あらすじ
12人が毒殺された帝銀事件、実行犯の告白。
昭和23年、12人が毒殺された「帝銀事件」。
実行犯が告白する驚愕の真実!
亡くなった祖母の遺品整理のため訪れた父の実家で、穂月沙里は近所の古書店主から「穂月広四郎記」と題された奇妙な手帳を預かった。祖母から、沙里が来たら渡すよういわれていたらしい。
店主の話によると、祖母はその店で、昭和23年に帝国銀行椎名町支店で発生したいわゆる「テイギンジケン」関連の資料を多く購入していたという。
謎の手帳には、地元の石井という有名人が創設した部隊に入るため満州に渡った広四郎なる人物の、壮絶な体験が記されていて……。
「昭和100年」となる2025年、戦後最大のミステリーとされる未解決事件に挑む。
実行犯は? 真犯人は? 果たして冤罪か?
遠い過去の出来事が「今」につながる驚くべき結末とは?
衝撃のサスペンス!
(底本 2025年1月発売作品)
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
帝銀事件の真犯人とその動機を独自のストーリーにしてあり、面白かった。だが内容は凄惨で心の痛いお話だった。泣いた赤鬼、昔読んでボロボロ泣いたことを思い出した。
Posted by ブクログ
「帝銀事件」を扱ったフィクションかな?と、興味津々で読み始め。
読めども読めども、舞台は戦時中の満州国・・・
「731部隊」の恐ろしい歴史が描かれ続けます。
最終盤に、帝銀事件に行き着くのだが・・・・
最後までグッと引き込まれ読み込んでしまう作品でした。
Posted by ブクログ
こちらもみんみんさんの本棚からです。
狙った訳ではないのですが、終戦の8月に合わせて本作を読めた事はタイミング的には良かった。
みんみんさんも他の方も書かれていますが、帝銀事件と言うよりは謎の多かった旧陸軍731部隊について挑戦的に深掘りした作品です。
この、別名『石井部隊』は、最近になって漸く元部隊員の方々が思い出すのもお辛い中を、二度と戦争を起こして欲しくないと言う思いで後世の我々の為に体験談を語って下さるようになり、ベールが少し解かれて来ました。
帝銀事件を詳しくご存知の方は何故731部隊に繋がるのかを分かってらっしゃると思うので、なるほどそう来たか!としっくり来ると思うのですが、あまりよくご存知ない方からしたら、何故こっちの話になるの?帝銀事件を扱ったミステリーを読みたかったんだけど?と戸惑うと思うのです。
なのでこのタイトルは中々賭けに出てるなと思った次第。
確かに堂々と731部隊と書くよりは、このタイトルの方が鳴海さんの伝えたかった事をより多くの方に読んで貰えるのではないかなと。
本書に関しては、感想よりも先ずは帝銀事件と731部隊の関連性、731部隊がどういう組織なのかについて触れておきたいと思います。
私よりもお詳しい方はかなりいらっしゃると思いますが、あまりご存知無い方はお付き合い下さい。
昭和23年、閉店直後の帝国銀行椎名町支店に東京都防疫班の白腕章を着用した中年男性が、厚生省技官の名刺を差し出し「近くの家で集団赤痢が発生した。GHQが行内を消毒する前に予防薬を飲んでもらいたい」「感染者の1人がこの銀行に来ている」と偽り、行員と用務員一家の合計16人に青酸化合物を飲ませ、11人が直後に死亡、さらに搬送先の病院で1人が死亡し、計12人が殺害されました。この惨劇が帝銀事件です。
731部隊が集団殺害の方法に用いた手法と同じだった為に(全員が乾杯のように一気に内服する)関係者が疑われていました。
731部隊は京大で医学博士を授与された秀才、石井四郎が創設者であり、兵士の感染症予防や衛生的な給水体制の研究を主任務としていましたが、細菌戦に使用する生物兵器の研究、開発機関でもあったとされており、そのために敵国の捕虜や民間人を扱った人体実験や、生物兵器の実戦的使用も行っていたとされています。
この石井が敢えて言葉を選ばず書かせて貰うと、非常に厄介なんです。
とんでもなく頭が良い上に行動力があって熱意も桁外れ。但し方向性が危険。そして自己顕示欲の塊。
国を勝利に導く為には生物兵器の開発が不可欠だと主張。
初めは支持者も少なかったのですが、すったもんだあって(全部書くとスクロールする皆さんの指がもげるので割愛)兵器の開発にかかる予算が大幅に増幅された為に、石井の構想が加速する事に。
そもそもジュネーブ議定書に文句を言いたい。戦争も知らん若造が!と雲の上から罵られようとも言わせて貰う。この本棚は私の独裁国家だからだ!(ギリギリ発言)
ジュネーブ議定書は、第一次世界大戦時にドイツ軍が化学兵器を使用した際、多大な犠牲を出した事から戦争で生物兵器や化学兵器を使用する事を禁じた条約です。
ここ、重要です。「使用する事を禁じる」です。
大変だよ、戦争に勝ちたくて血眼になってるおじ様達には別の意味に聞こえるよ。
「開発、生産、保有はしても良いよ。牽制に使えば?」
あかんだろ!!
更に議定書を締約しない国は使用できてしまうのです。
あかんだろ!!
