河崎秋子のレビュー一覧

  • 颶風の王

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    ネタバレ

    北海道 道東の酪農家で育ち、羊飼いをしていた著者が描く、馬をめぐる骨太な物語。
    6世代に渡る物語だが、章立ては明治の開拓移住前の女、昭和のその孫娘、平成のそのまた孫娘と3人の女性を中心に書く。
    家族と馬の物語であり、根室の土地の物語でもある。
    道東のあの土地に暮らした生活体験に根ざした魂が感じられ、非常に読み応えがあった。
    人間は自然のちからに「及ばぬ」。及ばぬ、と思うのは常に人間が自然に挑んでいるからこそであって、他の動物はそうではない……というのが、キーになっている。著者はインタビューで生活から感じたことと述べており、なるほど書き方が実感あってのものと見え、とても魅力的だった。

    6世代分

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    2021年03月16日
  • 颶風の王

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    生き延びるための行動が極めてリアルに熱く書かれていて(手紙として書き残せるかは突っ込んだらいけない部分)、小説としての凄みを感じた。
    そこで終わらず、世代を重ねて現代に至る展開も面白い。ユルリ島にも興味がわいた。

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    2020年12月22日
  • 肉弾

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    わだかまりがある父に無理矢理連れてこられた引きこもりの息子、人の身勝手な愛情ゆえに野生になった犬たち、そして厳しい自然の中で生き続けてきた熊が、奥深い山の中で自然界の掟というべき“喰うか、喰われるか”の弱肉強食の闘いを繰り広げる。
    犬も熊もそして人も生き残るのに必死だ。そこに可愛らしいキャラクターのような犬も熊もいない。牙を剥き、爪で引き裂く、容赦のない描写で、彼らの野性的姿を書いている。私たち人間も本当の自然界では、食物連鎖のひとつに過ぎないのだ。
    動物を愛玩のように扱う人間は傲慢なのかもしれないと思う。

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    2020年07月29日
  • 肉弾

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    河崎秋子『肉弾』角川文庫。

    第21回大藪春彦賞受賞作。過激な自然との闘いを通じて一人の青年の再生していく姿を描いた作品である。『颶風の王』も良かったが本作も非常に良かった。

    羆物ジャンルの新たな傑作と呼んでも良いだろう。しかし、本作はただの羆物には止まらず、さらなる物語を秘め、他の羆物を超えるリアリティと深さがある。

    暴君のような父親のせいで人生に躓き、大学を休学し、ニート生活を送っていた貴美也は父親に北海道での鹿撃ちに連れ出される。山深く分け入った二人は突然、羆の襲撃を受け、父親が貴美也の目の前で撲殺される。その時、野犬の群が羆に襲いかかり、さらに野犬たちは貴美也を襲う……

    羆の恐怖

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    2020年06月13日
  • 颶風の王

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    手に取ったのは、JRA馬事文化賞受賞作だからではなく、この本に呼ばれたから。

    明治、昭和、平成に渡って描かれる、馬と人の物語。
    とくにミネと和子の話には圧倒されて、これであれば240ページではなく、もっと長編にできたのでは?
    と思ったけど、そうすると「人の話」になってしまう。

    あくまでもこれは、馬と人の関わりの話、そして人間が及ぶことのできない、自然を描いた話。
    だからこの分量でいいのだと、ひかりの話を読みながら思った。

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    2018年10月21日
  • 颶風の王

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    河崎秋子『颶風の王』角川文庫。

    久し振りに良い小説、正統派の小説というものを堪能した。中編ながら長編大河小説のような読み応えのある作品だった。また、忘れかけていた先祖への尊敬の念を思い出させてくれると共に、今の自分が在ることの理由を考えるきっかけを与えてくれた。

