冲方丁のレビュー一覧
-
Posted by ブクログ
ネタバレ「幸せ者め…」
本当に幸せな人の物語でした。
裕福であるとか、栄光を掴んだとかそういうことではなく。
自らの道をひたすら邁進出来たという事。それを誰かが見ていてくれたという事。…ただそれだけでこんなにも人生は美しく見える。
物語としてもそうなのですが、絵の空気が実にすばらしいなぁと。
闇斎先生を見送る時、天地明察の瞬間。静かに流れる涙が読んでるこちらの胸にも染みてくるようで。
もちろん、春海が勝利を掴んだからこそのハッピーエンドではあるのですが。それを差し引いても彼の生き様は本当に羨ましいと思わんばかり。
才能や人脈の有無、運不運といった事は人それぞれで、誰もが春海と同じようには生きられ -
Posted by ブクログ
原作は上下巻、漫画は全9巻。完結済み。江戸時代の、日本初の独自の暦を作成した中心人物が主人公。
根っからの文系で数学は非常に苦手ですが、のめり込む勢いで読めました。
作画はとても世界観に合っている。
登場人物の総じて魅力的。
主人公に多大な影響を与えることとなるおじいちゃんズ。
狂言回しさながらに、そこに居らずして主人公を突き動かす人物の使い方もお見事。
暦がどうなるのか、主人公は願いを果たせるのか。
そんなものはこの現代、概要だけでいいならネットで調べればすぐに判る。
だが、その経緯を如何にして読者の心を掴むように見せるか、読ませるか。その難しいミッションを過不足なくこなした本であると思う。 -
購入済み
毎年3.11がくるたび読み返す
3月11日の悲劇を悲劇だけじゃなくて、残された人の後悔を逝ってしまった人からの贈物が救ってくれる。優しい気持ちになれる作品。
同情するのが嫌いな方の私だが、感情移入して泣いてしまった。
震災に遭ってない私に、事実あった3月11日のことを忘れないように考えさせてくれた。きっと毎年この日は読み返すと思う。
-
-
-
-
Posted by ブクログ
シェルの犯罪の証拠を懸けてのブラックジャック対決、そしてボイルドとの最終対決が描かれる完結編。
ブラックジャックシーンは専門用語が飛び交い、ブラックジャックに詳しくない自分にとって読むのはちょっときついかな、と始は思っていたのですが、読んでいくうちにあっという間に惹きこまれました。
なんでルールも分からないのに惹きこまれるのだろう、と思ったのですがあとがきを読んで納得。
というのも、冲方さんはこのシーンを書くため五日間ホテルでカンヅメをされたらしいのですがその際、
作中の勝負にのめりこむあまり胃をやられ、中のものをベッドや床にぶちまけ、それを見て笑い声を上げたそうです。
……ものす -
Posted by ブクログ
ボイルドの襲撃で負った傷をいやすため、バロットたちは楽園と呼ばれる化学技術施設へ逃げ込む。そこでシェルの犯罪の証拠の在り処をつかんだバロットたち、は証拠のあるカジノへ乗り込むことを決意する。
楽園での場面で印象的なのはボイルドと楽園の責任者であるフェイスマンとの会話。価値とは何か、技術の功罪は、といった哲学的な対話が非常に面白く読めました。
そしてシェルの犯罪の記憶が入ったメモリーを手に入れるためバロットたちはカジノでのギャンブルに挑みます。ルーレットのスピナー、ベル・ウイングとの対決も読み応え十分!
カジノの運営側と客側という金を奪い合う、という対決の図式を越えての「この人を越 -
Posted by ブクログ
ネタバレ本当に春海は幸せ者だ…。
原作小説、これまでの漫画の巻。いずれを読んだ時も思った事ですが、渋川 春海は幸せな男です。
それは碁や数学、天文への才能に恵まれているという事ではなく。国家の大事業に抜擢されたからでもなく。
ただ彼の事を認めてくれる人、支えてくれる人、背中を押してくれる人に満ちているから。
国家の期待を一心に背負った改暦の儀「三暦勝負」に敗れた。
何という挫折。何という絶望。
とにかくこの漫画・作品の優れた所は、春海の内心描写と表現が上手いと言う点にあります。先の挫折と絶望が丁寧かつ陰鬱に描かれており、立ち上がる事すらできない「無念さ」を際立たせています。
誰しもが挫折を味わ -
Posted by ブクログ
冲方丁の著作を初めて読んだ.もっと早くに読めばよかったと思えるほど,面白かった.
頭のなかで情景を映像化しなから読んでいたけど,どうもパッドはバトーの声で再生される.ラファエルは分からない.
最後の方の,思考ロックを解除されたパッドがラファエルを連れ出すシーンはカッコ良かった.
最終局面の時間操作について,跳躍は「1秒を長くする」という奇妙な表現で理解出来るんだけど,沈むというのは「1秒を短くする」というのでいいのかな?
1秒が一瞬で終わってしまうから,自分の身に何が起こったかが全くわからない,みたいな.
そもそもこの解釈もあってるのだろうか.
中編小説だけあって,とんとんと物語は進む.