河崎秋子のレビュー一覧

  • 鯨の岬

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    ネタバレ

    自分が住まう土地が舞台の本を手に取ってしまうことありませんか?自分はよくあります。これもそんなふうにして手に取った一冊なんですけどね。主婦・奈津子さんの憂いとでもいうんでしょうかね。子育てが終わってひと段落したと思ったら孫育が待ち構えていて、嫁にいいように使われているような虚しさとでもいうんでしょうか。責任と割合の見合ってなさとか。親の介護も決して苦ではないにせよ。そういう鬱屈した思いを胸に抱えて、開けてしまった幼少の頃の記憶の扉。そういう時代が確かにあったし、それはなかったことにはならないんだよなと。

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    2023年02月26日
  • 颶風の王

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    明治の初めの頃でしょうか。東北の庄屋の娘が雪崩の被害に遭いながら、偶然生じた雪洞の中に乗ってきた馬と共にまぎれる。助けの望めないまま、長い間馬とその雪洞に過ごす娘は、空腹のためにその馬を食べ、生き延びるのだけれど……。

    娘が生んだ捨造は一頭の馬と共に開拓民を募集していた北海道に渡り、以後、根室にて主に馬の生産で食べていく。その捨造から5代にわたる家族の話です。

    力強いストーリーテリングでした。僕が通ってこなかった道に咲いている言葉の花たちを多く所持しているような著者、という印象がまずありました。時代小説として始まることもあり、その語彙の種類や言葉の用い方が、僕のカバーしていない領域にあるも

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    2023年02月23日
  • 鯨の岬

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    「鯨の岬」と「東陬遺事」の2篇が収められている。「鯨の岬」は老境に差し掛かった奈津子が、孫が爆笑していた鯨が爆発する動画を気に留めつつ、施設にいる母をみまおうとでかけた際にたまたま故郷に立ち寄り、過去のおもいでをなぞったり母から話を聞いて、むかし友人らが巻き込まれた爆発事故があったことをを思い出す、そんなお話で、なかなか良かった。「鯨の岬」は江戸時代の北海道の話なのだが、今ひとつなんのことだか掴みそこね、今一つだったなあ。

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    2022年08月04日
  • 颶風の王

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    馬と人の、何代にも渡る物語。
    明治時代、東北地方でのミネの壮絶な体験とそれを知る捨造。
    昭和戦後、根室地方での捨造と孫の和子の、馬との生活。
    平成、大学生のひかりが祖母和子のために動く、そして出会った馬との交感。

    短編のように、次の時代に移る話に戸惑うものの、最後まで読んで、長い長い物語を読んだような満足感があった。

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    2021年06月20日
  • 肉弾

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    人生に自暴自棄な青年が、横暴な父に連れられ北海道のカルデラの森に。鹿狩りのはずが熊を撃つよう父に命ぜられる。そこへ異様な熊が、野犬が……。

    熊、おっかなかった!

    犬は健気だな。

    迫力ある内容で、ため息をもらしながら読んだ。

    命に、手を合わせたくなる。

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    2021年01月17日
  • 肉弾

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    『颶風の王』も『肉弾』も、生き物の体温と場所の寒さが印象に残った。

    食べる食べられる、人間とそれ以外の動物、父と息子、庇護するものとされるもの。
    いろいろなものの対比があるなかで、自分はどちらかに属さないといけない場合、その決断の難しさを感じた。
    そして、否応なしに所属させられる場合の覚悟。

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    2020年10月14日
  • 颶風の王

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    ネタバレ

    この中篇のどこに圧縮されていたのかと驚くほどに力強く、壮大。
    人の力が及ばぬ厳しい自然を前にしては何事も及ばず、ただ静かに畏怖の念を抱き、生きる。
    ひかりが見た光景は私の心にも焼きついている。

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    2018年09月18日
  • 颶風の王

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    違う本を目当てに本屋に行ったのだが、表紙に馬の絵があって、帯に”JRA賞馬事文化賞”とあれば、こちらを買わない手はない。
    明治の時代、東北の寒村から北海道に渡った男の、その母から続く6代に亘るお話。
    全編に馬が絡むが、表紙の絵には魅かれるよね。

    今年は『北海道』と命名されてから150年目にあたるということで、先日、式典も行われていたが、北海道開拓の歴史を紐解けば、『昭和時代でさえ、開拓民は縄文時代さながらの暮らしを強いられたことが分かります』との記述があり、明治の開拓民の厳しさは恐らく今の我々の想像を遥かに超えるものであっただろう。
    そうした時代の中、雪山で遭難し乗っていた馬を喰って生き延び

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    2018年08月29日
  • 父が牛飼いになった理由

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    時々話がそれるので混乱したのと、他人というか知らない人のファミリーヒストリーに興味が持てなかったのですが、読みやすく面白い文章で楽しく読みました。

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    2025年11月08日
  • 銀色のステイヤー

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    古いところでは宮本輝の優駿を思い出した。良き人たちとの成長物語で、サクサク読める。でもレースの場面描写では何故か力が入ってしまう。馬券も買ったことないのに。

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    2025年10月10日
  • 父が牛飼いになった理由

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    申し訳ないけど著者の方の他の本は読んだことがないのだが、作家さんのファミリーヒストリーを中心としたエッセイ本。
    金沢の武士だったご先祖までさかのぼりつつ、満州からの引き上げを経て薬剤師から農家に転身した祖父、公務員から酪農家になった父の歴史をたどる。著者が幼少期から経験した酪農家の生活についても書かれており、知らないことばかりで面白かった。
    ただ、ところどころ古いインターネットのノリがあって、それは面白いというよりはちょっと痛く感じてしまった。
    人ひとりが自分なりに考えて人生を歩み、その連続が家系であり、民族、人類と大きな集合体になっていくことを考えると途方もない気持ちになる。私自身も家系に全

