鳴海章のレビュー一覧
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本書は1994年に名古屋空港で着陸に失敗した中華航空140便をテーマに鳴海章氏が書下ろしたものである。この事故はグラスコクピットを持つハイテク航空機のコンピュータによる制御に対するエアバス社の考え方を転換させるほど航空業界にインパクトを与えたし、空港まで順調に飛んできた飛行機がほぼ直立して失速墜落、264人の犠牲者を生んだことで衝撃的な事故として記憶されている。現実の部分がクッキリしているので、小説はノンフィクションとフィクションの狭間でどっちつかずになりそうなものだが、いやいやどうしてなかなかの作品に仕上がっている。やはり、コックピットの中での心理状態をつぶさに書き込むことにより迫力が加わっ
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鳴海氏の航空ミステリーの初期作品。憲法9条を護ることで戦後の奇跡的な復興を成し遂げた日本。自衛隊も専守防衛により行動が定められていることは国民のみならず周辺国との了解事項である。本書は、周辺国の脅威に対しても対抗できる攻撃能力を密かに持つとしたらというテーマで掘り下げられている。執筆された1994年はまだ、北朝鮮も中長距離の攻撃を保持しておらず、中国も日本との間で領有権を表立って争う状況にはなっていなかったので、随分大胆な仮説だったに違いない。それから、四半世紀経った現在においてもかなり大胆に踏み込んだ説と言えることからして鳴海氏渾身の作ではなかったのかと思う。現在では、「いずも」型護衛艦を空
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浅草機動捜査隊シリーズ、7作目。
今回は昨今の進化したオレオレ詐欺の実態をリアルに描く。犯人目線で進む展開もあり、よりリアルに感じ取ることが出来た。いつものように文章自体は淡々と進んでいくけれど、スルスルと一気読みで面白く読めた。解説の通り、シリーズ最高傑作という言葉に頷ける。今回は機捜のメンバーはもちろん、最初に下手を打った函館署の刑事さんの執念の捜査が実を結んだという感じ。よくある他県警同士の軋轢はあまり感じず、上手く折り合いをつけて捜査が進んでいったのがストレスなく読めて良かった。もちろん、いぶし銀の辰見や、持っている女・小町の存在感も登場場面が少ないながらバッチリ。最後に投げられた小 -
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多分読むのは3回目です。とても好きな本なので正当な評価かどうかは分かりません。でも好き。
廉司は外資系の会社で働いている。
同期は情け容赦無く首が切られ、とうとう自分の番が来た。
送別会で自棄になり痛飲。記憶を無くした。
翌日、知らない部屋で目が覚めると見覚えのない女が隣に寝ている。
脱色を繰り返した赤茶けた髪。衰えた肌。目尻のしわ。薄い体。
自分よりも年上の様だがどれもこれも見覚えが無い。
戸惑っていると、彼女は自分と何度も会った事が有ると言う。
彼は気が付く。彼女は廉司が数か月に1回欲望を吐き出すために通ったピンクサロン「ジューシーフルーツ」のレモンだったのだ。
彼は泥酔し店に