あらすじ
非凡な力を秘めながらも気性難を抱える競走馬・シルバーファーンが、
騎手、馬主、調教師、調教助手、牧場スタッフ、取り巻く人々の運命を変えていく。
===
北海道・日高の競走馬生産牧場で、「幻の三冠馬」と呼ばれた父馬・シダロングランの血を引いて産まれたシルバーファーン。
牧場長の菊地俊二は、ファーンの身体能力に期待をかけつつも、性格の難しさに課題を感じていた。この馬が最も懐いている牧場従業員のアヤが問題児であることも、悩みの種である。
馬主となったのは、広瀬という競馬には詳しくない夫人。茨城県・美浦にある厩舎を擁する二本松調教師とともに牧場を見学に訪れ、ファーンの購入を決めた。不安を覚える調教助手の鉄子(本名:大橋姫菜)に、二本松は担当を任せることを告げる。
ファーンは、俊二の兄である菊地俊基騎手とのタッグで、手のかかるヤンチャ坊主ではあるものの順調に戦績を重ねていくが、あるレースで事故が起こり……。
手に汗握る競走展開、人と馬の絆。
わずか数分のレース時間には、全てが詰まっている。
「――それでいいよ。最高だ、お前。」
一頭の馬がこんなにも、人生を豊かにしてくれる。
『ともぐい』で第170回直木賞を受賞した著者による、感動の馬物語!
感情タグBEST3
Posted by ブクログ
ステイヤーの意味が出てくるまでにだいぶかかりました。河﨑さんの作品にはめずらしく⁇
魅力的な登場人物がたくさんいて、いつもながら女性たちがたくましく、読後爽快感がありました。
知らなかった競馬の馬側の話が興味深かった。
馬は無事です。
Posted by ブクログ
文句無し近付いてに面白く、読み終わるのが寂しくて残念だった。
競馬シーンでは、目の前でレースが展開されているかのように力が入った。
馬の感情、表情、仕草がとても
よく伝わってきた。
競馬場に行かなくなって20有余年、また行きたくてたまらん。
Posted by ブクログ
タイトルがかっこいいですよね。そして表紙の芦毛の馬のやんちゃそうなかわいらしさとタイトルに合わせたバックのシルバーの装丁がまた良き。
北海道に住むものとしては馬産がどう描かれ競馬という独特の世界をどう表現していくのか注目していました。
専門用語的なものや状況的なものもあり前知識なしで読んでも知らない人にはわかるだろうか、と思う箇所も何箇所かありますがほぼ理解できるのではないかと思える親切な書き方がなされていると思います。
河﨑先生も生き物に関わる生業をされてたとは言え、馬産は全く違う業態なので相当取材されたのではないかと推察。馬産と言ってもサラブレッドと輓馬とポニーなんかとじゃまた全然別の生き物扱いかと思うほど別物ですし。
「俺らの仕事を堅気と思うな」という言葉が出てきます。競馬だけでなく馬産はどこからどこまでもギャンブルだとはよく言われその世界では耳にすることでもありましょうが、そこのところを関わりない人にわかるように表現するのは並みの苦労ではないと思います。
トラブルメーカーの、馬産を底から理解していない若くて血の気の多い従業員を登場させ関係性を引っ掻き回してくれるることで、他の作家ならば描きにくくできれば避けて通りたいであろう化製場など業種の裏側をも見せようとするのはさすがと感じます。
河﨑先生の熱意といいますか、綺麗事だけではない生き物との関わりを描き出すことへの執念のようなものも感じます。
p181〜182や最終盤での馬房のシーンのように少し砕けた「ぷっ」と吹き出してしまうようなシーンがほっこりとさせられたり脱力させられたり。楽しげなシーンは筆が乗っていて楽しんで書かれている感じも伝わってきます。
馬のドラマだけどもやはり本作も人間ドラマが面白いですね。トラブルメーカーの成長や裏切りにあって陰気だった馬主女性の変貌ぶりも素敵。
何と言ってもシルバーファーンを除けば主人公である女性調教助手の痛快っぷりというか柄がいいのが本作の魅力ですね。本名の姫奈がすっ飛ぶほどのアイアンな感じがまさに鉄子というアダ名(通り名?)の通り。
終盤で先代の奥さんが仏壇に向かうシーンが出てきます。
小さい個人の生産牧場は何代も前から家族経営で細々と繋いできているところが今でもたくさんあります。繋げず廃業してしまった牧場はその何十倍もあるでしょう。
眼の前の馬は、今そこに携わっている人間だけではなく、たくさんの先代や挫折した関係者やその他何らかで関わってきた人間の思いも背負っているという重みを感じるシーンです。競馬は勝負であり大金も絡むけれど、それだけではない、他の業態にはない人間のドラマを感じさせる世界だなと思います。
競馬に興味はなくても、馬と共に生きる人間の世界に興味を持ってくれる人が本書で少しでも増えてくれたら嬉しいです。
Posted by ブクログ
ヤンチャな1頭の競走馬を中心に競馬の裏と表を描いた作品。競馬、全然知らなかったけど、むちゃくちゃおもしろかった。
クセ強の馬オタクが成長する様子もよかったし、鉄子さんのかっこよさにも痺れた。
競馬やってみたくなった!
