【感想・ネタバレ】蒼穹の射手のレビュー

あらすじ

日本がカンボジアでのPKO活動に踏み出した頃、航空自衛隊千歳基地に一人の男が着任した。真田二等空尉、戦闘機パイロットである。彼が搭乗を命ぜられたのは、コクピットの装備がこれまでとまったく異なるF15イーグル。一部の政治家、防衛産業、空自OBらによって極秘に開発されたこの機体には、夜間低高度侵攻能力と核装備能力が与えられていた……。大空に憑かれた男たちの過酷な任務と運命を描く航空冒険小説。

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Posted by ブクログ

鳴海氏の航空ミステリーの初期作品。憲法9条を護ることで戦後の奇跡的な復興を成し遂げた日本。自衛隊も専守防衛により行動が定められていることは国民のみならず周辺国との了解事項である。本書は、周辺国の脅威に対しても対抗できる攻撃能力を密かに持つとしたらというテーマで掘り下げられている。執筆された1994年はまだ、北朝鮮も中長距離の攻撃を保持しておらず、中国も日本との間で領有権を表立って争う状況にはなっていなかったので、随分大胆な仮説だったに違いない。それから、四半世紀経った現在においてもかなり大胆に踏み込んだ説と言えることからして鳴海氏渾身の作ではなかったのかと思う。現在では、「いずも」型護衛艦を空母に改修する話が出ており、中国が自前の空母を保有していることから声高に日本を非難しないなど国際情勢も劇的に変化しつつあることを考えると隔世の感がある。
さて、本書は当時最新の攻撃機であるストライクイーグルと同様な機能を日本のイーグル(F-15J)に備え対地攻撃を可能にすることをF15の近代化に合わせて実施し、それの運用部隊を秘密裏に千歳に作り、訓練を実施する様がリアルに描かれている。夜間ではないが同様の訓練はF2を用いてやっているのを目撃したことがあり、慧眼と言えよう。
佳作である。

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2018年01月05日

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