藤井一至のレビュー一覧
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2025年刊。「偏愛」というフレーズが釣り。(でも、私の日本語感覚では、論文を「愛する」とか「偏愛する」とは言わないのだが。)
19人のその領域のトップランナーに、「偏愛」論文について語ってもらうという趣向。硬・軟いろいろかと思いきや、結構みなまじめで、硬いエッセイが多い。以下は、興味深く読んだ3篇。
川上和人はいつも通りのノリ。ネズミの輪回しの輪を野外においたら、という論文。通りかかった野生ネズミたち、彼らはこれを回したという(たぶん楽しくて)。世間では研究は役に立たなくちゃいけないということが強調されるが、こんなふうにおもしろいだけでもいいんじゃね。
仲野徹は、かつてScienceで審査した投稿論文のこと。それを通してよかったのかどうか。これは偏愛というより、心残りのする論文か。
羽馬哲也が選んだのは1928年発表の希薄炎実験の論文。著者はマイケル・ポランニー。いまは「暗黙知」で有名だが、若い頃は化学(反応動力学)の研究をしていたのだ。謎解きのきっかけとなった論文。 -
Posted by ブクログ
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土(土壌)をテーマにした本が話題になっていると知って、気になっていました。
期待通り?Audibleにラインアップされたので、聴くことにしました。
本書は全7章で、構成されています。
前半の4章は、46億年の地球の歴史において、どのようにして(現在のような)土が、出来上がってきたのかについて。
岩石(無機物)が細かく砕かれて、堆積する。
そこに、生命の営み(有機物)が加わって初めて、土は形成される。
現在、我々が目にしている土は、地球が誕生してから46億年かけて行われてきた、複雑な相互作用の結果である。
正直、個々の説明は理解できなかったのですが、上記のようなことだとざっくり、受け取りました。
後半3章は、我々人類と土との関わりについて。
土から栄養を得てはじめて、植物は成長できる。
一部の植物を大量生産する”農業”を続けていると、土の栄養は無くなっていく。
無くなった栄養をどう、補給していくのか?
これまでの人類の歴史の大きなテーマであり、それが出来たからここまで、人口が増えた。
でも、これまでのやり方では、続けられない。
著者をはじめ、「どうしたら、土を作ることが出来るのか?」に取り組んでいる人がいるということに、驚きました
土を研究対象にしていると、岩石のみならず生命全般、化学反応などさまざまな分野の知識が必要になってくるのですね。
著者の膨大な知識量と、土に対する情熱に、圧倒されました。
本書に接して、40億年と言われる生命史と、大気をはじめとする地球環境の変化との関係に、興味を抱きました。
関連する本を探して、理解を深めていきたいと思います。
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土はどこにでもある。だが、その正体を私たちは意外に知らない。スコップを手に、世界各地の土を掘って歩いてみた。
永久凍土、砂漠の土、熱帯雨林の赤い土、そして日本の黒ぼく土。同じ地球でも、気候や岩石、植物によって土の姿も肥沃さも大きく違う。しかも、作物を育てやすい土は決して無限ではない。
やがて世界人口は100億人に近づく。その胃袋を満たすには、化学肥料だけに頼るのでも、自然を守れと唱えるだけでも足りない。
土を知り、土地ごとの性質に合わせて使うこと。一握りの土を掘ることから、人類の食卓の未来が見えてくる。日本の土は優れもの、耕作放棄していては明日の食料はない。 -
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こういうのが面白い。
研究者の藤井さんが、土の種類と役割、その可能性について解説してくれる。
人間がいかに土によって生かされているかが理解できたし、土の種類によってそこに住む人の暮らしが変わることを初めて意識した。
日本の土は粘土質な若手土壌で、温暖湿潤のおかげもあり世界的に見たらかなり恵まれている土と知って驚いた。
また、月や火星との違いや、土掘りをする際の苦労の話もおもしろかった。
audibleで聴いたけど、今日本屋で見たら色付きの写真や解説が圧倒的にわかりやすかったので、これは本で読んだ方がお勧め。
audibleでも楽しめたけど、化学的な説明の部分はちょっと難しかった。
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Posted by ブクログ
ここ数ヶ月、読みたいと思った本がだいたいブルーバックスだったので、工夫舎さんに「取り扱いしないですか?」と聞いてみたら入れてくれた!やった!
タイトルを眺めてるだけで全部読みたくなっちゃうラインナップの中、選んだ1冊がこちら、藤井一至さん著「土と生命の46億年史」。
土ってめちゃくちゃ身近にあるような気がして、その実態についてはちゃんと考えたことなかった。
土とはなにか?
