河崎秋子のレビュー一覧

  • 肉弾

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    河崎秋子『肉弾』角川文庫。

    第21回大藪春彦賞受賞作。過激な自然との闘いを通じて一人の青年の再生していく姿を描いた作品である。『颶風の王』も良かったが本作も非常に良かった。

    羆物ジャンルの新たな傑作と呼んでも良いだろう。しかし、本作はただの羆物には止まらず、さらなる物語を秘め、他の羆物を超えるリアリティと深さがある。

    暴君のような父親のせいで人生に躓き、大学を休学し、ニート生活を送っていた貴美也は父親に北海道での鹿撃ちに連れ出される。山深く分け入った二人は突然、羆の襲撃を受け、父親が貴美也の目の前で撲殺される。その時、野犬の群が羆に襲いかかり、さらに野犬たちは貴美也を襲う……

    羆の恐怖

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    2020年06月13日
  • 颶風の王

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    手に取ったのは、JRA馬事文化賞受賞作だからではなく、この本に呼ばれたから。

    明治、昭和、平成に渡って描かれる、馬と人の物語。
    とくにミネと和子の話には圧倒されて、これであれば240ページではなく、もっと長編にできたのでは?
    と思ったけど、そうすると「人の話」になってしまう。

    あくまでもこれは、馬と人の関わりの話、そして人間が及ぶことのできない、自然を描いた話。
    だからこの分量でいいのだと、ひかりの話を読みながら思った。

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    2018年10月21日
  • 颶風の王

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    河崎秋子『颶風の王』角川文庫。

    久し振りに良い小説、正統派の小説というものを堪能した。中編ながら長編大河小説のような読み応えのある作品だった。また、忘れかけていた先祖への尊敬の念を思い出させてくれると共に、今の自分が在ることの理由を考えるきっかけを与えてくれた。

    明治期の東北で許されぬ関係となったミネと吉治は牡馬アオと共に村から出奔する。吉治は追手に撲殺され、山越えの道中でアオと共に雪洞に閉じ込められた妊婦のミネは正気を失い、生きるためにアオを食べる。奇跡的に救出されたミネは捨造と名付ける男の子を出産する。そこから始まるミネの末裔一族と馬の関わり……後に捨造は1頭の馬を伴い北海道に渡る。時

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    2018年10月23日
  • 鯨の岬

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    うっかり乗り過ごしてしまって昔暮らした霧多布へ。そこから封印された記憶の蓋が開く。壮絶な過去と喪失に向き合う女性を描いた表題作ほか一編。
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    河崎さんの中編集です。表題作の「鯨の岬」は、読み始めは正直まったりしていて、いつもの河崎さんの殴りつけるような緊張感のある筆致は控えめで物足りず、このまま終わるのかなあ、などと残念に思っていました。しかし終盤で物語は急展開し、河崎さん特有の暴力的なまでの血生臭さも荒れ狂い、最後には往復ビンタを食らったような呆然とした読後感が残りました。いや、やはり河崎さんはすさまじい本を書かれる方だなあ。
    「鯨の岬」は実際にあった事件をモチ

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    2026年04月24日
  • 愚か者の石

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    やりきれない思いの残る重みのある作品だった。
    巽の大二郎への思い、看守の中田との距離感がリアルで、特殊な時間を共に過ごしながらも近づきすぎない感じが寂しいような清々しいような。
    中田に関しては、真面目で悪い人ではないけどいまいち掴みきれない。
    もっと内面がわかるようなエピソードを読みたい気がする。
    ストーリー性よりも、一緒に過ごした時間の描写がメインで、労働や寒さの厳しさ、理不尽に耐える模範囚目線の話だったと感じた。

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    2026年04月22日
  • 銀色のステイヤー

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    競馬の面白さを知ると共に支える人々のなんと多彩な事!
    色々な経緯からその仕事に辿り着き、時にはその経緯故に説得力を持つ場面もあったり。
    そして形は違えど皆それぞれの立場から馬を愛しているのが伝わり、とても爽やかな読後感。
    アヤの成長もとても良い。自分の正義感をコントロールするのは難しいよね。

