河崎秋子のレビュー一覧
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違う本を目当てに本屋に行ったのだが、表紙に馬の絵があって、帯に”JRA賞馬事文化賞”とあれば、こちらを買わない手はない。
明治の時代、東北の寒村から北海道に渡った男の、その母から続く6代に亘るお話。
全編に馬が絡むが、表紙の絵には魅かれるよね。
今年は『北海道』と命名されてから150年目にあたるということで、先日、式典も行われていたが、北海道開拓の歴史を紐解けば、『昭和時代でさえ、開拓民は縄文時代さながらの暮らしを強いられたことが分かります』との記述があり、明治の開拓民の厳しさは恐らく今の我々の想像を遥かに超えるものであっただろう。
そうした時代の中、雪山で遭難し乗っていた馬を喰って生き延び -
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申し訳ないけど著者の方の他の本は読んだことがないのだが、作家さんのファミリーヒストリーを中心としたエッセイ本。
金沢の武士だったご先祖までさかのぼりつつ、満州からの引き上げを経て薬剤師から農家に転身した祖父、公務員から酪農家になった父の歴史をたどる。著者が幼少期から経験した酪農家の生活についても書かれており、知らないことばかりで面白かった。
ただ、ところどころ古いインターネットのノリがあって、それは面白いというよりはちょっと痛く感じてしまった。
人ひとりが自分なりに考えて人生を歩み、その連続が家系であり、民族、人類と大きな集合体になっていくことを考えると途方もない気持ちになる。私自身も家系に全 -
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ネタバレ直木賞受賞作『ともぐい』(2023)で知った著者。重厚な筆致に圧倒されたが、次に読んだ『森田繁子と腹八分目』(2024)での軽妙な文章に、おや、こんな三浦しおん的なお仕事小説も書くのかと、ふり幅に感心していた。
本作は新書で、自らのファミリーヒストリーを追ったエッセイ調の一冊だ。
タイトルのとおり、父、そして祖父が北海道に入植し、何故、酪農家の道を選んだのかを調べ上げていく。
同時に、本書を通じて、いかに作者は、北海道の自然と向き合った、あの直木賞作品を生み出せたのかが垣間見られたらと思い読んでみた。
“牛飼い”という職業を通じ、一族で命と向き合ってこその作品たちと思ったが、意外や -
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ネタバレ昭和初期の根室の開拓地で、奴隷のように使われる少女ミサエ。死ぬまでこき使われるかに思われたが、薬売りのオヤマダに救い出されて札幌で保健婦になり、また根室に戻る。
見合い結婚をするものの、苦労人ゆえの子供への厳しさと旦那の薄情さで子育てに躓き、イジメも重なった娘は自殺をしてしまう。離婚の後に妊娠が発覚し、生まれた息子はヨシオカ家に養子に出し、息子もまた実母と同じように、搾取される生活に…
屯田兵の末裔の誇りを縁に、強い人を目ざとく見つけて、雁字搦めにして、搾取するヨシオカ家。まるでツタ科の植物のように、締め上げて巻き付いた大樹を腐らせ枯らす。
こういった構図は世間に溢れていると思う。組織と -
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ネタバレ今作は競馬馬シンバーファーンの誕生活躍引退までと、その周りの人々。重い展開はなく、スカッと爽やかに聞ける。
サラブレッドの一生は勝っても負けても過酷。足は繊細だし、練習はキツイ。存在し続けること自体がものすごい競争なのだそうだ。
ファーンとテツコとトシキの未来に、さちあれかし。
余談だが、父が厩舎で働いていた事があったので「馬はイイ!馬は…………イイぞぉぉぉぉぉ!」と言う話を思春期に耳タコが出来るほど聞いて育った。一度だけ間近で見せてもらったらむちゃくちゃデカい!!父の言う「カワイイ」は私にはちょっと分からなかったが、父が好かれていたのはよく分かった。甘えるし、来たのが分かると「こっちも!」