河崎秋子のレビュー一覧

  • 愚か者の石

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    ネタバレ

    なんとも言えない読後感だが、後半1/3 がとても良かったので星5つに。

    初めの方は飽きてしまい、どうしてそんなに評価高いのか不思議ではあったが、淡々と読み進めると、樺戸集治監の看守中田と、大二郎と、瀬戸内巽たつみ。この3人の三者三様の生き様がよかった。

    東京大学で学徒の運動員に関わり、国事犯として徒刑13年の巽。たまたま隣にいた山本大二郎と部屋も同じ、鎖で繋がれる仲になり、いい加減な軽口で嘘つきの大二郎に心を許していく。硫黄の採掘で過酷な釧路集治監へ移送される途中の吹雪では生死を分ける体験を共にして、小さな絆のようなものが生まれる。
    釧路は過酷で日に何人も亡くなっていく状態…あまりの酷さに

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    2024年10月03日
  • 銀色のステイヤー

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    競走馬の育成や調教に主眼を置いたストーリー。
    私も競馬は好きで、強く速い馬を見るとカッコいいと思うけど、終わってみれば今日も無事でよかったということを考える。古馬の中でも特に6歳以上だと、毎レース、これが最後かもしれないという気持ちを抱きながらレースを見つめる。一ファンですらこういう気持ちだから、生産者や厩舎の馬に対する気持ちは並大抵のものでははいだろう。馬が紡ぐ縁や絆が美しいと感じた。
    最近、競馬界では悲しいことが続いている。人馬ともに望まれたタイミングで引退できることを願うのみ。

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    2024年09月11日
  • 愚か者の石

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    暗い、臭い、理不尽、他にも負の形容詞がたっぷりの作品、めちゃ重かったぶん、読み応えも十分で一気に読んだ。明治時代、主人公は政治犯として無実ながら実の兄の密告で逮捕された巽。収監された樺戸監獄で同室の大二郎と心を通わせる。そして看守の鑑のような中田。この3人が物語を動かしていく。ヒール役の中田が変わっていく所が見もの。

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    2024年08月28日
  • 愚か者の石

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    明治14年、国立の監獄「樺戸集治監」が建設された。
    政治犯や重罪犯が収監され、開拓のための厳しい労役を強いられた。

    囚人と言っても罪の重さもそれぞれ違う。
    明治18年、学生だった巽は国事犯として収監。
    労役では2人1組で鎖に繋がれる。
    巽の相手は大二郎という男。
    ふたりを殺めた罪で収監されているというが
    掴みどころがなくどのような人物なのかはっきりしない。
    看守の中田もストーリーの軸となる。

    過酷というひと言では言い表せないほどの労役。
    河﨑秋子さんの作品は「生きる」ことへの執着が描かれる。
    本作も、汗臭く泥にまみれ、労役で硫黄に侵されながらも
    懸命に生きる人たちが描かれている。

    本作で

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    2024年08月18日
  • 土に贖う

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    河﨑秋子さんの作品は今回初めて読みましたが、
    一文一文が重厚で肉厚、かなり好みの文体。

    7篇からなる短編小説ですが、【生】に対する本能、執着、残酷さ、愚かさをまざまざと感じさせる内容です。
    動物好きの自分には心を抉るような描写もありました。
    読んだ中で『南北海鳥異聞』が1番印象的、というか衝撃でした。語弊を招く言い方かもしれないですが、ラストの動物の使い方がまた上手い。
    そして本のタイトルにもなっている『土に贖う』が1番人間臭い内容でした。

    他の作品も気になるので是非読んでみようと思います。

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    2024年08月15日
  • 鯨の岬

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    普通の60代くらいの主婦の話で嫁の愚痴とか老後の不安とかの話かと思いきや、とんでもない事実が明らかになり、読んだ後も衝撃の余韻にしばらく浸ってました。時代小説の方も全然違う雰囲気でしたが、思わぬ展開と描写力で、一気に引き込まれました。解説も良かった。

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    2024年07月29日
  • 土に贖う

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    娘からシェアしてもらった。これはすごい。道民として知っておくべき現実なんだろうけど悲しい話ばかり、読み進むのがつらくなる。でもこんなふうに表現出来る河﨑秋子さんのクールな視点とすぐ目の前に起こっていることのように錯覚させる表現力や書き写したくなるようななんども噛みしめたくなるような文章に、何というか人が生きていくことの意味を考えさせられる。とにかくとても良い!もう一度読む。北見のハッカもますます好きな香りとなった。

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    2024年07月23日
  • 絞め殺しの樹

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    ネタバレ

    『ともぐい』で痺れてファンになりました。
    一気に一日で読み終わりました。
    激動の昭和を駆け抜けて生きたような日曜日になりました。

    同じ北海道の桜木紫乃さんの『ラブレス』みたいな感じかな、と思って読み始めたら…
    あれ、かわいそうな時代はあっという間で、案外トントンでミサエ、幸せになるんじゃないのー!と思ったら、それこそが暗転の入り口でした…。
    えー、なにごと!!
    とまんねー!!

