【感想・ネタバレ】鯨の岬のレビュー

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購入済み

2024年02月20日

すごく面白かった。ミステリーとは違うんだろうけどどんでん返しというか、決して明るい話ではないけど、絶望的な気分になる話でもなく、良い。

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Posted by ブクログ 2023年12月10日

描写が素晴らしい。
感性が合ったのだと思うけど、語り手の主人公に感情移入がし易く景色が目に浮かぶようだった。
一話目の「鯨の岬」は少しミステリのようなオチがあるのが良い。ちょっとした逃避行だが無駄ではない感じが良かった。
二話目はもっと時代が遡る。オチはよく分からなかった。ただこちらも描写が良いので...続きを読む楽しく読めた。

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Posted by ブクログ 2023年02月10日

ふと手に取ったら、またも北海道を拠点にしている女性作家だった。桜井紫乃とか谷村志穂とか、そしてこの河﨑秋子とか、北海道は骨太な物語を生む女性作家が多いなという印象。
この文庫本には表題作とデビュー作の「東郰遺事」の2編が入っている。いわば平凡な主婦がふと日常をエスケープして幼時の忘れていた思い出がよ...続きを読むみがってくる「鯨の岬」と、江戸時代に北海道に来た武士の目からこの地に住む人々を描く「東郰遺事」とは大きく赴きが違うんだけど、同じ作家の手になるとすると何だかうなずけるような感じがする。北の地に生きる人ならではの真摯で熱い感情が表れているとでもいうのか……それって北海道の外に住む者の勝手な感傷かもしれないけど。胃の腑に重いものを残してくれるような2編だった。

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Posted by ブクログ 2023年01月30日

北海道の出身の作家さんだということで、読んでみました。
釧路行ったばかりだったので、札幌から釧路長旅だよね〜と主人公に共感。この作家さんの登場人物は身近にいる、悪くもないけど聖人でもない、ふつうに毒を抱えて生きている人がリアルに感じられるところがいいなと思う。
合理的な嫁とかうるさい乗客にイラつくと...続きを読むころとか。。昔育った場所の行き方とか参考になりました。いつか行ってみたい。
鯨の岬ともう一つ乗っていたお話はどう消化して良いかわからなかったです。開拓使の歴史学んだら理解できるかな。

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Posted by ブクログ 2023年01月21日

農繁期に読んで、そのままになっていた。
時間をかけないとと記録しておけない内容だったので、ここに河崎秋子作品をまとめて。

幼馴染と母親の介護の話を、鯨を絡めて語ることを、誰が考えつくだろうか。しかもその鯨は爆発するのだ。北海道の道東に住み、この景色を見て育ち、牛や羊を育て、屠り、人に出逢いながら人...続きを読む生を積み重ねてきたものでないとできない発想だと思う。
しかし、話はいたって穏やかにすすむ。夫も孫もいる奈津子は、普段の生活を離れて、母の施設を訪問する。札幌から釧路までの4時間を、電車の中で読書で過ごし、面会して、帰ってくる。その日常が突然、鯨の記憶によって覆る・・・。
(鯨の岬)

野付に設けられた通行屋に赴く幕府の役人、平左衛門は、根室から国後、択捉に至る場所の資源調査や他詳細な検分のためにやってきた。訳ありの武士の女たづとその娘、りん、弥輔との関係を、逗留の時間のなかで知る。そして彼らの宿命も。野付半島の自然を余すところなく描き、その自然が人々に何をもたらしてきたか、これから何をもたらすのか、また与えることがないかを滲ませる。
(東陬遺事)

「東陬遺事」は、20212年第46回北海道新聞文学賞受賞作品。中編であるが、ここに河崎秋子の才能と、その後描かれる小説のエッセンスが、全て凝縮されていると言っても過言ではない濃さの作品。そして、明らかに新人のレベル越え。
あとがきの桜木紫乃さんが、まるで一つの作品のように河崎秋子氏を語っていて、それもまた読み応えがある。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年08月19日

