河崎秋子のレビュー一覧

  • 土に贖う

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    描写力がすごくて、本当に馬糞風の匂いがしてる中で読んでる気になってました。でも実際嗅いだことはないので、馬糞じゃなくて牛糞のイメージだと思うけど。
    漫画を読むより映像がリアルだし、鳥も殴り殺したことなどないのに、触感まで想像できてしまいました。恐ろしい作家さんです。

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    2024年11月16日
  • 銀色のステイヤー

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    ヤンチャな1頭の競走馬を中心に競馬の裏と表を描いた作品。競馬、全然知らなかったけど、むちゃくちゃおもしろかった。
    クセ強の馬オタクが成長する様子もよかったし、鉄子さんのかっこよさにも痺れた。
    競馬やってみたくなった!

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    2024年11月10日
  • 愚か者の石

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    ここはJAPAN版アウシュビッツなのかい…?!

    主人公巽とキーパーソン大二郎が途中で移送された硫黄採掘場での過酷な労働。ついそう思ってしまった程に劣悪な労働環境。
    ホロコーストと一緒にしてはいけないのですが、当時の杜撰な捜査で罪人となってしまった冤罪の人間もいる訳で…。
    ひ弱な現代人の私は3日で倒れるなと震えていた本作。
    しかしその実はtomoyukiさんがレビューに書かれていた通り、人間讃歌でした。

    時は明治18年。
    巽は学生生活を謳歌しつつ、政治活動にも参加。ところが中央官察の制圧を計画した所属団体の策略により運悪く逮捕され、国事犯として13年の実刑が下されてしまいます。編笠を被り柿色

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    2024年10月28日
  • 愚か者の石

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    ネタバレ

    明治時代、士族の家系で苦労知らずに育った主人公巽は、国事犯(政治思想犯)として懲役13年を申し渡され、北海道の樺戸集治監(監獄)に収監される。
    そこでともに鎖につながれた大二郎という男、そして冷徹な刑務官中田と過酷な環境と労働を過ごす。

    前半から中盤にかけ、激烈過酷な収監生活の描写が続く、特に釧路の硫黄採掘現場の、囚人ばかりでなく刑務官すら健康を損なう人権などという言葉がクソの役にも立たない現場の壮絶さは記憶に刻み付けられる。

    後半大二郎が脱獄し、恩赦で囚人生活を終えた巽と中田が大二郎の足跡を追う部分、いわば回収パートを読み進めていくうちに、生きることの虚しさ、それでも生きていくことの素晴

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    2024年10月26日
  • 銀色のステイヤー

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    ヤンチャ坊主、シルバーファーンが競馬界を駆け抜ける。生産牧場、調教師、馬主の夢を乗せて。

    めっちゃ面白かった。各々の登場人物の大変さと喜びがすごく伝わって来る。競馬を裏方から描く小説には傑作が多いけどこれもその一つ。

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    2024年10月22日
  • 銀色のステイヤー

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    競馬界に留まらず、読者をも魅了する芦毛のファーン。牧場、調教師、騎手…皆の力が結集され、ファーンが優秀な競走馬に成長してゆく過程に酔い痴れた。馬と共に成長してゆく人々も爽やか。人間と動物の描写に偉才を放つ河﨑先生。早くも次回作が楽しみである。

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    2024年10月11日
  • 愚か者の石

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    ネタバレ

    なんとも言えない読後感だが、後半1/3 がとても良かったので星5つに。

    初めの方は飽きてしまい、どうしてそんなに評価高いのか不思議ではあったが、淡々と読み進めると、樺戸集治監の看守中田と、大二郎と、瀬戸内巽たつみ。この3人の三者三様の生き様がよかった。