Posted by ブクログ
ヤンチャ坊主、シルバーファーンが競馬界を駆け抜ける。生産牧場、調教師、馬主の夢を乗せて。
めっちゃ面白かった。各々の登場人物の大変さと喜びがすごく伝わって来る。競馬を裏方から描く小説には傑作が多いけどこれもその一つ。
Posted by ブクログ
競馬界に留まらず、読者をも魅了する芦毛のファーン。牧場、調教師、騎手…皆の力が結集され、ファーンが優秀な競走馬に成長してゆく過程に酔い痴れた。馬と共に成長してゆく人々も爽やか。人間と動物の描写に偉才を放つ河﨑先生。早くも次回作が楽しみである。
Posted by ブクログ
競走馬の育成や調教に主眼を置いたストーリー。
私も競馬は好きで、強く速い馬を見るとカッコいいと思うけど、終わってみれば今日も無事でよかったということを考える。古馬の中でも特に6歳以上だと、毎レース、これが最後かもしれないという気持ちを抱きながらレースを見つめる。一ファンですらこういう気持ちだから、生産者や厩舎の馬に対する気持ちは並大抵のものでははいだろう。馬が紡ぐ縁や絆が美しいと感じた。
最近、競馬界では悲しいことが続いている。人馬ともに望まれたタイミングで引退できることを願うのみ。
Posted by ブクログ
北海道の放牧地で黒鹿毛の母ドラセナから生まれた灰色の仔馬。癖の強い父親の血を受け継ぎ自由奔放な仔馬は亡き夫の馬主資格を受け継いだ広瀬夫人が馬主となり、競走馬として歩み始める。一筋縄では行かないファーンに人間はあたふたしながらも愛情深く接する。様々な考えを持つ人達も結局は馬が好きで仕方がないのだ。
Posted by ブクログ
これまでに読んだ河﨑作品とは違って、爽やかな青春小説でした。競馬を楽しむうえで、こういう小説を通じてでも、馬を送りだす側の視線は忘れないでいたいものです。
Posted by ブクログ
070129 #銀色のステイヤー #河﨑秋子
河﨑秋子さんのエグさやドロドロさは影を潜め、疾走感のある爽やかな物語だ。主人公はシルバーファーンというヤンチャな芦毛馬。世話する人たちを翻弄しながら競走馬として成長していく。馬に関わる登場人物がみんな魅力的だ。競馬というギャンブルの世界を描くので男性主体に思えるが、この物語は一癖ある女性たちが活躍する。生産牧場で馬を育てたアヤ、厩舎で調教を担当した鉄子、初めて馬主になった広瀬夫人、牧場のゴッドマザー千恵子の存在も忘れてはいけない。競馬はさほど詳しくないがG1レースで勝利したシーンは感動で胸が熱くなった。
Posted by ブクログ
静内の生産牧場で生まれたヤンチャな牡馬“シルバーファーン”。一頭の馬と共に歩む生産者、調教師、馬主、騎手それぞれの思い。
調教助手の鉄子、調教師の二本松、問題児のアヤと登場人物のキャラがいい。
もちろん主役であるシルバーファーンが一番だけど。
一頭の馬をレースに送り込むまでの彼らの奮闘と、馬によって人生を輝かせ成長していく人間たちのドラマは最初から最後まで軽やかで爽やかさを失わない。
いつも動物への愛情を感じる河﨑さんらしい作品で、今回は重さがなく読後も文句なし。
Posted by ブクログ
この小説に登場する競走馬「シルバーファーン」の設定がとてもいい。2011年に三冠を達成したオルフェーヴルを彷彿させる気性難は闘争心と表裏一体であり、秘めた爆発力にものすごく魅力を感じる。競馬ファンとしては日頃知ることのできない厩舎や生産牧場での仕事が生き生きと伝わってきて良かった。そして馬を愛する気持ちは尊く大切なものであるが、それだけでは競馬社会が成立しないという厳しい現実を、登場人物の成長と重ねてきっちりと描いているところが良かった。
Posted by ブクログ
シルバーファーンことドラ夫の誕生からそれに関わる牧場,馬主,厩舎,厩務員,調教師,騎手などみんなの思いが一つになって成長し,レースを駆け抜けていく.ワクワク感が止まらない.
