河崎秋子のレビュー一覧

  • 銀色のステイヤー

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    古いところでは宮本輝の優駿を思い出した。良き人たちとの成長物語で、サクサク読める。でもレースの場面描写では何故か力が入ってしまう。馬券も買ったことないのに。

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    2025年10月10日
  • 父が牛飼いになった理由

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    申し訳ないけど著者の方の他の本は読んだことがないのだが、作家さんのファミリーヒストリーを中心としたエッセイ本。
    金沢の武士だったご先祖までさかのぼりつつ、満州からの引き上げを経て薬剤師から農家に転身した祖父、公務員から酪農家になった父の歴史をたどる。著者が幼少期から経験した酪農家の生活についても書かれており、知らないことばかりで面白かった。
    ただ、ところどころ古いインターネットのノリがあって、それは面白いというよりはちょっと痛く感じてしまった。
    人ひとりが自分なりに考えて人生を歩み、その連続が家系であり、民族、人類と大きな集合体になっていくことを考えると途方もない気持ちになる。私自身も家系に全

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    2025年09月19日
  • 父が牛飼いになった理由

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    ネタバレ

     直木賞受賞作『ともぐい』(2023)で知った著者。重厚な筆致に圧倒されたが、次に読んだ『森田繁子と腹八分目』(2024)での軽妙な文章に、おや、こんな三浦しおん的なお仕事小説も書くのかと、ふり幅に感心していた。

     本作は新書で、自らのファミリーヒストリーを追ったエッセイ調の一冊だ。
     タイトルのとおり、父、そして祖父が北海道に入植し、何故、酪農家の道を選んだのかを調べ上げていく。
    同時に、本書を通じて、いかに作者は、北海道の自然と向き合った、あの直木賞作品を生み出せたのかが垣間見られたらと思い読んでみた。

     “牛飼い”という職業を通じ、一族で命と向き合ってこその作品たちと思ったが、意外や

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    2025年08月24日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼いになりたいと思った人の話。
    羊肉をおいしいと感動しこれを作りたいで羊飼いになる。海外に修行にいったり羊のあれこれから経営まで身をもって勉強。羊飼いになり自分の出来る範囲で少しずつ手を広げていく。自分のやりたいことに一直線で誠実。現実的なことが具体的に書いてあり読みやすい。
    そして羊飼いをやめるのだがどうして?とは思わなかった。著者の自分を信じて生きていく強さがよかった。

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    2025年08月21日
  • 父が牛飼いになった理由

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    河﨑さんのお父さんが、公務員を脱サラしてまで酪農を始めた理由はなんなのか?
    北海道へ来たことは、不思議な縁としか言えない。

    父親の記憶が失われたことをキッカケに、フィクションを創り出す小説家が、記憶と記録を頼りにたどった長い長い家族の歴史。

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    2025年06月02日
  • 父が牛飼いになった理由

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    ご自身が羊飼いになった話のあとは、公務員だったお父上が牛飼いになられた話である。にしても、話はそう単純ではない。なんと戦国時代にまで遡り、祖先の足跡を辿っていくのだ。
    河﨑さんの筆はこれまでになく軽く、ご自身がこの調査・執筆を愉しんでいる様子が伺える。一族の中には思いもしなかった経歴をもった方もおられ、こちらもびっくりした。
    作家の素顔が見え隠れするエッセイ(というかノンフィクション)もいいけど、ガツンとくる小説を早く読みたい。

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    2025年05月18日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    河崎秋子さんの小説家として立つまでの人生。羊飼いという珍しい仕事を一から始めて軌道に乗せ、小説も書きマラソンも走り父親の介護までするそのパワーに圧倒された。小説にパワーがあるのはその人間力にあるのかな。

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    2025年04月24日
  • 銀色のステイヤー

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    競馬に出る馬にまつわる話。大昔にツインクルレースに一度行ったのと、体験乗馬以外は縁のない世界。馬を育てる牧場や調教師、騎手など、大変なんだなぁ。

    超高級車マクラーレンに乗る友人が、最近馬にも乗り始め、ヘルメットとかブーツとか鞍とか全部買わされて、行くたびにレッスン代に始まり保険代やら馬の指名料?やら何かと出費がかさむとボヤいていたことを思い出した。

    益々縁がない世界だわ。

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    2025年04月07日
  • 絞め殺しの樹

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    ネタバレ

    昭和初期の根室の開拓地で、奴隷のように使われる少女ミサエ。死ぬまでこき使われるかに思われたが、薬売りのオヤマダに救い出されて札幌で保健婦になり、また根室に戻る。

    見合い結婚をするものの、苦労人ゆえの子供への厳しさと旦那の薄情さで子育てに躓き、イジメも重なった娘は自殺をしてしまう。離婚の後に妊娠が発覚し、生まれた息子はヨシオカ家に養子に出し、息子もまた実母と同じように、搾取される生活に…

    屯田兵の末裔の誇りを縁に、強い人を目ざとく見つけて、雁字搦めにして、搾取するヨシオカ家。まるでツタ科の植物のように、締め上げて巻き付いた大樹を腐らせ枯らす。

    こういった構図は世間に溢れていると思う。組織と

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    2025年03月30日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    北海道で生まれ育った著者の
    半生の記録といった感じでしょうか。

    酪農の家に育ちながら
    違う仕事をするつもりだったのに
    羊飼いになろうと決めて
    ニュージーランドへ研修に行ってしまう。
    その行動力とバイタリティーが
    書かれる小説にも生かされているっぽい。
    (一冊しか読んだことないですが)

