河崎秋子のレビュー一覧
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ネタバレ先生独特のユーモラスな文章で綴られたファミリーヒストリー。
確かに北海道人ってルーツにあんまり興味ない人が多い気がします(笑)せいぜい頑張っても曽祖父母か高祖父母くらいまでな感じ。
どこそこ家臣でとかルーツがはっきりしている人以外はあとは割と「先祖?さぁ」って人が自分の周りもほとんど。罰当たりな子孫ですみませんな感じです(笑)
やはり文書が一つでも残ってるっていうのは大きいですよね。
そこを足がかりに親戚を訪ねて思いがけない話を収集していく様子が楽しげです。
しかしやはり一番お父さんにお話を聞きたかったことでしょうね。
先祖をたどっていく中で出てくるお父さんの兄弟の話やお母さんの開業の話、先生ご自身のきょうだいの話知人や近所の話なども興味深い。
文章がこなれていてとても読みやすい。
遺伝子検査の話が出てきてその解析内容が興味深かったです。自分も遺伝子検査したことありますが、どんな太り方をしやすいかという解析だったので(そしてせっかくの解析が今に活かされず⋯)、このような病気になりやすい因子とかアルコール分解が出来やすい体かどうかとか調べてみたいなと思いました。
血縁家族が誰も酒飲みでないのにどうして自分は酒飲みなのかとても知りたくなり(ルーツよりそっち(笑))
セクハラの話は先日読んでいた本にもでてきました。確かに本書でお母さんが言われるように「昔のほうがひどかった。もっと苦労した」というのはその年代の人にはあると思います(お母さんよりはかなり年下だけれども自分もある)
そう言うことが、河﨑先生の言うように二重加害とも取られかねないという懸念も確かにあるなとも。
ハラスメントって人と比較しても意味ないことですよね。その人自身が傷ついて苦しんでいる重みはその人にしかわからないものだから。他人がその程度などと軽々しく言えるものではないということなのでしょう。
河﨑先生はルーツ探しを始められてから、映画やテレビで昭和時代が出てくると祖父母や父母の年齢やその頃どこにいたのかなど考えるようになったそうだ(p199)
自分も両親を亡くしてから映画やテレビを見ているとそうなったので、その気持ちはよくわかるなぁと思いました。他にも接しているお客さんが父母の年齢と同い年の方だったり近い年齢のだったりしても。
父は存命なら90を超えているので、90を過ぎた人に会うとこれまで以上に感動するようになってきました。(そして寂しさも)
いい年した娘がみっともないほど泣いて喚いて(p219)。
もししてしまってもいいのじゃないかなぁと思います。いくつになったって60代の人だって70代の人だって、大事に思っていた人に死なれたら辛いのは当たり前で年齢は関係ないです。と思う。
全編からお父さんを大切に思う先生の気持ちが滲んでいて悲しいところもあるけれどもとても暖かい気持ちにもしてもらえました。
分類が文学なんですが、エッセイの棚にある方が読まれるだろうなぁと。
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プロローグ
カラン、コロン♪
誰かが、入店したようだ
2杯目の珈琲を飲み終えるのと同時に最後の頁をゆっくりと閉じた
読後感は、とても複雑だ
2杯目の珈琲の後味のように、何とも言えない苦味だけが、心を浸していく
“混沌”か‥
そんな二文字がふと浮かび、居心地の悪い席で、暫し呆然としていた‥
本章
ブク友の皆様も高評価の声が多かった本書
『愚か者の石』★激5
ん〜、何と表現したらよいのか
物凄くそれは複雑だ
看守の中田、囚人の巽と大二郎
主人公、巽にとって、看守である中田は兎も角として、少なくとも大二郎だけは、茶化す性格を差し引いても、お互いに友として成り立っていると確信していた
それが崩れ去った時、物語は一気に核心へと加速する
問題は、大二郎の心情や隠された想いが本人から語られることなく、あくまでも第三者の視点からの憶測のみで、語られているところだ
ここが、自身の思考を“混沌”へと誘ってしまっているのである
でも、、、、、
だが、しかし、、、、
エピローグ
カラン、コロン♪
行きつけの、喫茶店に入店し、いつもの指定席に向かおうとした時だった
そこには、既に先客がおり、顔見知りのスタッフが、苦笑いで、空いている席を指差した
この喫茶店は、お気に入りの喫茶店の1つだ、出入り口の入店音⁉︎が示す通り昭和の香り漂う喫茶だ
大通りから、小道を抜け、路地裏にひっそりと佇むそれは、道端に咲く、名も無き小花のようで、それがまた何とも愛おしい
ただ、読後感の悪さは、この慣れない席にも多少起因しているのかもしれない
出来れば、いつもの席で読み終えたかったからだ
カラン、コロン♪
混沌と息苦しさで、逃げるように店を出ると、外は思いの外、汗ばむような陽気だ
ただ、今はそれがありがたい
新鮮な外気を吸い込むと、先程までの陰気な気分が嘘のように晴れやかになった
やっぱり“アレ”はとてつもない名作だ!
