鳴海章のレビュー一覧

  • いのちに抱かれて 楓子と大地の物語

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    ばんえい競馬を何も知らずに、馬が可哀想という考えもあるんだ〜と思っていた自分が申し訳なくなるほど、馬の周りにいる人々の思いがとても伝わってくる。歴史あるばんえい競馬を少し知れる本で、ばんえい競馬の味方が大きく変わった。馬と人間と。それぞれを大切に思う気持ちに涙が出る話でした。

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    2026年09月03日
  • 狼の血

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    この作家の作品を読むのは初めてかもしれない。サスペンスや警察小説の印象が強かったが、本作は人の心の闇に深く踏み込んだ一冊。

    文庫で720ページ。普段から厚めの本は好きなほうだが、700ページを超えるとさすがに存在感が違う。手に持ったときの小口の厚みが心地よく、これは電子書籍では味わえない感覚だと思う。

    物語は、どこにでもいる普通のサラリーマンが、ひょんなことから拳銃を手に入れ、無作為の殺人を始めていくというもの。けれど読み進めるうちに、この主人公は絶対に「普通」ではないと感じさせられる。日常生活について、多くのページを費やした冗長なまでの描写(特に天ぷらそばを食べる場面)が、彼の抱える深い闇を浮かび上がらせている。

    作中に「みんなシャボン玉の中にいる」というような一節があったと思うが、まさにその閉ざされた空間の中で心の闇はどんどん膨らんでいき、たとえ拳銃を手にしなくても、いつか何らかの形で爆発していたのだろうと思わせられた。

    そして読み終えて思う。この主人公に限らず、世の中で「普通」とされている人間も、みな心のどこかに闇を抱えているのかもしれない。それをうまくやり過ごせるかどうかは、本当に紙一重なのだろう。

    光文社文庫 720ページ

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    2026年07月12日
  • 鬼哭 ~帝銀事件異説~

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    帝銀事件の真犯人とその動機を独自のストーリーにしてあり、面白かった。だが内容は凄惨で心の痛いお話だった。泣いた赤鬼、昔読んでボロボロ泣いたことを思い出した。

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    2025年03月08日
  • ゼロと呼ばれた男

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    読んでいる間、全身にGを感じまくりだった航空小説。

    ほとんど航空機に関しての予備知識・造詣が無い私にすらもビシビシ伝わって来る程に、とにかく戦闘機周りの描写が緻密。飛行中の挙動、コックピット内の様子や敵機を追い込む際の一瞬の思考。
    ロマン脳汁がダダ漏れで拭くのが大変。
    「敵機が自機の後方一〇〇フィート近くにまで食らいついてきた時にパイロットにできることは少ない。ハイG横転はそのうちの一つだ。(略)ぐるぐるとラセン状の飛行を続けながら、しかも上昇する。」(p140、p141)
    どうです、カッコ良くないですか?

    しかも何が素晴らしいって、上記抜き出し部分もそうだが、世界観を妨げない程度に適度な補足説明がまぶされているので、私みたいな飛行機素人でも何がどうなっているのか付いて行けるというのは非常に大切。

    白いコートの謎の東洋人や〈商人〉スメルジャコフとの因縁、国家間の陰謀…と持ち越しの伏線多数。


    巻末に収録されたときわ書房本店・宇多川氏とさわや書店フェザン店・田口氏とのスペシャル対談ももれなく熱い。確かに工藤秀三整備班長の「マニュアルはオレだ」(p107)は燃える名台詞。

    また新しいジャンルへの扉を開いてしまった…。


    1刷
    2022.9.11

    1
    2022年09月11日
  • ナイト・ダンサー

    購入済み

    海外ミステリっぽい

    盛りだくさんで楽しめました。先が気になって早読みしてしまったので二周目は戦闘シーン想像しながらゆっくり読みます。

    #カッコいい #ドキドキハラハラ #ダーク

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    2022年02月09日
  • 原子力空母「信濃」 最後の出撃 下

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    ネタバレ

    「カールヴィンソンを阻止せよ」命じられた「信濃」、新名司令の決断は?ってのと、中国主席と群神の決断への合衆国の対応は?の二つが絡み合いつつも双方それぞれ劇的に終わる。「信濃」は撃沈され、群神も政府専用機毎爆殺される。

    うわぁ、次に首相になって群神のケツ拭く人は可哀相すぎるだろ、これ。

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    2020年12月08日
  • 原子力空母「信濃」 最後の出撃 中

