河崎秋子のレビュー一覧
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直木賞
冒頭から続く、リアルな鹿の解体シーン。
作品全体を通して、血なまぐさい描写が続く。
これが女性の作家の作品だとは驚きだが、作者の河崎秋子さんは、もと羊飼いであり、動物の解体などは日常的に行っていたことだろう。
前に、河崎秋子さんのエッセイを読んだが、羊肉の出荷に際して、特別に感情を揺さぶられることなく、プロとして冷静に処理をされていた。
それは、この小説の主人公、熊爪にも通じるところがある。
熊爪は生活のため、たまに白糠の町に降りるのだが、熊爪を忌避する町民がほとんどのところ、熊爪に親切にしてくれる人は、やはりどこか怪しい雰囲気を漂わせている。
怖くてなかなか手に取れなかったのだが、ようやく読めてよかった。直木賞が納得の筆力。 -
Posted by ブクログ
ネタバレ読み始めは果たして最後まで読み切れるのだろうかと不安になるような生々しくグロテスクな描写がこれでもかと続き目を背けたくなることも何度もあったが圧倒的筆力でぐいぐい読ませる。冒頭から穴持たずとの対峙までは読んでるだけで臭い、怖い、可哀想、気持ち悪いなどのネガティブ感情がすごかった。でもそれ以上に単純に面白い。熊爪という男の魅力もすごいし白糠のお屋敷に住む人々の優しさの中の怪しさ、なんといっても令和の都会では絶対に知ることのできない動物たちの生き様、全てが魅力的で面白かった。穴持たず、赤毛との決闘では何が何だか、なんでそうなる、なんでそう思う!?など全く理解の範疇をこえていたがヒィヒィ言いながらも読み進めてしまう不思議。終始臭いにおいがたちこめた小説だった。
ラスト、熊にはからずも不戦勝してしまい命を持て余していた熊爪は里から妊婦を奪い小屋で一緒に暮らし始める。妊婦は子を産み、熊爪は陽子と赤ん坊と相棒の犬となにやら日本昔ばなしに出てきそうなのほほんとした日々を送る。その時点でもう熊爪には死ぬ以外の道は絶たれていたように思う。だって。最初あんなに魅力的であんなにおもしろかったのに後半まじで面白くなかった。もちろん小説自体は面白いです、熊爪が面白く無くなってしまった。魅力がなくなってしまった。興味が失せてしまった。やっぱり熊爪のピークは赤毛を殺したあとの獣すぎる珍行動までだよなぁ。あそこで果てて熊爪はもう死んでいたんだよな。あとなんか熊爪のペースに乗せられてあのまま小屋で陽子と子どもと犬に囲まれ幸せに暮らす…みたいなルートが見えてしまった人もいるようだが、陽子が殺すの当たり前だろう。熊爪のことなんか恨む対象でしかないだろ。身重で極寒のくっせぇ山小屋に連れてこられたんだよ地獄だよ当たり前だろ。気持ち悪い、女のこと穴としか思ってないようなまさに獣。そもそも赤毛と合体した時点でなんか変な病気とかもらってんじゃないの!?
こんな話を女性が!?書いてるの!?と信じられなかったがラストを読んで納得した。つまらないただの獣となった熊爪をあそこで殺してなんか意味ありげな死、みたいになったけど単純に陽子は自分を誘拐した性加害者に反撃しただけだと思う。犬、お前だけがまともだった。 -
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んぉぉ。一気に読んでしまったから時間にすると短かったのに、読後も熊と犬が居座っている…犬よかった。やっぱり犬は良い。
最近やってるゲーム(何の話?) 、身一つで生えてる草とか岩とかひたすら集めて季節を生きながらえていくんだけど。熊爪の山での生活と重ねてしまった。獲物が取れたら嬉しい。少しも無駄にしたくない。たくさん取れたら余裕があるうちに遠出を!山菜、まだここにたくさんあるのにカゴに入らない!