    東京大学で学徒の運動員に関わり、国事犯として徒刑13年の巽。たまたま隣にいた山本大二郎と部屋も同じ、鎖で繋がれる仲になり、いい加減な軽口で嘘つきの大二郎に心を許していく。硫黄の採掘で過酷な釧路集治監へ移送される途中の吹雪では生死を分ける体験を共にして、小さな絆のようなものが生まれる。
    釧路は過酷で日に何人も亡くなっていく状態…あまりの酷さに

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    2024年10月03日
  • 銀色のステイヤー

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    競走馬の育成や調教に主眼を置いたストーリー。
    私も競馬は好きで、強く速い馬を見るとカッコいいと思うけど、終わってみれば今日も無事でよかったということを考える。古馬の中でも特に6歳以上だと、毎レース、これが最後かもしれないという気持ちを抱きながらレースを見つめる。一ファンですらこういう気持ちだから、生産者や厩舎の馬に対する気持ちは並大抵のものでははいだろう。馬が紡ぐ縁や絆が美しいと感じた。
    最近、競馬界では悲しいことが続いている。人馬ともに望まれたタイミングで引退できることを願うのみ。

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    2024年09月11日
  • 土に贖う

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    河﨑秋子さんの作品は今回初めて読みましたが、
    一文一文が重厚で肉厚、かなり好みの文体。

    7篇からなる短編小説ですが、【生】に対する本能、執着、残酷さ、愚かさをまざまざと感じさせる内容です。
    動物好きの自分には心を抉るような描写もありました。
    読んだ中で『南北海鳥異聞』が1番印象的、というか衝撃でした。語弊を招く言い方かもしれないですが、ラストの動物の使い方がまた上手い。
    そして本のタイトルにもなっている『土に贖う』が1番人間臭い内容でした。

    他の作品も気になるので是非読んでみようと思います。

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    2024年08月15日
  • 鯨の岬

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    普通の60代くらいの主婦の話で嫁の愚痴とか老後の不安とかの話かと思いきや、とんでもない事実が明らかになり、読んだ後も衝撃の余韻にしばらく浸ってました。時代小説の方も全然違う雰囲気でしたが、思わぬ展開と描写力で、一気に引き込まれました。解説も良かった。

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    2024年07月29日
  • 土に贖う

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    娘からシェアしてもらった。これはすごい。道民として知っておくべき現実なんだろうけど悲しい話ばかり、読み進むのがつらくなる。でもこんなふうに表現出来る河﨑秋子さんのクールな視点とすぐ目の前に起こっていることのように錯覚させる表現力や書き写したくなるようななんども噛みしめたくなるような文章に、何というか人が生きていくことの意味を考えさせられる。とにかくとても良い!もう一度読む。北見のハッカもますます好きな香りとなった。

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    2024年07月23日
  • 絞め殺しの樹

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    ネタバレ

    『ともぐい』で痺れてファンになりました。
    一気に一日で読み終わりました。
    激動の昭和を駆け抜けて生きたような日曜日になりました。

    同じ北海道の桜木紫乃さんの『ラブレス』みたいな感じかな、と思って読み始めたら…
    あれ、かわいそうな時代はあっという間で、案外トントンでミサエ、幸せになるんじゃないのー!と思ったら、それこそが暗転の入り口でした…。
    えー、なにごと!!
    とまんねー!!

    河崎秋子さんは自分と同年代なんだけど、何回も生まれて死んだかのよう。
    よくこんな人間の業、生と死を描けるなあ…。

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    2024年06月30日
  • 颶風の王

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    最近読んだ本の中で間違いなく自分にとっては一番。音読したくなるようなリズムのある文章 何度も反芻したくなる力強い味のある言葉の数々 とにかく良かった。どんなに頑張ってもオヨバヌトコロが厳然として在るのが自然界でそこが哀しくも美しい。読後感も爽やかで読んでよかった。

