河崎秋子のレビュー一覧
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申し訳ないけど著者の方の他の本は読んだことがないのだが、作家さんのファミリーヒストリーを中心としたエッセイ本。
金沢の武士だったご先祖までさかのぼりつつ、満州からの引き上げを経て薬剤師から農家に転身した祖父、公務員から酪農家になった父の歴史をたどる。著者が幼少期から経験した酪農家の生活についても書かれており、知らないことばかりで面白かった。
ただ、ところどころ古いインターネットのノリがあって、それは面白いというよりはちょっと痛く感じてしまった。
人ひとりが自分なりに考えて人生を歩み、その連続が家系であり、民族、人類と大きな集合体になっていくことを考えると途方もない気持ちになる。私自身も家系に全 -
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ネタバレ直木賞受賞作『ともぐい』(2023)で知った著者。重厚な筆致に圧倒されたが、次に読んだ『森田繁子と腹八分目』(2024)での軽妙な文章に、おや、こんな三浦しおん的なお仕事小説も書くのかと、ふり幅に感心していた。
本作は新書で、自らのファミリーヒストリーを追ったエッセイ調の一冊だ。
タイトルのとおり、父、そして祖父が北海道に入植し、何故、酪農家の道を選んだのかを調べ上げていく。
同時に、本書を通じて、いかに作者は、北海道の自然と向き合った、あの直木賞作品を生み出せたのかが垣間見られたらと思い読んでみた。
“牛飼い”という職業を通じ、一族で命と向き合ってこその作品たちと思ったが、意外や -
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ネタバレ昭和初期の根室の開拓地で、奴隷のように使われる少女ミサエ。死ぬまでこき使われるかに思われたが、薬売りのオヤマダに救い出されて札幌で保健婦になり、また根室に戻る。
見合い結婚をするものの、苦労人ゆえの子供への厳しさと旦那の薄情さで子育てに躓き、イジメも重なった娘は自殺をしてしまう。離婚の後に妊娠が発覚し、生まれた息子はヨシオカ家に養子に出し、息子もまた実母と同じように、搾取される生活に…
屯田兵の末裔の誇りを縁に、強い人を目ざとく見つけて、雁字搦めにして、搾取するヨシオカ家。まるでツタ科の植物のように、締め上げて巻き付いた大樹を腐らせ枯らす。
こういった構図は世間に溢れていると思う。組織と -
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ネタバレ今作は競馬馬シンバーファーンの誕生活躍引退までと、その周りの人々。重い展開はなく、スカッと爽やかに聞ける。
サラブレッドの一生は勝っても負けても過酷。足は繊細だし、練習はキツイ。存在し続けること自体がものすごい競争なのだそうだ。
ファーンとテツコとトシキの未来に、さちあれかし。
余談だが、父が厩舎で働いていた事があったので「馬はイイ!馬は…………イイぞぉぉぉぉぉ!」と言う話を思春期に耳タコが出来るほど聞いて育った。一度だけ間近で見せてもらったらむちゃくちゃデカい!!父の言う「カワイイ」は私にはちょっと分からなかったが、父が好かれていたのはよく分かった。甘えるし、来たのが分かると「こっちも!」 -
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羊飼いでもある作家・河﨑秋子さんが、羊飼いを始めてから最後の一頭を出荷し、羊飼いをやめて専業作家になるまでの十数年を綴ったエッセイ。
河﨑秋子さん=羊飼いという認識だったけど、しばらく前に羊飼いはやめていたのだと本書で初めて知った。
それにしても、羊飼いになりたいと単身ニュージーランドの牧場に乗り込むなどかなりの行動力に圧倒される。
着実に努力を重ね、北海道でも数少ない羊飼いとなり十数年。実家の酪農牧場の従業員でもありながら、羊飼いもし、父親の介護もしながら作家稼業まで、あの「不封の王」描かれた頃はこんなにも過酷な日々を送っていたのかと驚く。
やりたいこととやるべきことの中で時間を削られ、 -
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羊飼いを夢見た河崎さんが、細い糸を手繰るようにその道に邁進して、自分の羊を手にしたパワーに圧倒されました。実家の酪農を手伝いながらも、美味しい羊肉を生産して販路を見つけ商売として羊飼いをしていた姿が面白く書かれています。それは、生半可ではできないことで、ほんとに好きなのだなあと思えました。動物にかかわる食や医療、そのほかの様々な経験が、リアルに作品に現れているのだと納得です。
羊飼いを廃業して作家一本となったこれから、北海道の歴史にまつわるものや生き物とかかわるもの、そして畜産・酪農・農業など、河崎さんの目線にある作品を読めればと思いました。