藤井一至のレビュー一覧
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第7回河合隼雄学芸賞受賞作。わたしはマニアックな地名について問われても即答できるほど地理が好きなのだが、高校時代には地理を選択しなかったこともあり、その内容はあくまでも教科書的な智識ではなく、趣味として個人で蓄えたに過ぎない。そのため、たとえばポドゾルやチェルノーゼムといった、高校地理で学習する範囲の智識についてはまるで詳しくなく、そのへんの受験生を適当に捕まえて訊いたほうが詳しいだろう。だからコンプレックスを感じていたというほどではないのだが、土にかんする智識もいつか身につけたいとつねづね感じており、そのことも本書を手にとった理由のひとつである。さて肝腎の内容だが、著者が「まえがき」で記すよ
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土壌学の本。著者によると、地球上の土は12種類に分類できるらしい。実際に12種類の土を求めて世界各国を訪問し、土とは何かを考察する。
自分自身も農学部の出身だが、機械系だったので土そのものにはあまり関心が無かった。ぜいぜい植物の生育に必要な土と化学物質くらいの知識しかなく、社会人になると農業とは違う世界に進んだので、土がどのようにできるか等全く知らなかった。この本では、著者の体験と併せて判りやすく(例え話も適切)解説しており、読んでいてとても面白かった。土についての知識を得ることで、毎日見ている風景が違って見えてくるような気がする。旅行に出掛けたら、動植物と共にその土地について考えてみるのも良 -
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地球〝最後“のナゾというと大袈裟な気もするが、著者がそう表現する気持ちも良く分かる興味深い内容。恐らく畑いじりをする方でもないと、普段、「土」を意識することは無いのではないか。個人的には、この本の前にペーハー(pH)についての本や土と内臓に関する本を読んでいたこともあり、本書がより理解できた。読めば読むほど自分の「無知」を知るのだが、読めば読むほど、連鎖して「楽しめる読書が広がる」という事もまた事実である。
地球にしか土がない。著者にとって意外だったようだが、その驚きをこの本の読者にも伝えてくれる。月面にはとても細かなパウダースノウのような粒子があるが、これは、専門家が定義する「土壌」とは違 -
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ネタバレ当たり前にある「土」。家庭菜園もろくにしていない私にとっては、そこは体験的にも知的にも未知の世界だった。
土壌の生態系について本書で学ぶにつれ、生化学というか化学をしっかり学びたくなる。土に関する啓蒙書だが、ブルーバックスだけあって、高いレベルが維持されている。
<メモ>
・粘土が鉱物だったとは!
・粘土はマイナスイオンのため帯電しており、だからこそ水と混ぜるとネバネバするのか!
・粘土があると、アミノ酸はタンパク質に発展しやすい!
・粘土鉱物は、遺伝子と同じように複写能力がある!
・シアノバクテリアは植物ではなく、細菌!
・有機物を酸素を使って分解するのではなく、微生物によって嫌気的(酸 -
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騙されてはいけません
本書『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』はスコップを持って森の中を駆け廻るおっさんとして有名な農学博士藤井一至さんが、土のなりたちと生命の誕生と進化について分かりやすく解説してくれる一冊
だがしかーし!
騙されているぞ!
本文から引用してみる
「植物と共生微生物の関係は一方通行ではなく、4億年かけてお互いに要求しあってきた。その緊張感はラーメンの名店と常連客のようだ。」
いや、分かりやすいか?w
面白いとは思うがむしろ分かりづらいわ!( ゚д゚ )クワッ!!
こんな表現が、もうやめて!ってくらい出てきます
言いたーてしゃーないんやろな
で、土ですわ!
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地球史と生命史を「土」を主役に大胆に概観した科学読物。
著者の藤井一至さんは土壌学・生態学の専門家。日本や世界のさまざまな土をスコップで掘り返し、多くの科学者とは違った視点から生命循環システムを研究されています。
46億年前、原始の地球が岩石の星だった頃、風化が進みマイナス電荷を帯びた粘土が生成されました。その特性によりプラス電荷のアミノ酸やアンモニウムイオンを引き寄せ、ペプチドやタンパク質の合成が可能になったという説が紹介されます。
地球上に現れた地衣類が岩を少しずつ分解し、植物と土壌中の微生物群が協力しあって、豊かな土を育て上げます。
そして、地上に動物が進出してきた後、ミミズなどの土壌 -
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最近、我が家で庭づくりを楽しんでいるのですが、当然、土作りに関心が湧いてきています。実際コンポストも試しているのですが、そんななか本書を知人に教えてもらい、早速読み始めました。
著者の藤井さんは、土の研究者で農学博士の方です。本書を読んで感じたのは、喩えが上手で科学の話をしているけど、私は内容がすんなりと入ってきました。地球をお母さんに喩えたり(46億年を46歳に)、分子構造をラグビーのスクラム(3つの分子列層の下の層には2つの分子列が層をなす)に喩えたりしています。
また、46億年史としては、植物史は初めて知ることが多く、動物史は楽しく読ませてもらい、人類史は直立二足歩行仮説の -
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土なんてその辺にいっぱいあるが、「砂」とは違うと思っててもどう違うのかなんてあんまりちゃんと考えてなかった。
土、粘土がなければ生命は生まれなかったかもしれない。
粘土は、タンパク質を固定するDNAの如き働きまでしていた可能性があるとか。
全体に自然の循環の中での土の重要性を謳う内容だが、読みやすい。関西関係の研究者にありがちなうざいぶっ込みもあるが、然程気にならない。
土と植物と微生物と。
肉食とは、直接摂取できない養分を、草食動物を介して取り入れる行為であって、結局あらゆる養分は鉱物に起因する。
地殻の変動や風化などで大気中の二酸化炭素の量も変わるし、それで気候も生命も影響を受ける。 -
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土と切り離されて人間は生きていけないんだよなぁということは漠然と感じていたが、その奥深さに読みながらのめり込んでいく。
我が家のささやかな生ごみ堆肥ですら、虫がわくだの、ニオイが気になるなど嫌悪される昨今。どんだけ土離れが進んでいるのか危惧される。土に還るという言葉があるが、人は土から生まれているんだということを、改めて考えた。そして、土が育んだ米や野菜その他諸々を糧としている以上、土を蔑ろにできない現実がある。水に困らない土に困らない暮らしを実感するには、現代の生活は程遠い。食い潰すだけではダメ。生態系サービスを享受するには、それなりの教養が必要だと痛感。
後日追記。
土壌の危機を感じたの