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    2024年04月08日
  • 絞め殺しの樹

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    河崎秋子『絞め殺しの樹』小学館文庫。

    戦中から戦後の厳しい時代から昭和までの北海道の道東、根室を舞台にした母子二代にわたる大河小説。第一部は橋宮ミサエの物語で、第二部はミサエの息子で吉岡家に養子に出された雄介の物語という構成になっている。

    健気なミサエの余りにも過酷な境遇に胸を抉られるような思いで読み進む。そして、実の母親のミサエの顔も知らぬままに吉岡家の養子となった実の息子が懸命に生きながら、自身の進むべき道を切り開いていく姿に胸が熱くなった。

    時折、姿を見せる白猫。その飼い主だけが、ミサエと雄介の味方のように描かれていたのが印象に残る。

    タイトルの『絞め殺しの樹』とは菩提樹のことで

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    2024年04月16日
  • 颶風の王

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    ネタバレ

    捨造が一頭の馬を連れて東北から北海道に渡る。結婚して根室に住み、馬を飼い、孫たちと一緒に暮らすようになった。台風の時、貸し出していた馬が無人島のがけ崩れで帰れなくなりそのまま置き去りにされた。年月が経ち、全滅したと思っていた馬が子孫を残して一頭だけ生き残っていた。台地状の島で強く激しく吹く風の中に一頭だけ。

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    2024年03月28日
  • 颶風の王

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     直木賞受賞前から気になっていた作品で、たまたま北海道出張中に本屋で特集が組まれており、勢いで購入。
     北海道の地で馬と共に生きた家族6代の物語。各章のメインシーンの読者を引き込む力が凄い。一気に読まされる臨場感と心情の機微の表現。序章の遭難時の馬食に至る過程、第二章のフクロウの睨みを感じる場面は、こちらもドキッとさせられた。
     話として好きなのは最終章の現代で祖母のために馬の行方を探るひかりの物語。この章は立派な青春小説で、自分のルーツを知ることで積極的になり、精神的にも充実していく姿が心地よい。最後の馬との邂逅は非常に美しい映像が想像できた。
     北海道と馬への造詣の深さと卓越した表現力が生

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    2024年03月15日
  • 鯨の岬

    購入済み

    すごく面白かった。ミステリーとは違うんだろうけどどんでん返しというか、決して明るい話ではないけど、絶望的な気分になる話でもなく、良い。

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    2024年02月20日
  • 鯨の岬

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    描写が素晴らしい。
    感性が合ったのだと思うけど、語り手の主人公に感情移入がし易く景色が目に浮かぶようだった。
    一話目の「鯨の岬」は少しミステリのようなオチがあるのが良い。ちょっとした逃避行だが無駄ではない感じが良かった。
    二話目はもっと時代が遡る。オチはよく分からなかった。ただこちらも描写が良いので楽しく読めた。

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    2023年12月10日
  • 颶風の王

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    全編わずか244ページとは思えない人と馬の壮絶な物語です。
    ちなみに颶風とは強く激しい風の意味とか。

    北杜夫氏の「酔いどれ船」を思い出す。

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    2023年09月04日
  • 肉弾

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    ネタバレ

    舞台は北海道。
    茨城からきた父と引きこもりの息子キミヤが狩猟に出かける。
    引きこもりがちの息子は銃器の資格を取ったものの初めての猟。
    豪放磊落な父は強引に禁猟地に入り込み熊を狙うも、
    運悪く鉢合わせたヒグマに襲われる。

    ヒグマと揉み合ううち野犬の群れも絡んできて
    なんとか逃走することに成功

    キミヤは父への屈託があったものの、
    自殺を思いとどまり、父の仇のヒグマを倒すことを決意。
    襲ってきた野犬のリーダーの喉に噛みつき屈服させ、群れの仲間と認められ
    野犬と共にヒグマに対峙する。

    父の遺体の土饅頭から遺体を掘り出して熊の怒りを買うが、
    野犬と知恵と武器、自分の身体でヒグマに立ち向かう。
    傷を

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    2023年03月24日