あらすじ
前線兵士の苦労を想い、みずから質素に甘んじる生活。ストイックなまでに贅沢を戒めるその一方で、実は大のダイヤモンド好き。日本史上、天皇として最も有名にして謎の多い「明治天皇」の人間像を、日本研究の第一人者が縦横無尽、かつ平易に語り尽くす。
...続きを読む感情タグBEST3
Posted by ブクログ
著者は、日本文化の英語での紹介者として有名。
イギリスに近代制度を学び、皇室制度が確立していく過程を、一人の天皇に即して、辿っている。
日本人の目で見るよりも、より本質的な事項を記述しているかもしれない。
Posted by ブクログ
明治天皇は幕末志士に持ち上げられてきた存在という先入観をもっていた。天皇は単なる象徴的存在という意識が勝手にできてしまっていた。本書を読んで、明治天皇は国のトップとしてその責任をきちんと全うした人物として捉えなおすことができた。日本人として必須な知識を得ることができホッとしている。銘記すべきは「大帝たる最大の理由は絶大な権力を持っていながらそれを行使しなかったこと」である。この言葉は奥が深いと感じている。
Posted by ブクログ
ぶあつい「明治天皇」を読むのは覚悟が必要だが、これは新書なので気軽に手にとることができ、驚くほどあっという間に読むことができた。
キーン氏の語る明治天皇は、天皇としては理想的なほど自らに厳しく、皇帝たろうとする人だったようだ。他に明治天皇に関する知識を持たないので否定も肯定もできないが。
キーン氏の著作はもっと色々読みたい。
Posted by ブクログ
明治天皇について書かれた本は少なく、意外な側面も多くあり興味深かった。儒教の考え方を重んじ、これほど国民と寄り添って高い意識で活動をされていたことを知り、天皇崇拝の一端を理解できた気がする。
Posted by ブクログ
日本文化研究の大家である筆者が明治天皇の人物像に迫った一冊。気難しいところもあるけれど、基本的に"天皇"という立場に真面目で、外国文化に対して開明的で、おおむね聡明と言ってよい姿が描き出されている。まあ、筆者は在位期間が長かったことが大帝と呼ぶべき第一の理由と述べているけれど笑
お手製の短歌も折り込まれながら、声や言葉遣いに迫ってみたり、大酒のみで風呂ギライ・倹約家なところから、皇后や岩倉具視や西郷隆盛といった臣下・周囲の人たちとの親交の様子を描き出したりと、新書ゆえ分量としては軽めながら、興味深く読むことができ、親近感がわいてきた(失礼)
Posted by ブクログ
明治の時代といえば日清・日露の両戦争への勝利、岩倉具視や大隈重信、伊藤博文といった多くの優秀な政治家たちが活躍し、近代日本の礎となった時代であった。その中でも明治天皇の優れた人となりについて歴史の教科書などでもそれ程多く触れられる機会は無い。斯くいう私もその後の昭和の時代の天皇がアジア・太平洋に広がる大規模な戦争で目立ってしまったせいか、明治天皇についての記憶は殆どない。本書ではそうした明治天皇の素顔に膨大な資料を参考に迫っていく。
明治の時代はそれまでの武士が政治権力を握ってきた世の中から、いよいよ近代的な日本に生まれ変わる激動の時代だ。武士が刀を腰に下げていた時代は、江戸の長きにわたる治世の中でも大きく変わる事なく続いた。これに対して決定的な刺激になったのは、明治天皇が産まれて間も無くアメリカからペリーが浦賀に来航した事による。蒸気船に巨大な大砲を乗せた艦隊が人々に与えた恐怖はどれほどのものであったろうか。これ以降、日本はそれまで外国との関わりを殆ど持たずに来た事を反省し、海外留学を積極的に行い、かつ西欧化・近代化に向けて一気に突き進む事になる。天皇即位に際して年号を明治に変え、天皇となった睦仁は積極的に外国の文化を学んでいく。本書で初めて登場する天皇の姿は、女官に囲まれて育てられてきたこともあり、女性の様な容姿に平安貴族を思わせる肌の白いか弱い印象を読者に与える。それから先は徐々に君主としての威厳を備えていく。何より西欧列強の君主が自ら軍事や政治に口を出すのに対して、明治天皇は部下たちを信頼し、重要な判断に際してはしっかりとご自身の考えと意見を述べる事で、部下を不安にさせない堂々とした人物像に変わっていく。あくまで自身は決断者であり、部下たちへの絶大な信頼と結果に対する責任感を備えていなければならない。
そうした天皇の決断や心のうちは詠まれた歌の中にも頻繁に登場する。