    河崎秋子さんは自分と同年代なんだけど、何回も生まれて死んだかのよう。
    よくこんな人間の業、生と死を描けるなあ…。

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    2024年06月30日
  • 絞め殺しの樹

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    河崎秋子『絞め殺しの樹』小学館文庫。

    戦中から戦後の厳しい時代から昭和までの北海道の道東、根室を舞台にした母子二代にわたる大河小説。第一部は橋宮ミサエの物語で、第二部はミサエの息子で吉岡家に養子に出された雄介の物語という構成になっている。

    健気なミサエの余りにも過酷な境遇に胸を抉られるような思いで読み進む。そして、実の母親のミサエの顔も知らぬままに吉岡家の養子となった実の息子が懸命に生きながら、自身の進むべき道を切り開いていく姿に胸が熱くなった。

    時折、姿を見せる白猫。その飼い主だけが、ミサエと雄介の味方のように描かれていたのが印象に残る。

    タイトルの『絞め殺しの樹』とは菩提樹のことで

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    2024年04月16日
  • 鯨の岬

    購入済み

    すごく面白かった。ミステリーとは違うんだろうけどどんでん返しというか、決して明るい話ではないけど、絶望的な気分になる話でもなく、良い。

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    2024年02月20日
  • 鯨の岬

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    描写が素晴らしい。
    感性が合ったのだと思うけど、語り手の主人公に感情移入がし易く景色が目に浮かぶようだった。
    一話目の「鯨の岬」は少しミステリのようなオチがあるのが良い。ちょっとした逃避行だが無駄ではない感じが良かった。
    二話目はもっと時代が遡る。オチはよく分からなかった。ただこちらも描写が良いので楽しく読めた。

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    2023年12月10日
  • 肉弾

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    ネタバレ

    舞台は北海道。
    茨城からきた父と引きこもりの息子キミヤが狩猟に出かける。
    引きこもりがちの息子は銃器の資格を取ったものの初めての猟。
    豪放磊落な父は強引に禁猟地に入り込み熊を狙うも、
    運悪く鉢合わせたヒグマに襲われる。

    ヒグマと揉み合ううち野犬の群れも絡んできて
    なんとか逃走することに成功

    キミヤは父への屈託があったものの、
    自殺を思いとどまり、父の仇のヒグマを倒すことを決意。
    襲ってきた野犬のリーダーの喉に噛みつき屈服させ、群れの仲間と認められ
    野犬と共にヒグマに対峙する。

    父の遺体の土饅頭から遺体を掘り出して熊の怒りを買うが、
    野犬と知恵と武器、自分の身体でヒグマに立ち向かう。
    傷を

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    2023年03月24日
  • 鯨の岬

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    ふと手に取ったら、またも北海道を拠点にしている女性作家だった。桜井紫乃とか谷村志穂とか、そしてこの河﨑秋子とか、北海道は骨太な物語を生む女性作家が多いなという印象。
    この文庫本には表題作とデビュー作の「東郰遺事」の2編が入っている。いわば平凡な主婦がふと日常をエスケープして幼時の忘れていた思い出がよみがってくる「鯨の岬」と、江戸時代に北海道に来た武士の目からこの地に住む人々を描く「東郰遺事」とは大きく赴きが違うんだけど、同じ作家の手になるとすると何だかうなずけるような感じがする。北の地に生きる人ならではの真摯で熱い感情が表れているとでもいうのか……それって北海道の外に住む者の勝手な感傷かもしれ

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    2023年02月10日
  • 鯨の岬

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    北海道の出身の作家さんだということで、読んでみました。
    釧路行ったばかりだったので、札幌から釧路長旅だよね〜と主人公に共感。この作家さんの登場人物は身近にいる、悪くもないけど聖人でもない、ふつうに毒を抱えて生きている人がリアルに感じられるところがいいなと思う。
    合理的な嫁とかうるさい乗客にイラつくところとか。。昔育った場所の行き方とか参考になりました。いつか行ってみたい。
    鯨の岬ともう一つ乗っていたお話はどう消化して良いかわからなかったです。開拓使の歴史学んだら理解できるかな。

