河崎秋子のレビュー一覧
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ネタバレ舞台は北海道。
茨城からきた父と引きこもりの息子キミヤが狩猟に出かける。
引きこもりがちの息子は銃器の資格を取ったものの初めての猟。
豪放磊落な父は強引に禁猟地に入り込み熊を狙うも、
運悪く鉢合わせたヒグマに襲われる。
ヒグマと揉み合ううち野犬の群れも絡んできて
なんとか逃走することに成功
キミヤは父への屈託があったものの、
自殺を思いとどまり、父の仇のヒグマを倒すことを決意。
襲ってきた野犬のリーダーの喉に噛みつき屈服させ、群れの仲間と認められ
野犬と共にヒグマに対峙する。
父の遺体の土饅頭から遺体を掘り出して熊の怒りを買うが、
野犬と知恵と武器、自分の身体でヒグマに立ち向かう。
傷を負わせて負ってきたヒグマを木の上からナイフを持って喉元に飛び降りると、足場にした枝が熊に刺さり、内臓を破壊、暴れた末に絶命する。
キミヤは熊を解体し、肝臓を喰らい、野犬に分配する。
事情あって捨てられた犬たちと共に生きていくことを考えるキミヤだったが、
父親が依頼した救助要請によりヘリで助け出される。
犬たちは遠吠えしてその様子を見送り、山はまた元の静寂に包まれた。
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銀河流れ星銀のファンとしては胸熱な話。
ヒグマが倒せるわけないと思いつつ、死ぬ気になれば知恵や生きるための勘も取り戻せるかもしれないと読み進めた。
歯が折れてしまうくだりが生々しい。
エキノコックスが怖いので、生水とか飲んで大丈夫かなと思った。
その後のキミヤはどうなったろう。強く生きていったと思うが。。
安易にペットを飼い、捨てる人、連れてくる人への蔑視を感じた。
私も覚悟なしに動物を飼うことはできない。
命を考える話だった。 -
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ふと手に取ったら、またも北海道を拠点にしている女性作家だった。桜井紫乃とか谷村志穂とか、そしてこの河﨑秋子とか、北海道は骨太な物語を生む女性作家が多いなという印象。
この文庫本には表題作とデビュー作の「東郰遺事」の2編が入っている。いわば平凡な主婦がふと日常をエスケープして幼時の忘れていた思い出がよみがってくる「鯨の岬」と、江戸時代に北海道に来た武士の目からこの地に住む人々を描く「東郰遺事」とは大きく赴きが違うんだけど、同じ作家の手になるとすると何だかうなずけるような感じがする。北の地に生きる人ならではの真摯で熱い感情が表れているとでもいうのか……それって北海道の外に住む者の勝手な感傷かもしれないけど。胃の腑に重いものを残してくれるような2編だった。 -
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農繁期に読んで、そのままになっていた。
時間をかけないとと記録しておけない内容だったので、ここに河崎秋子作品をまとめて。
幼馴染と母親の介護の話を、鯨を絡めて語ることを、誰が考えつくだろうか。しかもその鯨は爆発するのだ。北海道の道東に住み、この景色を見て育ち、牛や羊を育て、屠り、人に出逢いながら人生を積み重ねてきたものでないとできない発想だと思う。
しかし、話はいたって穏やかにすすむ。夫も孫もいる奈津子は、普段の生活を離れて、母の施設を訪問する。札幌から釧路までの4時間を、電車の中で読書で過ごし、面会して、帰ってくる。その日常が突然、鯨の記憶によって覆る・・・。
(鯨の岬)
野付に設けられた通行屋に赴く幕府の役人、平左衛門は、根室から国後、択捉に至る場所の資源調査や他詳細な検分のためにやってきた。訳ありの武士の女たづとその娘、りん、弥輔との関係を、逗留の時間のなかで知る。そして彼らの宿命も。野付半島の自然を余すところなく描き、その自然が人々に何をもたらしてきたか、これから何をもたらすのか、また与えることがないかを滲ませる。
(東陬遺事)
「東陬遺事」は、20212年第46回北海道新聞文学賞受賞作品。中編であるが、ここに河崎秋子の才能と、その後描かれる小説のエッセンスが、全て凝縮されていると言っても過言ではない濃さの作品。そして、明らかに新人のレベル越え。