    明治期の東北で許されぬ関係となったミネと吉治は牡馬アオと共に村から出奔する。吉治は追手に撲殺され、山越えの道中でアオと共に雪洞に閉じ込められた妊婦のミネは正気を失い、生きるためにアオを食べる。奇跡的に救出されたミネは捨造と名付ける男の子を出産する。そこから始まるミネの末裔一族と馬の関わり……後に捨造は1頭の馬を伴い北海道に渡る。時

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    2018年10月23日
  • 肉弾

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    「ともぐい」「夜明けのハントレス」の土台となった河﨑秋子さん「熊三部作」の最初の作品。

    無気力な生活を送るキミヤと、生きる意味を感じてほしいと願う父。
    そこに立ちはだかるのは「熊」。
    そして、熊に立ち向かうキミヤをサポートするのは、なんと…。

    いやいや大迫力で一気に読めてしまうよ。
    河﨑秋子さんは、一貫して人間界の諍い(いさかい)をフラットにしてしまう自然界の「弱肉強食」を描き続けている。

    出てくる動物たちを擬人化してはいけないけど、健気で泣けてくる。命とはなんなのか。
    人間も熊も同じ命ではないのか?

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    2026年05月20日
  • 愚か者の石

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    面白かった。主人公の巽、淡々とした中田、そして大二郎…。とても切なくて色々と考えさせられる物語でした。大二郎の絵を見てみたい。

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    2026年05月16日
  • 鯨の岬

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    うっかり乗り過ごしてしまって昔暮らした霧多布へ。そこから封印された記憶の蓋が開く。壮絶な過去と喪失に向き合う女性を描いた表題作ほか一編。
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    河崎さんの中編集です。表題作の「鯨の岬」は、読み始めは正直まったりしていて、いつもの河崎さんの殴りつけるような緊張感のある筆致は控えめで物足りず、このまま終わるのかなあ、などと残念に思っていました。しかし終盤で物語は急展開し、河崎さん特有の暴力的なまでの血生臭さも荒れ狂い、最後には往復ビンタを食らったような呆然とした読後感が残りました。いや、やはり河崎さんはすさまじい本を書かれる方だなあ。
    「鯨の岬」は実際にあった事件をモチ

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    2026年04月24日
  • 愚か者の石

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    やりきれない思いの残る重みのある作品だった。
    巽の大二郎への思い、看守の中田との距離感がリアルで、特殊な時間を共に過ごしながらも近づきすぎない感じが寂しいような清々しいような。
    中田に関しては、真面目で悪い人ではないけどいまいち掴みきれない。
    もっと内面がわかるようなエピソードを読みたい気がする。
    ストーリー性よりも、一緒に過ごした時間の描写がメインで、労働や寒さの厳しさ、理不尽に耐える模範囚目線の話だったと感じた。

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    2026年04月22日
  • 銀色のステイヤー

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    競馬の面白さを知ると共に支える人々のなんと多彩な事!
    色々な経緯からその仕事に辿り着き、時にはその経緯故に説得力を持つ場面もあったり。
    そして形は違えど皆それぞれの立場から馬を愛しているのが伝わり、とても爽やかな読後感。
    アヤの成長もとても良い。自分の正義感をコントロールするのは難しいよね。

    私は陸上長距離ファンなのですが、レース運びの組み立てや駆け引き、心情は通じるものがありとても引き込まれました。
    競馬ファンになる素質はありそうです。

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    2026年04月13日
  • 土に贖う

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    とても丁寧な筆致で、どれも非常に完成度の高い短編であった。1篇1篇が栄枯盛衰の物語となっているため、読み手である自分は何か大きな流れの中にいるような、そんな諦念を感じながら、かつ余韻に浸ることができた。あと、タイトルセンスが秀逸すぎる。

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    2026年04月11日
  • 颶風の王

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    本屋の角で山積みにされていた100円コーナーの本。何気なく手に取ってみるとこれが面白い。生も死も馬に託して、生き抜いていく力強さ、温かい血液の通った物語。私は好きだった。