Posted by ブクログ
『ともぐい』を読んだこともあって心に残っていた作家さん。新聞の書評に載っていてきになったので読むことに。
全く競馬には興味ないし知識もなかったけど、そんな事は全然気にならず読み切れました。
ドラ夫ちゃんと、女性達の成長物語ですね。
ともぐいよりライトな感じでした。
Posted by ブクログ
河崎さんの作品はいつも疾走している。
ラスト、芦毛のファーンが観客の声援を受けて。。美しい!
装丁にも惹かれた・・芦毛という競走馬で言われる用語の意味も初めて知った。
ストーリー的には競場用の馬の生産牧場が舞台。
そこに人生をかける男女~先代社長夫人、専務、調教助手、スタッフ・・そして意外な輝きを見せてくれる馬主。
男性陣より女性陣にスポットが当たっていた気がした。
競馬は無論、馬牧場の事はからっきし無知な私でも楽しめる構成になっており、さらっとした読後感。
時にはあくの強い、臭味きつい河崎ものにしては爽やか系といったところかな。
表題のステイヤー・・父馬のシダロングラン、母馬のドラちゃん、そこに生まれたのがシルバーファンということで?だった。
調教師と戯れるシーンややんちゃを見せるシーンの後でクラシック菊花賞で見事な走りを見せるシーンで読み手も脳に絵図を描いた~長距離走は得意な馬という事だね。
河崎さんは男性的なタッチで描く半面、キャラ立ちもしっかりしているところが好き。
今回も上記の男女に加えて馬たち、そして生産牧場の娘葵ちゃんの成長していく姿もきっちり変貌迄見せてくれた。
レースの後の話~シルバーファンがよもやのオーストラリアへの旅立ちとは驚かされた。
初めて知った「繁養場所」なる用語。
いいシャトル種牡馬になることが条件としてのオーストラリアからの声掛け・・・日高牧場からの旅立ちは引退場所としては華といえるかも。
鉄子も調教師めざし、問題児と言われたアヤもマサと新天地を目指し・・人も馬もベクトルがぐぃっと方向を示すいい作品だった。
Posted by ブクログ
ステイヤー(stayer)は競馬用語で長距離レースの得意な馬のことだそうです。
北海道・静内の小さな生産牧場で誕生した葦毛(白っぽい毛並)の競走馬・シルバーファーンが持ち前の負けず嫌いでクラシックを制覇し、そのヤンチャっぷりで人気馬となり、6歳の引退レースまでを描いた作品。
人物像が見事。男性陣も良いのだけど、特に女性たちが良い。自ら鉄子を名乗る調教助手の大橋姫菜、生産牧場の先代の奥さんで今は専務の社長の倍おっかない千恵子、馬が好きすぎて周りと摩擦ばかり起こす従業員のアヤこと綾小路雛子、馬主でやり手の広瀬夫人。それぞれに癖があって、でも根っこで良い人。
『颶風の王』『肉弾』に代表されるような、泥臭くそしてとても力強い、それ一本やりのちょっと不器用な作家さんだったあの河﨑晃子さんが、こんな爽やかな物語を書くなんて。
競走馬を題材にした小説と言えば宮本輝さんの『優駿』という名作がありますが、私はこちらの方が好きですね。
Posted by ブクログ
芦毛の馬は昔から好きで、何で好きなのか考えるとやはり目を引くからだと思う。そして、ドラ夫と同じようにヤンチャで気まぐれな乗馬クラブにいた芦毛の馬を思い出して懐かしくなった。
大人しくて言うことをよく聞いてくれる優等生な馬ももちろん可愛いが、ヤンチャで騎乗者を無視するが負けん気は強くやたら人間らしい馬(ドラ夫)はもっと可愛い。手のかかった子ほど可愛いと言うのは、こう言うことなのだろうか。
馬だけでなく、登場人物も良かった。ドラ夫の生産牧場のオーナーは良い馬を生産したいという飾らない気持ちを持っているのが良い。問題児のアヤはオーナーにも楯突くし、なかなか大変な性格ではあるが、間違いなく馬が好きなんだろうと思える。(ドラ夫に懐かれたり、騎乗のセンスは羨ましい限り。)騎手の俊基も流石、見事な走りを見せてくれるし、落馬してもドラ夫から離れないところに拍手したい(騎手なら日常茶飯事とはいえ、やはり落馬して酷い怪我をしたら再び同じ馬に乗るのは怖いと思う)。
