ドナルド・キーンのレビュー一覧
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ドナルドキーンさんは、時々TVで見かける日本通の方というイメージだった。
その程度の認識だったので、東日本大震災後に日本国籍を取得する決心をしたという報道をニュースで見た時「なんでこんなことがニュースになるのだろう?」と思った。
今回生前にドラルドキーンさんとのインタビューを収めた本を読んで、キーンさんの半生。コロンビア時代に日本語に興味を持ち、機会を得て海軍の日本語学校で日本語を学び、太平洋戦争では日本兵の日記などを読み、日本軍の次の作戦を調べたり、日本兵の聞き取り調査を実施したりした。と言う話は全く知らない話だったので驚いた。(自分が子供の時に放送したNHK大河ドラマ「山河燃ゆ」の世界だ -
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ネタバレドナルド・キーン氏が、今年(2019年)の2月に96歳で亡くなったことは、まだ記憶に新しい。外国人でありながら、日本文学や日本文化にこれだけ精通している研究者は、まずいないだろう。
そんなキーン氏が自ら選んだ5人の日本人作家について、特別な思い出を語り記したエッセイが本書である。それにしても、日本の文学史上でも巨匠と言われるようなこの5人について語ることができるほどの親密な関係性を持つキーン氏もまた、恐るべき人物であると思う。
最初の谷崎、川端については、おそらくキーン氏の研究対象としての偉大な存在であったのだと思う。キーン氏は、1953年に研究のために日本へ来たが、居を構えたのは、谷崎邸 -
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今年亡くなったドナルド・キーンさんの最後のエッセイ。
彼はオペラの愛好家で、本職の日本文学と同様にオペラを愛し、深い洞察力を持った聴き手だったようです。この本には、彼のオペラとの出会いからニューヨークメトロポリタンオペラ(MET)でのオペラ鑑賞の日々、コンサートの記録、曲の内容や歌手の評価など、人生に大きく影響を与えた音楽の世界を紹介しています。
音楽の聴き方や歌手の特徴等には、多少マニアックなところがあって、正直、私のような素人にとっては、彼が取り上げた全く知らないオペラや歌手の評価を読んでみても実感が伴わない感じがあります。でもオペラ好きの人にとっては、とても楽しめる内容ではないかと思いま -
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借りたもの。
キーン氏のオペラ・エッセイ。
オペラに魅了され、METの会員になった経緯や、名作の解説、往年の声楽家たちへの敬意など、読みやすく読み応えのある一冊。
METの歴史も垣間見れる。
先の大戦で戦禍を逃れるためアメリカに渡ったヨーロッパの芸術家たち。それが戦後アメリカに質の高いオペラをもたらしたこと。
そしてオペラには新しい試みをする機会を与えたことを理解する。
モダンな時代設定への変更が、現代人へ親近感を持たせるものではない、という苦言も呈している。
オペラにある古典王道の安心感や、その異界(今、私たちが生活しているリアルとは異なる)への冒険があること
上演時と同時代設定の場合、 -
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明治天皇は長生きだったので、当時の激動混沌とした社会情勢には深く関係しているはず。
にも関わらず、明治時代の政治家、文化人、軍人などについてはめんみつなけんきゅうがあるのに、明治天皇についての著書は全くないわけではないが、非常に少ない。
本書は、明治天皇の人物像にフォーカス。彼の暮らしぶり、言葉遣い、どんな声で、どんな話ぶりだったのか。皇后、奥さんを何と読んでいたのか、天皇への教育内容、儒教思想が与えた影響などなど。
勲二等旭日重光章を受賞したドナルド・キーン氏による一冊。
大帝と呼ばれた、世界に誇るべき指導者。指導者のあるべき姿が見える。
俺は右でも左でもないが、ビジネス書に危うく -
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キーンさんがインタビューに答え、自分の日本語修行だけでなく、先生、テキスト、教え子だけでなく、日本文学をはじめとする学問とのかかわりを語ったもの。インタビュアーは,日本語教育学専攻の東京外大の河路さん。河路さんがインタビュアーを引き受けるきっかけになったのは、キーンさんが使っていた長沼直兄のテキストが、長沼学校から東京外大に寄贈され、それを整理していたことからだそうだ。この長沼学校、ぼくは1980年頃日本語教育学会の研究例会で発表をしたあと、そこの浅野鶴子先生という方に案内され訪れ、紀要までもらったことがある。浅野先生にはとてもかわいがっていただいたが、その後ご無沙汰しているうちにお亡くなりに
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いよいよ古代・中世篇のクライマックスともいえる「枕草子」と「源氏物語」が登場です。それにしても、1000年前が女性の才能をこれほど花開かせる社会だった、というのは、日本は女系社会だった、という証左でしょうか。
おもしろかったのは、「説話文学」の章で述べられている日本的ヒーロー論。河合隼雄氏の浦島太郎論“このヒーローは英雄的な戦いで女性を獲得するのではなく、むしろ女性によって捕らえられる”を引用し、日本的ヒーローは受動的で、西洋人にとっては不完全と思われる、と述べています。これも、日本が女系社会だったということと関連していそう。
西洋の視点からみた日本文学史っていうのも、この本の面白さの一つ -
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古代・中世篇一を読んで、ドナルド・キーン氏の吸引力に巻き込まれ、篇二を購読。そして、篇二を読み進めるうちに、その吸引力がキーン氏の論旨によるものというより、その文章・文体に端を発していることにハタと気が付く。そう、その訳文自体に心が持っていかれている。訳者は土屋政雄。調べてみると、その昔、麻薬のようにうっとりとさせられた「イギリス人の患者」の訳者だ。なんてことだろう。ホント、びっくりした。「イギリス人の患者」もストーリーよりも訳文の方にうっとりきてたのかも。
閑話休題、古代・中世篇二は、古今和歌集に始まる勅撰和歌集と平安時代の日記文学。花といえば桜、桜といえば吉野といった、日本人の常識がこの