ドナルド・キーンのレビュー一覧
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戦時中と戦後間もなくの時期の作家の日記。断片的に高見順の日記の一部の文章がどこかに引用されていたのを読んだことがあり、関心があった。それより、平野啓一郎の『文学は何の役に立つのか?』でこの本が紹介されていたのが読むきっかけとなった。
やはり非常に考えさせられる。国が国民に要請すること、教えることを自分としてどう受け止めるのか、その上でどう行動するのか、という問題。
作家だけに日本の社会観なり思想との葛藤があるかと思いきや、意外にもすんなり皇国イデオロギーを内面化している人が多かった。
そんな人が日本の敗戦や占領という事態を迎えて何を思ったか。日記ならではの遠慮のない言葉が並ぶ。 -
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ニューヨーク・タイムズ誌に1955年から1987年まで掲載されたキーンさんの書評やエッセイを時系列に掲載した本。
あとがきに記されているように「ニューヨーク・タイムズ」から見た「日本の戦後史」のように楽しめた。
半世紀以上前の日本人や日本社会について語られている部分では、驚くほど今と変わっていない部分が多くあってびっくりした。
“順応しなければならないプレッシャーが非常に強い日本では、憤懣が発散される力強さにも驚くべきものがある。かりに坐る席がないという恐れがない場合でも、駅で人を押しのけて電車に乗るときに日本人が示す無作法は、日本人の優雅な礼儀正しさについて読んだことがある外国人をびっくりさ -
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崇拝する 谷崎潤一郎 川端康成
親友の 三島由紀夫 安部公房
戦友の 司馬遼太郎
とのエピソードを語った本。大作家たちを惹きつける 著者の翻訳能力や人間力が凄いのだと思う
新潮文庫 ドナルドキーン 思い出の作家たち
司馬遼太郎 評が特に面白い
「バスク民族への司馬の興味は、固有の言語と古代からの文化を保ちながら、自身の国家を持たないこと〜国家主義は 世界平和の最大の障害と考えている」
「司馬は、外国人であっても日本語を完璧に話し、日本文化を愛するのであれば、顔立ちはどうであれ日本人として受け入れるべきと信じていた〜そのような新日本人が増えれるほど〜国家主義的な偏見を抑止でき -
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日本文化研究の大家である筆者が明治天皇の人物像に迫った一冊。気難しいところもあるけれど、基本的に"天皇"という立場に真面目で、外国文化に対して開明的で、おおむね聡明と言ってよい姿が描き出されている。まあ、筆者は在位期間が長かったことが大帝と呼ぶべき第一の理由と述べているけれど笑
お手製の短歌も折り込まれながら、声や言葉遣いに迫ってみたり、大酒のみで風呂ギライ・倹約家なところから、皇后や岩倉具視や西郷隆盛といった臣下・周囲の人たちとの親交の様子を描き出したりと、新書ゆえ分量としては軽めながら、興味深く読むことができ、親近感がわいてきた(失礼) -
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明治の時代といえば日清・日露の両戦争への勝利、岩倉具視や大隈重信、伊藤博文といった多くの優秀な政治家たちが活躍し、近代日本の礎となった時代であった。その中でも明治天皇の優れた人となりについて歴史の教科書などでもそれ程多く触れられる機会は無い。斯くいう私もその後の昭和の時代の天皇がアジア・太平洋に広がる大規模な戦争で目立ってしまったせいか、明治天皇についての記憶は殆どない。本書ではそうした明治天皇の素顔に膨大な資料を参考に迫っていく。
明治の時代はそれまでの武士が政治権力を握ってきた世の中から、いよいよ近代的な日本に生まれ変わる激動の時代だ。武士が刀を腰に下げていた時代は、江戸の長きにわたる治世 -
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24才で老父母、きょうだい、妻、子どもを扶養するのが当時の長男。「ジェンダーギャップ指数」というと、女性が権利を主張している話題、と取られがちだが、彼の人生からは、家制度が男性を縛ってきたものにも気づく。
女性問題、借金etc.情状酌量の余地はないとはいえ、100年以上早く、個であろうとして苦しみ、成し遂げたことの価値を知らぬまま26才で生涯を終えたことに、現代を生きる一人の母親として悲しさだけを感じる。
その葛藤の中で詠んだ歌に、今、どれだけ多くの人たちが救いを感じていることか。
膨大な資料に当たったドナルド・キーンさんと角地さんの名訳のおかげで、そんな思いに至りました。 -
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1970年代から80年代にかけて、日本人がキーンさんにする質問ときたら。。。当時外国の人をひっくるめて『外人』と呼んでいて、しかも『外人』 と言えばいわゆる欧米人、もっと言えば白人だったように思う。今思えば私も似た様な印象からくる疑問や質問を持っていた事は否めず、さぞかし不愉快な思いもされてきた事でしょう、と恥ずかしい気持ちにもなりました。
後半はキーン先生が研究されてきた様々な日本感が綴られておりとても勉強になります。
谷崎潤一郎氏との思い出も語られていて、谷崎源氏を読んでみたくなる。とても分かりやすい現代語訳から入った方がいいかしら?なんて考えるきっかけも与えてくれる良き一冊でした。 -
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ネタバレともかく世界中のどの国、どんな人間の間にも、そういう傾向がある事は認めざるをえません。多分人間と言う特別な動物の場合、衝突する事は本能の1つなのでしょう
吉田松陰は絶えず日本の防衛のことを考えていましたから、どうしても蝦夷地の事について知識が欲しかったのです
西洋人は外に出て盤遊を楽しむ。これ小さな村や町も必ず公園を修るところになり。東洋人は室内にあり惰居するを楽しむゆえにいえいえに庭園を修む
日記を書くと言う事は、極めて興味のあることである。書くその時も興味がある。しかしいく年の後にこれを読む返すときの興味はさらに大いなるものであろう -
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「山田風太郎の日記を読んでわかったのは、それまで人は読んだ本によって自分の性格や信念を形成すると思っていたわたしの考えが間違いであるということだった。」
著者は冒頭近くでこのように述べている。本書は、タイトルこそ「日本人の戦争」とされているが、副題の「作家の日記を読む」の通り、戦争についての著作という要素よりも、作家たちが日記の中で示す戦争に対する態度の紹介を通して、実はもっと普遍性のあるテーマについて書かれていると思われた。
ここで取り上げられているのは、一般市民ではなく、その時点で、またはのちに文豪と呼ばれるほどの作家たちの日記である。すなわち、インテリ層とみなして良いのだが、どんなに