常見陽平のレビュー一覧
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本書は主に「なぜ採用基準が不透明なるのか?」「実際の企業による選抜システムはどのようなものか?」という二つの問いに答えようとする本である。
著者も言うようにアカデミックとジャーナリスティックな書き物の中間ぐらいな所にあり、すらすら読めるけれど判然としない書き方をしている部分もあり、あまり洗礼されていない感じがする。ただし、先行研究のまとめや就活の概要をデータを引っ張て来て逐一説明してくれるため、就活に対して詳しくない人でも読める、悪くない本である。
序章では就職の始まりは明治だとか云々から始まり、先行研究に触れこの本の意義を説く。今までの研究に足りなかったことは、企業側のデータに基づく研 -
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「なぜ、残業はなくならないのか」という問いに著者は答える。残業は企業にとって合理的で、労働者にとって働き方の1つで、マスコミにとって美談だからだ。
たしかにその通りだ。企業にとって繁忙期に人を増やすよりも、現状の人間に残業してもらい、その手当を払う方が雇用面や教育面の効率は良い。労働者にとっても手取りが増えることは悪くないだろう。そして、NHKのプロジェクトXや偉人伝出版社がその苦労話を感動に仕立てあげる。
だから、残業とは、すばらしい制度なのだ。政府は「働き方改革」の名のもと、残業を減らそうと試みるが、本当にそれは正義で誰もが望んでいるのか。しかも政府の容認する残業時間は過労死ラインを越 -
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『普通に働け』っていうタイトルがまず、秀逸。
短いのに、インパクトがある。サブタイトルもなし。
長くて明らかに狙ったようなタイトルが多い新書の中で、これは良い。
脳内にガツンと響いた。
そして、割と骨太の本だった。
普通の定義が読んでいても難しかったけれど、大企業でも外資系にも勤めていない、天才でも秀才でもない人たちが世の中には大半いて、その人たちが世の中を動かしているということ。
一部の信憑性の薄いデータや都合のいい部分だけをピックアップした、絶望感を煽るもの、反対に奇跡的な成功を夢見させるもの、センセーショナルな話題性を作るための結論ありきの記事に踊らされない(論じられている元のデ -
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現代労働社会とエヴァンゲリオンを重ね合わせて読み解いていく本。
本書で何度か登場する「エヴァは現代を予言していた」というのは、一種の装飾語で、もちろんあり得ない。むしろ、現代における労働問題が20年前のエヴァンゲリオンで描かれていたにも関わらず、それを回避できなかったことを指していると捉えたほうが良いと思う。
本書ではエヴァンゲリオンについて、著者の視点から再度、捉え直した後、現在の労働者を「自己肯定できない碇シンジ」「代替の利く綾波レイ」「エリート・グローバル人材の惣流・アスカ・ラングレー」などに例えつつ、それぞれが抱える問題点を指摘する。
個人的に大きな問題だと思っているのは葛城ミサ -
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20年前にTVで放映され、今も根強い人気があるアニメ新世紀エヴァンゲリオンを、近年の労働環境の変化の暗示と説いた意欲作。
労働問題をかじっている私の視点から見て、第2章で社畜の意味の変遷が語られているところが興味深かった。また、『新時代の「日本的経営」』の3類型を主人公たち3人に当てはめてみせた点は、こう使うか!とニヤリとさせられた。
ただ、第4章の「女性の活躍とエヴァ」では、なぜ女性たちがバリキャリにならなければならないのか、という本質に迫ってないと思うので、物足りなかった。
かつて、エヴァンゲリオンに熱狂したが今は冷静に見られるようになった自分も、あとがきにあるようにエヴァンゲリオンが「不 -
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就活については、もはや受ける側ではなく、採用する側に近い立場にありますが、この本の内容には納得です。
学歴フィルターの話は置いておいても、採用基準の変化は、すごく納得できます。
社外環境や社内環境の変化、採用の途中経過が、採用基準の変化に影響する可能性は否定できません。
もちろん、採用基準の核となる部分は、変わりませんが。
また、大学新卒者の一括採用について、デメリットも抑えた上で、メリットについて堂々と語っている点も素晴らしいと思います。
いろんな意味で、就活に対して、バランスの取れた見方を示した本だと思います。
おそらく、社会学は、こういう姿勢で取り組むべき学問なんでしょ