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    ネタバレ

    旗艦しらねを撃沈され、士気を落としたまま帰路につく「信濃」、そして群神が動き、中国が動き、合衆国大統領も動く。

    南シナ海がホットスポットなのは、2020年の今そこにある危機だけど、敵と味方の組み合わせが今とは全然違うのな。チャイナを信用して組むなんて、加藤紘一や小沢一郎の晩年じゃあるまいし。

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    2020年12月06日
  • えれじい

    購入済み

    読み応えのある一冊

    あらすじに麻薬中毒者による立て籠もり、女性警官射殺、中学生による乱射事件云々とあったので「面白そう」と購入を決定。予想したよりも立ち回りは少なかったが、巧みなストーリー展開でなかなか真犯人にたどり着けない。ふと気づくと主人公の佐倉と一緒になって犯人を追っていた。「うだつをあげない」ヤクザの跡見はスジが通っていてかっこいい。成果主義や拝金主義がはびこる世の中では「偉くなったヤツ、カネを稼いだヤツが結局は勝ち」というのはたしかに現実。だが、本当にそれでいいのかを考えさせられた。

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    2020年03月23日
  • スーパー・ゼロ

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    ストーリーは相変わらず面白い。

    が、「これは理系の学術書か?」と思わせる程に小難しい専門的な話が大部分にわたってなされている。
    こてこての文系の私にはきっとそんな部分の3分の1も理解出来ていない。理解出来ないが故に「なんかよく分からないがすごいらしい」というとてつもなく頭の悪い結論に達し、最後まで細かいことはスルーしてストーリーだけを追った。

    男も惚れる男、ジークは相変わらずかっこいい。私もシリーズ3作目まで彼を追い、すっかりジークの虜だ。

    シリーズ4部作も次で終わりとなる。早く読みたい気持ちと読み終わるのが惜しい気持ちが同時に存在するが、やっぱり早く読みたい気持ちが勝るので、すぐにでも続きを読もうと思う。

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    2019年01月18日
  • ネオ・ゼロ

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    今回も面白かった。ほぼ1日で本を読み終える程に夢中になるのは久しぶりだった。

    前作同様の空中戦の臨場感に加え、サスペンス要素の強さも堪らない。まさに手に汗握る展開。張り巡らされた陰謀に読みながら体に力が入った。

    アメリカやソ連に翻弄されたまま、為す術もなく日本は敗北するのか。そう思ってしまったところからのどんでん返し。糸が繋がり、物語は終わりへと繋がった。

    今回もジークは見事に死地から生還し、日本の完全なる敗北は間逃れた。

    飛行機マニアというわけでもなければ零戦に大いなる夢とロマンを抱いている質でもないが、そんな私でも純国産戦闘機ネオ・ゼロには胸が躍らないでもない。不思議とワクワクする。

    フィクションだから出来ることではあるがフィクションとは思えない程の臨場感というか現実味というか、あまりにも現代に即しているような気がしてこれが復刊された、随分前に書かれた小説であることを忘れてしまっていた。

    なるべく早く、続きを手に取りたい。

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    2019年01月11日
  • ゼロと呼ばれた男

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    まず一言。めちゃくちゃ面白かった。そしてアツい。かっこいい。

    帰省したときにたまたま平積みにされていたのを目にして、タイトルで購入を決めました。去年の夏のこと。
    単純に「ゼロ」に惹かれて買ったので(友人知人は理由を察して半笑い)正直、内容にはさほど期待はしていませんでした。でもそれは、読み始めてすぐに、良い意味で裏切られました。

    主人公の那須野がかっこよかった。まさにいい男だった。
    空中戦の臨場感がすごい。想像も及ばない世界のことの筈なのに目の前に様子がありありと浮かんでくる。一緒になってGを体感しているようで読みながら体に力が入った。どうりでいつもより肩が凝る。

    耳慣れない戦闘機の名前やら用語やらが飛び交っていて、小難しい小説か? と最初は思ったものの、どんどん物語に引き込まれていき、次々と頁をめくっていた。

    続編があると知り、読み終えたその足で書店へ向かい、すぐに続きを購入してしまった。もうしばらく那須野と共に空を飛んでいたいと思う。

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    2019年01月10日
  • 鎮魂 浅草機動捜査隊