見事なデビュー戦からハラハラさせられた日本ダービー、忘れられない菊花賞、どのレースも大切だった。全員の気持ちが一つになってレースを見ていたシーンは、読んでいて鳥肌が立った。
結局、競馬は人間のエゴで馬にとって酷いことをしているという意見は甘んじて受ける。けれど、自分の育てた馬が優勝する興奮と喜びを味わえるのは、競馬業界に関わる人たちだけなのだ。
この本は文句なしに、競馬と馬の育成の面白さを教えてくれた。
Posted by ブクログ
競馬はやらないし特に馬好きというわけでもないが、競馬界を舞台にした小説には良作が多い気がしてつい手を出してしまう。
本書も、北海道・静内の生産牧場で生まれた、“幻の三冠馬”を父に持つシルバーファーンと、彼に関わる多くの人々を描いた競馬小説だ。
読みどころはもちろんファーンの成長とレースでの活躍であるが、牧場の問題児アヤと彼女の扱いに手を焼く牧場主、ファーンを預かる二本松厩舎の鉄子、ファーンに騎乗するジョッキーなど、分厚い人間ドラマが繰り広げられる。
Posted by ブクログ
古いところでは宮本輝の優駿を思い出した。良き人たちとの成長物語で、サクサク読める。でもレースの場面描写では何故か力が入ってしまう。馬券も買ったことないのに。
Posted by ブクログ
競馬に出る馬にまつわる話。大昔にツインクルレースに一度行ったのと、体験乗馬以外は縁のない世界。馬を育てる牧場や調教師、騎手など、大変なんだなぁ。
超高級車マクラーレンに乗る友人が、最近馬にも乗り始め、ヘルメットとかブーツとか鞍とか全部買わされて、行くたびにレッスン代に始まり保険代やら馬の指名料?やら何かと出費がかさむとボヤいていたことを思い出した。
益々縁がない世界だわ。
Posted by ブクログ
今作は競馬馬シンバーファーンの誕生活躍引退までと、その周りの人々。重い展開はなく、スカッと爽やかに聞ける。
サラブレッドの一生は勝っても負けても過酷。足は繊細だし、練習はキツイ。存在し続けること自体がものすごい競争なのだそうだ。
ファーンとテツコとトシキの未来に、さちあれかし。
余談だが、父が厩舎で働いていた事があったので「馬はイイ!馬は…………イイぞぉぉぉぉぉ!」と言う話を思春期に耳タコが出来るほど聞いて育った。一度だけ間近で見せてもらったらむちゃくちゃデカい!!父の言う「カワイイ」は私にはちょっと分からなかったが、父が好かれていたのはよく分かった。甘えるし、来たのが分かると「こっちも!」と主張する。
賢く美しい生き物。馬。
Posted by ブクログ
今まで触れることのなかった競馬の世界がつぶさに描かれていて、おもしろかった。
一頭の馬の誕生からデビュー、引退までを牧場で働く人々、調教師たちの視点から描いた一作。
競馬の世界のシビアさや馬がレースに出るまでにどれだけ多くの人が関わり力を注いでいるかよくわかって、ドキュメンタリーを観ているようだった。
淡々とした物語の運びで少し物足りなさも感じたが、登場人物たちの競馬に賭ける思いがリアルに描かれていて良かった。
☆3.4
Posted by ブクログ
一頭の競走馬の成長と、その馬に係わる人々の心情の変化(成長・挑戦)を描いた物語です。馬券を買い求める人だけではなく、生産者・馬主・厩舎・騎手の方々それぞれが馬に賭けて夢を追っているのだと思いました。二本松調教師の先見の明が素晴らしく、自分だけにとどまらず馬や周りの人たちの将来も同時に見据えていて見事です。
華やかさだけではない、馬の体温や鼻息、そして鼻をつまむような臭いも身近に感じられるようでした。