河崎秋子のレビュー一覧
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ここはJAPAN版アウシュビッツなのかい…?!
主人公巽とキーパーソン大二郎が途中で移送された硫黄採掘場での過酷な労働。ついそう思ってしまった程に劣悪な労働環境。
ホロコーストと一緒にしてはいけないのですが、当時の杜撰な捜査で罪人となってしまった冤罪の人間もいる訳で…。
ひ弱な現代人の私は3日で倒れるなと震えていた本作。
しかしその実はtomoyukiさんがレビューに書かれていた通り、人間讃歌でした。
時は明治18年。
巽は学生生活を謳歌しつつ、政治活動にも参加。ところが中央官察の制圧を計画した所属団体の策略により運悪く逮捕され、国事犯として13年の実刑が下されてしまいます。編笠を被り柿色 -
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ネタバレ明治時代、士族の家系で苦労知らずに育った主人公巽は、国事犯(政治思想犯)として懲役13年を申し渡され、北海道の樺戸集治監(監獄)に収監される。
そこでともに鎖につながれた大二郎という男、そして冷徹な刑務官中田と過酷な環境と労働を過ごす。
前半から中盤にかけ、激烈過酷な収監生活の描写が続く、特に釧路の硫黄採掘現場の、囚人ばかりでなく刑務官すら健康を損なう人権などという言葉がクソの役にも立たない現場の壮絶さは記憶に刻み付けられる。
後半大二郎が脱獄し、恩赦で囚人生活を終えた巽と中田が大二郎の足跡を追う部分、いわば回収パートを読み進めていくうちに、生きることの虚しさ、それでも生きていくことの素晴 -
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ネタバレなんとも言えない読後感だが、後半1/3 がとても良かったので星5つに。
初めの方は飽きてしまい、どうしてそんなに評価高いのか不思議ではあったが、淡々と読み進めると、樺戸集治監の看守中田と、大二郎と、瀬戸内巽たつみ。この3人の三者三様の生き様がよかった。
東京大学で学徒の運動員に関わり、国事犯として徒刑13年の巽。たまたま隣にいた山本大二郎と部屋も同じ、鎖で繋がれる仲になり、いい加減な軽口で嘘つきの大二郎に心を許していく。硫黄の採掘で過酷な釧路集治監へ移送される途中の吹雪では生死を分ける体験を共にして、小さな絆のようなものが生まれる。
釧路は過酷で日に何人も亡くなっていく状態…あまりの酷さに -
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河崎秋子『絞め殺しの樹』小学館文庫。
戦中から戦後の厳しい時代から昭和までの北海道の道東、根室を舞台にした母子二代にわたる大河小説。第一部は橋宮ミサエの物語で、第二部はミサエの息子で吉岡家に養子に出された雄介の物語という構成になっている。
健気なミサエの余りにも過酷な境遇に胸を抉られるような思いで読み進む。そして、実の母親のミサエの顔も知らぬままに吉岡家の養子となった実の息子が懸命に生きながら、自身の進むべき道を切り開いていく姿に胸が熱くなった。
時折、姿を見せる白猫。その飼い主だけが、ミサエと雄介の味方のように描かれていたのが印象に残る。
タイトルの『絞め殺しの樹』とは菩提樹のことで -
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直木賞受賞前から気になっていた作品で、たまたま北海道出張中に本屋で特集が組まれており、勢いで購入。
北海道の地で馬と共に生きた家族6代の物語。各章のメインシーンの読者を引き込む力が凄い。一気に読まされる臨場感と心情の機微の表現。序章の遭難時の馬食に至る過程、第二章のフクロウの睨みを感じる場面は、こちらもドキッとさせられた。
話として好きなのは最終章の現代で祖母のために馬の行方を探るひかりの物語。この章は立派な青春小説で、自分のルーツを知ることで積極的になり、精神的にも充実していく姿が心地よい。最後の馬との邂逅は非常に美しい映像が想像できた。
北海道と馬への造詣の深さと卓越した表現力が生 -
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ネタバレ舞台は北海道。
茨城からきた父と引きこもりの息子キミヤが狩猟に出かける。
引きこもりがちの息子は銃器の資格を取ったものの初めての猟。
豪放磊落な父は強引に禁猟地に入り込み熊を狙うも、
運悪く鉢合わせたヒグマに襲われる。
ヒグマと揉み合ううち野犬の群れも絡んできて
なんとか逃走することに成功
キミヤは父への屈託があったものの、
自殺を思いとどまり、父の仇のヒグマを倒すことを決意。
襲ってきた野犬のリーダーの喉に噛みつき屈服させ、群れの仲間と認められ
野犬と共にヒグマに対峙する。
父の遺体の土饅頭から遺体を掘り出して熊の怒りを買うが、
野犬と知恵と武器、自分の身体でヒグマに立ち向かう。
傷を