河崎秋子のレビュー一覧
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常に北海道を舞台に、歴史を含んだ物語を綴られている河崎秋子さん。
今回手にした『 鯨の岬 』も、北海道を舞台にした中編2話の構成となる。
第一話『 鯨の岬 』
札幌に住む主人公の奈津子は、息子夫婦が共働きということで孫の蒼空の世話を押し付けられていた。
小学校から帰ってきた蒼空は、二世帯住宅の自宅には戻らずに、奈津子の住まいで両親が帰宅するまで過ごしていた。
流石に時折気苦労を感じることもあって疲労感に苛まれるのだが、夫の援助は全く期待できなかった。
奈津子は月に一日、母親が入所している釧路の施設に出かけることにしていた。
釧路に向かう途中、小学生の時に住んでいた霧多布へ向かうことにした。
そ -
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ネタバレ先生独特のユーモラスな文章で綴られたファミリーヒストリー。
確かに北海道人ってルーツにあんまり興味ない人が多い気がします(笑)せいぜい頑張っても曽祖父母か高祖父母くらいまでな感じ。
どこそこ家臣でとかルーツがはっきりしている人以外はあとは割と「先祖?さぁ」って人が自分の周りもほとんど。罰当たりな子孫ですみませんな感じです(笑)
やはり文書が一つでも残ってるっていうのは大きいですよね。
そこを足がかりに親戚を訪ねて思いがけない話を収集していく様子が楽しげです。
しかしやはり一番お父さんにお話を聞きたかったことでしょうね。
先祖をたどっていく中で出てくるお父さんの兄弟の話やお母さんの開業の話、先 -
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プロローグ
カラン、コロン♪
誰かが、入店したようだ
2杯目の珈琲を飲み終えるのと同時に最後の頁をゆっくりと閉じた
読後感は、とても複雑だ
2杯目の珈琲の後味のように、何とも言えない苦味だけが、心を浸していく
“混沌”か‥
そんな二文字がふと浮かび、居心地の悪い席で、暫し呆然としていた‥
本章
ブク友の皆様も高評価の声が多かった本書
『愚か者の石』★激5
ん〜、何と表現したらよいのか
物凄くそれは複雑だ
看守の中田、囚人の巽と大二郎
主人公、巽にとって、看守である中田は兎も角として、少なくとも大二郎だけは、茶化す性格を差し引いても、お互いに友として成り立っていると確信していた
それ -
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木内昇さんの解説の冒頭にあるよう、この作品からは〝においが激しく立ち上″ってきた。
まさに、登場人物の体臭がしてくるのだ。
それ故に嫌なヤツは嫌な臭いが濃く漂い、読んでいてムカムカする。
その世界に放り出されて、逃げたいのに逃げられない読書体験となる。
それは何故か。
第二部第一章無花果の、″シメゴロシノキ″のエピソードで、その訳がすとんと落ちてきた。
そう言えば、イチジク属のイヌビワは、イヌビワコバチと言う寄生バチと共生しているという。
相互に深く依存し、一方の破滅は他方の滅亡と言われるほどに。
インドボダイジュも同じイチジク属。
絡みつき、時に傷つきながらも、根室の土地と共生する -
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こんな苦しい小説を久しぶりに読みました。
読み進めるのに何度も挫けそうになりました。
あまりにも主人公が不幸すぎて、悲しすぎて。
それでも最後まで読んだのは圧倒的な面白さがあったからです。
いや、面白いという表現は不適切かもしれません。
これは面白いという物語ではありません。
とにかく苦しくて切なくて悲しいお話です。
それでも読んで良かったと心から思います。
ここに生まれてしまった者は、その家から逃げられない。
私にはその気持ちがよくわかります。
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北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵 -
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大人になって北海道に帰ってきて、ご近所に住んでいる、開拓した人たちのことをとても知りたかったので、本を読んだが、実際にご近所の開拓二世の方から、内地のご先祖の話を聞くことはほとんどない。話してくれるのはいつも、今の北海道での暮らしのことだった。こちらからご先祖がどこから来たのかを聞くことも憚られたので、長いこと付き合ってきて、ようやく話の中でふと漏らしてくれるくらいだ。でもこれを読んだら、どこから来たことにはあまり関心がない人が多いとあって、なるほどと思った。
河崎さんがご先祖のことを調べようとしたのは、お父さんが、もう過去を語ることができなくなってしまったからだ。それなら調べてでも知ろうとし -
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エッセイは、いろんな人の人生を追体験できる素晴らしい読み物だと実感した一冊。
羊飼いに憧れるけど、実際どうすれば羊飼いになれるのか?羊飼いは何をしているのか?それを面白く楽しみながら学べるエッセイでした。
噛めば噛むほど肉汁が出てくるような、体験記。きっとここには書かれている以上の体験が、このエッセイに重みを持たせているんだろうな〜
追記
読み終わって、最初は羊面白いなぁと思ってたけど最後の方は自分には命を扱う仕事はできないなぁとちょっと重たい気持ちになった。きっと、飼育と屠畜を別の人が行っているから世の中の酪農は成り立っているんだろうなぁ…私は自分が育てた動物の最期がどうしても気になってし -
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直木賞作家 河﨑秋子さん初のノンフィクションです。
しかも、ご自身の体験を綴った作品です。
酪農家の娘さんとして生まれた河﨑さんは、一念発起、ニュージーランドで羊飼いの実習を受けます。
そして、帰国して家畜として羊を40~50頭飼育し、羊の肉を食肉として出荷するようになります。
河﨑さんは、その後、文章専業で生きる決意をし、羊飼い廃業をしていきます。
これは、羊を1頭飼育し始めてから、最後の一頭を出荷して羊飼いを終えるまでの羊飼いノンフィクションなのです。
羊飼いの日常生活から、日本の酪農事情、ジンギスカンの話など、羊にまつわる知られざる業界話が生き生きと語られます。もちろん、