そう感じた
路地裏を抜け、大通りに出ると、颯爽と手を上げて車に乗り込んだ!
完
あとがき
本書の表紙を捲ると、1枚の挿絵が飛び込んでくる
牢屋の鉄格子から差し込む光にあの“石”を翳しているそれだ
大二郎
その“石”に何を見ているのか?
そこに“意思”はあったのか?
そして何を想っているのか?
切なくも美しいあの挿絵が、この物語の全てなのかもしれない‥
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木内昇さんの解説の冒頭にあるよう、この作品からは〝においが激しく立ち上″ってきた。
まさに、登場人物の体臭がしてくるのだ。
それ故に嫌なヤツは嫌な臭いが濃く漂い、読んでいてムカムカする。
その世界に放り出されて、逃げたいのに逃げられない読書体験となる。
それは何故か。
第二部第一章無花果の、″シメゴロシノキ″のエピソードで、その訳がすとんと落ちてきた。
そう言えば、イチジク属のイヌビワは、イヌビワコバチと言う寄生バチと共生しているという。
相互に深く依存し、一方の破滅は他方の滅亡と言われるほどに。
インドボダイジュも同じイチジク属。
絡みつき、時に傷つきながらも、根室の土地と共生する痛みを体感した。
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こんな苦しい小説を久しぶりに読みました。
読み進めるのに何度も挫けそうになりました。
あまりにも主人公が不幸すぎて、悲しすぎて。
それでも最後まで読んだのは圧倒的な面白さがあったからです。
いや、面白いという表現は不適切かもしれません。
これは面白いという物語ではありません。
とにかく苦しくて切なくて悲しいお話です。
それでも読んで良かったと心から思います。
ここに生まれてしまった者は、その家から逃げられない。
私にはその気持ちがよくわかります。
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北海道根室で生まれ、新潟で育ったミサエは、両親の顔を知らない。昭和十年、十歳で元屯田兵の吉岡家に引き取られる形で根室に舞い戻ったミサエは、農作業、畜舎の手伝い、家事全般を背負わされボロ雑巾のようにこき使われた。その境遇を見かねた吉岡家出入りの薬売りの紹介で、札幌の薬問屋「仙雲堂」で奉公することに。戦後、ミサエは保健婦となり、再び根室に暮らすようになる。幸せとは言えない結婚生活、早すぎた最愛の家族との別れ。数々の苦難に遭いながら、ひっそりと生を全うしたミサエは幸せだったのか。養子に出された息子の雄介は、ミサエの生きた道のりを辿ろうとする。
「生まれたからには仕方ない。
死にゆくからには仕方ない」――河崎秋子
数々の文学賞にノミネートされた、入魂の大河巨編! -
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大人になって北海道に帰ってきて、ご近所に住んでいる、開拓した人たちのことをとても知りたかったので、本を読んだが、実際にご近所の開拓二世の方から、内地のご先祖の話を聞くことはほとんどない。話してくれるのはいつも、今の北海道での暮らしのことだった。こちらからご先祖がどこから来たのかを聞くことも憚られたので、長いこと付き合ってきて、ようやく話の中でふと漏らしてくれるくらいだ。でもこれを読んだら、どこから来たことにはあまり関心がない人が多いとあって、なるほどと思った。
河崎さんがご先祖のことを調べようとしたのは、お父さんが、もう過去を語ることができなくなってしまったからだ。それなら調べてでも知ろうとした行動に、お父さんへの敬意と、深い愛情を感じた。
興味深かったのは、鶏の締め方を、父に教わるところ。幼い頃の作者には、ほぼ抵抗なしにそれをやってのける才能があった。他のきょうだいは拒んだというから、これは才能と言っていいと思う。