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    浅草機動捜査隊シリーズ、8作目。

    とうとう辰見刑事が定年に。最後の一日だというのに、次から次へと事件が勃発し、まさかの、、、展開になりそうだったけど、ならなくて本当に良かった。「マリアの骨」とか「カタギ」などこれまでのシリーズ作品と重なることも多く、グッとくる場面もいっぱい。小町の方も、かなり、というか本当にキツい事件だったけど、これが彼女にとって過去の悪夢を乗り越える一歩になってくれたらいいなと思えるものだった。でも、最後はね、お互いもうちょっと踏み込んでくれても良かったのにぃ(苦笑)。カッコつけ過ぎだよ、辰見さん、、、。
    辰見の定年でもってシリーズ最終章だ、なんてしないでほしいな。小町も小沼くんも十分主役張れるんだし、他の機動捜査隊メンバーの今後の活躍をもっともっと読んでみたい。

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    2017年07月27日
  • ネオ・ゼロ

    購入済み

    男たちの戦いの物語

    実のところ、30年位前の話になってしまうので、今はもう時代遅れの話と言ってもいいかもしれない。
    でも、空戦の迫力や、今は実在しているメカニックなどが登場するのを見ると、既に何十回も読んでいて、ストーリーも文章も、男たちの顔も覚えているのに、やっぱり夢中になって読んでしまう、そんな物語。

    「ネオゼロ」は、4部作の2作目。第一作の「ゼロと呼ばれた男」と、30年以上前熊本の本屋で見つけたときの瞬間は今でも忘れていない。
    正直、今の時代からすれば、さっきも書いたように時代遅れだけれど、男同士の熱い戦い、人間関係は、最初に読んだ時より歳を取った分だけ味わい深く感じる。
    もし、第一作目を未読の方がいたら、それを読んでからこちらを読み直してほしい。そして、後半の2冊も読んで欲しいと思う。
    主役のジークはもちろんのこと、ほんの端役の人々のことも長く印象に残る本だと思っている。
    今の、AIなどの技術が進歩した時代から、30年前を振り返っても、やはり人間ドラマが1番だと思う。そんな小説でした。

    #カッコいい #憧れる #深い

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    2026年07月16日
  • ゼロと呼ばれた男

    購入済み

    空自時代のジークの話

    他の方が書いているように、「ゼロ」シリーズのエピソードゼロに当たる作品。
    20年前、文庫本化された時、本屋で見つけて鳴海章にはまった作品です。
    懐かしのファントムが出てきて空を舞い、ソビエト機とのせめぎ合い、アメリカの謀略が絡み合って、ドキドキしながら読み、最後のシーンを読んだ時、しばらく動けなかったことを思い出します。

    専門用語が多いので、少しとっつきにくく感じる人も多いと思いますが、それに慣れてくると、「ちょこっとその手の話を書いてみようか」という感じの小説家の作品が薄っぺらくつまらなくなるほどの濃厚さです。

    ちょっとしたロマンスも薬味でしかなく、男同士の戦いが空で繰り広げられていう様は、ここだけにしかない世界です。



    できれば、4部作最後まで読んでいただきたい。
    「ファイナルゼロ」の結末、エピローグの最後のシーンでも、同じ感動を味わえると思います。
    那須野治朗、ジロウという響きがゼロに似ているので零戦のコードネームと同じ「ジーク」と呼ばれた男。

    #カッコいい #ドキドキハラハラ

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    2026年06月10日
  • 刑事道 浅草機動捜査隊

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    浅草機動捜査隊 7本目 小説と同じく時は過ぎていく。稲田班長も三作目に辺り 今回は余り表に出なかったけど、拳銃が趣味の彼女 コレを活かした捜査を願いたい。 さて、今回 オレオレ詐欺の裏舞台を忠実に書き上げてあり、かけ子に売り子出し子。実際、詐欺にかからないようにするには電話に出なかったらいいんだし、自分の身内以外の電話は拒否登録すれば防げると思う。
    詐欺師になるには、頭とどんな事にも冷静沈着な行動をとる事。

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    2016年06月05日
  • 痩蛙

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    サラリーマンをしつつプロボクサーをする幸治は、ある日行きずりの年増のホステスチエ子を抱いた。付きまとうチエ子を疎ましく思うが、仕事を失いボクシングも止め全てを見失った幸治に再びリングに戻る勇気をくれたのはチエ子だった。

    これは泣かずに読むことが非常に難しいです。前もボロ泣きでしたが、またうっかり電車で泣きながら読んでました。ボクシングの描写も濃密でぐっと引き込まれます。

    鳴海さんは不細工で疲れ果てた水商売や風俗嬢にも無上の魅力を与えるのが上手いというかなんというか。風花と並んで僕のフェイバリットです。

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    2016年03月01日
  • 真夜中のダリア

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    本書を読み終わった時、しばらく感動で体が震えました。そのくらい私の琴線に触れたんです。