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    2025年09月19日
  • 父が牛飼いになった理由

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    ネタバレ

     直木賞受賞作『ともぐい』(2023)で知った著者。重厚な筆致に圧倒されたが、次に読んだ『森田繁子と腹八分目』(2024)での軽妙な文章に、おや、こんな三浦しおん的なお仕事小説も書くのかと、ふり幅に感心していた。

     本作は新書で、自らのファミリーヒストリーを追ったエッセイ調の一冊だ。
     タイトルのとおり、父、そして祖父が北海道に入植し、何故、酪農家の道を選んだのかを調べ上げていく。
    同時に、本書を通じて、いかに作者は、北海道の自然と向き合った、あの直木賞作品を生み出せたのかが垣間見られたらと思い読んでみた。

     “牛飼い”という職業を通じ、一族で命と向き合ってこその作品たちと思ったが、意外や

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    2025年08月24日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼いになりたいと思った人の話。
    羊肉をおいしいと感動しこれを作りたいで羊飼いになる。海外に修行にいったり羊のあれこれから経営まで身をもって勉強。羊飼いになり自分の出来る範囲で少しずつ手を広げていく。自分のやりたいことに一直線で誠実。現実的なことが具体的に書いてあり読みやすい。
    そして羊飼いをやめるのだがどうして?とは思わなかった。著者の自分を信じて生きていく強さがよかった。

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    2025年08月21日
  • 父が牛飼いになった理由

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    河﨑さんのお父さんが、公務員を脱サラしてまで酪農を始めた理由はなんなのか?
    北海道へ来たことは、不思議な縁としか言えない。

    父親の記憶が失われたことをキッカケに、フィクションを創り出す小説家が、記憶と記録を頼りにたどった長い長い家族の歴史。

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    2025年06月02日
  • 父が牛飼いになった理由

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    ご自身が羊飼いになった話のあとは、公務員だったお父上が牛飼いになられた話である。にしても、話はそう単純ではない。なんと戦国時代にまで遡り、祖先の足跡を辿っていくのだ。
    河﨑さんの筆はこれまでになく軽く、ご自身がこの調査・執筆を愉しんでいる様子が伺える。一族の中には思いもしなかった経歴をもった方もおられ、こちらもびっくりした。
    作家の素顔が見え隠れするエッセイ(というかノンフィクション)もいいけど、ガツンとくる小説を早く読みたい。

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    2025年05月18日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    河崎秋子さんの小説家として立つまでの人生。羊飼いという珍しい仕事を一から始めて軌道に乗せ、小説も書きマラソンも走り父親の介護までするそのパワーに圧倒された。小説にパワーがあるのはその人間力にあるのかな。

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    2025年04月24日
  • 銀色のステイヤー

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    競馬に出る馬にまつわる話。大昔にツインクルレースに一度行ったのと、体験乗馬以外は縁のない世界。馬を育てる牧場や調教師、騎手など、大変なんだなぁ。

    超高級車マクラーレンに乗る友人が、最近馬にも乗り始め、ヘルメットとかブーツとか鞍とか全部買わされて、行くたびにレッスン代に始まり保険代やら馬の指名料?やら何かと出費がかさむとボヤいていたことを思い出した。

    益々縁がない世界だわ。

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    2025年04月07日
  • 絞め殺しの樹

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    ネタバレ

    昭和初期の根室の開拓地で、奴隷のように使われる少女ミサエ。死ぬまでこき使われるかに思われたが、薬売りのオヤマダに救い出されて札幌で保健婦になり、また根室に戻る。

    見合い結婚をするものの、苦労人ゆえの子供への厳しさと旦那の薄情さで子育てに躓き、イジメも重なった娘は自殺をしてしまう。離婚の後に妊娠が発覚し、生まれた息子はヨシオカ家に養子に出し、息子もまた実母と同じように、搾取される生活に…

    屯田兵の末裔の誇りを縁に、強い人を目ざとく見つけて、雁字搦めにして、搾取するヨシオカ家。まるでツタ科の植物のように、締め上げて巻き付いた大樹を腐らせ枯らす。

    こういった構図は世間に溢れていると思う。組織と

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    2025年03月30日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    北海道で生まれ育った著者の
    半生の記録といった感じでしょうか。

    酪農の家に育ちながら
    違う仕事をするつもりだったのに
    羊飼いになろうと決めて
    ニュージーランドへ研修に行ってしまう。
    その行動力とバイタリティーが
    書かれる小説にも生かされているっぽい。
    (一冊しか読んだことないですが)

    志した出発点が
    「おいしい羊肉を作りたい」なので
    生産者として羊に相対している。
    文筆業専念のため
    羊飼いをやめることにしたとき
    最後の一頭まで
    良い買い手に渡したいと奮闘する姿に
    気持ちが入り込みました。

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    2025年03月16日
  • 銀色のステイヤー

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    ネタバレ

    今作は競馬馬シンバーファーンの誕生活躍引退までと、その周りの人々。重い展開はなく、スカッと爽やかに聞ける。
    サラブレッドの一生は勝っても負けても過酷。足は繊細だし、練習はキツイ。存在し続けること自体がものすごい競争なのだそうだ。
    ファーンとテツコとトシキの未来に、さちあれかし。

    余談だが、父が厩舎で働いていた事があったので「馬はイイ!馬は…………イイぞぉぉぉぉぉ!」と言う話を思春期に耳タコが出来るほど聞いて育った。一度だけ間近で見せてもらったらむちゃくちゃデカい!!父の言う「カワイイ」は私にはちょっと分からなかったが、父が好かれていたのはよく分かった。甘えるし、来たのが分かると「こっちも!」

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    2025年03月10日