人柄として一番感銘を受けるのは、何より視点が国そのものであり、世界から見た日本を意識していた点である。日本が諸外国から劣等国・野蛮な国と見られてしまえば、日本の平和を脅かす存在が現れる可能性もある。だから外国人と会う時も常に相手を尊重し、かつ威厳ある態度を示す事で、外国人たちも立派な君主であるとの印象を受ける。当時の世界一の国力を持つイギリスからキリスト教徒以外に勲章が授けられるというのも、歴史上の例外中の例外だ。もっとも本人は決して望んだものではなかったが。
何より国民の生活や軍隊の兵士と同じ視点で国内を隅々まで見渡し、かつ儒教の影響から国民と同じく節約質素を好む性格であったことが、日本人が慎ましい気質で平和を愛する民族であることを世界に示してくれたのではなかろうか。清国、ロシアに対しても勝った勝ったで喜ぶのではなく、その後の二国間の協力や、負けた相手方の将軍の安否を気遣うなど、人間性に大変優れた方であったのだろう。本書を執筆したドナルド・キーン氏は勿論海外から来た方ではあったが、外国人から見た日本人の良さとは、こうした明治天皇の姿から来ているのだろう。
日本は日本人は今、世界からどの様に見られているだろうか。太平洋戦争を経て天皇は神から人間になったと言われているが、明治の時代にも人間的で優しい天皇の姿、大正を経て昭和、平成、令和といずれの天皇も海外からは称賛される。象徴天皇となる事で、海外から見た日本の標準的な姿として、決して誤った印象を与えないよう、気苦労も計り知れないと思う。昭和の時代には諸外国へ進駐し、日本の評価は地の底まで一旦は落ちた。その後の昭和の時代は、世界にも例の無い劇的な発展を遂げた。昭和天皇崩御のニュースとそれまで毎日ご容態についてテロップが出ていたのを記憶している。平成の時代は私の青春そのものだった。東日本震災に悲しまれる天皇の姿を見て心が痛んだが、頑張らなくてはと強い気持ちになれた。令和の世を私自身が最後まで生きられるかはわからないが、きっとこれまでの治世を続け、国民全員が幸せになれるよう天皇陛下は日々祈り続けている事だろう。
Posted by ブクログ
明治天皇は長生きだったので、当時の激動混沌とした社会情勢には深く関係しているはず。
にも関わらず、明治時代の政治家、文化人、軍人などについてはめんみつなけんきゅうがあるのに、明治天皇についての著書は全くないわけではないが、非常に少ない。
本書は、明治天皇の人物像にフォーカス。彼の暮らしぶり、言葉遣い、どんな声で、どんな話ぶりだったのか。皇后、奥さんを何と読んでいたのか、天皇への教育内容、儒教思想が与えた影響などなど。
勲二等旭日重光章を受賞したドナルド・キーン氏による一冊。
大帝と呼ばれた、世界に誇るべき指導者。指導者のあるべき姿が見える。
俺は右でも左でもないが、ビジネス書に危うく涙しそうになる場面もあったな。
良書。
Posted by ブクログ
明治天皇は授業でもほとんど触れない方だったのでどんな方なのか全く知らなかったので、この本を読んで明治天皇の素顔が知れた気がする。とても、質素な生活をする方だったようでびっくり。庶民に近づくために努力する姿など、天皇なのに…と思ってしまう程である。著者の方はアメリカ人だが、日本人の私より日本史に詳しい。勉強し直さなければ。
Posted by ブクログ
費用がかかるからと、新皇居建設に反対されたり、あて布をした服を着用されたり。
でも、香水は3日で空にする程、好き。お酒も好き。
明治天皇の人柄が垣間見れる本でした。
劣悪な環境や天候の中、訓練中の兵たちを見つめ微動だにせず、何時間も同じ場所に立ち続け、見守っている姿。
・・・何も言わなくてもただ、そこにあるだけの重要さって確かにある。
日露戦争で勝利の報せを受けた明治天皇の第一声が
「降伏した将軍の武人としての名誉を大切にせよ」
だったというのに感動しました。
明治天皇が乃木を学習院長にしたことは有名ですが、ずっと腑に落ちないでいたのですが、この本を読んで解消されました。
・・・そっか、そっか。納得。
Posted by ブクログ
著者には、「明治天皇」という大作があるが、本書はその本の紹介というかエピソードなどを記した本である。明治天皇は、当時の諸外国の皇帝と比べて最も立派で大帝と呼ぶににふさわしいと著者は言う。近代日本の立役者であるのに、その実態は知られていないというか書くのは畏れ多くて手付かずになっていたのを、外国人である筆者だからこそ客観的に書いて評価しているのだろうと思うが、それでもそこまで言い切るのだから、本当に偉大だったのだろう。そのような天皇がいたことをなぜか誇りに思ってしまうし、もっと知りたくなってしまう。つまり、この本を読むと、筆者や出版社の思惑通り「明治天皇」を読みたなってしまうのだ。