    この本が初めての鳴海氏作品でした。鳴海氏といえば冒険・スパイ小説の方で、ジェット機がでてきたり・・・とそういう系だからと思い込み、手に取ることはなかったんです。
    何も知らず偶然でゲットした本書。

    いやぁ~~~びっくりした もう少し評価が高くていいと思うのですが、読んだよ!という方に会ったことがありません。残念だなぁ
    舞台が2チョ(笑)。私、ゲイのお友達がなぜか多いんです。オカマのお友達もススキノにはたくさんいて・・・そう、オコゲでした。あはは
    なので、舞台設定も好きだし、登場する人たちのキャラも好きです。あ、でも決して明るいストーリーではありません。
    なんといってもやっぱり主人公・仙道のキャラがいいですね。かっこいい!でもでも・・・
    だんだんと明かされていく意外な真相や過去があるんです。あひゃーーってなりましたもん。

    それ以来、鳴海氏のこういう本に出会えないかと何冊か読んでいるのですが、今のところ私にとって本書より越える作品には出会えていません
    もうたくさんの作品が出版されていますしねぇ。冒険ものはあまり読まないし
    本書は文句なく5つ☆本でした。

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    2013年10月04日
  • 鬼哭 ~帝銀事件異説~

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    ネタバレ

    凄い話だな。
    またまた不思議で、いつも夜ご飯の時にYouTubeの怖い話をききながら作るけど、その時は村上ロックさんの呪の刀、長船の話をしてて、ご飯食べ終わったてこの本を読んでたら長船が出てきて、こわっ!ってなった。また、同じ日に遠藤周作の悲しみの歌が届き、この鬼哭も731部隊の話だったことにこわっ!ってなった。最後に泣いた赤鬼を例え話にもってきた時は少しウルっときたな。
    そんな環境で過ごしてきたらそれが普通になるよな。例え残酷な事をしていたとしても。ホロコーストもそう。
    史実をもとにしている話だけど、帝銀事件の犯人は731関係者が有力としか考えられなくなってしまう。内容は淡々としているから前に読んだ海と毒薬を思い出させるけど、大変興味深く読ませていただいた。広四郎、胸が痛いわ。

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    2026年06月20日
  • 鬼哭 ~帝銀事件異説~

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    「帝銀事件」を扱ったフィクションかな?と、興味津々で読み始め。
    読めども読めども、舞台は戦時中の満州国・・・
    「731部隊」の恐ろしい歴史が描かれ続けます。
    最終盤に、帝銀事件に行き着くのだが・・・・

    最後までグッと引き込まれ読み込んでしまう作品でした。

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    2025年10月19日
  • 鬼哭 ~帝銀事件異説~

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    こちらもみんみんさんの本棚からです。
    狙った訳ではないのですが、終戦の8月に合わせて本作を読めた事はタイミング的には良かった。
    みんみんさんも他の方も書かれていますが、帝銀事件と言うよりは謎の多かった旧陸軍731部隊について挑戦的に深掘りした作品です。
    この、別名『石井部隊』は、最近になって漸く元部隊員の方々が思い出すのもお辛い中を、二度と戦争を起こして欲しくないと言う思いで後世の我々の為に体験談を語って下さるようになり、ベールが少し解かれて来ました。

    帝銀事件を詳しくご存知の方は何故731部隊に繋がるのかを分かってらっしゃると思うので、なるほどそう来たか!としっくり来ると思うのですが、あまりよくご存知ない方からしたら、何故こっちの話になるの?帝銀事件を扱ったミステリーを読みたかったんだけど?と戸惑うと思うのです。
    なのでこのタイトルは中々賭けに出てるなと思った次第。
    確かに堂々と731部隊と書くよりは、このタイトルの方が鳴海さんの伝えたかった事をより多くの方に読んで貰えるのではないかなと。

    本書に関しては、感想よりも先ずは帝銀事件と731部隊の関連性、731部隊がどういう組織なのかについて触れておきたいと思います。
    私よりもお詳しい方はかなりいらっしゃると思いますが、あまりご存知無い方はお付き合い下さい。

