あらすじ
人材の使い捨て、若者への過剰な期待、ブラック企業出現、女性の活躍(という名の酷使)、居場所の喪失、そして得体の知れない社会不安……2015年の今、私たちが直面している問題は、アニメ『エヴァンゲリオン』で予言されていた! ? 労働×サブカル本のヒット作『僕たちはガンダムのジムである』著者であり、雇用・働き方問題に通じた常見陽平氏が、1995年~2015年の日本の労働社会に起きた「エヴァンゲリオン化」の真相に迫る。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
現代労働社会とエヴァンゲリオンを重ね合わせて読み解いていく本。
本書で何度か登場する「エヴァは現代を予言していた」というのは、一種の装飾語で、もちろんあり得ない。むしろ、現代における労働問題が20年前のエヴァンゲリオンで描かれていたにも関わらず、それを回避できなかったことを指していると捉えたほうが良いと思う。
本書ではエヴァンゲリオンについて、著者の視点から再度、捉え直した後、現在の労働者を「自己肯定できない碇シンジ」「代替の利く綾波レイ」「エリート・グローバル人材の惣流・アスカ・ラングレー」などに例えつつ、それぞれが抱える問題点を指摘する。
個人的に大きな問題だと思っているのは葛城ミサト、赤木リツコに例えられる「女性活躍社会」だ。
僕の妻は双子を出産したけれど、改めて思わされたことは、妻が愚痴を漏らしていたように、
「女性も大学に行く時代になって、就職して男並みに仕事するよう言われ、働いたら働いたで結婚しろと言われ、結婚したら結婚したで子供を産めと言われ、子供を産んだら産んだで育児をしろ、さらに働け、でも保育園は空いてない、家事を誰かが代わりに全部やってくれるわけでもない。双子を相手にどないしろっつーの」
だ。
一億総活躍社会も結構だが、そもそも生物学的に異なる(例えば、男では母乳は出ない)のであり、十把一絡げに「総」活躍などと言っても虚しい響きしかない。
一人ひとり・個人個人に合った生き方(もちろん競争と努力を伴って)ができればそれでよいのではないか。
Posted by ブクログ
20年前にTVで放映され、今も根強い人気があるアニメ新世紀エヴァンゲリオンを、近年の労働環境の変化の暗示と説いた意欲作。
労働問題をかじっている私の視点から見て、第2章で社畜の意味の変遷が語られているところが興味深かった。また、『新時代の「日本的経営」』の3類型を主人公たち3人に当てはめてみせた点は、こう使うか!とニヤリとさせられた。
ただ、第4章の「女性の活躍とエヴァ」では、なぜ女性たちがバリキャリにならなければならないのか、という本質に迫ってないと思うので、物足りなかった。
かつて、エヴァンゲリオンに熱狂したが今は冷静に見られるようになった自分も、あとがきにあるようにエヴァンゲリオンが「不幸な作品」という点は同意できる。
Posted by ブクログ
この中で書かれているリツコはリケジョの先駆けだった、使徒は95年以降の労働環境のように確かに思える。
エヴァオリジナルアニメから20年経つと中学生だった世代はもう三十代前半だ。確かにもう若者という範疇ではない。読みながらなるほどと納得するのは、常見さんが労働問題や就職活動について詳しいからだが、エヴァという作品を初号機が使徒を補食するように専門分野とサブカルではないポップカルチャーとしてうまくミックスして展開されている。
そうか20年経ったのか。もう20年経った時に振り返るのはやはり1995年なのだろうか。