Posted by ブクログ
私にとって天皇とは、同じ人間だからこそ神のような存在に映る。
著者ドナルド・キーンはあとがきで言う。
「明治天皇には、こういった(当時のドイツ皇帝や朝鮮国王のような(栗原・注))横暴な言動は一度もありません。やろうと思えばできたことなのです。十分な権力がありながら行使しなかった」
このような人物は、同じ人間として全く信じがたい。私だけではなく、皆心ひそかに思っているのではないだろうか。北朝鮮の独裁体制を口では非難しながらも、自分が金正日と同じ立場に立たされたら、あんなものでは済まないほど富と権力を我がもの顔、したい放題にするのではないかと。そしてそれは恐らくそのとおりなのだ。
私は照れ隠しもあり、自らを「皇室マニア」「天皇マニア」などと呼んで憚らないが、本当はそんなものではないのは重々判っている。私がここまで天皇のことを調べてやまないのは、どこかに、同じ人間としてのどうしようもない弱さを見つけ出し、その存在を腑に落としたいのだ。
結果はその逆で、時間が経てば経つほど逆になっていく。
著者はアメリカ人だからその記述はどこまでも客観的だ。あくまでも公平に、明治天皇が若干理不尽な理由で癇癪を起こした様も伝えるが、それさえも後で、
「自分が悪かった、今後も自分に悪いところがあれば言ってくれ」
と臣下に謝罪するというのだから、ほとんど脅威的ですらある。繰り返すが、当時の明治天皇は金正日などとは比較にならないほどの権力を握っていたのだ。
結局、この本を読んでも、ただただその人物に感心するばかりで、求めてやまない『何故あのような偉大な皇帝が生まれたのか』という答えは見つからなかった。
ただ、『信じがたいほどの偉大さ故、その偉大さが忘れ去られようとしている』ことだけは解ったのである。
Posted by ブクログ
誰でも知っているようで、教科書でも歴史小説でもあまり取り上げられることのない、明治天皇の人となりと、どのような指導者であったかを興味深く説いている。ドイツやロシアのような暴君ではなく、当時の皇帝の中では世界一と述べている
Posted by ブクログ
[ 内容 ]
前線兵士の苦労を想い、率先して質素な生活に甘んじる。
ストイックなまでに贅沢を戒めるその一方で、実は大のダイヤモンド好き。
はたまた大酒飲みで風呂嫌い―。
かつて極東の小国に過ぎなかった日本を、欧米列強に並び立つ近代国家へと導いた偉大なる指導者の実像とは?
日本文化研究の第一人者が、大帝の素顔を縦横無尽に語り尽くす。
[ 目次 ]
第1章 一万ページの公式記録(完璧な資料『明治天皇紀』;外国人が見た明治天皇 ほか)
第2章 時代の変革者(十六歳で突然の即位;理想の花嫁候補 ほか)
第3章 己を捨てる(明治天皇の義務感;前線兵士を想う ほか)
第4章 卓越した側近に支えられて(贅沢嫌いのダイヤモンド好き;天皇を取り巻く女性たち ほか)
第5章 天皇という存在(無関心だった自身の健康;惜しまれた崩御 ほか)
[ POP ]
[ おすすめ度 ]
☆☆☆☆☆☆☆ おすすめ度
☆☆☆☆☆☆☆ 文章
☆☆☆☆☆☆☆ ストーリー
☆☆☆☆☆☆☆ メッセージ性
☆☆☆☆☆☆☆ 冒険性
☆☆☆☆☆☆☆ 読後の個人的な満足度
共感度(空振り三振・一部・参った!)
読書の速度(時間がかかった・普通・一気に読んだ)
[ 関連図書 ]
[ 参考となる書評 ]
Posted by ブクログ
ドナルド・キーン氏の「明治天皇」(新潮文庫)は、近代日本史を知る上で、読むべき本だと思う。
この本は、その後に出されたもので、随筆的な作品になっている。
また、歴史本というよりも、明治天皇の”人間面”、詰まり、その性格、生活に関することが中心となっており、その意味で貴重な情報を知ることができる。
(著者は、当時のサイド情報、特に海外の情報も含めて多くの情報を収集した模様)
明治天皇は深酒で必ずしも健康ではなかったが(61歳で亡くなる)、立憲君主の範を貫いた中に大変なストレスがあったのかもしれない。
著者の明治天皇観として、一貫していることが、明治天皇へ敬意であり、それは日本の近代化への貢献を意味するのだと思う。