あらすじ
「土」を掘るのを仕事にしている。こう言うと、何を好き好んで土なんて掘っているのかと思われるかもしれない。家や道をつくるためでもなければ、徳川埋蔵金を捜すためでも……ない。100億人を養ってくれる、肥沃な土を探すためだ。(「まえがき」を一部改変) 世界の土はたったの12種類。しかし「肥沃な土」はどこにある? そもそも土とは一体何なのか? 泥にまみれて地球を巡った研究者の、汗と涙がにじむ一綴りの宝の地図。
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カラー写真ばかりでめちゃくちゃ贅沢な本です。これが文庫でたったの920円(税抜)。すごい時代ですね。
内容としては、土壌学の基礎を学ぶことができます。私に指導してくれた人の土壌学と内容的にそれほど大きな違いはない(『土壌サイエンス入門』)けど、それでもポドゾルとかチェルノーゼムとか、黒ぼく土とか、最新の研究など、色々細かい情報も含めて書籍になっているので、初学者の人にもやさしく、オススメできる内容になっています。
最近では土壌を売る、ということもやっているらしい。良くないねぇ。
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土が岩石からの砂と生物(植物もそう記載)の有機物≒遺体が分解されたものが混ざったものであり、その地域の環境により12の大分類に分けている。
粘土集積土壌、強風化赤黄色土、オキソシル、ポドゾル、黒ぼく土、水田土壌、チェルノーゼム、若手土壌、泥炭土、永久凍土、未熟土、砂漠土
日本の土は若手土壌、黒ぼく土。高温多湿で土の中の生物の活動が活発で、土が生まれやすいが、二酸化炭素を多く放出するため酸性度が高く、必ずしも肥沃な土壌とは言えない。ここは石灰により中性にするとよく植物が育つ。水田土壌も水を引き込むことで中性になり、鉄についているリンが還元されることで肥沃な土壌になる。
一番肥沃な土壌はチェルノーゼムであり、ウクライナ、北米プレーリーの土壌。中性で、粘土と植物遺体が程度に混ざっている稀有な土壌である。
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普段はほとんど気に留めない「土」をテーマにした面白くてためになる本。
豊富なカラー写真と見やすいイラスト、ウィットに富んだ語り口の文章など、随所に魅力あふれ、ふーんそうなんだと頷き、くすっと笑いながら読み進められた。
肥沃な土を求める人類の歴史・歩みの話も交わり、これからの人口増に否が応でも真剣に世界の人と協調していかねばならない農業・農地の社会課題にも繋がる、視野を拡げるのに最適な一冊。
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痛快な本だ。学問するのは、楽しいと思わせる。世界中をスコップを持って飛び回り、蚊に刺されながらも土を掘る。そこで、土の何かを発見する。まさに、学問は現場にあるのだ。
人口爆発、食糧危機、環境破壊、砂漠化、土壌汚染。土は、地球最後の謎と言われている。
藤井一至は100億人を養う土壌を求めるのである。土だけで、これだけ楽しく語るのは素晴らしい。世界の土壌には大まかに分けて12種類ある。大まかに分けると黒い土が三つ。赤い土が一つ。黄色い土が一つ。白い土が二つ。茶色い土が一つで、残りは、凍った土、水浸しの土、そして何の特徴もないのっぺらぼうの土。まさに、多様な土が存在する。
とにかく、12種類の土を、スコップで掘って確かめるのだ。地球上で、最も肥沃な土地が、チェルノーゼムだと言われていた。それは、私もそう思い込んでいた。チェルノーゼムは、①黒海からウクライナのチェルノブイリ辺りで、ウクライナが世界の30%が集中している。ロシアの侵攻は、豊かな土を欲しがった。 ②北アメリカの五大湖近辺から南北に貫くプレーリー、③南アメリカのアルゼンチンにあるパンパである。チェルノーゼムは、黒い土なのだ。 日本の黒い土や泥炭土に比べて、ずしりと重い。粘土や砂の粒子を覆うように腐食がくっついている。土は中性である。プレリードッグ、ジリス、ミミズが土を掘り返している。それでもチェルノーゼムは毎年1センチメートルづつ減少している。
