藤井一至のレビュー一覧
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最近よく聴くポッドキャストで紹介されていた本。こんどお会いすることになっている学者センセイの頭の中の深いところを探るのに役立つかと思って読んだ。
やはり興味深く読んだのは、このところどっぷり浸かっている鳥類関係のはなし。川上先生は軽妙な語り口で、キャッチーな論文を紹介してくれた。恐竜学者の小林先生の項では、鳥類の祖先が恐竜だったことが学会の主流になったのは
1998年の論文発表からだった、と知った。1985年生まれの私は、子どもの頃から始祖鳥の存在は知っていたが、それが鳥と恐竜とを繋ぐ存在だという認識は薄く、あくまで鳥の祖先だ、という理解だったのだが、それが当時はふつうの解釈だったようだと再認識。
恐竜、土、岩石、老化…。知っていたことよりも知らなかったことが多かったし、自分が生きている間に分かったことも多いな、いうのが率直な感想。世界はまだまだわからないことで溢れていて、それを知ろうとする面白い人がたくさんいる、ということが伝わる本。 -
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『土と生命の46億年史 土と進化の謎に迫る』(ブルーバックス)は、現代科学が未だにゼロから作り出せない二大要素——「生命」と「土」——の共進化を、大きなスケールで描く。
「土」を触媒とした地球システム系の再構築
1. 「土」を化学反応の場(リアクター)として捉え直す
土壌とは単なる「泥」ではない。岩石由来の無機物(粘土鉱物)と、生命由来の有機物(腐植)が高度に混ざり合った「地球最大のバイオリアクター」だ。
著者は、初期地球の粘土鉱物がアミノ酸の重合を促進した可能性から説き起こし、生命誕生の舞台としての「土(粘土)」の物理化学的特性を鮮やかに提示している。
2. 5億年の共進化:生命が土を変え、土が進化を加速させた
陸上進出という生物学的な大イベントを、土壌学の視点から解析している。
・植物の上陸: 根から放出される有機酸が岩石の風化を加速させ、大量の「土」と栄養分(リンなど)を生み出したプロセス。
・物質循環の最適化: 栄養分の「存在量」ではなく、微生物や土壌動物を介した「循環速度」こそが生命の多様性を支えるというシステム論的な視点。
3. 人類文明という「土壌の収奪系」への警鐘
後半では、人類の繁栄がいかに土壌の蓄積を食いつぶしてきたかが定量的に示唆される。ハーバー・ボッシュ法による窒素固定は、土壌の物質循環に依存しない「ドーピング」のようなものだ。著者は、原発事故後の福島での土壌調査や人工土壌の研究を通じ、私たちがこの「作れない資源」といかに共生すべきかを、科学者としての誠実な筆致で問いかけている。
分野横断的な「地学×生物×化学」の結晶
ブルーバックスらしいマニアックな化学反応式や、鋭い比喩が随所に光る。地学(粘土鉱物学)、生物学(進化・生態学)、農学(土壌学)を横断する視点は、専門分化が進んだ現代の理系読者にとって、「地球を一つの巨大な代謝システム」として再認識させる良質な刺激になるだろう。 -
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AIに聞いたところ、オタクとは、アニメ、漫画、ゲーム、アイドルなど特定の趣味分野に強烈なこだわりを持ち、時間や金銭を極端に費やして深い知識や情熱を持つ人を指すらしい。趣味、ではないが特定の分野に強烈なこだわりを持つ面では研究者もオタク気質なのだろう。オタク達が自分の推しを語る際の勢いは凄まじい。5W1Hを駆使して推しの尊さを押し出してくる。多分、相手に伝えたいのではない、語りながら自分の中で推しの尊さを整理している。この本に登場する研究者達もそんなオタク達だ。自分の愛する分野での推し論文をピックし、尊さを語っている。研究分野も、文章から覗く著者の性格も、どれも多様だけど、愛する論文のために筆を走らせる事が苦ではない様子は共通している、というかみんな紙面が足りなさそうだった。
自分の愛する分野を見つけ、その分野への愛を深める事によって生活できるとは、なんとも幸せな仕事なんだろうなぁと感じました。 -
