あらすじ
メソポタミアからローマ帝国まで、「地中海世界」4000年の歴史を、古代ローマ史研究の第一人者が描きつくす全8巻シリーズ。講談社選書メチエ創刊30周年特別企画。
第1巻と同時発売の第2巻は、ローマ帝国に先立つふたつの大帝国、アッシリアとペルシアの登場を、大胆な仮説と人類史の大きな構想のなかで描く。
第1巻で語られた「人間が神々の声を聞いていた時代」は、紀元前1000年前後を境に大きく変容する。神々の声が人々に届かなくなっていくのである。それには、アルファベットと貨幣の発明が関係あるのだろうか――。そしてこれ以降、「世界帝国」と呼ばれる大覇権が形成され、地中海世界の秩序は大きく変動する。
周辺地域の騎馬遊牧民や、東地中海の「海の民」の影響を受けて台頭した軍事国家アッシリアは、「強圧の世界帝国」として他を圧倒。一方、アッシリアの後にさらに大領域を治めたペルシアは、征服した諸民族の文化と信仰を許容して貢納関係を結び、「寛容の世界帝国」をなした。これら世界帝国は西の辺境ギリシアに新たな都市国家を生み、後のローマには学ぶべき広域帝国の前例を残したのだった。
目次
はじめに
第一章 人類最大の発明
1 初期アルファベットの誕生
2 ヘブライ人の唯一神
3 貨幣の出現
第二章 強圧の世界帝国アッシリア
1 軍事国家の台頭
2 最初の「世界帝国」へ
3 帝国の分裂と文明の終焉
第三章 寛容の世界帝国ペルシア
1 キュロス王からダレイオス大王へ
2 パックス・ペルシアーナ
3 ギリシアとの戦争
第四章 神々の沈黙と「枢軸時代」
1 預言者たちとユダヤ教
2 イラン高原の宗教運動――ゾロアスター教
3 汝自身を知れ――人間の魂の発見
4 インド・中国の覚醒者たち
おわりに
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Posted by ブクログ
二分心仮説(「神々の沈黙──意識の誕生と文明の興亡」ジェインズ)によるオリエントの帝国興亡史。アルファベットによる文字の普及と唯一神信仰が、神々の声を聴こえなくさせ意識を醸成したとする。文字から神の声が聴こえたのが、たんなる意味を読み取るものになり黙読も生じる。アルファベット、唯一神、貨幣(交換手段としての)は、単純化と普遍化。
神々が沈黙すると古来の神話だけでは世界を理解することが困難になり、千年紀前後の「枢軸時代(ヤスパース)」を生む。
Posted by ブクログ
人類最大の発明、アルファベット、一神教、貨幣は神々の沈黙とともにもたらされた。
騎馬遊牧民や「海の民」の影響を受け「強圧の帝国」とし周辺国を軍事的に圧倒したアッシリア。
征服した諸民族の信仰や習俗を尊重した「寛容の帝国」を築いたアケメネス朝ペルシア。
この辺りの歴史の話は好き。3つの発明の話はちょっと読むのがしんどい感じはあったけど、とても面白い。
Posted by ブクログ
ギリシャやローマについての歴史は結構詳しく学ぶ機会は多いのだが、トルコやパレスチナ、北アフリカを含めた地中海全体についての歴史はあまり学ぶ機会はない。したがってペルシア戦争はギリシャの立場から見てるし、ポエニ戦争はローマ側から見ている。
この本はペルシア戦争の主役、ペルシャ帝国の側からも見ているのが面白い。今までなんで弱いペルシャが広大な領地を有しているのが良くわからなかった。次も読みたくなる良書だ。
Posted by ブクログ
かつて神々の声が響いた地中海世界に新たな時代が訪れた。アッシリアは武力で領土を広げペルシアは寛容な統治で広大な帝国を築いた。
この時代、アルファベットが生まれ文字はより多くの人々に広がった。貨幣が流通し経済が活発化する中、唯一神を信じるユダヤ教や善悪二元論を説くゾロアスター教が生まれた。
インドでは思想が深まり中国では秩序を重んじる哲学が発展していた。世界はつながり文明は交わりながら進んでいった。
神々の沈黙の中人々は新たな価値観を生み出し歴史を刻んできた。かつての帝国が残した遺産は今も私たちの社会に息づいている。
歴史を明らかにすること、歴史に学ぶこと多し。