あとがきの桜木紫乃さんが、まるで一つの作品のように河崎秋子氏を語っていて、それもまた読み応えがある。 -
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河﨑秋子『土に贖う』集英社文庫。
第39回新田次郎文学賞受賞作。北海道を舞台にした7編の短編を収録。
いずれも自然を相手に北の大地で必死に働きながらも、時代の波には逆らえずに敗者となった人びとの物語だ。いつも陽が当たる勝者に対して、敗者はいつも日陰の存在というのが世の常である。この短編集の中で、そんな敗者にも陽の光を当てようとする著者の思惑は見事に昇華されている。
やはり、河﨑秋子はただ者ではない。
『蛹の家』。明治時代の札幌で養蚕を営む一家が夢破れる過程を描いた物語。養蚕に精を出す父親の姿を見詰めながら育つ少女が少しずつ知る厳しい社会の現実。一つの産業が根付きながら、廃れ去る過程というのは極めて残酷なものだ。★★★★★
『頸、冷える』。戦後、北海道で毛皮を目的にミンクを育てていた男が挫折した理由は一体何だったのか。冒頭で郷里に戻る男が描かれるが、その正体が判明する終盤に全てが明らかになり、愕然とせざるを得ない。★★★★★
『翠に蔓延る』。昭和初期の北見で盛んだったハッカ栽培は後進国の台頭により次第に衰退していく。ハッカ栽培を手掛けていたリツ子の夫は出征し、帰らぬ人となる。それでもリツ子は息子とハッカ栽培を守ろうとするが、時代の波には逆らえない。★★★★
『南北海鳥異聞』。殺生の果てに地獄を見た男が堕ちていく果ては……羽毛を目当てにアホウドリを捕る男。アホウドリを撲殺するうちにそれが愉悦に変わる。流れ、流れて、北海道に渡った男は白鳥を捕ろうとするが。これまでの短編とは毛色が異なる。★★★★★
『うまねむる』。古く遠い記憶に思いを馳せる。昭和35年、江別市で蹄鉄屋を営む父を持つ雄一は、小学校の畑を馬によって耕される様子を見ていると、馬が足の骨を折り、倒れる様を目の当たりにする。時代は変わり、車社会の現代。★★★★
『土に贖う』。昭和26年、最年少のレンガ工場の頭目である佐川が担当している組員の一人が急死した。需要が増え、人手に頼らざるを得なかった工場の仕事に無理があったのか。★★★★★
『温む骨』。『土に贖う』の続編。時代は現代となり、レンガ工場で働く父親を持つ息子の話。息子は趣味の陶芸を仕事にするが、父親の焼くレンガから自分の未熟さを知る。★★★★★
本体価格680円
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ネタバレなんだかものすごい作品を読んでしまったぞ
言葉で解説なんてできないけど、心がすごいと言っている、そんな感じ
今から言葉で感想を書くんだけどもさ(笑
『鯨の岬』
普段ミステリを中心に読んでいるので、そういった方面からの驚きもあってびっくりした
冒頭の、鯨爆発動画を見て笑う孫とそれに嫌悪感を抱く祖母、これがミステリ的伏線だったなんて……
ふとしたきっかけで目的地とは違う行先の電車に乗ってしまうとか、そんな展開と合わせて「あーはいはい、自分の生き方を見つめる的なお話なのかな」なんて思っていたら、命のお話になるとは
……命というか、死者への祈りや自分の内面への探求とか、そんなものを感じました
冷たい言い方をするけど、旧友が死んだ過去を思い出したからといって現実的に何が変わるわけでもないじゃないですか
でもそれでも50年も昔の死を思いだし、泣き、祈り、自分の空白と向き合い、そして生きていくという描写に胸を打たれるんですよ
このあたり、考えれば考えるほど「なんなんだろう……」って、もうかなり長文を書いてるからここまでにしとくけど、キリがないんですよねホント
『東陬遺事』
この作品こそ言葉に出来ない
例えばたづが死を選んだ理由ひとつとっても、読んでいて違和感はないのに説明ができない
出自・生い立ち・北の大地での死生観、呪い
作中のセリフや描写から拾う事も出来そうだけど、それだけで収まらない
解説からの引用で「つまらぬ欲や些末な感情へ小説世界を誘導すると、その構えの大きさに内臓まで開かれ手痛い目に遭う」ってのがしっくりくる
引用したところで書いとくと、解説もとても良かったです
「鯨以外の哺乳類はすべて絞めることができます」
「人間も?」
「ええ、たぶん」
この会話とかメッチャかっこいい!クール!!