    私は陸上長距離ファンなのですが、レース運びの組み立てや駆け引き、心情は通じるものがありとても引き込まれました。
    競馬ファンになる素質はありそうです。

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    2026年04月13日
  • 土に贖う

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    とても丁寧な筆致で、どれも非常に完成度の高い短編であった。1篇1篇が栄枯盛衰の物語となっているため、読み手である自分は何か大きな流れの中にいるような、そんな諦念を感じながら、かつ余韻に浸ることができた。あと、タイトルセンスが秀逸すぎる。

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    2026年04月11日
  • 颶風の王

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    本屋の角で山積みにされていた100円コーナーの本。何気なく手に取ってみるとこれが面白い。生も死も馬に託して、生き抜いていく力強さ、温かい血液の通った物語。私は好きだった。

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    2026年03月26日
  • 愚か者の石

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    明治時代、政治運動に関わっていたとの疑いで収監され、北海道の樺戸集治監に送られた巽は、そこで同じ囚人の大二郎と、看守の中田に出会う。
    …獄中での過酷な生活が描かれるが、和製ショーシャンクの空にとでも言えるような、囚人たちの生活の中にも、密かな楽しみや人間関係があって興味深い。
    時代もあるとは思うが、死と隣合わせとも言えるような獄中での生活は、参考文献を見る限り、ほぼ事実なのだろうと驚かされる。
    大二郎が隠し持っていた石の秘密と、描かれ続けた巽の様子にずっと心を動かされた。

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    2026年03月19日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼いや牧畜についてあまり知らなかったから羊や牛を飼うことの大変さや尊さが分かった

    著者の作品は読んだことがないけど、自然と人間をテーマにした作品が多いと知り読んでみたくなった。

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    2026年03月13日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    直木賞作家の川﨑秋子氏の羊飼いを始めて終わるまでを綴った自伝的エッセイ。

    謙虚でひたむきでユーモラスな姿勢に胸を打たれまました。グッときたり、思わずニヤリと笑ってしまった場面は数知れず。

    川﨑秋子氏の小説は今まで読んだことがありませんでしたが、これを機にまずは同氏の著書で直木賞を受賞した「ともぐい」から読んでみたいと思います。

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    2026年01月31日
  • 愚か者の石

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    終盤にかけてこれまでの伏線の回収等最高に盛り上がってくる。残り少ないページを読んでいる時、ジェットコースターの終わり際のように感じる。ああ楽しかったと、もう終わりか。という感じ。愚かものの石が何だったのか答えが明かされるが、それまでの話とあまり関連しない。本のタイトルになるほどの物だったのかなぁという印象。網走刑務所を見学したことがあったのでだいぶイメージしやすかった。これを書くためによく調べたなぁと思う。

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    2026年01月17日
  • 颶風の王

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    6世代に及ぶ人と馬との数奇な関係を描いた作品。
    始まりであるミネは馬と共に雪崩に遭い、1ヶ月もの間雪洞に閉じ込められてしまう。その息子である捨蔵は開拓民を募る新聞広告を目にし、単身北海道に渡る。孫である和子は根室で祖父と共に馬を育てていたが、予期せぬ災害で家業を手放す。そして現代。もはや馬との関係はないひかりは、病に倒れた祖母のために無人島を訪れる。
    さほど長い話ではないが、河﨑さんのすべての要素が盛り込まれている。特に第1章で描かれるミネの生への執着が凄まじい。妥協を許さない人と自然との関係も読みどころだ。

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    2026年01月10日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    河﨑秋子さんの、羊飼いとして生きてきた日々のエッセイ。
    『ともぐい』のイメージが強いので、ドキュメンタリータッチの淡々とした文章が続くのかと思って読み始めたのですが、ところどころなんだか軽〜い言い回しが出てきたりして、あれ?今のって笑うところかな?と恐る恐る読み進める感じでした。
    途中からは、あ、これ笑わせられてるんだ!と気付き、そこからは思いっきり楽しめるように。
    だって、冒頭から、河﨑さんが育てた最後の羊が解体される描写なのです。1ページ目からこちらは息をのみながら体を固くしているわけで、途中からなんだかゆるいことを言われても、笑っていいのかいけないのか戸惑ってしまいます。
    にしても、やは