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    2023年01月30日
  • 鯨の岬

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    農繁期に読んで、そのままになっていた。
    時間をかけないとと記録しておけない内容だったので、ここに河崎秋子作品をまとめて。

    幼馴染と母親の介護の話を、鯨を絡めて語ることを、誰が考えつくだろうか。しかもその鯨は爆発するのだ。北海道の道東に住み、この景色を見て育ち、牛や羊を育て、屠り、人に出逢いながら人生を積み重ねてきたものでないとできない発想だと思う。
    しかし、話はいたって穏やかにすすむ。夫も孫もいる奈津子は、普段の生活を離れて、母の施設を訪問する。札幌から釧路までの4時間を、電車の中で読書で過ごし、面会して、帰ってくる。その日常が突然、鯨の記憶によって覆る・・・。
    (鯨の岬)

    野付に設けられ

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    2023年01月21日
  • 颶風の王

    購入済み

    馬と共に雪崩に巻き込まれた妊婦が、1ヶ月雪洞に閉じ込められ、最終的に死んだ馬を食べて生き延び、生まれたのが捨造。
    捨造は北海道に渡り、根室で孫和子とその馬の子孫を育てるが、島に送った馬が帰還できなくなり、馬の飼育から離脱。
    和子の孫ひかりはその島へ行き、残り1頭となった馬の子孫と出会う。
    母校がモデルになった大学が出てくるということで読んだが、切実な飢え、馬の生態の詳しさ、厳しい自然などの描写は、人の都合の良い話ではないと思った。
    それにしても、素晴らしい筆力。

    #切ない #感動する

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    2023年01月16日
  • 土に贖う

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    河﨑秋子『土に贖う』集英社文庫。

    第39回新田次郎文学賞受賞作。北海道を舞台にした7編の短編を収録。

    いずれも自然を相手に北の大地で必死に働きながらも、時代の波には逆らえずに敗者となった人びとの物語だ。いつも陽が当たる勝者に対して、敗者はいつも日陰の存在というのが世の常である。この短編集の中で、そんな敗者にも陽の光を当てようとする著者の思惑は見事に昇華されている。

    やはり、河﨑秋子はただ者ではない。

    『蛹の家』。明治時代の札幌で養蚕を営む一家が夢破れる過程を描いた物語。養蚕に精を出す父親の姿を見詰めながら育つ少女が少しずつ知る厳しい社会の現実。一つの産業が根付きながら、廃れ去る過程とい

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    2022年11月24日
  • 鯨の岬

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    ネタバレ

    なんだかものすごい作品を読んでしまったぞ
    言葉で解説なんてできないけど、心がすごいと言っている、そんな感じ
    今から言葉で感想を書くんだけどもさ(笑

    『鯨の岬』
    普段ミステリを中心に読んでいるので、そういった方面からの驚きもあってびっくりした
    冒頭の、鯨爆発動画を見て笑う孫とそれに嫌悪感を抱く祖母、これがミステリ的伏線だったなんて……
    ふとしたきっかけで目的地とは違う行先の電車に乗ってしまうとか、そんな展開と合わせて「あーはいはい、自分の生き方を見つめる的なお話なのかな」なんて思っていたら、命のお話になるとは
    ……命というか、死者への祈りや自分の内面への探求とか、そんなものを感じました
    冷たい

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    2022年08月19日
  • 鯨の岬

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    ネタバレ

     「颶風の王」「肉弾」「土に贖う」など、北海道の厳しい自然のなかで生きる人間と動物たちの潔さと哀惜を描けばピカイチの河﨑秋子さん、大ファンです。オホーツクの流氷さえも打ち砕かんとする筆力。「鯨の岬」、2022.6発行。「鯨の岬」と「東陬遺事」の2話が収録されています。「東陬遺事」がお気に入りです。著者は北海道別海のお生まれ、北海縞海老の美味しかったこと、牛がたくさんいたことを思い出しますw。

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    2022年07月27日
  • 鯨の岬

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    素晴らしく面白かった。22年上半期ベスト3に入る。
    静謐な文章で、おばあちゃんになってから自分の過去を振り返る「鯨の岬」。淡々と今の生活を振り返りながら過去を思い出す話と思ったらミステリーみたいな驚きが。

    北海道新聞文学賞の「東陬遺事」。主人公が目にするある家族の因果応報の物語。最後かなり残酷な結末で、びっくりする中にひとつだけ希望。レミゼラブルのコゼットちゃんみたいな希望。

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    2022年07月12日