まったくの不勉強で存じ上げなかったのですが、第167回直木賞候補の作家さんだったんですね、河﨑秋子さんて。確かにこりゃすげーわ。 -
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河﨑秋子『鯨の岬』集英社文庫。
表題作で書き下ろしの『鯨の岬』と第46回北海道新聞文学賞受賞作の『東陬遺事』の2編を収録した作品。
河﨑秋子は個人的に注目している作家の一人である。静謐な文章の中に感じる不思議な自然の力と人間の運命の機敏。そんな作品を描き続ける河﨑秋子から目が離せない。
『鯨の岬』。安穏で無為な日常と幼い頃の記憶。どこかでねじ曲げられた記憶が再び甦る時、全てを知ることになる主人公に驚愕させられた。見事なプロットと結末。札幌に暮らす主婦の奈津子はある時、孫からYouTubeで鯨が腐敗爆発する動画を見せられ、幼い頃の鯨の血の臭いを思い出す。後日、釧路の施設に居る母を訪ねる途中に捕鯨の町にいた幼い頃が蘇り、ふと花咲線の根室行きの電車に飛び乗る。そして、奈津子はかつて過ごした町、霧多布に降り立つ。遠い昔の爆発した鯨の記憶……★★★★★
『東陬遺事』。厳しい自然の前に激しく生きるも儚い人間の運命。因果応報。喪失感に打ちのめされる結末。江戸時代後期の蝦夷地に資源調査のために赴任した山根平左衛門は土地の下働きの家族と親しくなる。身のまわりの世話をする女、たづと男女の仲になった平左衛門は、たづの娘のりん、たづの弟で下働きの弥輔とも親交を深める。やがて、平左衛門が知る弥輔の過去。★★★★★
本体価格570円
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ネタバレ北海道 道東の酪農家で育ち、羊飼いをしていた著者が描く、馬をめぐる骨太な物語。
6世代に渡る物語だが、章立ては明治の開拓移住前の女、昭和のその孫娘、平成のそのまた孫娘と3人の女性を中心に書く。
家族と馬の物語であり、根室の土地の物語でもある。
道東のあの土地に暮らした生活体験に根ざした魂が感じられ、非常に読み応えがあった。
人間は自然のちからに「及ばぬ」。及ばぬ、と思うのは常に人間が自然に挑んでいるからこそであって、他の動物はそうではない……というのが、キーになっている。著者はインタビューで生活から感じたことと述べており、なるほど書き方が実感あってのものと見え、とても魅力的だった。
6世代分が文庫1冊になっているので、当然、書きたいところしか書いていない感はある。大河作品にもできる素材だと思った。
迫力があり面白い。 -
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河崎秋子『肉弾』角川文庫。
第21回大藪春彦賞受賞作。過激な自然との闘いを通じて一人の青年の再生していく姿を描いた作品である。『颶風の王』も良かったが本作も非常に良かった。
羆物ジャンルの新たな傑作と呼んでも良いだろう。しかし、本作はただの羆物には止まらず、さらなる物語を秘め、他の羆物を超えるリアリティと深さがある。
暴君のような父親のせいで人生に躓き、大学を休学し、ニート生活を送っていた貴美也は父親に北海道での鹿撃ちに連れ出される。山深く分け入った二人は突然、羆の襲撃を受け、父親が貴美也の目の前で撲殺される。その時、野犬の群が羆に襲いかかり、さらに野犬たちは貴美也を襲う……
羆の恐怖に加え、描かれる貴美也の人生の躓きの理由、ラウダをはじめとする野犬たちの過去……
本体価格720円
★★★★★ -
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河崎秋子『颶風の王』角川文庫。
久し振りに良い小説、正統派の小説というものを堪能した。中編ながら長編大河小説のような読み応えのある作品だった。また、忘れかけていた先祖への尊敬の念を思い出させてくれると共に、今の自分が在ることの理由を考えるきっかけを与えてくれた。
明治期の東北で許されぬ関係となったミネと吉治は牡馬アオと共に村から出奔する。吉治は追手に撲殺され、山越えの道中でアオと共に雪洞に閉じ込められた妊婦のミネは正気を失い、生きるためにアオを食べる。奇跡的に救出されたミネは捨造と名付ける男の子を出産する。そこから始まるミネの末裔一族と馬の関わり……後に捨造は1頭の馬を伴い北海道に渡る。時代は昭和、平成と時代は移りゆくが、一族の中に馬の系譜は脈々と受け継がれていく。
雄大な北海道を舞台にした一族と馬の関わりを描いた壮大な物語。奇しくも読み始めた翌朝未明に北海道で震度7の地震があった。著者は北海道の別海町で羊飼いをしながら小説を書いているという。どうか無事であることを祈りたい。 -
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第170回直木賞受賞作。
明治後期の北海道を舞台に、猟師の熊爪は相棒の犬とともに山に入り、自然の中で獣を狩りながら生きています。自然で生きる逞しさや厳しい過酷な世界が、本作では圧倒的な筆力で描かれています。
本書を読んでまず驚かされたのは、その生々しさです。獲物を仕留め、肉を喰らい、また自らも喰われる側になり得る。文明や倫理観によって覆い隠されている「生きること」と「食べること」の本質が、剥き出しの形で突きつけられます。
しかし本作は単なる狩猟小説ではありません。人間と獣、人間と自然、そして人間同士の関係までもが複雑に絡み合い、「生きるとは何か」という根源的な問いへと読者を導いていきます。熊爪の姿を追ううちに、人間もまた自然の一部でしかないのだと思い知らされました。
美しい自然描写の一方で、物語には常に死の気配が漂っています。その緊張感はページをめくる手を止めさせず、ときに息苦しさすら覚えるほどでした。それでも目を背けることができないのは、この物語が人間という生き物の本質を真っ直ぐに見据えているからなのでしょう。
読み終えた後に残るのは爽快感ではなく、畏れにも似た感情です。命を奪うこと、命をつなぐこと、その循環の中で生きること。命の重みを、改めて考えさせられる一冊でした。