これを紐解いていくと、46億年前に地球が誕生して、40億年前に生命が生まれて、陸上に植物が上陸するのが5億年前で…といった、遠い遠い道のりを辿っていくことになる。
第一章の最初から、定義はされている。
すなわち土とは、
「岩石が崩壊して生成した砂や粘土と生物遺体に由来する腐植の混合物」である。
聖書ではないけれど、生命は土から生まれた。しかし、生命がなければ土はできない可能性があるらしい。
もうこの辺りから、途方もなくて面白い。
さすがのブルーバックスだと思える、化学的な因果の話や詳しい生物の話もでてきて、ちょっと難解なところもあったけど、一見専門的で難しいなと思える内容を、卑近な例を用いてわかりやすく解説しようとする気概を感じる。遠い話じゃなくて、手近に考えられる素材として用意されたエピソードがありがたい。
それにしてもこの本にも要所で出てくるキーワードが「発酵」。
今年突然目覚めたわたしにピッタリはまってくるのが、不思議だけど必然な気もする。
実はわたし、今までは地球環境がどうとか、エコがこうだとか、いまいち腹落ちしてなかったところがあった。
人類どころか生命が誕生したところから、地球の環境なんて変わっていくのは当たり前で、環境問題の何が本質的な問題なのか、いまいちよくわかっていなかったのだ。
ところがこの本を読んで、さらにその内容を今年得た「発酵」をハブにして考えると、ちょっと見えてくるものがある。
今までピンと来なかったのは、おそらく環境破壊とされている行為自体の解像度が低かったからじゃないのか。
この本を読むと、 地球全体が46億年続く巨大な循環と発酵のシステムだということがわかる。
生と死、生物と無生物が土を通じてつながり、繰り返しリサイクルされてきた中で、その循環を滞らせてしまう行為が、全方位によろしくないということがわたしなりになんとなくわかってきた。
とりあえずはまず、ウチの庭にいるであろう微生物やカビに対して、より意識が変わりそう。
家庭菜園で堆肥を循環させるのも面白いかもしれない。
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どこかでおすすめと聞いて手に取った。
ブルーバックスは正直に言って、アタマからつま先まで文系に浸って生きてきた私には、もう充分ッスというレベルで、3割ほどは付いていけない内容もあるのだけど、本書も例に漏れず、私には4割ほどしか理解できていないと思う。
いや4割もないかも…。
それでも著者の話す内容が面白いから、最後まで興味を失わずに読むことができた。
語り口もさることながら、タイトル通りに、土と生命が工夫し、互いに大きく絡み合いながら、変容し続けてきた地球の歴史が読み応えがあっておもしろかったのだ。
プロの話はどんなときも面白いが、土が、身近な存在でありながら、これほどのパワーを持つという事実に驚かされた。
この本の知識とこれを読む豊かな時間が、1200円で手に入ることが一番すごいのかもしれない。
ズブの素人たる私も存分に楽しませてもらった。
この本との出会いに感謝したい。 -
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ネタバレ土は5億年前まで地上になかった。土の材料は花崗岩と玄武岩。ケイ素、カルシウム、リン。粘土、団粒構造。粘土は結晶構造を持つ鉱物。粘土が帯びるマイナス電気にカルシウム、マグネシウムが引き付けられる。ケイ素。アミノ酸は粘土のマイナス電気に引き寄せられ、分子構造を大きくし、タンパク質へ変化。地衣類、コケ類、シダ類。微生物が植物遺体を分解。根と共生する菌根菌。根の周りの微生物は糖をもらう代わりに有機物の分解、栄養の提供を担い、病原菌から守る。細胞壁を強固にするリグニンに対しキノコが分解。外生菌根菌は岩をも食べるようになった。ミミズなど土壌生物の出現。土の変化による大気変化と生物の交代ドラマ。動物はリンと窒素が命綱。ヒトの進化も土次第。海も土から。ケイ素。土とは?岩、砂、粘土、腐植、空気、水、微生物からヒトまでの生物。自律的な知的システム。
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「地球上の100億人を養える肥沃な土を探す」という明確な目的のもと、12種類に大別される各種の土を筆者自ら実査し、さらに、100億人を養うためにはどの土壌の生産性を(持続可能な形で)どういった手法で上げていくべきなのかについて、リズミカルなタッチで考察されていく。
12種類の土について、ロシアのウクライナ侵攻は、「冬でも凍らない港をロシアはどうしても手に入れたかった」 という話を聞きなるほどと思ったが、ウクライナの土は最も肥沃なチェルノーゼムであり有数の穀倉地帯、そして世界のチェルノーゼムの3割がウクライナに存在すると聞き、見方が変わった。6割が永久凍土のロシアにとっては羨ましいことこの上ないのだろう。土は、文字通りその土地に属するものであり、単純に移動したりできるものではない。だから領土の争いが起きる。それでも、今ある土を最大限活かせる方法を筆者は探っている。
また、泥炭土の土地はウィスキーのスモークの香りをつける泥炭が豊富にあるという話から、各地の特産からその土地の気候や土の特徴を調べていくのも面白そう。
あとは、やはりちゃんと理解したいのは土の炭素固定能力の話。地球温暖化は、あくまで「大気中」の二酸化炭素濃度が高くなるのが気温上昇の一因になるのであって、Cを大気中以外のどこに留めさせることができるか、というのが要点であり、その点において土は非常に重要な役割を示すことがわかった(且つ、気温上昇は微生物の活動の活性化やCを固定していた永久凍土の崩壊→大気中のCO2増という負のサイクルも生む)。次はこの分野の本を読んで理解を深めたい。
読み終えた時、自分の足下のコンクリートを剥がしたとき、どんな土があり、それは何メートルくらいあり、その下はどうなっているのか気になって、もう一度読み返してしまった。 -
Posted by ブクログ
●土を主題に、地球の誕生から生命の発生とその進化の歴史をわかりやすく紐解く本。
●土と生命がどのように関係しているのかを知る。→思いの外、土が生命誕生に寄与していたことがわかった。
●本書は、地球46億年の歴史を「土」という視点から、全く新しい進化の物語として描き出す。驚くべきは、生命誕生の鍵を握っていたのが「粘土」のネバネバとした電気的性質だったという指摘だ。アミノ酸を集めてタンパク質へとつなぎ合わせる「ゆりかご」の役割を粘土が果たしていたというのは初耳だった。さらに、植物が陸に上がり、キノコと「軍拡競争」を繰り広げ、その結果として石炭ができたり地球が寒冷化したりしたというプロセスは、土が単なる受け皿ではなく、気候や進化を操る主役なのではないかと思えてくる。我々の存在そのものが、地球の薄い表層にある「土」のドラマの結果であると知ると、足元を見る目も変わってくるのではないだろうか。「土」というありふれたものが主題なのに、なんともスケールの大きな一冊だった。