ところがである、農作物が一番とれ、そして人口密度が高いのは、黒ぼくの土だった。甲子園の高校球児の白いユニフォームを黒く染める土。松尾芭蕉も「足袋 ふみよごす 黒ぼこ土」と詠んだ。黒ぼこ土は、北海道から東北、関東、九州に至るまで全国に分布している。その分布は、火山や温泉の分布と一致する。土が黒いことは、腐食の多い肥沃な土の証しだ。実は、チェルノーゼムより腐食が多い。(知らなかった)結局、CO2が一番蓄えられているのが黒ぼく土だった。
チェルノーゼムの腐食と比べて、黒ぼく土は10倍の埋蔵量だった。素晴らしい。
日本は、国土の70%が森林で、黒ぼく土は30%ある。ある意味ではCO2を一番蓄えている国でもある。黒ぼく土の発達が異常に速い。平均すると1万年の間に1メートル、100年に1センチメートルの厚さができる。これは南米やアフリカのできるの10倍速なのだ。縄文時代の人々が暮らしていた1メートル下の地面から盛り上がってきた。年中湿潤で温暖な日本生まれ、日本育ちなのだ。食べ物が腐りやすい気候は、土壌の微生物が旺盛なのだ。レタスがたくさんとれる野辺山高原サラダ街道は、縄文時代からの土の作り上げた土だったのだ。黒ぼく土は落ち葉が一年もすれば跡形なくなる。チェルノーゼムでは、五年経過しても落ち葉の半分が残存する。水が足りなく、微生物が働かないのだ。
人口増加の時代に、人口減少する日本の土が、一番人間を養うことができるのだ。
結局、腐食の多い黒い土と雨が多く降る地域が人を養うことができ、また水田が連作障害が起こらない農法だった。
この土を巡る物語と人口100億人を養う土が日本の土だったという結論は、大きな希望を持たせる。この土を大切にしていないなぁと痛感して、地球規模で土を巡る研究が旺盛になされていることに、藤井一至の大きな活躍の意味があった。いい本を読んだ。そして、いい気づきがたくさんあった。もう一度土をしっかり見つめて、土の期待に応えよう。
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地球上のすべての人間を食わせることができる豊かな土壌を求め、世界中を旅して土の謎を解き明かそうとする筆者の自伝的な研究紹介。
私の大好きな、研究大好きクレイジー系科学者。もう少し本人の人間臭い部分が出ていても良かったとは思うが、土壌大好きの筆者に飲み込まれて一緒に土が好きになる。
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1012
「地球にしか土がない」というのは、勉強を始めたばかりの頃、私にとっても意外だっ
私たちは、記憶や愛が〝風化〟すると 喩えるように、風化=劣化・消失と捉えがちだが、風化はただ岩を分解するだけではなくて、そこから土を生み出す現象を含んで
まだ見ぬ世界には農業に適さない土があるという。北欧が一例だ。サンタクロースの故郷であるフィンランドは、寒冷で肥沃な土壌も少ない。フィンランドの人々は、なぜ自分たちの祖先がフィンランドを選んで定住したのか? と自分たちの生活を面白おかしく笑いの種に
フィンランド人の起源は明確ではないが、岩と沼地が多いという土に関する記述は正しく、凍っていない湖さえあれば水泳をしようとするフィンランド人の習性は今も健在である。プータロと呼ばれるサウナ小屋と湖を行っ���り来たりする。断っておくが、現在のフィンランドは、世界で最も教育水準の高い国の一つで
緑豊かな熱帯雨林とハイビスカスの花のように赤い土壌。コントラストが鮮やかな景色はエキゾチックだが、赤色の土なら日本にもある。それも東京都だ。山手線を浜松町で降りてフェリーに乗り継いだ1000キロメートル先、小笠原諸島で
チガヤは日本でも道端に生えているイネ科の雑草だ。窒素やリンは乏しいが、カリウムを多く含む。乾いた草原はしばしば火事を受け、その灰が土に加わる。そこには再び、チガヤが育つ。圧倒的な生命力
