ドナルド・キーンのレビュー一覧
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気軽な気持ちで何気なく手に取ったのに、著者の日本文学を愛する情熱に引きずり込まれて、なんだか全巻読まなければならいような気にさせられてしまった。といっても、全巻あわせると18巻にもなるから、とりあえず、古代・中世篇は購入しよう。おそるべし、ドナルド・キーン氏の吸引力。
古代・中世篇一は、古事記から平安時代前期の漢文学まで。特に、山上憶良に対する見方が変わった。子煩悩なお父さんってだけではなく、社会派だったのね。あとは、空海。“文学史に空海?”って思ったけど、「三教指帰」という戯曲仕立ての著作について、扱われている分量としては少ないながら、その特異性が際立っている。まずは、司馬遼太郎の「空海の -
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ネタバレ費用がかかるからと、新皇居建設に反対されたり、あて布をした服を着用されたり。
でも、香水は3日で空にする程、好き。お酒も好き。
明治天皇の人柄が垣間見れる本でした。
劣悪な環境や天候の中、訓練中の兵たちを見つめ微動だにせず、何時間も同じ場所に立ち続け、見守っている姿。
・・・何も言わなくてもただ、そこにあるだけの重要さって確かにある。
日露戦争で勝利の報せを受けた明治天皇の第一声が
「降伏した将軍の武人としての名誉を大切にせよ」
だったというのに感動しました。
明治天皇が乃木を学習院長にしたことは有名ですが、ずっと腑に落ちないでいたのですが、この本を読んで解消されました。
・・・そっか -
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著者には、「明治天皇」という大作があるが、本書はその本の紹介というかエピソードなどを記した本である。明治天皇は、当時の諸外国の皇帝と比べて最も立派で大帝と呼ぶににふさわしいと著者は言う。近代日本の立役者であるのに、その実態は知られていないというか書くのは畏れ多くて手付かずになっていたのを、外国人である筆者だからこそ客観的に書いて評価しているのだろうと思うが、それでもそこまで言い切るのだから、本当に偉大だったのだろう。そのような天皇がいたことをなぜか誇りに思ってしまうし、もっと知りたくなってしまう。つまり、この本を読むと、筆者や出版社の思惑通り「明治天皇」を読みたなってしまうのだ。
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キーンさんの著作を読むと、自分が日本人として生まれたこと、日本語が母国語であることが、どれほど素晴らしいかしみじみと感じる。それは、キーンさんが、日本への愛を、下手な愛国者なんぞよりもよほど示しているからだろう。その熱情が、われわれ読者にも伝わってくるのだ。
この本は、キーンさんの思い出を書いたエッセイの集成である。和田誠さんの表紙絵が似合う優しい文章が詰まっている。内訳は、
Ⅰ:旅行記
Ⅱ:自身の研究について
Ⅲ:旧友への追悼文
Ⅳ:オペラ論
となっている。
いち安部公房ファンとして、公房先生への追悼文が収録されていたのは嬉しかった。キーンさんは公房先生の(数少ない)友達であった。公房先 -
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私にとって天皇とは、同じ人間だからこそ神のような存在に映る。
著者ドナルド・キーンはあとがきで言う。
「明治天皇には、こういった(当時のドイツ皇帝や朝鮮国王のような(栗原・注))横暴な言動は一度もありません。やろうと思えばできたことなのです。十分な権力がありながら行使しなかった」
このような人物は、同じ人間として全く信じがたい。私だけではなく、皆心ひそかに思っているのではないだろうか。北朝鮮の独裁体制を口では非難しながらも、自分が金正日と同じ立場に立たされたら、あんなものでは済まないほど富と権力を我がもの顔、したい放題にするのではないかと。そしてそれは恐らくそのとおりなのだ。
私は照れ -
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[ 内容 ]
前線兵士の苦労を想い、率先して質素な生活に甘んじる。
ストイックなまでに贅沢を戒めるその一方で、実は大のダイヤモンド好き。
はたまた大酒飲みで風呂嫌い―。
かつて極東の小国に過ぎなかった日本を、欧米列強に並び立つ近代国家へと導いた偉大なる指導者の実像とは?
日本文化研究の第一人者が、大帝の素顔を縦横無尽に語り尽くす。
[ 目次 ]
第1章 一万ページの公式記録(完璧な資料『明治天皇紀』;外国人が見た明治天皇 ほか)
第2章 時代の変革者(十六歳で突然の即位;理想の花嫁候補 ほか)
第3章 己を捨てる(明治天皇の義務感;前線兵士を想う ほか)
第4章 卓越した側近に支えられて(贅 -
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▼ドナルド・キーンさんと言えば、ガイジンさんですけれど日本文学者。ということは知っていて、このエッセイ集がどこかでたれかが褒めていて、ふらっと買って読んでみました。
▼そしたらびっくり、あまりと言えばあまりにも日本語が洗練されていて。こりゃぁ只者じゃないぞ、と、このエッセイ集を一旦止めて、「ドナルド・キーン自伝」を読み始めたんです。それはそれは面白くて・・・。
▼自伝に大満足して。しばらくしてから、このエッセイに戻りました。そうしたら・・・まあ、予想通りなのですが、自伝に比べたら面白くない。当たり前なのですが。高峰秀子さんだってたれだってそうなのだから。
▼キーンさんがお気に入りの街や思 -
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ドナルド・キーン氏の「明治天皇」(新潮文庫)は、近代日本史を知る上で、読むべき本だと思う。
この本は、その後に出されたもので、随筆的な作品になっている。
また、歴史本というよりも、明治天皇の”人間面”、詰まり、その性格、生活に関することが中心となっており、その意味で貴重な情報を知ることができる。
(著者は、当時のサイド情報、特に海外の情報も含めて多くの情報を収集した模様)
明治天皇は深酒で必ずしも健康ではなかったが(61歳で亡くなる)、立憲君主の範を貫いた中に大変なストレスがあったのかもしれない。
著者の明治天皇観として、一貫していることが、明治天皇へ敬意であり、それは日本の近代化への貢献 -
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江戸時代(たぶん綱吉の時代?)に千住から東北の松島、平泉を経て、日本海側に出て、そこから新潟経由でずっと琵琶湖まで南下して最後は大垣で終わるという紀行文。『地球の歩き方』的な場所の説明(歴史とか)+その前後を含めた芭蕉自身がやったこと+感想+俳句(芭蕉と一緒に行った弟子の曾良の句も)、という内容。ドナルド・キーンの解説、英訳がついている。
まず『おくのほそ道』がこんな短い話だとは思わなかった。ドナルド・キーンも書いているが「文庫本にすれば五十ページ足らずしかないテキスト」(p.88)で、字面を追うだけならすぐに出来てしまう。あと弟子と行ったということも知らなければ、てっきり東北に行って帰っ -
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単純に意味が取れなかったり、古典を引いているのか何のことやら分からなかったりで、正直、その魅力を味わいきったとは思わない。ムダをそぎ落としたような文章で案外みじかかった。
ドナルド・キーンの解説によれば、必ずしも事実に沿った紀行文ではなくてかなりの脚色が入っていることが、後年、曾良の日記がみつかったことで明らかになったという。収められた俳句も即興ではなく推敲に推敲を重ねたことがわかっている。芭蕉が理想とする旅情を演出したと言うとウソっぽくも感じられるが、とはいっても自分の脚だけで旅をするわけであり、出発に当たっての惜別の情だとか現代と違うものがあったのだろう。