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【感想】
森と土は、栄養をめぐって延々と戦いを続けている。樹木は「酸性化していく土壌からいかに栄養分を摂取するか」を、5億年もの間徹底的に突き詰めて来た。
また人と土も、耕作と土壌の酸性化の間で延々と戦いを続けている。農業は酸性雨の10倍以上の影響力を持っている。土の栄養を吸い上げて作物を育て、それを収穫しているのだから、栄養素は大地に還元されず、徐々にやせ細っていく。
本質的に、農業は地球に悪影響なのだ。それでも人は、さまざまな形で土の肥沃度を維持するように努めてきた。その努力の歴史が、一万年もの間人類を大地の上で生かし続けている。
本書は、土壌が誕生してからの五億年を追った歴史書だ。同時に、土と生物のかかわり合いを「土目線」で描いた科学書ともいえる。筆者は土壌学者の藤井一至さん。フィールドワークで得られた知見を活かし、土壌と森の相互関係、森と生物との共存関係、そして人間が出現したことによる大地への影響力を詳細に解説していく。
人間が登場したことで環境破壊が進んでいるが、人間は「土」にも甚大な影響を与えたのか?その答えは当然「イエス」である。だが、そもそも人間が自然に介入する前から、土中の環境はカツカツの状態であった。
土中の環境が劣化していく原因は「酸性化」という現象にある。森林が少ない地域に比べて、緑豊かな地域のほうが土壌も栄養豊富だと思われているが、実際は逆だ。森林が発達した地域の土はどんどん酸性になっていき、動植物にとって過酷な環境となる。
水の浸透によって、土や岩石からカルシウムが溶け出し、二酸化炭素を吸収し、炭酸カルシウムとして沈殿する。そのため乾燥地の土はアルカリ性ぎみである。
対して森林が発達している地域は雨が多い。降水量が多ければ、炭酸カルシウムは地下水まで流され、洗われた土は中性から弱酸性になっていく。
そもそも、植物や微生物自体が土を分解して酸性に変えていく。有機体は、土中のリンや窒素を栄養源にして成長するからだ。これは作物を育ててその栄養を摂取している人間も同様であり、生き物が生き続ける限り、土中のpHは酸性に傾いていく。
大地の上で生きている動物・植物がいくつあるか想像してみてほしい。しかも、目に見える生き物だけでなく、微生物、菌類といった極小の生物もだ。すると、地球上の土は常に搾取され続けているのが実感できるだろう。土壌は常に瀕死なのだ。
「それで人間が農業を行える余裕がよくあるな」と思うかもしれないが、かつては余裕なんて全くなかった。人間もやせ細っていく土地と命がけで戦っていたからだ。それでも何とか人口を維持してきたのは、自然を上手く活用してきたからだ。
例えば、災害を利用した農業がある。
「日本は災害が多い土地の割には大勢の人が住んでいる」と思われているが、これは逆である。災害が多い地域のほうが土壌に栄養があり、人口収容能力が高いのだ。
その災害とは洪水や火山活動である。日本には3000メートル級の山脈がそびえており、山から海へと流れる豊富な水は急流となる。急流が多いと上流域で土壌の侵食や酸性化が進みやすいが、下流域では新たな栄養分の供給になる。川は大地を侵食し、洪水や土砂崩れを伴いながら扇状地と氾濫原をつくり上げた。
また、日本は国土全域に火山がある珍しい国だ。定期的に噴火し人々を脅かすが、火山灰にはミネラルが含まれているため、土壌の酸性化を中和する効果がある。
高い土の肥沃度を享受することは、表裏一体をなす災害との戦いの歴史でもあった。それでも、新鮮な材料が供給されることで肥沃な大地が維持されている。元気な大地と大きな犠牲の歴史の上に、肥沃な土壌が培われてきたことを私たちは忘れてはいけないだろう。
しかしながら、いよいよ自然のレジリエンスでは人間の耕作を賄いきれなくなっている。
1906年にハーバーとボッシュが空気からアンモニアを合成し、窒素系肥料が発明された。これは文字通り大地を揺るがす革命だった。酸性化しつづける土壌を人工的に中和できるアルカリ性化合物が見つかったのだから。