私の専門は、土壌学という。研究対象が地味な上に、私自身アピール力に自信はない。「裏山の土の成り立ち」を研究する若者にはスポンサーが不可欠だ。研究費がなくなり、にっちもさっちもいかなくなって恩師の研究室に電話をすると、こちらが話す前に「ナンボ足りんの?」と迎えてくださった小﨑隆京都大学名誉教授(現・愛知大学教授)には、感謝の言葉もない。恩師は、近く国際土壌科学連合の会長として「国際土壌の 10 年(2015~2025年)」の旗振り役を務める。「先生はいつ電話がかかってきてもよいように準備されていましたよ」と秘書の方から伺い、スコップを持つ手にも力が入っ
フィンランド人の起源は明確ではないが、岩と沼地が多いという土に関する記述は正しく、凍っていない湖さえあれば水泳をしようとするフィンランド人の習性は今も健在である。プータロと呼ばれるサウナ小屋と湖を行ったり来たりする。断っておくが、現在のフィンランドは、世界で最も教育水準の高い国の一つで
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大学時代に少々勉強した土壌学であったが、現実の問題に触れ(園芸も始めて)、改めて勉強すると非常に奥深い。人生学びを深めていくと、知りたいことが山程出てくる。
持続可能な食料システムへの転換、そして土壌中への炭素固定の問題など、これから土壌学はますます重要になりそう。
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第7回河合隼雄学芸賞受賞作。わたしはマニアックな地名について問われても即答できるほど地理が好きなのだが、高校時代には地理を選択しなかったこともあり、その内容はあくまでも教科書的な智識ではなく、趣味として個人で蓄えたに過ぎない。そのため、たとえばポドゾルやチェルノーゼムといった、高校地理で学習する範囲の智識についてはまるで詳しくなく、そのへんの受験生を適当に捕まえて訊いたほうが詳しいだろう。だからコンプレックスを感じていたというほどではないのだが、土にかんする智識もいつか身につけたいとつねづね感じており、そのことも本書を手にとった理由のひとつである。さて肝腎の内容だが、著者が「まえがき」で記すように土というメチャクチャ地味な世界を扱っているにもかかわらず、かなりおもしろく読むことができた。構成としては、12種類(著者による分類)の土をそれぞれ実際にその眼で確かめるべく各地を股にかけたエピソードを交えながら、それらについて学術的な解説を展開するという形になっており、エッセイ的な楽しさもある。土にかんする理解も深まったし、われわれの生活がじつに多くの種類の土から成り立っているということは、言われてみなければなかなか気づかない。また、読んでいて名著『銃・病原菌・鉄』を思い出した。同書では、特定の地域にだけ文明が栄えた理由として農作物を挙げているが、本書の内容を踏まえてより正確な言い方をすれば、農作物そのものというよりもむしろ「土」だろう。冒頭の分布図をみてもよくわかるが、世界の中で農作物の生育に適した土壌がある地域は驚くほど少ない。ヨーロッパにはたまたまチェルノーゼムや粘土集積土壌といった肥沃な土壌が拡がっていたために、早くから世界史の中心となることができたのだろう。また、おなじように日本列島に世界的には稀少な黒ボク土がたまたま集まっていたために、こんな極東の島国に多くの人が集まり経済大国を築くことができたのである。このように、『銃・病原菌・鉄』のサブテキストのような読み方もできるため、同書の読者にもぜひ読んでほしい1冊である。
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土壌学の本。著者によると、地球上の土は12種類に分類できるらしい。実際に12種類の土を求めて世界各国を訪問し、土とは何かを考察する。