北海道の春…あれ、そういえば…意外に、厳寒の冬より秋口・春先の描写が多かったように思うな?春がやってくる、根雪は木の幹の周りから解ける(動物のお医者さんで長靴が雪に埋まっちゃう話があったよね?)日中解けた雪は日没後また凍ってザラメみたいな氷の粒になる、晴れた日に、木の枝に積もった雪が急にどさーっと落ちること…自然の風や雪解けの匂いを知っている、やっぱり自分は道産子だなーと身近に感じながら読んでいた。
鹿や熊の生態も知らないこと多くて面白かった。そうなんだ、鹿、食べ過ぎたら起き上がれなくなっちゃうんだ!あと、熊が、積もりはじめたら10日たらずで冬眠に入るという話。
野生動物のように山で生きてきた熊爪が、鼻っ柱をへし折られたことをきっかけに周りのヒトにも影響されつつ自らの人としての生き方を省み…という話かと思えば、いや。やっぱ俺はそんなめんどくさい!全力で抗っても死ぬ時は死ぬのみ!勝負! かと思えば、生かされ、かと思えば…
うーん、むずかしかった。
雄熊が、雌熊が連れていた子グマを自分の子かも知れないのに殺してしまうという逸話→からの→雄熊はそもそも行為が目的になってて子とか知らんし みたいな話…あーなんか雄あるあるでわかるような(一雌の意見です笑)。幼いというか純粋というか、至ってシンプルというのか?この辺りは母親と全然違っている。熊爪と陽子と良輔と、重ねてあるのかないのか? 陽子のうごきもわからない。
良輔の方の事情よくわからなくて社会情勢や時代背景を調べたが、没落の原因が分からんかった(無知) この時代特有の、ごちゃごちゃと濃ゆい感じ…阿寒湖からきた太一みたいな適当なやつはたくさんいたろうし、陽子やふじ乃などなんかの呪いかってくらい不気味さを感じたけど、全国に散らばる怪談など読んでたらドロドロした因果の元が発生してるの明治に多い印象あるよな。人とヒトの関係性が濃厚でつながりも多くてびっくりするがまぁ酷い。
そういえば赤毛、かつて熊爪が会ったことのある子グマだったのはなかなか熱かった。
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ネタバレ人里離れた山中の小屋で狩猟して独りで生活している猟師の生涯。小屋のそばに来たクマや、もう一頭若いオスとたびたび戦うが、大けがをおってしまう。その戦いの様子の描写は武骨で、荒々しく、引き込まれる。
狩猟した獲物を持ち込んでいた商店から女を奪って小屋で暮らし始めるが、いずれこの女に殺されてしまう。この女は小屋に来た時にすでに商店主人の子供を懐妊していた。熊の行動に例えて、この猟師は子供を殺してしまうのではないかとの描写がされたが、逆にこの猟師の子供を妊娠した女が子供を守るためか、猟師に毒を盛り、さらに小刀で殺害し、小屋を脱出する。この辺の動機が今一つ理解できなかったが、その後の猟師、女などの行く末のまとめ方はさすがであった。 -
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明治時代になったばかり、北海道東部の山の中に村田銃で狩りをしながら熊爪は生活していた。仕留めた動物は、肉にして人里へ売りに出る。人とは最小限にしか関わらず、しかし熊爪はその生活に満足していた。山に春が来ると、熊が冬眠から目覚める。しかし、山にやってきたのは隣の山の熊「穴持たず」であった。穴持たずは冬眠もせずに人里などを荒らし、食い物を求めて凶暴化しながら熊爪の山にやってきた。熊爪は自分の山に入ってきた穴持たずに憤慨し、狩ることを決心する。一人と一匹の戦いはどちらが勝つのか…
初読み作家さんだったけど、描写がすごい。息遣いが聞こえそうになるほど、情景がありありと浮かび、すぐに読んでしまった。静かな山と狩りの緊張感の様子がとても印象に残った。熊爪は赤毛に同族意識を持っていたのではないか。初めて尊敬できる、そして自分と対等の戦いができる、自分のことを理解してくれている熊。その熊が、熊爪に「孤独」を教え、そして最後は…変わってしまった時点で熊爪は詰んでいたのだと思う。食うか食われるかの世界の緊張感が、常に呼んでいる間に付き纏って面白かった。 -
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熊と猟師の壮絶な死闘を描いた『ともぐい』。"あの"血肉の通った熱量のある文章を、河﨑秋子さんに書かせた背景を垣間見た気がしました。河﨑さん、本物の羊飼いだったんですね。
本書は、なぜ羊飼いという職に就くに至ったのか、そして廃業するまでの経緯を描く自伝的なエッセイです。総じて、河﨑さんの厳しい現実に立ち向かう大胆な行動力と姿勢、覚悟を感じました。
実家が酪農業だったとはいえ、半端な腰掛け的取り組みではなく、本気とプライドの塊が感じられました。動物の生と死に向き合い、牧場経営の厳しさと喜び、親の介護など、激動の15年が重過ぎず、ユーモアを交えながら生き生きと描かれます。
羊飼い稼業に誇りを持っていたからこそ、自身の紹介プロフィールの「自称『羊飼い』」の表記に憤慨します。河﨑さんは、生きることと食べること、生と死への確固たる価値観をもち、根源的な問題を小説に落とし込もうとしているのですね。
多くの葛藤を踏まえて、小説家専業の道を決断するまで…「小説家前夜の日々」(帯文)がよく伝わりました。もう少し河﨑さんの作品を読んでみようと思いましたし、より深く想いを感じ取れる助けになる一冊に違いありません。 -
Posted by ブクログ
うっかり乗り過ごしてしまって昔暮らした霧多布へ。そこから封印された記憶の蓋が開く。壮絶な過去と喪失に向き合う女性を描いた表題作ほか一編。
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河崎さんの中編集です。表題作の「鯨の岬」は、読み始めは正直まったりしていて、いつもの河崎さんの殴りつけるような緊張感のある筆致は控えめで物足りず、このまま終わるのかなあ、などと残念に思っていました。しかし終盤で物語は急展開し、河崎さん特有の暴力的なまでの血生臭さも荒れ狂い、最後には往復ビンタを食らったような呆然とした読後感が残りました。いや、やはり河崎さんはすさまじい本を書かれる方だなあ。
「鯨の岬」は実際にあった事件をモチーフにしているのですが、そのような事故があったということは寡聞にして知りませんでした。痛ましい戦争の置き土産で、実はこうした事故・事件は戦後かなりの数があるのだろうな、と思いました。終わっても人々の命と心を削り続ける、戦争という人が生み出した理不尽を思いました。
もう一編も深い喪失と再生の物語ですが、こちらはあまり入り込めなかったので星4つとさせていただきました。描写される風景が野付付近の荒涼とした原野そのもので、河崎さんはやっぱり芯から道東の民なんだな、と思いました。