    志した出発点が
    「おいしい羊肉を作りたい」なので
    生産者として羊に相対している。
    文筆業専念のため
    羊飼いをやめることにしたとき
    最後の一頭まで
    良い買い手に渡したいと奮闘する姿に
    気持ちが入り込みました。

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    2025年03月16日
  • 銀色のステイヤー

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    ネタバレ

    今作は競馬馬シンバーファーンの誕生活躍引退までと、その周りの人々。重い展開はなく、スカッと爽やかに聞ける。
    サラブレッドの一生は勝っても負けても過酷。足は繊細だし、練習はキツイ。存在し続けること自体がものすごい競争なのだそうだ。
    ファーンとテツコとトシキの未来に、さちあれかし。

    余談だが、父が厩舎で働いていた事があったので「馬はイイ!馬は…………イイぞぉぉぉぉぉ!」と言う話を思春期に耳タコが出来るほど聞いて育った。一度だけ間近で見せてもらったらむちゃくちゃデカい!!父の言う「カワイイ」は私にはちょっと分からなかったが、父が好かれていたのはよく分かった。甘えるし、来たのが分かると「こっちも!」

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    2025年03月10日
  • 鯨の岬

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    鯨が爆発する、ということは何となく知っていた。
    この文庫に収録されている「鯨の岬」「東陬遺事」どちらも、北海道の歴史を元にしたネタから練られた掌編で、読み進めるにしたがってほうほうと頷くことが増えていった。
    特に「東陬遺事」は、江戸時代の道東という未知の領域の話だったのでとても楽しめた...
    というと語弊があるけど、知らない知識を得られて幸せな時間だった。

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    2025年02月24日
  • 愚か者の石

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    明治の北海道の監獄、想像しただけで
    背中から寒さが這うようだ。
    東京から来た坊々の青年と何処か
    捉え所のない男。
    普通なら出会う筈の無い二人が出会った
    のは極寒の監獄だった。
    不思議な石を後生大事にし過去を語らない
    大二郎をただ明るいホラ吹きだと
    若い巽は思っていたが、その石と大二郎の
    過去には深い因縁と愛情があった。
    大二郎と真逆の看守の田中は観察眼も
    鋭くそして見えない正義と情もある。
    この三人の関係が人としての正義とは
    極限で生きるすべてとは何か
    罪はどう赦されるべきなのか
    大二郎の最後の生き様で、考えさせられる。

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    2025年02月14日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    著者が大学生〜直木賞を取るまでの生活が記されている。酪農家の家に生まれ、羊飼いになるため国内外に学びに行き、良質な肉を卸すほどになった著者から、あのともぐいという作品が生まれたんだなあと納得した。食べるために他の生き物の命を扱う環境にいらっしゃるので、それらとの距離感や捉え方が自分達と違うなと感じる。お父さんの介護のことも悲劇や美談でなく、生の中の一つのような感じですんと胸に落ちた。

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    2025年02月11日
  • 愚か者の石

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    北海道の監獄ものというと、どうしても吉村昭の破獄と比べてしまう。
    別ものだから比べちゃいかんとは思うが、もうちょい重厚感というか緻密さを欲してしまう。

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    2025年01月31日
  • 肉弾

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    作者は犬と北海道が好きなんだろうなと思った
    犬と一緒に熊を倒すところはちょっとファンタジーでしたが、主人公の性格がガラリと変わって良かったです。

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    2025年01月27日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼いでもある作家・河﨑秋子さんが、羊飼いを始めてから最後の一頭を出荷し、羊飼いをやめて専業作家になるまでの十数年を綴ったエッセイ。

    河﨑秋子さん=羊飼いという認識だったけど、しばらく前に羊飼いはやめていたのだと本書で初めて知った。
    それにしても、羊飼いになりたいと単身ニュージーランドの牧場に乗り込むなどかなりの行動力に圧倒される。
    着実に努力を重ね、北海道でも数少ない羊飼いとなり十数年。実家の酪農牧場の従業員でもありながら、羊飼いもし、父親の介護もしながら作家稼業まで、あの「不封の王」描かれた頃はこんなにも過酷な日々を送っていたのかと驚く。

    やりたいこととやるべきことの中で時間を削られ、

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    2024年12月25日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    河崎秋子さんの自叙伝兼エッセイのような書籍
    河﨑さんから生み出された力強い小説は、
    今までの経験から発露されたものなんだとこの本を読んで納得しました。

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    2024年11月30日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼いを夢見た河崎さんが、細い糸を手繰るようにその道に邁進して、自分の羊を手にしたパワーに圧倒されました。実家の酪農を手伝いながらも、美味しい羊肉を生産して販路を見つけ商売として羊飼いをしていた姿が面白く書かれています。それは、生半可ではできないことで、ほんとに好きなのだなあと思えました。動物にかかわる食や医療、そのほかの様々な経験が、リアルに作品に現れているのだと納得です。
    羊飼いを廃業して作家一本となったこれから、北海道の歴史にまつわるものや生き物とかかわるもの、そして畜産・酪農・農業など、河崎さんの目線にある作品を読めればと思いました。

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    2024年11月13日
  • 銀色のステイヤー

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    今まで触れることのなかった競馬の世界がつぶさに描かれていて、おもしろかった。

    一頭の馬の誕生からデビュー、引退までを牧場で働く人々、調教師たちの視点から描いた一作。

    競馬の世界のシビアさや馬がレースに出るまでにどれだけ多くの人が関わり力を注いでいるかよくわかって、ドキュメンタリーを観ているようだった。

    淡々とした物語の運びで少し物足りなさも感じたが、登場人物たちの競馬に賭ける思いがリアルに描かれていて良かった。

    ☆3.4

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    2024年11月12日