しかし、そのおかげで穀物の大量生産が可能となり、人口が爆発的に増加する。同時に肉食の普及、石油系化合物の開発、エネルギー需要の増加といった生活様式の変化により、森林の皆伐・土地の開発が進められた。そうするとギリギリのところで保っていた土地の生産能力(土の養分供給能力)が限界に達し、土壌がやせていく。それでも人口は増え続け生活水準は高くなるのだから、ますます化学に頼った耕作をし続けなければならない。資本主義が人々の欲望を暴走させたように、土地活用と土壌の劣化にも歯止めが効かなくなっているのだ。
――たかが土壌侵食ぐらいと思うかもしれないが、生産基盤の劣化が文明の破綻や戦争を招くことはメソポタミアやエジプトの古代文明の歴史が証明している。過去に経験のない今を迎えている以上、伝統をさらに改良しないと対応しきれないのだ。
――本書を要約すれば、決して楽園ではない土に、必死に居場所と栄養分を求めてきた植物・動物・人間の試行錯誤の歴史の末に今がある、ということになる。その歩みを、「適応」と呼んできた。生き物たちの歴史は、「自然との共生」という生やさしい言葉で収まるものではなく、土をめぐる競争と絶滅の繰り返しであった。私たちの生活も、この自然の摂理と無関係ではなく、土を保全しなければ文明が崩壊することは歴史が教えてくれている。
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【まとめ】
1 土壌と酸性度
地球に土壌が誕生したのは5億年前。土壌は植物がなければ成り立たないため、植物が生まれてから5億年である。
土はミミズのフンによって作られる。
降水量の少ない草原や砂漠の土は中性からアルカリ性の特徴を示すが、森林が発達した地域の土は酸性になる。
水の浸透によって、土や岩石からカルシウムが溶け出し、二酸化炭素を吸収し、炭酸カルシウムとして沈殿する。これが乾燥地の土をアルカリ性にする。もっと降水量が多い熱帯の地域では、炭酸カルシウムは地下水まで流され、洗われた土は中性から弱酸性になる。
また、植物や微生物も土を分解して酸性に変えていく。
2 原初の植物たち
地球最初の土は、岩石にへばりついたコケと地衣類で作られた。これらは岩との接触面で有機酸を放出し、岩を溶かし栄養分であるリンやカルシウム、カリウムを獲得する。溶かされた栄養分の一部はコケや地衣類に吸収されるが、大部分は残存し、砂や粘土を形成する。
次に現れたのが泥炭土。泥炭土はシダ植物などの植物遺体が分解されずに蓄積された土壌である。
大量のシダ植物は大気中の二酸化炭素を取り込み、地中に炭酸カルシウムを生成した。地下に大量の二酸化炭素を固定したことで、土壌と気候を大きく変動させた。
次に登場したのがグロッソプテリスという裸子植物だ。裸子植物には「リグニン」という物質が含まれており、これは微生物にとって不味く、分解しにくい。微生物による土壌の分解が滞ると、養分が回らなくなり、生態系が止まってしまう。
これを救ったのが「キノコ」だった。キノコの一部はリグニンの分解をうながす「白色腐朽菌」であり、この菌が木を分解する。森の土の物質リサイクル機能はキノコの進化によって保たれたのだ。
今から2億年前、ジュラ紀が始まったときに登場したのは針葉樹である。アロウカリアという30〜80メートル近くにもなる巨大な針葉樹は草食竜たちの餌となったが、6600万年前の恐竜絶滅とともに北半球から姿を消す。
変わりに台頭したのが被子植物だ。東南アジアの熱帯雨林で大繁栄を遂げた被子植物が、フタバガキである。
熱帯の土は貧栄養である。東南アジアの熱帯雨林では、土は酸性になる。酸性条件では有毒なアルミニウムイオンが溶け出し、根の成長を抑制する。熱帯雨林の強風化土壌では、中和に働くカルシウムなどの成分も少ない。原住民の多くが焼畑農業に依存する理由のひとつが、酸性土壌の中和にある。アルカリ性の草木灰によって、土の酸性害を緩和できるからだ。
熱帯の土のもうひとつの問題が、植物の成長に欠かせないリンが欠乏しやすいことだ。熱帯地域の湿潤気候では岩石の風化が速く、土壌にリンを供給できる岩石がもともと少なくなっている。さらに、土壌中の養分は、風化や雨によって徐々に減少していく。実際に、年降水量2500ミリメートルのハワイ島では、400万年の風化の末に土は養分を失い、植物の生産量が減少したという。