「時効になって語れる話」はご近所でもよく聞く話なので、面白かった。
四百年前からはともかく、高祖父くらいからのものでいいので、できれば家系図をつけて欲しかった。 -
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エッセイは、いろんな人の人生を追体験できる素晴らしい読み物だと実感した一冊。
羊飼いに憧れるけど、実際どうすれば羊飼いになれるのか?羊飼いは何をしているのか?それを面白く楽しみながら学べるエッセイでした。
噛めば噛むほど肉汁が出てくるような、体験記。きっとここには書かれている以上の体験が、このエッセイに重みを持たせているんだろうな〜
追記
読み終わって、最初は羊面白いなぁと思ってたけど最後の方は自分には命を扱う仕事はできないなぁとちょっと重たい気持ちになった。きっと、飼育と屠畜を別の人が行っているから世の中の酪農は成り立っているんだろうなぁ…私は自分が育てた動物の最期がどうしても気になってしまうだろうし、罪悪感に苛まれると思う。酪農をする人は、そういった意味で鈍いというか才能がないとできない仕事なのかも、と素人なりの感想。 -
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直木賞作家 河﨑秋子さん初のノンフィクションです。
しかも、ご自身の体験を綴った作品です。
酪農家の娘さんとして生まれた河﨑さんは、一念発起、ニュージーランドで羊飼いの実習を受けます。
そして、帰国して家畜として羊を40~50頭飼育し、羊の肉を食肉として出荷するようになります。
河﨑さんは、その後、文章専業で生きる決意をし、羊飼い廃業をしていきます。
これは、羊を1頭飼育し始めてから、最後の一頭を出荷して羊飼いを終えるまでの羊飼いノンフィクションなのです。
羊飼いの日常生活から、日本の酪農事情、ジンギスカンの話など、羊にまつわる知られざる業界話が生き生きと語られます。もちろん、小説家への道の話も。
小説家の文章で読む自伝ノンフィクション。
素晴らしい文章で読ませます。 緩急自在で、分かりやすく、読みやすくて楽しくて、時に切ない。
読む価値モフモフのあたたかい作品です。羊愛でフカフカです。
みんな、読メエ~~ェ!(羊だけにw) -
Posted by ブクログ
『愚か者の石』
はじめまして♪ 河崎秋子さん。
重厚な作品でした。
明治十八年、二十一歳の「瀬戸内巽」は実兄の密告という裏切りで、北海道にある樺戸集治監に送られてしまいます。
同じ時期に入った「山本大二郎」、看守の「中田末吉」と監獄生活を送るんだけど…
劣悪な環境だったり、過酷な労働だったり…でも、
仕方ないのかなぁ…とも正直思ってしまう。読んでいても…とにかく暗〜い気持ちになってしまいました。時代背景もあるんだろうけど…
終盤に近づくにつれて…
いろいろな事がわかっていきます (´༎ຶོρ༎ຶོ`)
だからって…何もできないんだけど…
切ないなぁ…切なすぎるなぁ。
作者の 河崎秋子さん 北海道出身
なんか…嬉しい♡
直木賞受賞後 最初の作品
『愚か者の石』
とても いい作品でした♪
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Posted by ブクログ
物語は明治時代の北海道、樺戸集治監。
今でいう政治犯として収監された瀬戸内巽は、そこで口の軽い男、山本大次郎と出会う。彼は一つの石を大切に身につけていた。
明治時代の監獄、といえば網走監獄が有名だが、それ以外にも5か所の監獄があった。樺戸集治監は月形町に造られた、道内最初の監獄であった。
開拓に突き進む明治政府の北海道。原野を切り開き、幹線道路を作り、開拓の基礎づくりに囚人が駆り出された。その有り様が想像を絶する描写で描かれ、思わず怯む。