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    2026年03月26日
  • 愚か者の石

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    明治時代、政治運動に関わっていたとの疑いで収監され、北海道の樺戸集治監に送られた巽は、そこで同じ囚人の大二郎と、看守の中田に出会う。
    …獄中での過酷な生活が描かれるが、和製ショーシャンクの空にとでも言えるような、囚人たちの生活の中にも、密かな楽しみや人間関係があって興味深い。
    時代もあるとは思うが、死と隣合わせとも言えるような獄中での生活は、参考文献を見る限り、ほぼ事実なのだろうと驚かされる。
    大二郎が隠し持っていた石の秘密と、描かれ続けた巽の様子にずっと心を動かされた。

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    2026年03月19日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    羊飼いや牧畜についてあまり知らなかったから羊や牛を飼うことの大変さや尊さが分かった

    著者の作品は読んだことがないけど、自然と人間をテーマにした作品が多いと知り読んでみたくなった。

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    2026年03月13日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    直木賞作家の川﨑秋子氏の羊飼いを始めて終わるまでを綴った自伝的エッセイ。

    謙虚でひたむきでユーモラスな姿勢に胸を打たれまました。グッときたり、思わずニヤリと笑ってしまった場面は数知れず。

    川﨑秋子氏の小説は今まで読んだことがありませんでしたが、これを機にまずは同氏の著書で直木賞を受賞した「ともぐい」から読んでみたいと思います。

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    2026年01月31日
  • 愚か者の石

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    終盤にかけてこれまでの伏線の回収等最高に盛り上がってくる。残り少ないページを読んでいる時、ジェットコースターの終わり際のように感じる。ああ楽しかったと、もう終わりか。という感じ。愚かものの石が何だったのか答えが明かされるが、それまでの話とあまり関連しない。本のタイトルになるほどの物だったのかなぁという印象。網走刑務所を見学したことがあったのでだいぶイメージしやすかった。これを書くためによく調べたなぁと思う。

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    2026年01月17日
  • 颶風の王

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    6世代に及ぶ人と馬との数奇な関係を描いた作品。
    始まりであるミネは馬と共に雪崩に遭い、1ヶ月もの間雪洞に閉じ込められてしまう。その息子である捨蔵は開拓民を募る新聞広告を目にし、単身北海道に渡る。孫である和子は根室で祖父と共に馬を育てていたが、予期せぬ災害で家業を手放す。そして現代。もはや馬との関係はないひかりは、病に倒れた祖母のために無人島を訪れる。
    さほど長い話ではないが、河﨑さんのすべての要素が盛り込まれている。特に第1章で描かれるミネの生への執着が凄まじい。妥協を許さない人と自然との関係も読みどころだ。

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    2026年01月10日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    河﨑秋子さんの、羊飼いとして生きてきた日々のエッセイ。
    『ともぐい』のイメージが強いので、ドキュメンタリータッチの淡々とした文章が続くのかと思って読み始めたのですが、ところどころなんだか軽〜い言い回しが出てきたりして、あれ?今のって笑うところかな?と恐る恐る読み進める感じでした。
    途中からは、あ、これ笑わせられてるんだ!と気付き、そこからは思いっきり楽しめるように。
    だって、冒頭から、河﨑さんが育てた最後の羊が解体される描写なのです。1ページ目からこちらは息をのみながら体を固くしているわけで、途中からなんだかゆるいことを言われても、笑っていいのかいけないのか戸惑ってしまいます。
    にしても、やは

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    2026年01月09日
  • 私の最後の羊が死んだ

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    タイトルとジャケット以上の内容だった。残ページが薄くなってもう終わってしまうのかと時間をかけてじっくり読んだ。河﨑さんの自分語りが大好きだ。食育教育についての意見は説得力があるし、決して人を傷つけることなく、おもしろくも承認に満ちている。「書かれるべきものがあるから」という理由で羊飼いを廃業し、最後に自ら育てた羊を食べた感想を語るところはホロリとくるものがある。
    年末年始で河﨑さんの本を4冊読むつもり。小説家のファンになれたのは初めてだ。

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    2025年12月29日