    昭和23年、閉店直後の帝国銀行椎名町支店に東京都防疫班の白腕章を着用した中年男性が、厚生省技官の名刺を差し出し「近くの家で集団赤痢が発生した。GHQが行内を消毒する前に予防薬を飲んでもらいたい」「感染者の1人がこの銀行に来ている」と偽り、行員と用務員一家の合計16人に青酸化合物を飲ませ、11人が直後に死亡、さらに搬送先の病院で1人が死亡し、計12人が殺害されました。この惨劇が帝銀事件です。
    731部隊が集団殺害の方法に用いた手法と同じだった為に(全員が乾杯のように一気に内服する)関係者が疑われていました。

    731部隊は京大で医学博士を授与された秀才、石井四郎が創設者であり、兵士の感染症予防や衛生的な給水体制の研究を主任務としていましたが、細菌戦に使用する生物兵器の研究、開発機関でもあったとされており、そのために敵国の捕虜や民間人を扱った人体実験や、生物兵器の実戦的使用も行っていたとされています。

    この石井が敢えて言葉を選ばず書かせて貰うと、非常に厄介なんです。
    とんでもなく頭が良い上に行動力があって熱意も桁外れ。但し方向性が危険。そして自己顕示欲の塊。
    国を勝利に導く為には生物兵器の開発が不可欠だと主張。
    初めは支持者も少なかったのですが、すったもんだあって(全部書くとスクロールする皆さんの指がもげるので割愛)兵器の開発にかかる予算が大幅に増幅された為に、石井の構想が加速する事に。
    そもそもジュネーブ議定書に文句を言いたい。戦争も知らん若造が!と雲の上から罵られようとも言わせて貰う。この本棚は私の独裁国家だからだ!(ギリギリ発言)

    ジュネーブ議定書は、第一次世界大戦時にドイツ軍が化学兵器を使用した際、多大な犠牲を出した事から戦争で生物兵器や化学兵器を使用する事を禁じた条約です。
    ここ、重要です。「使用する事を禁じる」です。
    大変だよ、戦争に勝ちたくて血眼になってるおじ様達には別の意味に聞こえるよ。

    「開発、生産、保有はしても良いよ。牽制に使えば?」

    あかんだろ!!

    更に議定書を締約しない国は使用できてしまうのです。

    あかんだろ!!

    話を戻します。
    とにかく731部隊は闇に包まれた組織であり、人体実験等の真偽の程も曖昧でしたが、前述した通り体験談を語って下さる部隊員の方のお話や、昨今では実態が不明だった中国、南京などの部隊の隊員名簿が、国立公文書館から研究者らに公開されたりと日本軍による細菌戦の一端が解明される可能性が出てきました。

    最後の参考文献の量と内容の凄さが、鳴海さんがかなりお調べになった事を表しています。
    そしてかなり気を遣われている事が窺えました。
    本書の内容だけでも苦しいです。恐らく読めなくなる方もいらっしゃるのではないかと思う程でした。
    私もフィクションパートではありますが、1箇所、辛すぎて一旦ページを閉じてしまったシーンがあります。
    フィクションとは言え、似たような事があったと記憶しています。しかもそれは日本ではなく、ドイツの民間病院での出来事で、その時も辛すぎて文字通り頭を抱えました。
    このような痛ましい歴史は繰り返してはならないと言う事を伝える為に、残酷さと悲しさをなんとか読める範囲で書かれていると思います。

    実際の体験談はもっと酷い内容です。ここには書きませんが、二度とこんな事は起こさないで欲しいと仰る元隊員の方々の気持ちが痛い程に分かるような内容です。
    元隊員の清水さんの言葉が蘇ります。真実を語る事の重要さについて「人を材料にしてやったことは、私たちもそれに協力してしまったことは本当に残念。これからの子供たちに、やっぱり幸せに暮らすんだったら、もう戦争をなくしてもらいたいという気持ちが強かった」と仰っていました。

    本書にも「平和な国であろうとしなきゃいけないんじゃないか」と言う台詞があります。
    鳴海さんの伝えたい事は、ここに詰まっているのでは無いでしょうか。
    違ったとしても、私にはそう受け取れた。それが重要な事だと思います。

    タイトルからは予想も付かない、8月に読むべき…と言うよりも日本人が知っておくべき内容の作品でした。
    みんみんさんが読んで下さらなければ出会っていなかったと思います。いつもありがとうございます。

    こんな言い方をしても良いのか分かりませんが、自国も他国も戦争と同調圧力に巻き込まれていたんです。いい加減に先人の血を吐くような体験談を心に留めて、平和的解決を目指せないものでしょうか。

    貴方に言いたいんですよ、某Pさん。

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    2025年08月16日