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    2026年01月09日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    タイトルとジャケット以上の内容だった。残ページが薄くなってもう終わってしまうのかと時間をかけてじっくり読んだ。河﨑さんの自分語りが大好きだ。食育教育についての意見は説得力があるし、決して人を傷つけることなく、おもしろくも承認に満ちている。「書かれるべきものがあるから」という理由で羊飼いを廃業し、最後に自ら育てた羊を食べた感想を語るところはホロリとくるものがある。
    年末年始で河﨑さんの本を4冊読むつもり。小説家のファンになれたのは初めてだ。

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    2025年12月29日
  • 愚か者の石

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    樺戸集治監に収容された巽。同房の大二郎と親しくなりなんとか生き延びるも、硫黄採掘をするため釧路集治監へ移送される。弱っていく大二郎。後生大事に持っていた石を巡って運命が左右されていく。
    明治時代のことを書いた作品。フィクションだが地名などが本当にある場所のためか妙にリアリティがあった。脱獄をめぐる話や大二郎の罪など読み応えもありおもしろいと思う。

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    2025年12月26日
  • 颶風の王

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    3つの時代に生きる馬主の一族と、それぞれの世代の馬への想いを淡々と描いている。この「淡々と」というのが河崎作品の妙で、度し難く不安定な北海道の情景の忠実な表現については右に出る者がいないのではないかと思う。
    人間側の描写についても妥協はなく、作中を通して自然への畏怖を示す「オヨバヌトコロ」という言葉は毎度印象的でありずしんと重く感じる。
    花島のモデルとなったユルリ島を遠望してみたくなった。

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    2025年12月22日
  • 父が牛飼いになった理由

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    お父様への想いが伝わってくる。
    お父様が大好きなんだろうな。

    介護がいかに大変だったか、全くクドクド書かれてないけれど、文字に起こして語らなくても、大変さや葛藤が伝わってきた。

    変わってしまったお父さんを受け入れるのに、きっと時間がかかったのだろうと思う。
    あの時、ああしていれば・・・私も何度も後悔がループする時ある。

    この本は、お父様へ向けて書かれた本なのだろう。



    私と河﨑秋子さんの共通点、共感点がたくさんあって、何だか感激しつつ、現実を見ると「羊飼い」の「直木賞作家」さんと同じ土俵に上がれないことに気がつく。そして、私と河﨑秋子さんの才能の落差に唖然とする。
    仕方がない、遺伝っ

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    2025年12月19日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼い、畜産業に関わる人の信念とか思いがよく伝わった。大切な宝物の羊を育て、食肉用におろすという作業には、その人たちにしかわからないものがあるのだろうと。それを、わかりやすくシンプルに、時にユーモアも交えて書かれているので、すっと共感も出来たし、読み応えのある本でした。

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    2025年10月31日
  • 父が牛飼いになった理由

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    『ともぐい』で直木賞を受賞した河﨑秋子のファミリーヒストリー(『青春と読書』2023.9〜2024.8に掲載したものに加筆修正)

    十五年間ずっと寝たきりである父親のことを中心に、河﨑家の400年に渡る歴史をたどった著者。北海道民の通例として、先祖は本州から来ているが、ルーツは加賀藩や大阪にあった。
    加賀藩では加賀八家(はっか)本多家に仕えていたそう。

    また、祖父は満州から引き上げた後、どういうわけか、酪農家を目指して大阪から北海道に渡るのだが、そのわけは最終章で腑に落ちる。

    365日1日たりとも休めない、過酷な労働である酪農業。最近はヘルパー制度というものもできたそうだが、経営も難しく、

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    2025年10月08日