対して、日本の土は「黒ぼく土」という。
火山灰の上に植物が育ち、植物遺体が黒い腐植として堆積する。この繰り返しで黒ぼく土ができるのだが、これは世界的にも非常に珍しい。いたるところに火山がある地形があまりないからだ。
黒ぼく土は酸性になりにくい(火山灰にアルカリ成分が多い)変わりに、一旦酸性になってしまうと中和するのが難しい。そのため作物を育てにくいのだが、樹木には関係ない。天然の樹木、ブナやスギは有機酸を排出することで、土中のリンを溶かして栄養にするからだ。
3 土の中の生き物たち
土の重要な栄養は窒素とリンだ。生き物たちは土の栄養分をめぐって知恵や技術を競い合いながら、進化の道を歩んできた。
土の中の微生物は、分解酵素である「セルラーゼ」を放出することで、食べにくいセルロースをグルコース(ブドウ糖)に分解し、栄養源としている。セルロースは野菜の主成分だが、人間には消化できない。
微生物には「栄養欠乏」と「酸性」という2つの悩みがある。
1つ目の悩みである栄養欠乏とは、微生物が酵素を生産できる量には限りがある、ということだ。酵素はタンパク質なので、材料として炭素と窒素を必要とする。つまり、利用できる炭素と窒素が充分になければ、微生物は酵素をつくることができない。落ち葉には炭素も窒素もあるにはあるのだが、摂取しやすい形態ではない。カビやキノコは、落ち葉だけではなく土へも菌糸を張り巡らせて窒素をかき集め、酵素を作り落ち葉を分解する。
2つ目の悩みは「酸性」だ。
酸性土壌にはカルシウムなどの成分が少ない。少量のカルシウムしか吸収できない植物は、一枚の葉に分配するカルシウムの量を節約する。すると、落ち葉にもカルシウムなどの中和成分が少なくなる。雨に打たれた落ち葉からはカルシウムが失われる。そこへ来て、落ち葉では微生物によってどんどん酸性物質が生産される。もう落ち葉には充分なカルシウムがなく、中和できない。中和しきれなかった酸性物質は雨に運ばれて土へ滲み込み、土をさらに酸性にしていく。
森の中の土は栄養分が少なく、かつ酸性条件であるため、微生物はいつも瀕死の状態なのだ。
土壌の働き者といえばミミズだ。ミミズは土と落ち葉を混ぜ合わせ、フンを出し、土を耕してくれる。
ミミズはほとんどの分解を腸内細菌に依存している。酸性の土を食べても、腸内でセルラーゼに最適な中性に制御される。ここでセルロースが分解され、グルコースがつくられる。さらに、腸内細菌は発酵によって、グルコースを有機酸(酢酸)に分解してくれる。ミミズは腸を通して有機酸を吸収し、エネルギー源としているのだ。
4 人とのかかわり
森林では、土が酸性になる現象はあるものの、生態系全体としては養分が失われにくい仕組みがある。ところが畑では、収穫物が畑から持ち去られ、私たちの胃袋まで届けられる。植物(野菜や穀物)が吸収したカルシウムやカリウムの分だけ、土の栄養分が生態系の外へ失われることになる。人が生きること自体、土の栄養分を減少させ、土を酸性にしてしまう危険性があるのだ。
湿潤地では、植物生育に欠かせない水(雨)に恵まれる一方で、土が酸性になってしまう問題を抱えている。この点、乾燥地の土壌は水が少ない代わりに、もともと栄養分が多いため、土壌酸性化の問題を緩和できる。
農業の抱える本質的な問題に対して、乾燥地を選ぶことで酸性土壌を回避した例が古代文明の灌漑農業であり、湿潤地で酸性土壌とうまく付き合うことを選んだ例が焼畑農業や水田農業であった。農業とは、トレードオフの営みなのだ。
湿潤地には森林が広がり、乾燥地には砂漢や草原が広がる。森林の樹木は、幹を大きく硬くすることにエネルギーを投資するが、1年で枯れてしまう乾燥地の草原植生は、子孫、つまり種子を多く残すことにエネルギーを投資する。乾燥地の草の特性を利用して農業がはじまったのだ。
今から約4000年前、メソポタミア周辺の乾燥地では灌漑の失敗によって土壌に塩が析出しはじめた。乾燥化がこれに拍車をかけた。栄養分を洗い流す酸性化が起こる湿潤地とは反対に、乾燥地では水の蒸発や蒸散によって水が吸い上げられ、ナトリウムなど塩分を多く含んだ地下水が上昇し、地表に塩分が集積する。これによってかつて緑に恵まれていたサハラは砂漠となってしまった。
