ニューヨーク生まれの日本文学研究者ドナルド・キーン氏のエッセイ。内容は朝日新聞客員編集員時代のものであり、1983年に朝日新聞社から刊行されたものが、35年の時を経て文庫化されたとのこと。
日本文学研究者であるキーン氏が、日本人とはどういう国民なのか、自分の目を通して見えたことを綴っている。
外国人の日本文学の研究者からみて、日本人はどう見えるのか・・・という視点が興味深かったので、購読してみたが、何しろ35年も前に書かれたエッセイなので、少々新鮮味に欠ける。
当時、日本人というのは、「自分たちは世界の中では特殊な存在である」という自意識が強い国民、であるようにキーン氏には見えたようである。
日本語は難しい、漢字は難しい、文化は独特、食べ物(刺身など)も独特という自意識を持っていると。その自意識の裏返しに、外国人への質問は全く紋切り型で、「日本語は難しいですか?」とか、「俳句は理解できますか?」とか、「刺し身は食えますか?」とか、そんな質問ばかりだと著者は言う。
特に、普通の日本人より日本のことを研究している著者にとっては、そういう質問をされることが腹立たしかったらしい。日本語には詳しいし、刺身なんか食いなれているという自負がある。
今ではどうだろう?来日した外国人へは、同じような質問をしてしまうような気もする。
著者のボヤキ以外で少々興味深かったのは、日本文学の中で最も日本的なジャンルは日記文学ではないかという意見。一葉、子規、啄木、独歩、有島は日記を一流文学に仕上げたと。そのように言われると読んでみたくなる。
もうひとつは、日本語が難しすぎて、国際語になりえず、それは日本にとって大きな損失だという意見。外国人が日本語をもっと簡単にマスターできるようなものに変革できれば、相互理解もより深まると。もっと日本語を簡単なものにしろと・・・。難しいのだとは思うが、理屈はそうだと納得した。
日本人以外の視点を持ちながら、純粋に日本を愛する研究者のつぶやきが面白い。