自負心があった。
◾️ローマの有名なヒト、モノ、コトはほぼ網羅されている。
◾️第5章英雄 -
Posted by ブクログ
古典期の終盤には、ギリシャとアジアを繋ぐアレクサンドロスによる東征が際立つ。
本書は人類史上最初のグローバル化という観点から、その東征が引き起こしたヘレニズム文明を、そこに生きていた人々の心性を丁寧に描いている。
『ヘレニズムは読み書き能力できる人が増える時代、心性が変貌する時代であった』
ここまでの説明で、伏線を回収するように腑に落ちた。
文字を使わなかったソクラテス。
文字を使ったプラトン。
共同体から個人としての救済へ。
心性の変化が神の声を探す密儀へと誘う。
興味深いテーマばかり。世界史の観点から意味をもう一度考えることができ、良い勉強になった。
特に、シンクレティズム(宗教 -
Posted by ブクログ
本村凌二先生の本はどの本を読んでもとても面白い。
1冊あたり20ページほどで世界の古典の中から20冊を厳選して紹介。
僕にとってはこういう本は本当にありがたい。あまり書きすぎると原作を読んだときの感動が減ってしまう。これくらいが適度な情報量で、あとは自分の感性に頼り、その本を読むかどうかを決めるだけだ。
印象に残る2冊について書きたい。
まずは一冊目。
この中で唯一日本人作家の島崎藤村『夜明け前』。
この小説は有名ではあるが、残念ながら最後まで読んだ人は多くない、と紹介している。僕もそうだ。本書ではその理由を「暗さ」だとしているが、僕の場合は「長さ」が挫折の理由だ。とにかく長い。
この小説の舞 -
Posted by ブクログ
▼本村凌二さんは「ローマ史の大家」として知っていて、1~2冊読んだことがありました。それらは大変にオモシロかった。先日、「名作映画で読み解く世界史」という本を書店で発見衝動買い。読みやすく興味深く大満足。近年、木村さんはこういう一般向け柔らか世界史本も手掛けてらっしゃるんだなあ、ならそれは読みたいなあ、と。何しろPHPさんですからね。というわけで探したらこれがあったので。
▼講演の速記本みたいな感じです。意識的に専門語やディティールを避けて分かりやすく語られています。個人的にはル・ゴフさんの「子どもたちに語るヨーロッパ史」と同等の分かりやすさと納得さで、大満足。
▼個人的には、「なぜ」を徹