あらすじ
「土」を掘るのを仕事にしている。こう言うと、何を好き好んで土なんて掘っているのかと思われるかもしれない。家や道をつくるためでもなければ、徳川埋蔵金を捜すためでも……ない。100億人を養ってくれる、肥沃な土を探すためだ。(「まえがき」を一部改変) 世界の土はたったの12種類。しかし「肥沃な土」はどこにある? そもそも土とは一体何なのか? 泥にまみれて地球を巡った研究者の、汗と涙がにじむ一綴りの宝の地図。
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Posted by ブクログ
土には十二種類しかないこと、肥沃な土地は世界に少ないこと、しかし貧しい土地でも改良すれば作物が取れる土地になること、逆に汚染してしまうと取り戻すのが難しいことがとてもよくわかった。
土の定義から、書き起こしており、その土にあった営みをしていく必要があると感じた。これから農作業をする機会があった際には、じっくり観察してみたい。
Posted by ブクログ
地球人工100億人を養う肥沃な土壌を探す旅仕立ての語り口調が面白い。様々な土壌の成り立ちや用途を面白おかしく解説してくれる。
地球の土壌は12種類に分けられ、死んだ動植物が腐葉土よりも分解された腐食が土壌の栄養素の源である。腐食と粘土は様々な栄養素や水分を保持する力が強い。粘土と腐食が多い土壌が肥沃な土である。
日本の土壌は高温多湿で微生物の働きが強いため、最も稠密な人口を養える黒ぼく土が多い。肥沃な土と世界で名高いチェルノーゼムは降雨量の少ない土地に多く、土と水が必要な作物栽培では一歩劣る。
二酸化炭素や有機酸が水に溶け込むことにより酸性土壌となるため、アルカリの石灰肥料で中和する必要がある。
水田は、灌漑水でアルカリ成分を取り込ませることで土壌を中性にし、嫌気性にすることで鉄さび粘土を溶かし拘束していたリンを供給する。また、水を入れ替えることで細菌環境をリセットし連作障害をなくす。
書かれている内容をすべて理解するには、当然だが化学知識(各種イオン)が必要なためその点自分には難しかったが、単純な読み物としてもとても面白かった。
Posted by ブクログ
土。この足もとに存在するありふれた物質には様々な特長があり、12種類に分類されるという。世界の12種類の土を探す著者の旅が、軽妙な語り口で語られる。
チェルノーゼムやポドゾルなどは、その昔、高校の地理で目にした土の名だが、そういえばなぜ地学ではなくて地理で土壌について学んだのだろう?と改めて思い至る。
それはやはり科学的な視点よりも、世界の食糧事情を担うファンダメンタルであるという社会的な視点からなのだろうか。
土壌を研究する著者の目的も、あくまでも100億人を養うことができる土を見つけて、将来的な食糧不足を解消することにある。
はたして、人類の未来を託すことができる土はあるのか。
Posted by ブクログ
土 地球最後のナゾ
100億人を養う土壌を求めて
著者 藤井一至(かずみち)
2018年8月30日発行
光文社新書
地球温暖化のニュースで流れる氷河が海へと倒壊する映像は、氷河が成長して押し出された縁の部分が陸地の支えを失って崩壊しているだけで、温暖化で融解しているわけではない。
この本で最も印象に残る一文。バブル象徴映像として、バブル崩壊後にオープンしたジュリアナ東京の映像が流れるのに似ている。
著者は、土の研究者で、国立研究開発法人森林研究・整備機構森林総合研究所主任研究員。NASAが本気で目指す火星への入植。注目される火星の“土”よりも、100億人を養える足もとの土の可能性にもっと注目してもらいたい。
学会定義:土壌とは、岩の分解したものと死んだ動植物が混ざったもの。
土の黒色の正体は「腐植」で、火星の土にはない。腐った植物だが、落ち葉や枯れ草や根といった植物遺体に限らず、動物や微生物の遺体やフンも材料となる。
火星の表面は凍っているが、かつて存在した水や酸素により粘土が存在。しかし、腐植がない。だから土壌ではない。月は砂であり土ではない。
熱帯雨林の本には、豊かな森の下の土壌は薄く脆弱で伐採すると不毛化すると書いてあるが、それは落葉層、腐植層に限った話で、土そのものは深い。伐採すると土はレンガと化し、不毛な大地となるというのは真っ赤な嘘。
日本の土の30%は黒ぼく土。世界的にレアな土が集中している不思議な国。黒ぼく土は反応性の高いアロフェンと呼ばれる粘土が多く、腐植と強く結合する。
ウクライナでは最も肥沃な土・チェルノーゼムが1トンあたり1~2万円で売買され、砂漠地帯などへ持っていかれる。肥沃な表土を失った土地はごみの埋め立て地となっている。
一つの地域の土壌の農産物ばかりを食べていると栄養素が偏るリスクがある。スーパーでいろんな産地の食材を選ぶことが健康にはいい。
土の種類は世界に12種類しかない。
1.未熟土:岩石、そして、未熟土がすべての始まり
2.若手土壌:未熟土が風化
3.永久凍土:極寒の未熟土
4.泥炭土:未熟土が水浸しになったもの
5.砂漠土:未熟土が乾燥
6.ひび割れ粘土質土壌:玄武岩や粘土が多い未熟土
7.チェルノーゼム(黒土):未熟土に腐植が蓄積、最も肥沃な土
8.粘土集積土壌:チェルノーゼムが粘土移動
9.黒ぼく土:未熟土が火山灰の場合
10.ポドゾル:若手土壌で砂質が酸性
11.強風化赤黄色土:若手土壌が風化して粘土移動
12.オキシソル:若手土壌が風化して鉄が多い場合、or強風化赤黄色土が風化