なんだかものすごい作品を読んでしまったぞ
言葉で解説なんてできないけど、心がすごいと言っている、そんな感じ
今から言葉で感想を書くんだけどもさ(笑

『鯨の岬』
普段ミステリを中心に読んでいるので、そういった方面からの驚きもあってびっくりした
冒頭の、鯨爆発動画を見て笑う孫とそれに嫌悪感を抱く祖母、...続きを読むこれがミステリ的伏線だったなんて……
ふとしたきっかけで目的地とは違う行先の電車に乗ってしまうとか、そんな展開と合わせて「あーはいはい、自分の生き方を見つめる的なお話なのかな」なんて思っていたら、命のお話になるとは
……命というか、死者への祈りや自分の内面への探求とか、そんなものを感じました
冷たい言い方をするけど、旧友が死んだ過去を思い出したからといって現実的に何が変わるわけでもないじゃないですか
でもそれでも50年も昔の死を思いだし、泣き、祈り、自分の空白と向き合い、そして生きていくという描写に胸を打たれるんですよ
このあたり、考えれば考えるほど「なんなんだろう……」って、もうかなり長文を書いてるからここまでにしとくけど、キリがないんですよねホント

『東陬遺事』
この作品こそ言葉に出来ない
例えばたづが死を選んだ理由ひとつとっても、読んでいて違和感はないのに説明ができない
出自・生い立ち・北の大地での死生観、呪い
作中のセリフや描写から拾う事も出来そうだけど、それだけで収まらない
解説からの引用で「つまらぬ欲や些末な感情へ小説世界を誘導すると、その構えの大きさに内臓まで開かれ手痛い目に遭う」ってのがしっくりくる

引用したところで書いとくと、解説もとても良かったです
「鯨以外の哺乳類はすべて絞めることができます」
「人間も?」
「ええ、たぶん」
この会話とかメッチャかっこいい!クール!!

まったくの不勉強で存じ上げなかったのですが、第167回直木賞候補の作家さんだったんですね、河﨑秋子さんて。確かにこりゃすげーわ。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2022年07月27日

 「颶風の王」「肉弾」「土に贖う」など、北海道の厳しい自然のなかで生きる人間と動物たちの潔さと哀惜を描けばピカイチの河﨑秋子さん、大ファンです。オホーツクの流氷さえも打ち砕かんとする筆力。「鯨の岬」、2022.6発行。「鯨の岬」と「東陬遺事」の2話が収録されています。「東陬遺事」がお気に入りです。著...続きを読む者は北海道別海のお生まれ、北海縞海老の美味しかったこと、牛がたくさんいたことを思い出しますw。

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Posted by ブクログ 2022年07月12日

素晴らしく面白かった。22年上半期ベスト3に入る。
静謐な文章で、おばあちゃんになってから自分の過去を振り返る「鯨の岬」。淡々と今の生活を振り返りながら過去を思い出す話と思ったらミステリーみたいな驚きが。

北海道新聞文学賞の「東陬遺事」。主人公が目にするある家族の因果応報の物語。最後かなり残酷な結...続きを読む末で、びっくりする中にひとつだけ希望。レミゼラブルのコゼットちゃんみたいな希望。

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Posted by ブクログ 2024年03月25日

ずいぶん平和な雰囲気で、「こういう河﨑さんの著作もあるのか」と思っていたら、いい意味で裏切られ、呆気に取られた。これぞ河﨑作品!