過酷な環境の中で囚人は命を落としていくが、国事犯の巽、大二郎の2人はともに生き延びる道を見つけていく。看守の中田は冷徹で役人気質だが常軌を逸することはなく、彼らを冷静に見ている。登場人物たちは、ちょっと『ゴールデンカムイ』っぽい雰囲気もあって、面白い。そんな中田を動かしたのが、大次郎が樺戸集治監から姿を消した出来事だった。
調べ上げた当時の監獄の事細かな日常と、明治政府の方針、歴史、それらが物語のバックボーンにあるのでリアリティが迫ってくる。その迫力は直木賞受賞第1作の本作でも、少しの油断もない。
石に関するエピソードや仕掛けも(ちょっとわかっちゃったところもあるけど)なるほど!と思わせる。最後は謎解きなので、一気に説明になるところを、もう一つエピソードを絡めてくるところも上手いと思った。
北海道にはまだ知られざる歴史に埋もれた事実がたくさんあるはず。題材には事欠かないと思うので、これからも期待してしまう。
歴史の人々を描いたものでは、デビュー作の「東陬遺事」も短いながら出色の作品なのでお勧め。(『鯨の岬』収録) -
Posted by ブクログ
ネタバレタイトルがかっこいいですよね。そして表紙の芦毛の馬のやんちゃそうなかわいらしさとタイトルに合わせたバックのシルバーの装丁がまた良き。
北海道に住むものとしては馬産がどう描かれ競馬という独特の世界をどう表現していくのか注目していました。
専門用語的なものや状況的なものもあり前知識なしで読んでも知らない人にはわかるだろうか、と思う箇所も何箇所かありますがほぼ理解できるのではないかと思える親切な書き方がなされていると思います。
河﨑先生も生き物に関わる生業をされてたとは言え、馬産は全く違う業態なので相当取材されたのではないかと推察。馬産と言ってもサラブレッドと輓馬とポニーなんかとじゃまた全然別の生き物扱いかと思うほど別物ですし。
「俺らの仕事を堅気と思うな」という言葉が出てきます。競馬だけでなく馬産はどこからどこまでもギャンブルだとはよく言われその世界では耳にすることでもありましょうが、そこのところを関わりない人にわかるように表現するのは並みの苦労ではないと思います。
トラブルメーカーの、馬産を底から理解していない若くて血の気の多い従業員を登場させ関係性を引っ掻き回してくれるることで、他の作家ならば描きにくくできれば避けて通りたいであろう化製場など業種の裏側をも見せようとするのはさすがと感じます。
河﨑先生の熱意といいますか、綺麗事だけではない生き物との関わりを描き出すことへの執念のようなものも感じます。
p181〜182や最終盤での馬房のシーンのように少し砕けた「ぷっ」と吹き出してしまうようなシーンがほっこりとさせられたり脱力させられたり。楽しげなシーンは筆が乗っていて楽しんで書かれている感じも伝わってきます。
馬のドラマだけどもやはり本作も人間ドラマが面白いですね。トラブルメーカーの成長や裏切りにあって陰気だった馬主女性の変貌ぶりも素敵。
何と言ってもシルバーファーンを除けば主人公である女性調教助手の痛快っぷりというか柄がいいのが本作の魅力ですね。本名の姫奈がすっ飛ぶほどのアイアンな感じがまさに鉄子というアダ名(通り名?)の通り。
終盤で先代の奥さんが仏壇に向かうシーンが出てきます。
小さい個人の生産牧場は何代も前から家族経営で細々と繋いできているところが今でもたくさんあります。繋げず廃業してしまった牧場はその何十倍もあるでしょう。
眼の前の馬は、今そこに携わっている人間だけではなく、たくさんの先代や挫折した関係者やその他何らかで関わってきた人間の思いも背負っているという重みを感じるシーンです。競馬は勝負であり大金も絡むけれど、それだけではない、他の業態にはない人間のドラマを感じさせる世界だなと思います。
競馬に興味はなくても、馬と共に生きる人間の世界に興味を持ってくれる人が本書で少しでも増えてくれたら嬉しいです。