【感想・ネタバレ】地中海世界の歴史5 勝利を愛する人々 共和政ローマのレビュー

あらすじ

一人の歴史家の視点で古代地中海文明の4000年を描く全8巻シリーズ、好評第5巻。講談社選書メチエ創刊30周年特別企画。
第5巻からは、いよいよローマが主役となる。4巻までに描かれた、ギリシア文明とヘレニズムの時代と並行して、イタリア半島ではローマ人が着々と力をつけていた。紀元前753年に建国伝承を持つローマは、7代の王政の後、ローマ人がエトルリア人の王族を追放して、前509年、みずからの国家を樹立する。徹底して「王の独裁」を嫌うローマ人の国家は、著者によれば「共和政ファシズム」と呼ぶべき政体で、国内では共和政を貫きながら、国外には覇権主義を振りかざし、困難な時ほど力強さを見せるようになる。
ローマ人はギリシア人と異なり、何よりも故国の土地にこだわった。新天地に植民都市を築くのではなく、ひたすら国土を広げ、祖国を強くするために戦った。この「祖国」というものこそがローマ人の発明であり、それを守るために、父祖たちの遺風と伝統を重んじ、勝つことにこだわったのである。
こうして、前3世紀半ばまでにイタリア半島を制したローマ人の前にたちはだかったのが、カルタゴだった。東地中海沿岸を故地とし、航海と商業で栄え、アルファベット式の文字を開発した地中海古代史の一方の主役、フェニキア人の国家である。名将・ハンニバルを擁するカルタゴと、スキピオ率いるローマの戦いの帰趨が、その後の地中海世界の大きな転換点となる。

目次
はじめに
第一章 伝説の中で戦いが始まる
1 建国伝説と王政七代
2 忘却のエトルリア文明
3 共和政ローマの政治と法
4 カミルス伝説と「国辱の日」
第二章 偉大な父祖たちの半島
1 保護と奉仕の絆
2 サムニウム戦争の半世紀
3 「共和政ファシズム」と民衆の熱気
第三章 運命の巨大な褒賞
1 カルタゴとローマ
2 シチリア争奪戦――第一次ポエニ戦争
3 ハンニバル対ローマの「剣と盾」――第二次ポエニ戦争
4 大スキピオとハンニバルの明暗――ザマの決戦
第四章 地中海の覇者へ
1 ヘレニズム諸王国との対決――マケドニアとシリア
2 国粋主義者カトーの苛立ち
3 「ギリシアかぶれ」とローマ社会
4 カルタゴ滅亡――第三次ポエニ戦争
おわりに
参考文献
索引

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感情タグBEST3

Posted by ブクログ

ネタバレ

ローマ建国、伝説の王政7代からポエニ戦争まで。ローマの歴史の中でもこの辺りの歴史は好き。色んな本を読むと、書かれた時代とか筆者によって違いがあったりして面白い。塩野七生の『ローマ人の物語』もまたチャレンジしようかな。

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2025年09月19日

Posted by ブクログ

なんと言ってもカルタゴとローマの壮絶な戦い、ポエニ戦争の記述がいい。
なかでも「ザマの戦い」。ローマとカルタゴの大決戦の前日における両軍の総大将、ハンニバルとスキピオの対話。歴史家ポリュビオスの創作かもしれないが、とてもいい。とにかくカッコいい。映画のワンシーンみたい。
チュニジアにあるカルタゴの遺跡に行って、ハンニバルとスキピオと同じ空気を吸ってみたいものだ。
地図帳を開いてみる。よく見るとチュニジアとイタリアはとても近い。驚くほど近い!
こんなにもエキサイティングなのに、高校のとき使った世界史の教科書。ポエニ戦争の説明はわずか数行に留まる。

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2025年07月22日

Posted by ブクログ

ネタバレ

共和制ローマの政治史と領土拡張史を追う。ローマ史としては平板。心性史はどこへいったのだろうか。
・息子の父親による教育が規律を重んじる父祖の遺風を身に着けさせローマの軍事・政治の強さに。

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2025年07月03日

Posted by ブクログ

「地中海世界の歴史」シリーズは初めて読むのだが、この巻はローマの建国伝承から始まり、共和政ローマのカルタゴとの戦いを中心に書かれている。武将のエピソードなどが多く、サクッと読めて良かった。著者は「父祖の遺風」と教育を重んじるローマ人に共感を寄せており、それはいいのだが、冒頭から「今どきの親は、若者は」という手垢のつきすぎた文句を並べているので、ちょっとそこに鼻白んでしまった。

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2025年03月01日

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