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Posted by ブクログ 2024年01月26日

河﨑秋子さんの初期の作品ということで、興味を持ち読んでいる間に直木賞受賞となりタイムリー?な読書でした。

「鯨の岬」は出だしからもう磯の匂いや魚の匂いがゴメの声と共に立ち上ってくるような描写。五感を刺激されるようなつかみ。
主人公がショートトリップに出向いた展開からなにか楽しい展開になるのかななど...続きを読むとのんびり読んでいたけれど、最後には思いもよらないところへ連れて行かれて絶句。こんな始まり方の河﨑さんの作品が、そんなのんきな小説であるはずないのに。それにしても…。鯨の肉を目にしたらこれからはこの小説を思い出しそうです。
「東陬遺事」北海道文学賞を受賞されたということでずっと読んでみたかった一作。遺事というからにはこれも誰かが亡くなるのだろうなと推測しつつ読み進めていたけれどこれも壮絶な物語だった。淡々と改まった文体で、海の氷原や空の月や鳥などの自然の描写が抜群にうまいと思いました。河﨑スタイルとでも呼びたくなるような独特の命の捉え方のスタンスはもうこの頃には固まっていたのだなぁと感じました。こういう小説が北海道文学賞なのだなと、改めてその文学賞のレベルの高さをも思い知りましたね。

手に取ったのは文庫だったので解説は直木賞の先輩である桜木紫乃さん。この解説がまたいい。桜木さんらしさが全開で、短くてもクオリティがもう一編のエッセイでした。
時々はこのような文学的刺激のある小説をこれからも読まねば、と思いました。

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ネタバレ

Posted by ブクログ 2023年02月26日

自分が住まう土地が舞台の本を手に取ってしまうことありませんか?自分はよくあります。これもそんなふうにして手に取った一冊なんですけどね。主婦・奈津子さんの憂いとでもいうんでしょうかね。子育てが終わってひと段落したと思ったら孫育が待ち構えていて、嫁にいいように使われているような虚しさとでもいうんでしょう...続きを読むか。責任と割合の見合ってなさとか。親の介護も決して苦ではないにせよ。そういう鬱屈した思いを胸に抱えて、開けてしまった幼少の頃の記憶の扉。そういう時代が確かにあったし、それはなかったことにはならないんだよなと。

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Posted by ブクログ 2022年08月04日

「鯨の岬」と「東陬遺事」の2篇が収められている。「鯨の岬」は老境に差し掛かった奈津子が、孫が爆笑していた鯨が爆発する動画を気に留めつつ、施設にいる母をみまおうとでかけた際にたまたま故郷に立ち寄り、過去のおもいでをなぞったり母から話を聞いて、むかし友人らが巻き込まれた爆発事故があったことをを思い出す、...続きを読むそんなお話で、なかなか良かった。「鯨の岬」は江戸時代の北海道の話なのだが、今ひとつなんのことだか掴みそこね、今一つだったなあ。

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Posted by ブクログ 2024年03月24日

孫と嫁の描写がリアルでムカムカして出だしがしんどかった。クジラが爆発した映像で笑い転げる孫に、記憶を取り戻した主人公は今後どう接するんだろう。でも、だからといって、何かが変わるわけではないんだろうなぁ。やるせない。しんどい。

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Posted by ブクログ 2023年01月25日

WEB本の雑誌の「オリジナル文庫大賞」の候補作の中から、大賞ではなかったが、選評を読んで良さげに思えたので買ってみた。
200頁あまりの中にお話が2つ。

【鯨の岬】
札幌の二世帯住宅に暮らし共稼ぎの息子夫婦の子どもの面倒を押しつけられた生活に倦んでいる老年の主婦・奈津子が、病気の母を見舞いに行った...続きを読む釧路で思わず乗ってしまった電車で小学生の頃に住んでいた町を訪ねてしまうところから転がるお話。
そこでどんどんと過去の記憶が甦ってきて、かつての捕鯨の町・霧多布での鯨の肉や油や解体や臭いや爆発などについての挿話はなかなか強烈だし、湿原や町の施設の描写には主人公のみならず読んでいるこちらまで日常から離れた心持ちを感じる。
そのことと「自分の中には何か欠落した大きな空洞がある」という彼女の想いとがどう折り合っていくのだろうと思っていたが、札幌に帰るのをもう一日遅らせてまでも知ろうとした記憶の正体があれだったことが、私の中ではちょっと腑に落ちなかった。