自分自身も農学部の出身だが、機械系だったので土そのものにはあまり関心が無かった。ぜいぜい植物の生育に必要な土と化学物質くらいの知識しかなく、社会人になると農業とは違う世界に進んだので、土がどのようにできるか等全く知らなかった。この本では、著者の体験と併せて判りやすく(例え話も適切)解説しており、読んでいてとても面白かった。土についての知識を得ることで、毎日見ている風景が違って見えてくるような気がする。旅行に出掛けたら、動植物と共にその土地について考えてみるのも良いかもしれない。
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パワポで作られたと思われる資料がところどころに挟まれており、カラー写真の多さからも非常にわかりやすくて良い。
農業をやりたくて土壌の本をいくつか読んでいた時期もあったが、その時にこの本に出会えていればと感じている。それだけ充実した内容であり、専門的でありながらも非常に楽しく読めた。
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地球〝最後“のナゾというと大袈裟な気もするが、著者がそう表現する気持ちも良く分かる興味深い内容。恐らく畑いじりをする方でもないと、普段、「土」を意識することは無いのではないか。個人的には、この本の前にペーハー(pH)についての本や土と内臓に関する本を読んでいたこともあり、本書がより理解できた。読めば読むほど自分の「無知」を知るのだが、読めば読むほど、連鎖して「楽しめる読書が広がる」という事もまた事実である。
地球にしか土がない。著者にとって意外だったようだが、その驚きをこの本の読者にも伝えてくれる。月面にはとても細かなパウダースノウのような粒子があるが、これは、専門家が定義する「土壌」とは違う。そもそも「土」ってなんだ、という所から本書はスタートしていく。
月でも岩は風化する。岩に含まれる鉱物粒子が太陽からの熱を受けて温まり、膨張したり収縮したりを繰り返す中で、鉄物の結晶粒子の岩石は徐々にもろくなり、分解されていく。だが、月ではこの粒子に死んだ動植物が混ざる事がないので、土壌が形成されていかないのだという。命のない粒子。
地球では、12種類の土に区別ができるという。この12種類の世界の土と出会う旅が本書の見どころでもある。世界人口の食糧を生産している肥沃な土はどれなのか。最も肥沃な土壌はチェルノーゼムと言われるもので、ウクライナやアメリカに広がっている。アメリカ合衆国が世界の超大国たりうる理由を土から語る事もできると著者はいう。アメリカは、広い国土の9パーセントも占めているらしい。尚、日本にはチェルノーゼムがない。ステーキとハンバーガーの食文化には肥沃な土が関係している(多分)。
― 入植後、ウシの放牧を始めた人々は、一つ大きな壁にぶつかる。それは、フンの壁だった。なんとウシのフンが分解されなかったのだ。ウシは毎日、大量のフンをする。フンは畑の栄養分の塊であり、フンコロガシによってリサイクルされることで草原の肥やしとなる。ところが、フンコロガシが仕事をボイコットしたために、養分のリサイクルが停止してしまったのだ。ヒトなら消化不良にあたる。土壌の問題以前に、フンが残留した不衛生な環境ではハエや寄生虫が大増殖し、住民の健康被害すら引き起こした。
土壌が内蔵だとしたら、この地球は一つの生命体で、我々自身はバクテリアか病原菌と変わらぬ存在なのかもしれない。急に飛躍するが、上記の文章から『土と内臓』という本を思い出し、ふとそう思った。人間の存在自体がナゾなのだから、やはり土が〝最後“のナゾという事は無さそうだ。
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土の研究者による土の解説書。
土を追い求めて出不精な研究者が世界中を旅して土の採取をしている。
写真や図付きでわかりやすく12分類の土のある場所や性質などわかりやすく書かれていて非常に面白かった。
ただ例え話はわかりずらい(笑)
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土がとっても貴重なものだってことも、土にいろんな種類があることも、日本の土の豊かさがどの程度なのかってことも、なにもしらなかったので、興味深くよめました!!おもしろかった!