話を戻します。
とにかく731部隊は闇に包まれた組織であり、人体実験等の真偽の程も曖昧でしたが、前述した通り体験談を語って下さる部隊員の方のお話や、昨今では実態が不明だった中国、南京などの部隊の隊員名簿が、国立公文書館から研究者らに公開されたりと日本軍による細菌戦の一端が解明される可能性が出てきました。
最後の参考文献の量と内容の凄さが、鳴海さんがかなりお調べになった事を表しています。
そしてかなり気を遣われている事が窺えました。
本書の内容だけでも苦しいです。恐らく読めなくなる方もいらっしゃるのではないかと思う程でした。
私もフィクションパートではありますが、1箇所、辛すぎて一旦ページを閉じてしまったシーンがあります。
フィクションとは言え、似たような事があったと記憶しています。しかもそれは日本ではなく、ドイツの民間病院での出来事で、その時も辛すぎて文字通り頭を抱えました。
このような痛ましい歴史は繰り返してはならないと言う事を伝える為に、残酷さと悲しさをなんとか読める範囲で書かれていると思います。
実際の体験談はもっと酷い内容です。ここには書きませんが、二度とこんな事は起こさないで欲しいと仰る元隊員の方々の気持ちが痛い程に分かるような内容です。
元隊員の清水さんの言葉が蘇ります。真実を語る事の重要さについて「人を材料にしてやったことは、私たちもそれに協力してしまったことは本当に残念。これからの子供たちに、やっぱり幸せに暮らすんだったら、もう戦争をなくしてもらいたいという気持ちが強かった」と仰っていました。
本書にも「平和な国であろうとしなきゃいけないんじゃないか」と言う台詞があります。
鳴海さんの伝えたい事は、ここに詰まっているのでは無いでしょうか。
違ったとしても、私にはそう受け取れた。それが重要な事だと思います。
タイトルからは予想も付かない、8月に読むべき…と言うよりも日本人が知っておくべき内容の作品でした。
みんみんさんが読んで下さらなければ出会っていなかったと思います。いつもありがとうございます。
こんな言い方をしても良いのか分かりませんが、自国も他国も戦争と同調圧力に巻き込まれていたんです。いい加減に先人の血を吐くような体験談を心に留めて、平和的解決を目指せないものでしょうか。
貴方に言いたいんですよ、某Pさん。
Posted by ブクログ
帝銀事件というより、731部隊がメインで書かれている印象です。
戦争体験を決して話さなかった方も多いと聞きます。この本に記されたような事を目の当たりにした方は、思い出すことも辛いのだと改めて思います。
戦争を知らない世代として、歴史を知る貴重な機会となりました。
Posted by ブクログ
帝人事件は有名で、冤罪論も含めて定説が出来上がっているが、これの作品はまた違った見方で物語を作り上げていて新鮮だった。
話の進み方で少し気になったのは、冒頭の現代場面から唐突に戦時中の話に飛んで、心の整理がつかないままどんどん話が進んでいった点と、帝人事件の毒薬を飲むシーンがやたら強調されていて、事件が有名すぎる分、ことにそこにフォーカスするのが興ざめを誘うように感じてしまった点。
後半は広四郎の不幸な巡り合わせが連続する中にあって、一輪咲く希望の星(リンさんとの出会い)が読み手にも救いを与えてくれ、そして現代のシーンに戻って全てを華麗に締めくくってくれる流れは非常に気持ち良い読後感がありました。
Posted by ブクログ
穂月沙里は、亡くなった祖母の遺品整理のために訪れた実家で、近所の古書店主から祖母に頼まれたと言って封筒を渡される。
その中に「穂月広四郎記」と書かれた古い手帳が入っていた。
そこには昭和23年1月26日、12人が毒殺された帝銀事件を告白する文が…。
ここから穂月広四郎が、満州国に渡り戦時中から戦後にかけての記録になるのだが、731部隊のことからすべては始まったのだとわかる。
どこまでが真実なのか…戦争について教科書でしか知らないものには真偽はわからない。
ただ「帝銀事件」や731部隊があったことは間違いないと。
フィクションではあるが、あまりにも衝撃的であった。
広四郎を「泣いた赤鬼」という童話の青鬼に喩えていたが、誰のために鬼になれるのだろうかと思うとけっして戦争はあってはならないと強く感じた。
終章では、父娘の会話が冷静だったので、それは血の繋がりだけではない何かを感じながらも祖母ほどの思いはなかったからだろうか…。
Posted by ブクログ
酷い事件。戦争で人の死に鈍感になっている時代、大切な人のため、自分にはそうできる能力があるという変な偶然が重なって起こってしまったような気がする。どんな事情があっても許せないが。
Posted by ブクログ
事実上未解決な「帝銀事件」。
731部隊説をとり、その裏設定を色々と創作して書かれた小説。
あんまおもんない。
仕掛けがも描写も甘く、ちょっと凝った構成も上手く表現できていないせいか、何度もなんだっけと前のページを捲ることになった。
ラストへの展開も唐突な感じを受けた。ちょっと、「ゴジラ-1.0」みたいな映像も浮かんで来たのが悪い影響があったのかもしれないが。
文章の上手い高校生が一生懸命考えて書いたみたいな。