先日、淀川に迷い込んで亡くなった鯨が、ガスを抜く作業を施された上で沖に運ばれ沈められたが、死骸は放っておくとお腹の中にガスが充満し爆発するし臭いもひどいということを散々ニュースでやっていたので、物語の中の鯨が爆発する話はすんなりと頭に入ってきた。

久し振りにくらさきの鯨かつが食べたくなった。(と言ったら、配偶者から「あなた、この本読んで、よくそんなこと思うね…」と呆れられた)

【東陬遺事】
江戸後期の蝦夷地・野付に資源調査のため赴任した平左衛門が、仕事の傍ら、通行屋の下働きの家族とも親しくなり、ということで進むお話。
根室半島と知床半島の間にああいう面白い形の半島があること初めて知った。Google Mapで多くの画像を見ることが出来たが、綴られた文章はそれら以上に過酷な自然-流氷で覆いつくされる海、木々の枝が地に伏すように伸びる風の強さ、何もかもしっとりと湿らせてしまう海霧、鼻毛も凍る気温の低さ、獲物を狙う猛禽たちの翼、等々-をしっかりと感じさせる。
終盤、立て続けに事件が起こるが、この結末に作者の意図したところを推し量るのが私には難しかった。

二作とも、北海道のそこにしかない自然や町の佇まいに対する描写には感じ入ったが、お話の顛末にはいささか消化不良という感じになった。

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Posted by ブクログ 2022年10月29日

 『〝クジラ〟強調月間始めました!』4

 第4回は、河﨑秋子さんの『鯨の岬』です。
 表題作「鯨の岬」の主人公は、初老の主婦・奈津子。孫や夫の世話等で、鬱憤が溜まっています。
 ある時奈津子は、腐敗したクジラの腹が発酵して爆発する動画を目にします。クジラの腐敗臭と一緒に遠い記憶が蘇るのでした。
 ...続きを読む小学生時代に暮らした道東・霧多布の町、クジラの霜降り肉やクジラの油のかりんとう、優しい家族…。温かな思い出が、やがて意識の中のぽっかりと空いた空洞に埋め込まれた衝撃的な記憶につながります。
 日々の自分の生活・家族について、独りで静かに見つめ直す意味を示し、前に後押ししてくれる作品だと思えました。性別・年齢を問わず、非日常や知的体験の欲求は、時に大切だなと考えさせられました。
 もう一編の「東陬遺事」は、江戸後期の道東・根室の北、野付の物語です。氷に閉ざされる過酷な地に生きる蝦夷集落の人々の生と死が、地元民にしか描けない筆致で描かれています。
 同郷の桜木紫乃さんの解説も秀逸です。

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Posted by ブクログ 2022年08月04日

新しく書き下ろされた表題作に、2012年北海道新聞文学賞受賞作「東陬遺事」の2篇。

「颶風の王」以来注目している河﨑さん。鯨が腐敗して爆発…という驚くべき現象に惹かれて手にした文庫だが、表題作よりも北海道新聞文学賞選考会で別格の力を見せつけて受賞したという「東陬遺事」の方に強く惹かれた。

道東の...続きを読む野付半島を舞台に、ただ生きていくことさえ難しい厳寒の地での人の営みと、動物を含めたその地に生きるものの覚悟や諦念といったものが静かに描かれた作品。
そこには安易な共感や感傷を寄せ付けない厳しさがある。今流行りの「生きにくい世の中」とかいうぬるま湯に浸かったような感傷などはない。
まさに生きるか死ぬかなのだ。

心に残ったのは物語の最後、蝦夷地を去るりんが大鷲と栗毛の馬と見つめ合うシーン。
それはもう動物ではなく、一つの意志を持った生き物としてりんに語りかけていたに違いないと思わせる。
桜木紫乃さんによる解説も秀逸でした。

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