一方で湿潤地では、土壌が酸性化しているため、乾燥地に適応したひ弱な作物の栽培には適していない。これを克服したのが、焼畑農業とイネの栽培だ。イネは、比較的酸性にも強い作物だ。
焼畑は、森林を伐採し、燃焼させた植物の灰を肥料として作物を栽培する。灰はカルシウムやカリウムなどのアルカリ成分を含み、土の酸性物質を中和する中和剤となる。
中和剤効果は数年間が限度であるため、村人は数年単位で耕作場所を移動する。耕作した場所はしばらく放棄し、森林や草原として土壌養分を回復させ、5〜10年後に戻ってきて再び燃やして利用する。
よく焼畑農業は環境破壊の原因として考えられていたが、焼畑農業は生態学的にも理にかなった仕組みである。問題があるのはむしろ人口増加のほうだ。その土地が持つ焼き畑による人口扶養力を超えるほど人が増えてしまうと、休閑期間が短くなり、土壌が回復しきらなくなるのだ。
5 マーケットに揺れる土
土も気候に影響を与えることは、3.5億年前の泥炭蓄積が寒冷期を引き起こしたことが証明している。現在、深さ1メートルの土には、大気中に存在する炭素量の2倍、植物体の3倍もの炭素が有機物として蓄積している。温暖化によって、微生物の分解活動が刺激されれば、土に数千年も眠っていた有機物が分解され、大気中の二酸化炭素濃度をさらに上昇させるのではないか、と予測する研究者もいる。
インドネシアでは石炭の採掘が活発化している。
石炭採掘跡地には何も生えない。要因は、またしても土壌酸性化である。石炭に含まれる硫黄が酸化すると、強酸性の硫酸に変わってしまう。この結果、もともと酸性だったpH4の土が、pH2もの強酸性の土に変わってしまう。石炭の露天掘りの景色を見れば、なんて無計画なことを、と思うかもしれない。しかし、トラックの向かう先は中国、韓国、そして日本だ。
また、採掘と並んで伐採は環境問題の悪者にされがちだが、人工林は伐採から植林に至るまでの森林管理によってこそ維持される。管理次第では森林資源の利用と土作りを両立することもできる。
皆伐の場合、土壌が過度に酸性になってしまうリスクがあるが、スギに関していえば、酸性土壌に弱くない。しかも、日本の場合、伐採した材木を持ち去っても、新鮮な岩石や、火山灰を含む土壌から新たなカルシウムの供給が見込める。樹木の養分獲得戦略である「酸性化」によって岩石の風化を促進し、再植林した樹木から供給される有機物(植物遺体)と、風化によってつくられた粘土や砂によって土壌を再構築できる。伐採・植林によって新陳代謝を促進することで、土地の生産能力(土の養分供給能力)を最大限引き出す林業を実現できる可能性もあるのだ。
マーケットが発達することで、商品作物の生産が増加する。作物がお金になればより多くの収穫を目指し、肥料への依存度が高まる。窒素肥料のまきすぎにより吸収できなくなった分が硝酸に変わり、土壌の酸性化を招く。
私たちが現在直面する多くの環境問題や食糧問題は、自らが引き起こしたものだ。この変化や自然環境にうまく対応できなければ、明日の肥沃な土も保証されないことを、地球は教えてくれている。 -
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土が誕生して5億年ということを初めて知ったが、本書は、そんな5億年にわたる土と生き物たちの関係、相互に影響してきた歴史を、世界の様々な地域を巡りながら解説してくれる。
例えば、土壌の酸性化ということを良く聞くが、どうしてそうなるのかという化学的メカニズムや、農耕、栽培作物への影響などについて多くを知ることができた。(もっとも化学式やpHについての知識はだいぶ疎くなってしまったので、どこまできちんと理解できたかは怪しいが)
「第4章 土のこれから」では、私たちの便利で豊かな日常生活や食生活が、世界の農業により支えられていること、そうした需要に応じ現金収入を得るため、現地住民は熱帯雨林の伐採や大量の化学肥料の使用など土壌劣化を引き起こしており、単純な犯人探しでは問題が何ら解決されないことが明らかにされる。
どのように土と付き合っていけば良いのか。一朝一夕の解決策はないし、どうしても悲観的に考えがちになりそうだ。それでも著者は、耕し方によって土壌を改良することも劣化することもできるのは、土からの前向きなメッセージと言う。