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100億人の食糧を生産するための土壌を探す。
飽食の日本に住んでいると世界的規模で食糧の不足は全く考えたことがなかった。エネルギー不足は常に意識しているのに。
土壌の成り立ちの化学的説明、植物生産量や肥料代を数字で解説してくれるところが分かりやすかった。
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前半は世界の土壌を12種類に分類してそれぞれの土を訪ねていきつつ特徴を説明し、後半ではどの土壌が食糧生産に適しているのかを考えます。肥沃な土壌と言えばチェルノーゼムですが、それも現代の大規模農業で使い込むとあっさり栄養が無くなるそうで土だけに頼るのも難しいのですね。
それにしても、こういう自然科学系の本を読むと、日本列島って変なところだなぁと改めて思いますね。
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藤井一至氏が2018年に刊行した土に関する新書。
ニュースで高校地理が必修科目となると聞いて、久々に地理の勉強してみるかーと思い購入し、一晩で読破。
藤井氏がシャベル1つで世界中の12種類の土を巡る旅?(研究)の様子がとても読みやすくまとめられている。
まるで藤井氏と一緒に世界中の土を巡っている気分が味わえた。
読後は改めて私たちの生活の土台となっている土は、当たり前のものではなく、日本という国は恵まれていることが再認識できた。
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土には十二種類しかないこと、肥沃な土地は世界に少ないこと、しかし貧しい土地でも改良すれば作物が取れる土地になること、逆に汚染してしまうと取り戻すのが難しいことがとてもよくわかった。
土の定義から、書き起こしており、その土にあった営みをしていく必要があると感じた。これから農作業をする機会があった際には、じっくり観察してみたい。
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( ..)φメモメモ
地球の岩石は、水と酸素と生き物の働きによって分解する。これを風化という。
青色の鉄を含む岩が水に溶け出すと、酸素によって酸化され、赤色や黄色の鉄さびへと変化し、粘土の一つが生まれる。
風化は劣化・消失ではなく、土を生み出す現象を含んでいる。
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土壌学を専攻し、土を求めて世界を巡る。時に不審者として職務質問され、時にトレジャーハンターに間違われる著者。少し前にラジオ出演していたの聞いた記憶がある。全人類100億人を飢餓から救う壮大な目標! 12種類の土の研究は、いきおい農業と密接なつながりを持つ。日本の土は結構肥沃だと思っていたが、火山灰と腐植が堆積した酸性の黒ぼく土という分類になるという。畑は、確かに苦土石灰での中和が必要だし、肥料を施さなければ作物がうまく育たない。水田は、水を張ることで中和されるという視点が得られた。カテゴリは自然科学へ。
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土ってやっぱりすごいですね!と考えさせられてしまう一冊。
世界各地の土壌を研究している方の、壮大な研究成果。そしてまだまだ探求は続く。続編を期待しています。
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地球人工100億人を養う肥沃な土壌を探す旅仕立ての語り口調が面白い。様々な土壌の成り立ちや用途を面白おかしく解説してくれる。
地球の土壌は12種類に分けられ、死んだ動植物が腐葉土よりも分解された腐食が土壌の栄養素の源である。腐食と粘土は様々な栄養素や水分を保持する力が強い。粘土と腐食が多い土壌が肥沃な土である。
日本の土壌は高温多湿で微生物の働きが強いため、最も稠密な人口を養える黒ぼく土が多い。肥沃な土と世界で名高いチェルノーゼムは降雨量の少ない土地に多く、土と水が必要な作物栽培では一歩劣る。
二酸化炭素や有機酸が水に溶け込むことにより酸性土壌となるため、アルカリの石灰肥料で中和する必要がある。
水田は、灌漑水でアルカリ成分を取り込ませることで土壌を中性にし、嫌気性にすることで鉄さび粘土を溶かし拘束していたリンを供給する。また、水を入れ替えることで細菌環境をリセットし連作障害をなくす。
書かれている内容をすべて理解するには、当然だが化学知識(各種イオン)が必要なためその点自分には難しかったが、単純な読み物としてもとても面白かった。
Posted by ブクログ
地球上にある土は12種類に分類されるらしいです。
そこに育つ植物も当然その土壌に左右されます。
砂漠や凍土に草も木も生えないことから想像するのは
たやすいと思います。
逆に作物に有用な土も存在します。残念ながらそれは
日本ではないのですが、そんな豊かな土を世界中に
広めることができれば世界中から食料危機なんぞは
無くなるのでは?
そんな思いを込めて研究をしている学者がいることを
知るだけでも本書は一読の価値があります。
Posted by ブクログ
土。この足もとに存在するありふれた物質には様々な特長があり、12種類に分類されるという。世界の12種類の土を探す著者の旅が、軽妙な語り口で語られる。
チェルノーゼムやポドゾルなどは、その昔、高校の地理で目にした土の名だが、そういえばなぜ地学ではなくて地理で土壌について学んだのだろう?と改めて思い至る。
それはやはり科学的な視点よりも、世界の食糧事情を担うファンダメンタルであるという社会的な視点からなのだろうか。
土壌を研究する著者の目的も、あくまでも100億人を養うことができる土を見つけて、将来的な食糧不足を解消することにある。
はたして、人類の未来を託すことができる土はあるのか。
Posted by ブクログ
土の種類など全くわからなかったけど勉強になった。話もストーリー仕立てで面白い。日本の土特化の話をもっと聞きたいかも(日本は建物などの埋没が早い、の理由はなんとなくわかったけど詳細をもっと!)
Posted by ブクログ
そこら辺にある土に肥料等を混ぜ込めば何かしら食料となるモノが育つのかと思っていたが、大間違いだった。
我らの胃袋を満たしてくれる食物を育てられる土が意外と希少なものだったとは。
土から見た食糧問題。
結構不安になる。
Posted by ブクログ
土から見た世界ってなところで新しい発見がいっぱいあった。確かに世界のどこでも農業ができるわけではないし、こんなに大切な事なのに考えたこともなかった土、この認識が広がるといいと思った。あとカラーページが多くて時代の変化もすごいなと思った次第です。
Posted by ブクログ
土 地球最後のナゾ
100億人を養う土壌を求めて
著者 藤井一至(かずみち)
2018年8月30日発行
光文社新書
地球温暖化のニュースで流れる氷河が海へと倒壊する映像は、氷河が成長して押し出された縁の部分が陸地の支えを失って崩壊しているだけで、温暖化で融解しているわけではない。
この本で最も印象に残る一文。バブル象徴映像として、バブル崩壊後にオープンしたジュリアナ東京の映像が流れるのに似ている。
著者は、土の研究者で、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。NASAが本気で目指す火星への入植。注目される火星の“土”よりも、100億人を養える足もとの土の可能性にもっと注目してもらいたい。
学会定義:土壌とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったもの。
土の黒色の正体は「腐植」で、火星の土にはない。腐った植物だが、落ち葉や枯れ草や根といった植物遺体に限らず、動物や微生物の遺体やフンも材料となる。
火星の表面は凍っているが、かつて存在した水や酸素により粘土が存在。しかし、腐植がない。だから土壌ではない。月は砂であり土ではない。
熱帯雨林の本には、豊かな森の下の土壌は薄く脆弱で伐採すると不毛化すると書いてあるが、それは落葉層、腐植層に限った話で、土そのものは深い。伐採すると土はレンガと化し、不毛な大地となるというのは真っ赤な嘘。
日本の土の30%は黒ぼく土。世界的にレアな土が集中している不思議な国。黒ぼく土は反応性の高いアロフェンと呼ばれる粘土が多く、腐植と強く結合する。
ウクライナでは最も肥沃な土・チェルノーゼムが1トンあたり1~2万円で売買され、砂漠地帯などへ持っていかれる。肥沃な表土を失った土地はごみの埋め立て地となっている。
一つの地域の土壌の農産物ばかりを食べていると栄養素が偏るリスクがある。スーパーでいろんな産地の食材を選ぶことが健康にはいい。
土の種類は世界に12種類しかない。
1.未熟土:岩石、そして、未熟土がすべての始まり
2.若手土壌:未熟土が風化
3.永久凍土:極寒の未熟土
4.泥炭土:未熟土が水浸しになったもの
5.砂漠土:未熟土が乾燥
6.ひび割れ粘土質土壌:玄武岩や粘土が多い未熟土
7.チェルノーゼム(黒土):未熟土に腐植が蓄積、最も肥沃な土
8.粘土集積土壌:チェルノーゼムが粘土移動
9.黒ぼく土:未熟土が火山灰の場合
10.ポドゾル:若手土壌で砂質が酸性
11.強風化赤黄色土:若手土壌が風化して粘土移動
12.オキシソル:若手土壌が風化して鉄が多い場合、or強風化赤黄色土が風化